想色40season's

ある

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神様なんていない3

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「えっと……そだっ、お母さんに用意しといてもらうからちょっと待ってて」

    私がそう言って籠巾着の中から携帯を取り出そうとしていると、指先に触れるビ
ニールの感触に気づく。

「あ……しーちゃんごめん。忘れてなかったよ」

    私が籠巾着を覗き込むと、街灯の光を薄っすらと反射するビニールに包装されたストラップが目に映った。
    私は入れた覚えなんて無いのに……あ、お母さんか。
    きっとこれはお母さんが入れてくれた事に違いなかった。私は確かに机の上に置きっぱなしだったはずだから。
    ほんとにありがと、お母さん。

「ったく頼むぜ莢果っ」

    "えへへ"と体裁悪そうに私が言うと、何故か少し残念そうに微笑するしーちゃんと目が合う。私がすぐに視線を下へと逸らすと、「ま、莢果らしいけどなっ」という無邪気な声が私をまた微笑まさせた。

    浴衣や甚平姿の可愛らしい子供達が私たちの横を駆け抜けていく。それを追う親御さんの"ちょっと待ちなさい"なんて困っている様子を見て私達は目を合わせて微笑んだ。
    道が雑木林に挟まれた急な上り坂へと変わる頃には、道沿いの雑木林にぶら下げられた提灯の明かりが何とも言えない雰囲気を醸し出し、神社へと向かう人達の談笑に混じるように雑木林の虫たちがその音を重ねている。
    少し涼しい風の吹く坂道を登っていき、額に汗がじんわりと滲み出てきた頃、私がその坂の終わりに目をやると、一際明るい出店の列が姿を現し、「わぁ……美味しそう」と私の口から思わず声が漏れる。
    大きな虫の鳴き声みたいな発電機の音と共に私に運ばれてくる美味しそうな匂い。それは甘いチョコバナナの香りや、思わずよだれが出ちゃいそうなみりんやソースの香り、そういった色々な美味しい匂いが一斉に私を包み込んで、私は不覚にもお腹をぎゅうと鳴らしてしまった。
    私は慌ててしーちゃんを見たけど、発電機や周りの人達の声のお陰で気づかれてないみたい。しーちゃんの横顔は優しい色の光に照らされ、子供みたいに輝かせているその瞳に屋台や提灯の光が重なっていつもよりうんと素敵なその顔に、つい私は目が離せなくなってしまった。
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