272 / 277
After Story…My Dearest.60
しおりを挟む
「分からなくていいの……それじゃ私は行くわね」
リヴィはそう言って出口へと歩いていく。その何故か寂しげな背中を見つめていた私は、思わず「待って!」と声を掛けていた。
「ごめん、時間……ある?」
立ち止まったリヴィへと駆け寄った私はそう声を掛けた。このままじゃいけない気がする……そう思った私は、きょとんとしたまま静かに頷いたリヴィの手を引いて病院を出たのだった。
「私、出すから好きな物頼んでいいよっ」
近くのファミレスへと入った私達は、一番奥の席へと座った。
「衣瑠の方から誘ってくれるなんて何か意外だわ」
メニューを眺めてそう言ったリヴィの顔は、いつもより柔らかな表情に見えた。
「ちゃんと話をしなきゃなって思っただけだから」
相変わらずメニューを眺めたままのリヴィは静かに「そうね」とだけ答えた。
呼び出しのベルを鳴らすと、店員が忙しない足取りでやってきた。そして手に持った端末から視線を上げると、店員の視線が一瞬止まる。
「ねぇリヴィ、もうちょっと離れてくれない?」
小声で私がそういうと、リヴィは「どうして?」と悪気もなく返してくる。私は小さく溜息を吐いて、私達のオーダーを待つ店員さんに「パンケーキとアイスコーヒー下さい」と言った。するとリヴィは「私も同じものを」と続ける。
店員が席を離れてから私はリヴィから少し離れ、空いた隙間に鞄を置いた。
「どうして……?」
再びリヴィがそう言うと、「だって……」と言い掛けた私の目に悲しげな瞳が飛び込んできた。
「なに……その目」
「だって折角のデートだというのに衣瑠と距離があるのは辛いわ」
「何でそうなんのっ? 私はただ話を聞きたくてリヴィと居るだけなんだからね!」
「デートの定義なんて個人の主観じゃないかしら? 私はこの状況をデートだと捉え、楽しんでいる。それだけの事よ?」
何だか難しい言い方をしてるけど、リヴィは"私がデートって思ったらデートなのっ"とわがままを言っているだけに聞こえた。それが何だか可笑しくて、私はつい微笑んだ。
「衣瑠の笑顔、素敵よっ」
そう言ったリヴィにも、見た事のない無邪気な笑みが広がっていた。
「リヴィも笑ったら可愛いのに……」
「そ、そんな事無いわっ!」
私がそう呟くと、突然リヴィは顔を背けた。いつもは変な喋り方だし、身勝手なことばっか言ってるリヴィが、初めて普通の女の子なんだって感じた瞬間だった。
リヴィはそう言って出口へと歩いていく。その何故か寂しげな背中を見つめていた私は、思わず「待って!」と声を掛けていた。
「ごめん、時間……ある?」
立ち止まったリヴィへと駆け寄った私はそう声を掛けた。このままじゃいけない気がする……そう思った私は、きょとんとしたまま静かに頷いたリヴィの手を引いて病院を出たのだった。
「私、出すから好きな物頼んでいいよっ」
近くのファミレスへと入った私達は、一番奥の席へと座った。
「衣瑠の方から誘ってくれるなんて何か意外だわ」
メニューを眺めてそう言ったリヴィの顔は、いつもより柔らかな表情に見えた。
「ちゃんと話をしなきゃなって思っただけだから」
相変わらずメニューを眺めたままのリヴィは静かに「そうね」とだけ答えた。
呼び出しのベルを鳴らすと、店員が忙しない足取りでやってきた。そして手に持った端末から視線を上げると、店員の視線が一瞬止まる。
「ねぇリヴィ、もうちょっと離れてくれない?」
小声で私がそういうと、リヴィは「どうして?」と悪気もなく返してくる。私は小さく溜息を吐いて、私達のオーダーを待つ店員さんに「パンケーキとアイスコーヒー下さい」と言った。するとリヴィは「私も同じものを」と続ける。
店員が席を離れてから私はリヴィから少し離れ、空いた隙間に鞄を置いた。
「どうして……?」
再びリヴィがそう言うと、「だって……」と言い掛けた私の目に悲しげな瞳が飛び込んできた。
「なに……その目」
「だって折角のデートだというのに衣瑠と距離があるのは辛いわ」
「何でそうなんのっ? 私はただ話を聞きたくてリヴィと居るだけなんだからね!」
「デートの定義なんて個人の主観じゃないかしら? 私はこの状況をデートだと捉え、楽しんでいる。それだけの事よ?」
何だか難しい言い方をしてるけど、リヴィは"私がデートって思ったらデートなのっ"とわがままを言っているだけに聞こえた。それが何だか可笑しくて、私はつい微笑んだ。
「衣瑠の笑顔、素敵よっ」
そう言ったリヴィにも、見た事のない無邪気な笑みが広がっていた。
「リヴィも笑ったら可愛いのに……」
「そ、そんな事無いわっ!」
私がそう呟くと、突然リヴィは顔を背けた。いつもは変な喋り方だし、身勝手なことばっか言ってるリヴィが、初めて普通の女の子なんだって感じた瞬間だった。
0
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる