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聖魂騎士団と獣人の国
続戦闘の目撃者
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木の陰から様子を見ていると、微かに地面が揺れていることに気付いた。揺れはどんどん大きくなる。こんなときに地震かと思った瞬間に、目の前の地面が大きな音共に割れ、地の底から巨大な虫の化物が飛び上がって出てきた。
「今度はなに!?」
「あ、あれは……」
――でかい、なんなのあれ……次から次へと、今度はムカデの化物、気持ち悪い……
新たに出てきたモンスターにまたさっきと同じように空から大岩が降ってきた。シヴィソワは嫌々ながら今目の前に起っていることを、目に焼き付けようと食い入るようにその様子を見た。黒い衣を纏った人間が、抜いた刀から美しい花びらが舞った。
――さっきの女の子といい、あの人間が握っている武器といい、古代の失われた魔法や武器でも使っているのか、動きがまったく読めない。モンスターと何か話しているみたいだけど、虫の羽音のような音が共鳴していて、よく聞き取れないし。
「クリムル、あっちで何か話してるけど聞こえる?」
「えっ! なに!」その返答を聞いて、これは何も聞こえてないなとシヴィソワは思った。そうこうしているうちにまた戦闘が始まったようだった。炎で出来た竜巻のようなものが、女の半身が乗っかっているムカデのモンスターから放たれた。見たこともない規模の炎の量が渦巻いている。黒い衣を纏っている人間が目にも止まらぬ速さで動き、距離を取ったところで、追ってくる炎をかき消すように大量の水を放出した。炎の流れを逆流するように水流が押し返した。そして、姿が見えなくなった。ただシヴィソワには姿が見えなくなっただけでそこにいるのがわかっていた。単純に透明化しただけで、強さを全然隠しきれていない。まだ黒い衣を着た人間はあそこにいる。
そして次の瞬間、大きな光の玉が、巨大なムカデ型のモンスターに襲い掛かった。眩しすぎて見ていられなくなり、視線を一回外した。クリムルも同じように目を逸らしていた。その間に、苦しく叫ぶモンスターの声が、こだましてきた。どうやら、戦いは終盤に差し掛かっているようだ。二人は視線を元に戻す。すると、武器を担いだザックフォードが加わっているのが見えた。
「ここで参戦ってわけね、ザックフォード」
「狙いはこいつだったのかな」
「かな、あの武器……あれは教会の人間、そうか! そういうことか」
「なになに、どういうこと」クリムルがシヴィソワの話に食いついてきた。
「確かなことは、わからないけど、教会の中で、普通じゃない仕事を取り扱う集団がいるっていう話を聞いたことがあるわ、この世界にたまに出現する桁外れに強いモンスターを狩るためにある集団とかどうとか、そんなモンスター自体会ったこともなかったし、見た人もいなかったから、噂話で聞き流してたけど、あの見たこともない程のでかさのモンスターといい、この威力の神聖魔法、想響結界を修復するだけの技術、たぶんきっとそうね」
「じゃあなに、味方ってこと?」
「どうなんだろう、まあ私達には興味なさそうね、結界を修復してくれたのも善意というより私達が不死族に取り込まれて、この場に邪魔しにくるのが嫌だったんでしょ」
「ふーん」クリムルがわかったようなわからなかったような返事をした。
具体的なことは何一つなく、全てが推測の域の話だったが、その中でも確実に明らかなことはあった。不死族の気配がほとんど消え去っているということはシヴィソワにもわかった。
シヴィソワは、長年苦しめられていた不死族から解放されたかもしれないという期待が胸に湧き上がってくるのを感じた。気を張り巡らせて夜を過ごす日々が無くなる。
「なんかシヴィソワ、嬉しそうね」
「そう?」
シヴィソワは、目の前で教会の隠された戦力の強大な力を見せつけられたことで素直に喜べなかった。
「私達もっと強くならなきゃだね、クリムル」
「うん!」
そして二人は、覗いていたことがばれる前に村へ戻ることにした。
「今度はなに!?」
「あ、あれは……」
――でかい、なんなのあれ……次から次へと、今度はムカデの化物、気持ち悪い……
新たに出てきたモンスターにまたさっきと同じように空から大岩が降ってきた。シヴィソワは嫌々ながら今目の前に起っていることを、目に焼き付けようと食い入るようにその様子を見た。黒い衣を纏った人間が、抜いた刀から美しい花びらが舞った。
――さっきの女の子といい、あの人間が握っている武器といい、古代の失われた魔法や武器でも使っているのか、動きがまったく読めない。モンスターと何か話しているみたいだけど、虫の羽音のような音が共鳴していて、よく聞き取れないし。
「クリムル、あっちで何か話してるけど聞こえる?」
「えっ! なに!」その返答を聞いて、これは何も聞こえてないなとシヴィソワは思った。そうこうしているうちにまた戦闘が始まったようだった。炎で出来た竜巻のようなものが、女の半身が乗っかっているムカデのモンスターから放たれた。見たこともない規模の炎の量が渦巻いている。黒い衣を纏っている人間が目にも止まらぬ速さで動き、距離を取ったところで、追ってくる炎をかき消すように大量の水を放出した。炎の流れを逆流するように水流が押し返した。そして、姿が見えなくなった。ただシヴィソワには姿が見えなくなっただけでそこにいるのがわかっていた。単純に透明化しただけで、強さを全然隠しきれていない。まだ黒い衣を着た人間はあそこにいる。
そして次の瞬間、大きな光の玉が、巨大なムカデ型のモンスターに襲い掛かった。眩しすぎて見ていられなくなり、視線を一回外した。クリムルも同じように目を逸らしていた。その間に、苦しく叫ぶモンスターの声が、こだましてきた。どうやら、戦いは終盤に差し掛かっているようだ。二人は視線を元に戻す。すると、武器を担いだザックフォードが加わっているのが見えた。
「ここで参戦ってわけね、ザックフォード」
「狙いはこいつだったのかな」
「かな、あの武器……あれは教会の人間、そうか! そういうことか」
「なになに、どういうこと」クリムルがシヴィソワの話に食いついてきた。
「確かなことは、わからないけど、教会の中で、普通じゃない仕事を取り扱う集団がいるっていう話を聞いたことがあるわ、この世界にたまに出現する桁外れに強いモンスターを狩るためにある集団とかどうとか、そんなモンスター自体会ったこともなかったし、見た人もいなかったから、噂話で聞き流してたけど、あの見たこともない程のでかさのモンスターといい、この威力の神聖魔法、想響結界を修復するだけの技術、たぶんきっとそうね」
「じゃあなに、味方ってこと?」
「どうなんだろう、まあ私達には興味なさそうね、結界を修復してくれたのも善意というより私達が不死族に取り込まれて、この場に邪魔しにくるのが嫌だったんでしょ」
「ふーん」クリムルがわかったようなわからなかったような返事をした。
具体的なことは何一つなく、全てが推測の域の話だったが、その中でも確実に明らかなことはあった。不死族の気配がほとんど消え去っているということはシヴィソワにもわかった。
シヴィソワは、長年苦しめられていた不死族から解放されたかもしれないという期待が胸に湧き上がってくるのを感じた。気を張り巡らせて夜を過ごす日々が無くなる。
「なんかシヴィソワ、嬉しそうね」
「そう?」
シヴィソワは、目の前で教会の隠された戦力の強大な力を見せつけられたことで素直に喜べなかった。
「私達もっと強くならなきゃだね、クリムル」
「うん!」
そして二人は、覗いていたことがばれる前に村へ戻ることにした。
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