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18.月満つれば則ち欠く
18-1. 腰紐の行方
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天正十年 安土
例年のごとく左義長が盛大に催された。左義長とは、安土城下で一月十五日を迎えると行われる火祭りのことだ。人々は、五穀豊穣と厄除けを祈るため、正月の飾りを一同に燃やし、夜空に火の粉を散らす。その燃え上がる炎が勢いよく響きわたり、ひときわ大きな音を奏でるため、民の間では爆竹祭とも称されている。
この壮大な祭りには、信長自ら参加することもあり、安土の町は一層の賑わいを見せる。信長の傍近く仕える忠三郎をはじめ、近臣たちは皆、錦をまとうような煌びやかな衣装に身を包み、背後に爆竹をくくりつけた馬に跨る。その爆竹に火を放ち、馬が驚き飛び出すさまを見事に制御しつつ、安土の城下を駆け巡る様は見る者を圧倒せずにはおかない。
信長の御小姓や馬廻りの者も含め、総勢百五十騎にも及ぶ豪壮な列がこの祭りに彩りを添える。忠三郎は、江南にいる従弟たちと共に、この日、城下に集う多くの民の前で凛々しい姿を現し、町人らもその勇ましき雄姿に声をあげて歓喜した。
「いやはや、さすがは上様が御寵愛遊ばされる娘婿、蒲生忠三郎様にておわす、と、見物に集まりし衆人は皆、心打たれ、男はその豪胆なる御姿を讃え、女子は凛々しき御風貌に心ときめかせ、ため息など漏らしおる次第にて」
左義長の様子を見てきた滝川家家臣、谷崎忠右衛門が未だ興奮冷めやらぬ様様子で語って聞かせると、それを聞いていた章姫は、心の内にさざ波が立つを抑えがたくなる。
「姫様、どうぞご安堵くだされませ。お役目を無事に終え、日野へ戻られます折には、きっと忠三郎様がこの屋敷にお立ち寄りになり、姫様にお目通りを願われることと存じまする」
にこやかにそう告げる忠右衛門の言葉に、章姫は少しばかり戸惑いを浮かべながらも、微かに顔をそむけつつ、
「安堵とは…。まるでこのわらわが忠三郎殿のお越しを待ち望んでおるかのごとき言い草じゃ」
と、かすかに頬を染め、言葉を濁して言い返した。
章姫が日頃もっとも親しく言葉を交わすのは、異母兄にあたる秋田城介こと織田信忠であり、次いで親しいのは従兄弟である滝川家の嫡男、滝川三九郎だ。
しかし、この二人は遠征の支度で忙しく、今はほとんど姿を見せぬ有様。父・信長も、叔父・一益も同じく忙しそうであり、もう何か月もまともに顔を見ていない。
「皆、いずこへ遠征に参られるというのか…。常より時を持て余し、ふらりふらりと辺りを歩いておるのは忠三郎殿くらいのものじゃ」
章姫は少しばかり呆れ顔でひとりごちた。
そうこうしているところへ、ふと忠三郎がふらりと姿を現した。何の気もなさげに、しかしどこか飄々とした足取りで屋敷の廊下を進み、章姫のいる母屋へ姿を見せる。
「姫様が退屈されておると聞き及びました」
そう言って、忠三郎は軽く会釈しつつ、微笑を浮かべて章姫を見つめた。
「皆、遠征とやらで忙しいと聞き及ぶ」
「はい。甲斐の武田攻めでござります。城介様を総大将に、滝川一党にも陣振れが出るやもしれませぬ」
「滝川家に?それはまた何故じゃ。滝川は伊勢。武田攻めであれば、美濃・尾張衆に陣振れが出るのではないのか」
「さすがは姫様。よう存じておられる。されど姫様の父君であらせられる上様は、若き城介様と付き従う家臣どもだけで武田と対峙するのは些か不安が残る。ゆえに城介様の後見である義兄上・滝川左近に挙兵をお命じになるものかと」
忠三郎は穏やかにそう告げながら、章姫の問いに丁寧に答え、ひとつ息をついた。
(武田攻め、これに義兄上が軍目付として加わるのは、まさに揺るぎなき策。されど…)
忠三郎は、じっと視線を遠くに据える。
信長が一益を送り出すのは、もとより武田を討つためであることに違いはない。だが、忠三郎は、さらに深き計略の兆しを感じ取っていた。すなわち、武田滅亡のその先、関東の治めをも視野に入れ、信長は次なる一手を画策しているのではないか――そのように見ている。
というのも、ここ数日、幾度となく信長と嫡男信忠が、一益や信忠の家臣・川尻秀隆を呼び、膝を突き合わせて密談する姿を見かけており、小田原を居城とする北条氏からきた使者の接待は一益が担っている。
しかし、そのことを、ここで章姫に漏らすわけにはいかない。
「まぁ、よい。せっかく、忠三郎殿が来てくだされたのじゃ。酒肴を…」
章姫が微笑みながら侍女に目配せし、酒の支度を命じてくれた。
「姫様はよう存じておられる」
酒と聞いて忠三郎は嬉しさを隠しきれず、はにかみつつも、満面の笑顔で章姫に答える。
章姫の柔らかな声と気遣いが、忠三郎の胸を暖かく満たしていく。重責を担う日々において、こうして心安らぐひとときを共に過ごせることが、どれほどかけがえのないことか。
「日の本に泰平が訪れた折には、こうして姫と供に、静かに盃を傾ける日が続くやもしれませぬなぁ…」
その未来が、そう遠くはないようにも思えた。武田を討ち果たせば、織田家の東の脅威は小田原の北条のみ。この北条とも和睦が整っている。一益が関東入りすることで事なきを得るだろう。関東以北の大名たちは、すでに恭順を申し入れていると聞く。
越後の上杉も、柴田勝家が今しばらく奮闘しているが、武田が滅びた後に信忠と一益が側面から加勢すれば、事は整う。
九州を治める島津も織田家に恭順している。四国の仕置きについても明智光秀の手で調整が進み、信長の三男・信孝を総大将として出兵する話が出ている。
大敵と言えるのは中国の毛利だが、ここも羽柴秀吉が兵を進め、交戦中の情勢。明智光秀と細川藤孝が援軍に加わる手筈だ。
「今や、この日の本で、織田家に叶うものなどおりませぬ」
忠三郎は明るくそう言い、盃に注がれた酒を飲み干す。
章姫が思いのほか、歓迎してくれたこともあり、この日以来、忠三郎は足しげく章姫の元へ通った。忙しい日々の中にあって、いつしか、章姫のもとに通うことが何よりの慰めとなっていた。章姫の柔らかな声や、さりげない気遣いは忠三郎の心を温め、戦さに疲れた心と体をそっと癒してくれる。
戦乱が終わり、泰平の世が訪れたならば、章姫と共に静かな日々を送れるのかもしれない。そんな思いに駆られながら、忠三郎は織田家の勝利を信じ、一層力を入れて事に臨んでいた。
そんな至福のときを過ごす日々、突如として夢から現実に引き戻されるような事態が起きる。
その日の夜半、忠三郎は、いつものように章姫の部屋で盃を傾けていた。湯帷子《ゆかたびら》一枚でくつろぎ、酒をすすりながら上機嫌で笑みを浮かべる。
(やはりここが一番落ち着く…)
ふと、外から何やら騒がしい声が聞こえてきた。遠くで兵たちの声が上がっているのだろうか。
(はて…爺が何かしたのであろうか)
少し耳を澄ませてみたものの、どうにも気になる。
町野左近の仕業かと首を傾げつつ、酒の肴にしようかとすら思っていた。しかし、襖の向こうから、想像もしない会話が聞こえてきた。
「これはこれは、かような夜半に…」
と、町野左近の声が響く。
(誰であろうか…。夜中に姫の部屋にくるとは…)
そんな考えも束の間、返ってきた声に、忠三郎の全身が硬直する。
「鶴は中におるのか?」
その声を聞いた瞬間、忠三郎は盃を握った手がぴくりと震えた。
(義兄上!)
——滝川一益その人であった。
(義兄上じゃ…これは拙い)
忠三郎は瞬時に状況を理解し、慌てて脇に脱ぎ捨てていた小袖を引っつかんだ。が、いざ身に纏おうとしたその瞬間、致命的な問題に気づく。
(腰紐が…見当たらぬ!)
いつもなら、何気なく手元にあるものが、どうにも見当たらない。確かにこの辺りに置いたはずだと、酔いの残る頭で必死に思い出すが、どうにも影すらない。胸元は、ちょっと動いただけでぱっくりと開き、まさに今の自分は散らばった雪のごとく乱れた状態。
(何処じゃ、何処へ行ったのじゃ!)
焦りに焦る忠三郎の耳に、静かな足音が迫るのが聞こえる。
(かような夜半に、しかも、かような無様な姿で姫の部屋に入り浸っていたことが、義兄上に知れたら…これは一大事じゃ!)
忠三郎は心の中で冷や汗をかきつつ、どうにか平静を装うべく姿勢を正したが、腰紐がないために小袖が頼りなく、胸元ははだけたままだ。外から聞こえる一益の足音は着実に近づいてくる。忠三郎はどうにか腰紐の代わりに紐の先を結ぼうとするが、酔いのせいか指がもどかしく震え、思うようにいかない。
(どうする、どうするのじゃ!このままでは、見つかったが最後…)
その瞬間、襖がさっと開き、一益が堂々と姿を現した。忠三郎は、まるで寒空の下に放り出されたような気分になり、慌てて紐を手で押さえ、平静を装って頭を下げる。
この屋敷の主である一益がいること自体は不思議ではないが、こんな夜半にわざわざ母屋へ姿を現すなど、前代未聞のことである。忠三郎は瞬時にその異常事態を察知し、心の中で不安がじわりと広がるのを感じた。さっきまで酒に酔いしれていた気分も、見る間に冷めていく。
一益の表情は、何事もないかのように穏やかであるが、その目にはどうにも怒りの色が見て取れる。忠三郎はその鋭い視線を受けながら、心の中で慌てふためき、どうにか平静を装おうとするが、ふと自分が腰紐をしていないことに気づく。
(なんとかこの場をしのがねば…)
しかし、そんな忠三郎の動揺など知らぬ顔で、章姫が無邪気に顔をあげる。
「叔父上」
嬉しそうに微笑む章姫の横で、一益は無言のまま厳しい表情で部屋の中へと進む。その静けさが逆に、忠三郎の胸に刺さる。脇差の刃先をちらりと見せられているような緊張感に、忠三郎は冷や汗をこぼしながらも、その場をやり過ごそうと平静を装う。
だが、一益の冷ややかな視線は、容赦なく忠三郎の心の奥に突き刺さってくる。微笑む章姫の背後で、まるで凍てつく冬の風が吹きつけるかのごとく——逃れようもない厳しさが、忠三郎をじわりじわりと追い詰める。
「おぉ、義兄上。お戻りで。いささか冬の趣に誘われ、この身も心も暖めるべく、こちらで盃を傾けておりました」
忠三郎は顔には出さぬようにしながら、乱れた襟元をこっそり整えつつ、悠然と頭を下げた。とはいえ、折り目正しくない装いは一目瞭然。だが、今更何をどう取り繕おうと、まさしく「後の祭り」。ただ冬の雪が降り積もるごとく、忠三郎の冷や汗だけがじわりと増していく。
一益は目を細め、声も冷ややかに一言。
「ほぉう、冬の趣を…随分と深く味わっておったようじゃな」
「はは…これは…手痛いお言葉で」
忠三郎は平静を装いながらも、心中で雪山の頂に立たされているかのような気分になり、深々と頭を下げ直した。
一益はしばし無言で忠三郎を見つめ、その後、微かに寒風を思わせるため息をついてから、ふっと章姫に優しい目を向けた。
「章、少し外しておれ」
一瞬、章姫は首を傾げたが、素直に侍女とともに部屋を出て、襖をしんと閉める。静かに遠ざかる足音が夜の冷気に溶け込み、辺りはしんと静まり返った。
(これは…まこと厳しきお咎めが来るやもしれぬ)
忠三郎は内心で一瞬目を伏せ、肚を括った。部屋には今や忠三郎と一益、二人のみ。冬の張り詰めた空気が二人の間にじわじわと降り積もるようで、忠三郎は氷の上に座らされているかのごとく凍り付く。
(かような仕儀にならぬよう、爺を見張りに立てておいたものを…一体、何をしておるのか)
忠三郎は内心でぼやき、頭をかきたくなる衝動をこらえた。外で槍でも構えて厳重に見張ってくれているはずが、気がつけば自分一人がこんな厳しい局面に立たされているとは。
(まったく、あやつめ…あてにならぬ!)
忠三郎は内心の嘆きもよそに、さも何事もなかったかのように自分で盃に酒を注ぎ、くいっと一口。だが、盃に口をつけた瞬間、一益がすっと手を伸ばしてそれを取り上げる。
「義兄上、何を…」
少し驚きつつ顔を上げる忠三郎に、一益が落ち着いた声で諭すように言う。
「鶴、よい加減、酒を控えてはどうか」
「何をそのように怒っておられる?」
忠三郎は飄々と微笑んで返した。が、ふと一益の肩越しに視線を落とすと、妙なものがちらりと見えた。
(あれは…)
よく見ると、探していた腰紐だった。よりにもよって、なぜ、あんなところにあるのか。
(これは拙い…いや、ひどく拙い…!)
微妙にずり落ちそうな小袖を押さえながら、どうにかこの場を取り繕おうと努めるが、さすがに動揺が顔に出始めてしまう。ちらりと見上げると、一益の視線はまるで氷のように冷たく、あからさまな焦りを装って微笑む忠三郎に容赦なく突き刺さっていた。
一益はそんな忠三郎の不自然な態度は一切、意に介すことなく、
「笑うておる場合ではない。章は我が姪なれど上様の子。かようなことをしておれば、妙な噂がたち、上様からお咎めをうけると思わぬか」
厳しい言葉を受け、忠三郎は笑顔を浮かべつつも、内心では冷や汗が止まらなかった。ちらりと転がる腰紐に視線をやると、もはやただの布が危機そのものに見える。
(どうか見つかりませんように…)
「いやいや、義兄上、それは少々取り越し苦労というもので。章姫殿は吹雪の妹。帰するところ、我が義妹にござりまする。その妹が日夜寂しくしておられると聞き、それがしはせめてもの慰めにと…」
と、何とか誤魔化そうと飄々と返すが、内心では「苦しいぞ、これは」と自分でも薄々感じていた。
一益が冷たい視線を返す中、忠三郎は心の中で「義妹だから問題ない!」と無理に自分を納得させながら祈るような気持ちで微笑んでいた。しかし、腰紐が一益の横でふわりと揺れているのを見ると、その言い訳すらも風に吹き飛ばされてしまうのではないかという恐怖に襲われる。
一本の腰紐のことばかりを気にかけている忠三郎の心中を知ってか知らずか、一益は冷ややかな視線を崩さず、低く厳しい声で返す。
「白々しいことを申すな。章に近づくのはもうやめよ。聞き分けがつかぬなら、我が屋敷への出入りを禁ずる」
一益の冷ややかな声に、忠三郎の微笑みは引きつり、思わず手元の盃に視線を落とした。さっきまでの上機嫌な酔いは跡形もなく消え去り、部屋の空気は凍てつく冬の風が吹き込んだようにひんやりと張りつめる。
「面目次第も御座りませぬ」
と殊勝な態度を装いながら、ひたすら心の中では一益が去ってくれることを祈っていた。
だが一益は意に介さず、厳しい視線のまま説教を続けている。
(義兄上、どうか…どうか早う、この場をお引き取りくだされ!)
そんな忠三郎の祈りもむなしく、ふと一益の視線がさりげなく忠三郎の肩へと向けられた。瞬間、忠三郎の胸がドキリと跳ね上がる。
(まずい、このままでは、あの腰紐が目に入ってしまうやもしれぬ…!)
忠三郎は必死に、誠意を込めた深いお辞儀を見せ、しおらしくうなずき続けることで何とか一益の視線をそらそうと試みたが、一益は微動だにせず睨んでいる。
(こういう時に限って義太夫も爺も現れぬとは…)
心の中で嘆き、ちらりと一益を見やる。常ならば、呼びもしないのに義太夫か町野左近がひょいと現れて場を和ませるというのに、獣の如き嗅覚で危険なにおいを察知したのか、今日は示し合わせたように現れない。
(誰でもよい、誰か、助けに来てくれぬか…)
そう念じた瞬間、襖が静かに開き、章姫が顔をのぞかせた。
「叔父上、そろそろ、わらわは休ませていただきたいのじゃが…」
忠三郎は思わず拳を握りしめた。
(これぞ、まさに渡りに船!)
内心でほっとしながらも、表情はあくまで冷静を装い、一益の視線をうかがう。
一益も、ふと視線を和らげて章姫を見やる。厳しい空気に包まれていた室内が、少しだけほころびを見せたようだ。
「そうか、章。そなたも疲れておるな、すまぬ」
そう言って立ち上がる一益に、忠三郎は心底の安堵を隠しきれず、
「章姫殿におかれては、どうぞゆるりとお休みくだされ」
と立ち上がり、さりげなく腰紐を回収せんと手を伸ばそうとした。
その瞬間、一益がふと振り向く。
「鶴、腰紐くらいは結んでおけ」
忠三郎は息が止まるかと思うほど驚いた。平静を装いながらも内心は大慌てだ。
(さすがは義兄上、最初からすべてお見通しとは…!)
「お、お気遣い痛み入りまする、義兄上」
と冷や汗を浮かべながらも、何とか腰ひもを手中に収めた。
例年のごとく左義長が盛大に催された。左義長とは、安土城下で一月十五日を迎えると行われる火祭りのことだ。人々は、五穀豊穣と厄除けを祈るため、正月の飾りを一同に燃やし、夜空に火の粉を散らす。その燃え上がる炎が勢いよく響きわたり、ひときわ大きな音を奏でるため、民の間では爆竹祭とも称されている。
この壮大な祭りには、信長自ら参加することもあり、安土の町は一層の賑わいを見せる。信長の傍近く仕える忠三郎をはじめ、近臣たちは皆、錦をまとうような煌びやかな衣装に身を包み、背後に爆竹をくくりつけた馬に跨る。その爆竹に火を放ち、馬が驚き飛び出すさまを見事に制御しつつ、安土の城下を駆け巡る様は見る者を圧倒せずにはおかない。
信長の御小姓や馬廻りの者も含め、総勢百五十騎にも及ぶ豪壮な列がこの祭りに彩りを添える。忠三郎は、江南にいる従弟たちと共に、この日、城下に集う多くの民の前で凛々しい姿を現し、町人らもその勇ましき雄姿に声をあげて歓喜した。
「いやはや、さすがは上様が御寵愛遊ばされる娘婿、蒲生忠三郎様にておわす、と、見物に集まりし衆人は皆、心打たれ、男はその豪胆なる御姿を讃え、女子は凛々しき御風貌に心ときめかせ、ため息など漏らしおる次第にて」
左義長の様子を見てきた滝川家家臣、谷崎忠右衛門が未だ興奮冷めやらぬ様様子で語って聞かせると、それを聞いていた章姫は、心の内にさざ波が立つを抑えがたくなる。
「姫様、どうぞご安堵くだされませ。お役目を無事に終え、日野へ戻られます折には、きっと忠三郎様がこの屋敷にお立ち寄りになり、姫様にお目通りを願われることと存じまする」
にこやかにそう告げる忠右衛門の言葉に、章姫は少しばかり戸惑いを浮かべながらも、微かに顔をそむけつつ、
「安堵とは…。まるでこのわらわが忠三郎殿のお越しを待ち望んでおるかのごとき言い草じゃ」
と、かすかに頬を染め、言葉を濁して言い返した。
章姫が日頃もっとも親しく言葉を交わすのは、異母兄にあたる秋田城介こと織田信忠であり、次いで親しいのは従兄弟である滝川家の嫡男、滝川三九郎だ。
しかし、この二人は遠征の支度で忙しく、今はほとんど姿を見せぬ有様。父・信長も、叔父・一益も同じく忙しそうであり、もう何か月もまともに顔を見ていない。
「皆、いずこへ遠征に参られるというのか…。常より時を持て余し、ふらりふらりと辺りを歩いておるのは忠三郎殿くらいのものじゃ」
章姫は少しばかり呆れ顔でひとりごちた。
そうこうしているところへ、ふと忠三郎がふらりと姿を現した。何の気もなさげに、しかしどこか飄々とした足取りで屋敷の廊下を進み、章姫のいる母屋へ姿を見せる。
「姫様が退屈されておると聞き及びました」
そう言って、忠三郎は軽く会釈しつつ、微笑を浮かべて章姫を見つめた。
「皆、遠征とやらで忙しいと聞き及ぶ」
「はい。甲斐の武田攻めでござります。城介様を総大将に、滝川一党にも陣振れが出るやもしれませぬ」
「滝川家に?それはまた何故じゃ。滝川は伊勢。武田攻めであれば、美濃・尾張衆に陣振れが出るのではないのか」
「さすがは姫様。よう存じておられる。されど姫様の父君であらせられる上様は、若き城介様と付き従う家臣どもだけで武田と対峙するのは些か不安が残る。ゆえに城介様の後見である義兄上・滝川左近に挙兵をお命じになるものかと」
忠三郎は穏やかにそう告げながら、章姫の問いに丁寧に答え、ひとつ息をついた。
(武田攻め、これに義兄上が軍目付として加わるのは、まさに揺るぎなき策。されど…)
忠三郎は、じっと視線を遠くに据える。
信長が一益を送り出すのは、もとより武田を討つためであることに違いはない。だが、忠三郎は、さらに深き計略の兆しを感じ取っていた。すなわち、武田滅亡のその先、関東の治めをも視野に入れ、信長は次なる一手を画策しているのではないか――そのように見ている。
というのも、ここ数日、幾度となく信長と嫡男信忠が、一益や信忠の家臣・川尻秀隆を呼び、膝を突き合わせて密談する姿を見かけており、小田原を居城とする北条氏からきた使者の接待は一益が担っている。
しかし、そのことを、ここで章姫に漏らすわけにはいかない。
「まぁ、よい。せっかく、忠三郎殿が来てくだされたのじゃ。酒肴を…」
章姫が微笑みながら侍女に目配せし、酒の支度を命じてくれた。
「姫様はよう存じておられる」
酒と聞いて忠三郎は嬉しさを隠しきれず、はにかみつつも、満面の笑顔で章姫に答える。
章姫の柔らかな声と気遣いが、忠三郎の胸を暖かく満たしていく。重責を担う日々において、こうして心安らぐひとときを共に過ごせることが、どれほどかけがえのないことか。
「日の本に泰平が訪れた折には、こうして姫と供に、静かに盃を傾ける日が続くやもしれませぬなぁ…」
その未来が、そう遠くはないようにも思えた。武田を討ち果たせば、織田家の東の脅威は小田原の北条のみ。この北条とも和睦が整っている。一益が関東入りすることで事なきを得るだろう。関東以北の大名たちは、すでに恭順を申し入れていると聞く。
越後の上杉も、柴田勝家が今しばらく奮闘しているが、武田が滅びた後に信忠と一益が側面から加勢すれば、事は整う。
九州を治める島津も織田家に恭順している。四国の仕置きについても明智光秀の手で調整が進み、信長の三男・信孝を総大将として出兵する話が出ている。
大敵と言えるのは中国の毛利だが、ここも羽柴秀吉が兵を進め、交戦中の情勢。明智光秀と細川藤孝が援軍に加わる手筈だ。
「今や、この日の本で、織田家に叶うものなどおりませぬ」
忠三郎は明るくそう言い、盃に注がれた酒を飲み干す。
章姫が思いのほか、歓迎してくれたこともあり、この日以来、忠三郎は足しげく章姫の元へ通った。忙しい日々の中にあって、いつしか、章姫のもとに通うことが何よりの慰めとなっていた。章姫の柔らかな声や、さりげない気遣いは忠三郎の心を温め、戦さに疲れた心と体をそっと癒してくれる。
戦乱が終わり、泰平の世が訪れたならば、章姫と共に静かな日々を送れるのかもしれない。そんな思いに駆られながら、忠三郎は織田家の勝利を信じ、一層力を入れて事に臨んでいた。
そんな至福のときを過ごす日々、突如として夢から現実に引き戻されるような事態が起きる。
その日の夜半、忠三郎は、いつものように章姫の部屋で盃を傾けていた。湯帷子《ゆかたびら》一枚でくつろぎ、酒をすすりながら上機嫌で笑みを浮かべる。
(やはりここが一番落ち着く…)
ふと、外から何やら騒がしい声が聞こえてきた。遠くで兵たちの声が上がっているのだろうか。
(はて…爺が何かしたのであろうか)
少し耳を澄ませてみたものの、どうにも気になる。
町野左近の仕業かと首を傾げつつ、酒の肴にしようかとすら思っていた。しかし、襖の向こうから、想像もしない会話が聞こえてきた。
「これはこれは、かような夜半に…」
と、町野左近の声が響く。
(誰であろうか…。夜中に姫の部屋にくるとは…)
そんな考えも束の間、返ってきた声に、忠三郎の全身が硬直する。
「鶴は中におるのか?」
その声を聞いた瞬間、忠三郎は盃を握った手がぴくりと震えた。
(義兄上!)
——滝川一益その人であった。
(義兄上じゃ…これは拙い)
忠三郎は瞬時に状況を理解し、慌てて脇に脱ぎ捨てていた小袖を引っつかんだ。が、いざ身に纏おうとしたその瞬間、致命的な問題に気づく。
(腰紐が…見当たらぬ!)
いつもなら、何気なく手元にあるものが、どうにも見当たらない。確かにこの辺りに置いたはずだと、酔いの残る頭で必死に思い出すが、どうにも影すらない。胸元は、ちょっと動いただけでぱっくりと開き、まさに今の自分は散らばった雪のごとく乱れた状態。
(何処じゃ、何処へ行ったのじゃ!)
焦りに焦る忠三郎の耳に、静かな足音が迫るのが聞こえる。
(かような夜半に、しかも、かような無様な姿で姫の部屋に入り浸っていたことが、義兄上に知れたら…これは一大事じゃ!)
忠三郎は心の中で冷や汗をかきつつ、どうにか平静を装うべく姿勢を正したが、腰紐がないために小袖が頼りなく、胸元ははだけたままだ。外から聞こえる一益の足音は着実に近づいてくる。忠三郎はどうにか腰紐の代わりに紐の先を結ぼうとするが、酔いのせいか指がもどかしく震え、思うようにいかない。
(どうする、どうするのじゃ!このままでは、見つかったが最後…)
その瞬間、襖がさっと開き、一益が堂々と姿を現した。忠三郎は、まるで寒空の下に放り出されたような気分になり、慌てて紐を手で押さえ、平静を装って頭を下げる。
この屋敷の主である一益がいること自体は不思議ではないが、こんな夜半にわざわざ母屋へ姿を現すなど、前代未聞のことである。忠三郎は瞬時にその異常事態を察知し、心の中で不安がじわりと広がるのを感じた。さっきまで酒に酔いしれていた気分も、見る間に冷めていく。
一益の表情は、何事もないかのように穏やかであるが、その目にはどうにも怒りの色が見て取れる。忠三郎はその鋭い視線を受けながら、心の中で慌てふためき、どうにか平静を装おうとするが、ふと自分が腰紐をしていないことに気づく。
(なんとかこの場をしのがねば…)
しかし、そんな忠三郎の動揺など知らぬ顔で、章姫が無邪気に顔をあげる。
「叔父上」
嬉しそうに微笑む章姫の横で、一益は無言のまま厳しい表情で部屋の中へと進む。その静けさが逆に、忠三郎の胸に刺さる。脇差の刃先をちらりと見せられているような緊張感に、忠三郎は冷や汗をこぼしながらも、その場をやり過ごそうと平静を装う。
だが、一益の冷ややかな視線は、容赦なく忠三郎の心の奥に突き刺さってくる。微笑む章姫の背後で、まるで凍てつく冬の風が吹きつけるかのごとく——逃れようもない厳しさが、忠三郎をじわりじわりと追い詰める。
「おぉ、義兄上。お戻りで。いささか冬の趣に誘われ、この身も心も暖めるべく、こちらで盃を傾けておりました」
忠三郎は顔には出さぬようにしながら、乱れた襟元をこっそり整えつつ、悠然と頭を下げた。とはいえ、折り目正しくない装いは一目瞭然。だが、今更何をどう取り繕おうと、まさしく「後の祭り」。ただ冬の雪が降り積もるごとく、忠三郎の冷や汗だけがじわりと増していく。
一益は目を細め、声も冷ややかに一言。
「ほぉう、冬の趣を…随分と深く味わっておったようじゃな」
「はは…これは…手痛いお言葉で」
忠三郎は平静を装いながらも、心中で雪山の頂に立たされているかのような気分になり、深々と頭を下げ直した。
一益はしばし無言で忠三郎を見つめ、その後、微かに寒風を思わせるため息をついてから、ふっと章姫に優しい目を向けた。
「章、少し外しておれ」
一瞬、章姫は首を傾げたが、素直に侍女とともに部屋を出て、襖をしんと閉める。静かに遠ざかる足音が夜の冷気に溶け込み、辺りはしんと静まり返った。
(これは…まこと厳しきお咎めが来るやもしれぬ)
忠三郎は内心で一瞬目を伏せ、肚を括った。部屋には今や忠三郎と一益、二人のみ。冬の張り詰めた空気が二人の間にじわじわと降り積もるようで、忠三郎は氷の上に座らされているかのごとく凍り付く。
(かような仕儀にならぬよう、爺を見張りに立てておいたものを…一体、何をしておるのか)
忠三郎は内心でぼやき、頭をかきたくなる衝動をこらえた。外で槍でも構えて厳重に見張ってくれているはずが、気がつけば自分一人がこんな厳しい局面に立たされているとは。
(まったく、あやつめ…あてにならぬ!)
忠三郎は内心の嘆きもよそに、さも何事もなかったかのように自分で盃に酒を注ぎ、くいっと一口。だが、盃に口をつけた瞬間、一益がすっと手を伸ばしてそれを取り上げる。
「義兄上、何を…」
少し驚きつつ顔を上げる忠三郎に、一益が落ち着いた声で諭すように言う。
「鶴、よい加減、酒を控えてはどうか」
「何をそのように怒っておられる?」
忠三郎は飄々と微笑んで返した。が、ふと一益の肩越しに視線を落とすと、妙なものがちらりと見えた。
(あれは…)
よく見ると、探していた腰紐だった。よりにもよって、なぜ、あんなところにあるのか。
(これは拙い…いや、ひどく拙い…!)
微妙にずり落ちそうな小袖を押さえながら、どうにかこの場を取り繕おうと努めるが、さすがに動揺が顔に出始めてしまう。ちらりと見上げると、一益の視線はまるで氷のように冷たく、あからさまな焦りを装って微笑む忠三郎に容赦なく突き刺さっていた。
一益はそんな忠三郎の不自然な態度は一切、意に介すことなく、
「笑うておる場合ではない。章は我が姪なれど上様の子。かようなことをしておれば、妙な噂がたち、上様からお咎めをうけると思わぬか」
厳しい言葉を受け、忠三郎は笑顔を浮かべつつも、内心では冷や汗が止まらなかった。ちらりと転がる腰紐に視線をやると、もはやただの布が危機そのものに見える。
(どうか見つかりませんように…)
「いやいや、義兄上、それは少々取り越し苦労というもので。章姫殿は吹雪の妹。帰するところ、我が義妹にござりまする。その妹が日夜寂しくしておられると聞き、それがしはせめてもの慰めにと…」
と、何とか誤魔化そうと飄々と返すが、内心では「苦しいぞ、これは」と自分でも薄々感じていた。
一益が冷たい視線を返す中、忠三郎は心の中で「義妹だから問題ない!」と無理に自分を納得させながら祈るような気持ちで微笑んでいた。しかし、腰紐が一益の横でふわりと揺れているのを見ると、その言い訳すらも風に吹き飛ばされてしまうのではないかという恐怖に襲われる。
一本の腰紐のことばかりを気にかけている忠三郎の心中を知ってか知らずか、一益は冷ややかな視線を崩さず、低く厳しい声で返す。
「白々しいことを申すな。章に近づくのはもうやめよ。聞き分けがつかぬなら、我が屋敷への出入りを禁ずる」
一益の冷ややかな声に、忠三郎の微笑みは引きつり、思わず手元の盃に視線を落とした。さっきまでの上機嫌な酔いは跡形もなく消え去り、部屋の空気は凍てつく冬の風が吹き込んだようにひんやりと張りつめる。
「面目次第も御座りませぬ」
と殊勝な態度を装いながら、ひたすら心の中では一益が去ってくれることを祈っていた。
だが一益は意に介さず、厳しい視線のまま説教を続けている。
(義兄上、どうか…どうか早う、この場をお引き取りくだされ!)
そんな忠三郎の祈りもむなしく、ふと一益の視線がさりげなく忠三郎の肩へと向けられた。瞬間、忠三郎の胸がドキリと跳ね上がる。
(まずい、このままでは、あの腰紐が目に入ってしまうやもしれぬ…!)
忠三郎は必死に、誠意を込めた深いお辞儀を見せ、しおらしくうなずき続けることで何とか一益の視線をそらそうと試みたが、一益は微動だにせず睨んでいる。
(こういう時に限って義太夫も爺も現れぬとは…)
心の中で嘆き、ちらりと一益を見やる。常ならば、呼びもしないのに義太夫か町野左近がひょいと現れて場を和ませるというのに、獣の如き嗅覚で危険なにおいを察知したのか、今日は示し合わせたように現れない。
(誰でもよい、誰か、助けに来てくれぬか…)
そう念じた瞬間、襖が静かに開き、章姫が顔をのぞかせた。
「叔父上、そろそろ、わらわは休ませていただきたいのじゃが…」
忠三郎は思わず拳を握りしめた。
(これぞ、まさに渡りに船!)
内心でほっとしながらも、表情はあくまで冷静を装い、一益の視線をうかがう。
一益も、ふと視線を和らげて章姫を見やる。厳しい空気に包まれていた室内が、少しだけほころびを見せたようだ。
「そうか、章。そなたも疲れておるな、すまぬ」
そう言って立ち上がる一益に、忠三郎は心底の安堵を隠しきれず、
「章姫殿におかれては、どうぞゆるりとお休みくだされ」
と立ち上がり、さりげなく腰紐を回収せんと手を伸ばそうとした。
その瞬間、一益がふと振り向く。
「鶴、腰紐くらいは結んでおけ」
忠三郎は息が止まるかと思うほど驚いた。平静を装いながらも内心は大慌てだ。
(さすがは義兄上、最初からすべてお見通しとは…!)
「お、お気遣い痛み入りまする、義兄上」
と冷や汗を浮かべながらも、何とか腰ひもを手中に収めた。
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