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After Story…My Dearest.22
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何度も通った道が違う景色に見えた。
勿論それは同じ景色なのだけれど、私が今まで当たり前のように自分を受け入れてくれていると思い込んでいたその世界が、私の存在を否定しているかのように思えた。
横を通り過ぎる人たちや車を運転している人、そしてコンビニの前で煙草を吸っている人…この世界で"普通"に生きるその人たちに私の存在を気付かれてはいけない、そんな気すらした。
こんなに広い世界にも私の居場所は無いんだと、身体を縮めて足を進める。
その時だった。
『衣瑠っ♪』
背中に響いたその声は、紛れもなく莉結のモノだった。
その瞬間、私の身体が"びくん"と強張った。
そして静かに後ろを振り返ると、遠くに手を振って笑う莉結の姿が映る。
気がつくと私は力の入らない足をめいいっぱいに踏み出していた。
途中、何度も膝に力が入らずに転びそうになった。それでも止まらない私の足は、遂に"ぐにゃり"と力を失って、一瞬にして地面が目の前に映し出される。
…ひんやりとした秋風が私の上を流れていく。
私…なにしてんだろ。
すると私の少し上の方から『お姉ちゃんダイジョーブ?』と透き通った声が響いた。
ゆっくりと顔を上げると、小さな男の子が母親とぎゅっと繋いだ反対側の手を差し伸べている。
『大丈夫?怪我してない?』
そう言って心配そうに私を見下ろす優しそうなお母さんに「ありがとうございます。私は…大丈夫です、すいません」と言いながら、私はヒリヒリと痛む身体を起こすと、男の子の頭をぽんと撫でながら小さく呟いた。
「優しいね、君は」
服に付いた砂を手で払うと、胸元でその手を止めた。
その小さな膨らみを撫で下ろすと、またひとつ、小さな溜息が街の雑踏に消えた。
勿論それは同じ景色なのだけれど、私が今まで当たり前のように自分を受け入れてくれていると思い込んでいたその世界が、私の存在を否定しているかのように思えた。
横を通り過ぎる人たちや車を運転している人、そしてコンビニの前で煙草を吸っている人…この世界で"普通"に生きるその人たちに私の存在を気付かれてはいけない、そんな気すらした。
こんなに広い世界にも私の居場所は無いんだと、身体を縮めて足を進める。
その時だった。
『衣瑠っ♪』
背中に響いたその声は、紛れもなく莉結のモノだった。
その瞬間、私の身体が"びくん"と強張った。
そして静かに後ろを振り返ると、遠くに手を振って笑う莉結の姿が映る。
気がつくと私は力の入らない足をめいいっぱいに踏み出していた。
途中、何度も膝に力が入らずに転びそうになった。それでも止まらない私の足は、遂に"ぐにゃり"と力を失って、一瞬にして地面が目の前に映し出される。
…ひんやりとした秋風が私の上を流れていく。
私…なにしてんだろ。
すると私の少し上の方から『お姉ちゃんダイジョーブ?』と透き通った声が響いた。
ゆっくりと顔を上げると、小さな男の子が母親とぎゅっと繋いだ反対側の手を差し伸べている。
『大丈夫?怪我してない?』
そう言って心配そうに私を見下ろす優しそうなお母さんに「ありがとうございます。私は…大丈夫です、すいません」と言いながら、私はヒリヒリと痛む身体を起こすと、男の子の頭をぽんと撫でながら小さく呟いた。
「優しいね、君は」
服に付いた砂を手で払うと、胸元でその手を止めた。
その小さな膨らみを撫で下ろすと、またひとつ、小さな溜息が街の雑踏に消えた。
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