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189.桜の妖精
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その花びらを手に取り稚華さんが優しげに微笑んでこう言った。
『自分でも不思議なくらい嶺の居ない生活に慣れてきた自分が怖い。』
花びらをベイちゃんの頭の上へとそっと置き、
『嶺が居ない私なんてあり得なかったのにさ。』そう言ってベイちゃんを抱き上げた。
"元気出してッ♪"
その瞬間、私の持っていた紙コップが手からスッと離れ、シートへと落下した…
賑わう周囲に相反し私たちは目を見開き言葉を失う。
…突然ベイちゃんから流れた音声を私たちは雑踏の中確かに聞いたのだ。
勿論、再生ボタンは綿に包まれた内部に収納されており、外から握った程度ではそのボタンを押すことはできない…
すると稚華さんの目に煌めく小さな粒が見えた。
『うん…アリガト…嶺ッ…』
その言葉に私たちの目からも温かいものが零れ落ちていく。
その時、"ひゅーっ"と春の風が桜の花びらと共に私たちを包み込んだ。
ふと顔をあげた私は涙に滲んだ視界の先に桜の樹の下に佇む小さな人影を見た。
私は妙な胸騒ぎを覚え涙を拭ったが、その人影は忽然と姿を消してしまった。
レイ…ちゃん?
何故か私はそう感じたのだ。しかしその真意も分からないまま春の風にそっと吹かれて消えてしまった。
その日の帰り道。
『ホントに今日はありがとう。嶺もきっと満足してるよ。』
手にしたベイちゃんを見つめ稚華さんが言った。
「うんッ、また桜が散る前にもう一度お花見しようね♪」
『そうだねッ、また近々、嶺も一緒に。』
稚華さんはベイちゃんの手を取り"バイバイ"と手を振った。
その表情は"あの頃"のように穏やかで優しい"姉ちゃん"であった。
私と莉結は穏やかな風が舞う街並みをゆっくりと歩いていく。
駅のバスターミナルへと着いた時、「ねぇ、学校の近くの堤防行かない??」と莉結の手を握った。
『えっ、いいけど、どうしたの??』
「ちょっとね、お願いッ!!」
私たちは学校方面のバスへと乗り込み堤防へと向かった。
"プシューッ…"
排出音と共にバスのドアが開く。
バス停へと降り立った時、莉結が突然『堤防まで競争ねッ♪』と言って走り出した。
「えぇっ!待ってよーッ!!」
春の風に靡く長い髪を追って走っていく。
しばらくして草花の匂いと桜の仄かな甘い香りが私たちを包み込んだ。
『自分でも不思議なくらい嶺の居ない生活に慣れてきた自分が怖い。』
花びらをベイちゃんの頭の上へとそっと置き、
『嶺が居ない私なんてあり得なかったのにさ。』そう言ってベイちゃんを抱き上げた。
"元気出してッ♪"
その瞬間、私の持っていた紙コップが手からスッと離れ、シートへと落下した…
賑わう周囲に相反し私たちは目を見開き言葉を失う。
…突然ベイちゃんから流れた音声を私たちは雑踏の中確かに聞いたのだ。
勿論、再生ボタンは綿に包まれた内部に収納されており、外から握った程度ではそのボタンを押すことはできない…
すると稚華さんの目に煌めく小さな粒が見えた。
『うん…アリガト…嶺ッ…』
その言葉に私たちの目からも温かいものが零れ落ちていく。
その時、"ひゅーっ"と春の風が桜の花びらと共に私たちを包み込んだ。
ふと顔をあげた私は涙に滲んだ視界の先に桜の樹の下に佇む小さな人影を見た。
私は妙な胸騒ぎを覚え涙を拭ったが、その人影は忽然と姿を消してしまった。
レイ…ちゃん?
何故か私はそう感じたのだ。しかしその真意も分からないまま春の風にそっと吹かれて消えてしまった。
その日の帰り道。
『ホントに今日はありがとう。嶺もきっと満足してるよ。』
手にしたベイちゃんを見つめ稚華さんが言った。
「うんッ、また桜が散る前にもう一度お花見しようね♪」
『そうだねッ、また近々、嶺も一緒に。』
稚華さんはベイちゃんの手を取り"バイバイ"と手を振った。
その表情は"あの頃"のように穏やかで優しい"姉ちゃん"であった。
私と莉結は穏やかな風が舞う街並みをゆっくりと歩いていく。
駅のバスターミナルへと着いた時、「ねぇ、学校の近くの堤防行かない??」と莉結の手を握った。
『えっ、いいけど、どうしたの??』
「ちょっとね、お願いッ!!」
私たちは学校方面のバスへと乗り込み堤防へと向かった。
"プシューッ…"
排出音と共にバスのドアが開く。
バス停へと降り立った時、莉結が突然『堤防まで競争ねッ♪』と言って走り出した。
「えぇっ!待ってよーッ!!」
春の風に靡く長い髪を追って走っていく。
しばらくして草花の匂いと桜の仄かな甘い香りが私たちを包み込んだ。
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