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エンデラ王国と不死族
宵ノ飛膜
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黒い雲との距離が縮まっていくにつれて、段々と肌寒くなってきて、微かに腐臭のようなものが漂ってくる。
「なんか、臭くない? 水音ちゃんがしたか」
「なんにもしてないよ!」
水音と宙音には緊張感を感じなかった。それに引き換え、アタルの額には汗が滲み、魔導飛空艇の真下を通り過ぎようとしているエンデラの城を険しい顔で見つめていた。
「そんなに、城が心配なら、俺達だけであそこに向かってもいい」アタルの表情を見て、千景は言った。
「いえ、自分の国の問題を、千景様に丸投げするのは……」
「とはいっても、もう俺達はここから出て行くぞ、陽光の丘まで飛び降りるには十分な距離だ」
千景と水音と宙音は、王餓山に住むムササビ型の化物から作成した、黒いムササビスーツ『宵ノ飛膜』を装着した。そして、千景達はアタルに、それじゃあまた、またねー、と声をかけ、「えっ」と一言だけ発して驚いた顔をしているアタルをよそに飛び降りた。
滑空している体に、冷たい空気がすり抜けていく、前方に見える、黒い雲の下にはヴァンプドラゴンが多数舞っていた。そしてそれに騎乗している何かの姿を目に捉えることが出来た。
「このままかち合うとあっちの方がエンデラの国に早く乗り込んできそうだな、水音『実存照鏡 破魔の型』を出せ! 効果はあの『アールシャールの眼光』と似たようなもんだろ、汚染されていたワーウルフが浄化出来たんだからな!」
「わ、わかりました、御館様、光華巫女技能『実存照鏡 破魔の型』!」
水音が出した大きな四角い鏡からレーザービームのような退魔光線が放たれた。前方に飛んでいるヴァンプドラゴンたちが、急な攻撃に合ったことで仰け反り、そのまま体勢を立て直すことが出来ず、落下するものもいた。退魔光線は、それだけに留まらず光の先にあった黒い雲には綺麗にぽっかりと穴が開いた。
「上出来だあああああ、水音ねえええええ」『宵ノ飛膜』の時間が経過するごとに加速する効果によって、言葉を発するのがどんどん苦しくなっていく。そして身を切り裂くような冷気をくらっているようで寒い。
「はあああいいいいい」水音はそんな中必死に返事をする。宙音は「ああああああああああいいいいいい」と、意味もなく叫ぶ。
水音から生み出された鏡は、そんな水音の不安定さを受けてか、どこに打つともなく、退魔光線を連発している。
「おやかたさまあああ、きりょくがああああ、きれますううう」
「がんやくうううをおおお、のめええええ」
「ここででええええ」
これ以上口を開けたら舌を噛みそうだったので、それ以上叫ぶことが出来ず『宵ノ飛膜』が一定の高度になると、パラシュート状に変化するのを待つしかなかった。
――もうすぐだ、丘はすぐそこ
陽光の丘にはよく見ると、石をかざして必死に魔法のようなものを放っている、ローブをすっぽりかぶった一団の姿があった。
――あれは……ぐっ
一度、衝撃があり、ふわりと三人が浮いた。
「よし、よし、ではここから宙音ちゃんの出番ということで」と言って、宙音が所有している『地奏武具』の一つ、『修鬼ノ払子』という、大きな筆のような形状の、柄の先に長い紫の毛が束ねてある武具を取り出した。そして道術『真言浄ノ一字』と叫びながら、『修鬼ノ払子』で自分の前の空間に文字を書いた。
「いってこおおおい!」と宙音が払子で一薙ぎすると、黒い大地に風が吹き荒れ、どんどん浄化されていき、黒い絨毯が敷かれたような地面の色が、土の色に変わっていった。
「なんか、臭くない? 水音ちゃんがしたか」
「なんにもしてないよ!」
水音と宙音には緊張感を感じなかった。それに引き換え、アタルの額には汗が滲み、魔導飛空艇の真下を通り過ぎようとしているエンデラの城を険しい顔で見つめていた。
「そんなに、城が心配なら、俺達だけであそこに向かってもいい」アタルの表情を見て、千景は言った。
「いえ、自分の国の問題を、千景様に丸投げするのは……」
「とはいっても、もう俺達はここから出て行くぞ、陽光の丘まで飛び降りるには十分な距離だ」
千景と水音と宙音は、王餓山に住むムササビ型の化物から作成した、黒いムササビスーツ『宵ノ飛膜』を装着した。そして、千景達はアタルに、それじゃあまた、またねー、と声をかけ、「えっ」と一言だけ発して驚いた顔をしているアタルをよそに飛び降りた。
滑空している体に、冷たい空気がすり抜けていく、前方に見える、黒い雲の下にはヴァンプドラゴンが多数舞っていた。そしてそれに騎乗している何かの姿を目に捉えることが出来た。
「このままかち合うとあっちの方がエンデラの国に早く乗り込んできそうだな、水音『実存照鏡 破魔の型』を出せ! 効果はあの『アールシャールの眼光』と似たようなもんだろ、汚染されていたワーウルフが浄化出来たんだからな!」
「わ、わかりました、御館様、光華巫女技能『実存照鏡 破魔の型』!」
水音が出した大きな四角い鏡からレーザービームのような退魔光線が放たれた。前方に飛んでいるヴァンプドラゴンたちが、急な攻撃に合ったことで仰け反り、そのまま体勢を立て直すことが出来ず、落下するものもいた。退魔光線は、それだけに留まらず光の先にあった黒い雲には綺麗にぽっかりと穴が開いた。
「上出来だあああああ、水音ねえええええ」『宵ノ飛膜』の時間が経過するごとに加速する効果によって、言葉を発するのがどんどん苦しくなっていく。そして身を切り裂くような冷気をくらっているようで寒い。
「はあああいいいいい」水音はそんな中必死に返事をする。宙音は「ああああああああああいいいいいい」と、意味もなく叫ぶ。
水音から生み出された鏡は、そんな水音の不安定さを受けてか、どこに打つともなく、退魔光線を連発している。
「おやかたさまあああ、きりょくがああああ、きれますううう」
「がんやくうううをおおお、のめええええ」
「ここででええええ」
これ以上口を開けたら舌を噛みそうだったので、それ以上叫ぶことが出来ず『宵ノ飛膜』が一定の高度になると、パラシュート状に変化するのを待つしかなかった。
――もうすぐだ、丘はすぐそこ
陽光の丘にはよく見ると、石をかざして必死に魔法のようなものを放っている、ローブをすっぽりかぶった一団の姿があった。
――あれは……ぐっ
一度、衝撃があり、ふわりと三人が浮いた。
「よし、よし、ではここから宙音ちゃんの出番ということで」と言って、宙音が所有している『地奏武具』の一つ、『修鬼ノ払子』という、大きな筆のような形状の、柄の先に長い紫の毛が束ねてある武具を取り出した。そして道術『真言浄ノ一字』と叫びながら、『修鬼ノ払子』で自分の前の空間に文字を書いた。
「いってこおおおい!」と宙音が払子で一薙ぎすると、黒い大地に風が吹き荒れ、どんどん浄化されていき、黒い絨毯が敷かれたような地面の色が、土の色に変わっていった。
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