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第27話 捜索隊
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「マジ様。ようやく追い詰めましたわよ!」
逃亡勇者捜索隊の指揮官、サルトールは意気込んだ。
北の山脈で身分詐称して情報を集め、東に向かった事は早くから分かっていた。
しかしザラデンヌで領主ザザビーの邪魔が入り、捜査がそこで一旦ストップ。
その後、周辺で情報を集め、ほぼ十中八九、旧レジスタンスが籠った東の森だろうと踏んで、やってきた。
その甲斐あって先日。
集落に馬車だけが預けられており、人間がそれを預けたらしい事も判明した。
それが勇者ヤミーなのかは分からないが、可能性は高いだろう。
あとは、この目で確かめるのみ!
東の森に入って、三日後。サルトール一行は、風化した石柱だけが立ち並ぶ、古い遺跡のある場所に来た。
記録だと、この辺に昔のレジスタンスのアジトがあったらしいが……。
朽ちた石柱が数本立っているだけで、風雨も凌げなさそだ。
もっと森の奥に行こうか……。
サルトールがそう思った時、側にいた魔導士が声を上げた。
「指揮官。なにか魔力の気配がします!
ただ、勇者ヤミーのものとは違うような……」
別の魔導士が言った。
「これ、あとから召喚したBBAのものでは?
あいつ、処女魔力だけは滅茶苦茶ため込んでいたんですよ」
くそっ。それじゃ、馬車を預けた人間って、そのBBAかも知れないのか。
それじゃマジ様はここにいない?
「いや。とにかくこの目で確かめるぞ!」
そう言って、サルトールは乗っていた馬から降りた。
その時、かすかに花の良い匂いがして、サルトールは違和感に包まれた。
「なんだ?」
周りを見ると、同行している歩兵や魔導士達の様子がおかしい。
「これは……何かの精神攻撃か?」
そしてサルトールは、その場に膝をつき、ばったりと前に倒れた。
◇◇◇
「お兄ちゃん! やっぱ私達のダブル催眠は効くねー!」
「そうだな。それに、二人とも直前にメルリア様でフル充電してるしな!」
「おう。それじゃみんな。早いところ、奴らを縛り上げろ!」
姫路の指示で、碧たちだけでなく、スズランやミューまで、兵士達を縛る為、縄を持って走り回っている。
「どうだい、マジさんよ。これなら、無駄に血を流さなくていいだろ?」
「ああ姫路殿。本当に感謝する。しかし、この後どうしたものか……このまま飼い殺しにも出来ないし……穴掘って埋めるのだと、最初から殺すのと変わらないし」
「どうだろマジさん。ザザビー卿に応援を頼むのは……」
「なるほど」
マジと姫路がそんな相談をしていた時だった。
「きゃっ!」
スズランの声がして、見ると……エルフの兵士が立ち上がり、スズランの喉元に剣をつき立てている。
「お前は……サルトール!?」マジが声を上げる。
「はははははは。マジ様―。探しましたよー。
あんまり手間かけさせないで下さいよー。
でもご安心下さい。私、貴方は殺しませんから……。
まあ、後の奴らは、ヤミー以外、ここで死んでいただきますけどね」
「姫路―。私はいい。私ごと、こいつをやっつけて!」スズランが叫ぶ。
「くっ!」しかし、姫路は動く事が出来ない。
「えー? あの催眠が効かないのー? マジヤバ!」モルモルが言う。
「ふん。私位になると、精神攻撃に対する防御耐性もそれなりにあるのよ!
護符も身につけてるし……それにしても、なんで魔族のあなた方が……。
それに、役立たずBBAまで……。
さあ、そこの夢魔! 早く術を解きなさい!」
「お兄ちゃん……‥」
「ジルベルリ、モルモル、仕方ねえ。術を解け!」姫路が指示する。
その時、姫路の足元から、小さな毛玉が飛び出した。
脱兎のごとくとは、まさにこの事だろう。
姫路のロッドを手にしたミューが、あっという間にサルトールの前まで行き、彼女の両足を薙ぎ払った。
ガコン!!
ものすごい音がして、サルトールは、後頭部から後ろに倒れ、スズランが投げ出された。
次の瞬間。マジがサルトールに剣をつきつける。
「くっ、マジ……様……」
「サルトール。頼む。降伏してくれ。私はお前を殺したくない」
「だめです。今ここで殺さないと、執念深くあなたを追い続けますよ……」
「だが……正直なところ、私はお前が嫌いではない。
近衛での付き合いも長いしな。それに美形だ……」
「ああ、マジ様。それ、ご本心ですの?
近衛にいた時は、そんな事、一言もおっしゃらなかったのに」
「まあ、この逃亡中に、私も少し丸くなったかもしれない。碧もそうだが、あの子たちと一緒に暮らしていると、だんだん心が穏やかになってきて、自分の気持ちに素直になってきた様にも思うのだ」
そう言いながら、マジはスズランとミューの方を見た。
スズランが泣きながらミューに抱きついて、ミューにいい子いい子されている。
「マジ様……そうであれば……。
私のあなた様への愛を受け入れてはいただけませんか?
それさえ叶えば、私はあなたを捕まえる意味を失います」
「……わかった。それでお前の気が済むのなら……喜んで愛してやろう」
「ああ……」
「おい、マジ。話はついたか?」
「ああ姫路殿。大丈夫だ。サルトールは納得してくれた」
「そっか。じゃあ、そいつあたいに一発殴らせろ!
さっきBBAって二回言ったよな!」
「あー。それ、わたしだけじゃなくて、部下も……」
サルトールがそう言い終わらないうちに、姫路の鉄拳が、彼女のみぞおちにクリーンヒットし、サルトールは悶絶しながら気絶した。
逃亡勇者捜索隊の指揮官、サルトールは意気込んだ。
北の山脈で身分詐称して情報を集め、東に向かった事は早くから分かっていた。
しかしザラデンヌで領主ザザビーの邪魔が入り、捜査がそこで一旦ストップ。
その後、周辺で情報を集め、ほぼ十中八九、旧レジスタンスが籠った東の森だろうと踏んで、やってきた。
その甲斐あって先日。
集落に馬車だけが預けられており、人間がそれを預けたらしい事も判明した。
それが勇者ヤミーなのかは分からないが、可能性は高いだろう。
あとは、この目で確かめるのみ!
東の森に入って、三日後。サルトール一行は、風化した石柱だけが立ち並ぶ、古い遺跡のある場所に来た。
記録だと、この辺に昔のレジスタンスのアジトがあったらしいが……。
朽ちた石柱が数本立っているだけで、風雨も凌げなさそだ。
もっと森の奥に行こうか……。
サルトールがそう思った時、側にいた魔導士が声を上げた。
「指揮官。なにか魔力の気配がします!
ただ、勇者ヤミーのものとは違うような……」
別の魔導士が言った。
「これ、あとから召喚したBBAのものでは?
あいつ、処女魔力だけは滅茶苦茶ため込んでいたんですよ」
くそっ。それじゃ、馬車を預けた人間って、そのBBAかも知れないのか。
それじゃマジ様はここにいない?
「いや。とにかくこの目で確かめるぞ!」
そう言って、サルトールは乗っていた馬から降りた。
その時、かすかに花の良い匂いがして、サルトールは違和感に包まれた。
「なんだ?」
周りを見ると、同行している歩兵や魔導士達の様子がおかしい。
「これは……何かの精神攻撃か?」
そしてサルトールは、その場に膝をつき、ばったりと前に倒れた。
◇◇◇
「お兄ちゃん! やっぱ私達のダブル催眠は効くねー!」
「そうだな。それに、二人とも直前にメルリア様でフル充電してるしな!」
「おう。それじゃみんな。早いところ、奴らを縛り上げろ!」
姫路の指示で、碧たちだけでなく、スズランやミューまで、兵士達を縛る為、縄を持って走り回っている。
「どうだい、マジさんよ。これなら、無駄に血を流さなくていいだろ?」
「ああ姫路殿。本当に感謝する。しかし、この後どうしたものか……このまま飼い殺しにも出来ないし……穴掘って埋めるのだと、最初から殺すのと変わらないし」
「どうだろマジさん。ザザビー卿に応援を頼むのは……」
「なるほど」
マジと姫路がそんな相談をしていた時だった。
「きゃっ!」
スズランの声がして、見ると……エルフの兵士が立ち上がり、スズランの喉元に剣をつき立てている。
「お前は……サルトール!?」マジが声を上げる。
「はははははは。マジ様―。探しましたよー。
あんまり手間かけさせないで下さいよー。
でもご安心下さい。私、貴方は殺しませんから……。
まあ、後の奴らは、ヤミー以外、ここで死んでいただきますけどね」
「姫路―。私はいい。私ごと、こいつをやっつけて!」スズランが叫ぶ。
「くっ!」しかし、姫路は動く事が出来ない。
「えー? あの催眠が効かないのー? マジヤバ!」モルモルが言う。
「ふん。私位になると、精神攻撃に対する防御耐性もそれなりにあるのよ!
護符も身につけてるし……それにしても、なんで魔族のあなた方が……。
それに、役立たずBBAまで……。
さあ、そこの夢魔! 早く術を解きなさい!」
「お兄ちゃん……‥」
「ジルベルリ、モルモル、仕方ねえ。術を解け!」姫路が指示する。
その時、姫路の足元から、小さな毛玉が飛び出した。
脱兎のごとくとは、まさにこの事だろう。
姫路のロッドを手にしたミューが、あっという間にサルトールの前まで行き、彼女の両足を薙ぎ払った。
ガコン!!
ものすごい音がして、サルトールは、後頭部から後ろに倒れ、スズランが投げ出された。
次の瞬間。マジがサルトールに剣をつきつける。
「くっ、マジ……様……」
「サルトール。頼む。降伏してくれ。私はお前を殺したくない」
「だめです。今ここで殺さないと、執念深くあなたを追い続けますよ……」
「だが……正直なところ、私はお前が嫌いではない。
近衛での付き合いも長いしな。それに美形だ……」
「ああ、マジ様。それ、ご本心ですの?
近衛にいた時は、そんな事、一言もおっしゃらなかったのに」
「まあ、この逃亡中に、私も少し丸くなったかもしれない。碧もそうだが、あの子たちと一緒に暮らしていると、だんだん心が穏やかになってきて、自分の気持ちに素直になってきた様にも思うのだ」
そう言いながら、マジはスズランとミューの方を見た。
スズランが泣きながらミューに抱きついて、ミューにいい子いい子されている。
「マジ様……そうであれば……。
私のあなた様への愛を受け入れてはいただけませんか?
それさえ叶えば、私はあなたを捕まえる意味を失います」
「……わかった。それでお前の気が済むのなら……喜んで愛してやろう」
「ああ……」
「おい、マジ。話はついたか?」
「ああ姫路殿。大丈夫だ。サルトールは納得してくれた」
「そっか。じゃあ、そいつあたいに一発殴らせろ!
さっきBBAって二回言ったよな!」
「あー。それ、わたしだけじゃなくて、部下も……」
サルトールがそう言い終わらないうちに、姫路の鉄拳が、彼女のみぞおちにクリーンヒットし、サルトールは悶絶しながら気絶した。
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