7 / 21
第七話 連続美少女変死事件
しおりを挟む
ハジッコはブチャと知り合い、人間とは出来ない内容の話が出来たのがうれしくて仕方なかった。たいていの悩みというものは、他人に話すだけで心が軽くなるというのもあながち間違いでは無い様だ。そして翌週の日曜。理恵に頼み込んで、またブチャに会える様にしてもらった。
「ははは、すみっ子。すっかりブチャを気に入ったみたいだね。でもあんまり仲良くなりすぎると、あいつも結構いい歳だからまた別れがつらくなるぞー」理恵がそんな事を言って脅したが、まあゆっくりしていきなよと、ブチャとハジッコを置いて家族と買い物に出かけて行った。
「あの。ブチャ先生! 先日は貴重なアドバイス有難うございました!」
「先生とはずいぶん出世させてくれた様じゃが……わしはそんなにお主の役にたったか?」
「はい! 人間としての適切なアドバイスもそうですが、私の悩みを聞いていただき、すごく心が軽くなりました!」
「じゃが、前にも言ったが聞く事しか出来んぞ……それにアドバイスとか言っても、単にニャン生経験が長いだけじゃ」
「ああ、そんなご謙遜を。私もワン生経験は、先生とはさほど変わらないのですが、そんなに鋭く人間を観察出来ていなくて……これからもアドバイス宜しくお願い致します!」
「まあ好きにしニャさい。それで今日も溜まった鬱憤を語りにきたのじゃろ? 聞いてやるから話して見ろ」
そしてハジッコは、前回踏み込めなかった詳細までをブチャに話した。
「ニャるほどのう。その希来里という人間は、悪い奴ではないが的外れか……仕方ないのではニャいか? 所詮人間などに、我らの様にファンタジーでスピリチュアルな世界は理解出来まい。それよりも気にニャったのじゃが……お主、その虎と希来里の関係をそのまま認めてしまっていいのか?」
「はい? とおっしゃいますと?」ハジッコが怪訝そうな顔をする。
「いや。その、お主の飼い主でその身体の持ち主の澄子は、虎が好きニャのじゃろう? このまま虎と希来里の中が進展してしまってから、澄子に身体を返した時、すでに自分の想いが遂げられニャいと分かった澄子は嘆かニャいかのう」
「ああ、そうなのですか!? すいません。私もそうした惚れた脹れたの所にめっぽう弱くて……自分自身、子犬の際に不妊手術を施されていまして色恋事はとんと……」
「ああ、すまん。嫌な事を思い出させたかの?」
「いいえそれは全く……ですが先生。それでは私はどうすればよいのでしょうか?」
「いや。露骨に希来里の恋路を邪魔しては馬に蹴られてしまう。正々堂々と、人間の女の魅力で虎にアタックするしかニャいのではニャいか?」
「はあ……それはいったいどうすれば」
「わしにもわからん。わしも長く生きたがほとんど家猫で、色恋事に縁はニャかったのでな。まあテレビの昼ドラという奴はよく見ていたが……」
「たっだいまー」そんな話をしていたら理恵が帰ってきた。
「すみっ子、どう。ブチャとたくさんお話出来た?」
「ああ、有難う理恵。お陰様でストレスが解消したみたい。ブチャ先生もありがとうね」
「ブチャ先生? はは、ブチャよ。お前ついに、すみっ子の心の師になったか。でも……それなら丁度いいかな」
「丁度いいって、何が?」
「あのね。すみっ子にお願いがあるんだけど……今度のゴールデンウィークの間、ブチャ預かってくれないかな?」
「えっ!? それは構わないけど。どうして?」
「今、買い物行きがてら両親と話してたんだけど、二人でサイパンにゴルフしに行く計画立ててんのよ。それで私も行くかって聞かれたんだけど、ブチャ置いてけないしって言ったら、ペットホテルでいいじゃないってさ。ああ、それならすみっ子に預かってもらってもいいかなって思ったんだ」
「ああ。そういう事なら大歓迎だよ。ブチャ先生もいいよね?」
「にゃーーー!」
「いいってさ」
「ははは。それじゃ決まりだね。お父さんに伝えて来る」
そう言って理恵は下に降りていった。
◇◇◇
ハジッコがいなくなり、二人ともモフモフ不足がひどかった事もあったのか、ブチャ先生を預かる件は、お父さんとおばあちゃんも二つ返事で了解してくれた。
連休の前日、虎兄の車で理恵の家に行き、ブチャ先生をお迎えした。
(これが虎か。いい男じゃの)
ブチャ先生がそう言うが、もちろん虎兄には、ニャーニャーとしか聞こえない。
車はそのうち九重家に到着した。
「それじゃ俺はこれで……ああスミ。あさって希来里が、また調査報告にくるってさ。お前、家にいるよな?」虎兄が、別れ際にスマホを見ながらそう言った。
「うん。ブチャ先生もいるし、どこにもいかないよ」ハジッコがそう答えた。
「先生。狭い家だけどゆっくりして下さいね」そういいながらブチャ先生を家の中に案内したが、早速おばあちゃんが触りに来た。
「あらあら、可愛いねー。ぷよぷよだねー」
猫はお腹を触られるのが嫌なはずだが、ブチャ先生は我慢してくれている様だ。
やがてお父さんも帰ってきて、おばあちゃんと同じ様にブチャ先生のお腹を撫でていた。いやそれ、私だったらうれしいんだけど……ハジッコはそう思いながら、我慢してくれているブチャに感謝した。
夕食を終え、ブチャ先生といっしょにお風呂に入ったハジッコは、浴衣姿でブチャと縁側で涼んでいた。今日は日中かなり気温が上がったためか、まだちょっと蒸し暑く、縁側が心地よい。
「いい家ではニャいか。庭も広いし風通しもいい」
ブチャ先生も気に入ってくれた様だ。
「でしょ? それでその垣根の向こうが虎之助さんの家なんですよ」
「ニャんと! それではいつでも夜這いに行けるではニャいか!」
「そんな先生! 夜這いだなんて……そんなはしたない事はしません!」
「いや、犬ならするじゃろ?」
「だから。今は犬じゃありません!」
その時、二人の眼の前を、ひらひらと黒いものが通り過ぎた。
「アゲハ蝶?」ハジッコが気付いた。
「うむ。カラスアゲハじゃのう。まだこの時期に珍しいが……そう言えばこの前も……」
「この前も? 何かあったのですか?」
「いや、何でもニャい。ただの偶然じゃろう」
そして夜も更け、ハジッコはブチャ先生といっしょの布団に入って休んだ。
◇◇◇
二日後の午後。希来里がやってきた。お父さんとおばあちゃんは千葉のおじさんの家に用があって出かけていたが、虎兄は日中バイトだけど三時には終わるとの事で、そしたら顔出してくれると言っていた。
「あれ、スミちゃん。その猫どうしたの? えらい不細工だねぇ」
希来里がそう言うと、ブチャ先生が怒っている。
(ふん。これが希来里か。やっぱり気が利かなそうな感じだね。これじゃあの虎には釣り合わニャいよ!)ニャーニャー言いながらブチャ先生が悪態をついていた。
「ああ、この子はブチャっていいます。友達んちの子なんですが、連休中預かってるんです」
「そっか。それでねスミちゃん。例の件なんだけど……」
「何か分かりましたか?」ハジッコがテーブル越しに身体を乗り出す。
すると、希来里が新聞の切り抜きをスクラップした様なもののコピーを数枚広げた。
「これは?」
「連続美少女変死事件のスクラップよ」
「連続美少女変死事件!?」ハジッコは驚いて声がうわずった。
その膝の上にいたブチャ先生も思わす顔をあげる。
「そう。もうずっと以前から続いているらしいんだけれど、毎年春に数名。美人の誉れ高い女性が原因不明の心肺停止で変死する事件が連続していて……遡れる限りでその情報を集めてみたの。どれも多分お花見の時、突然パタリといっちゃってて……まあ、スミちゃんは無事だったんだけど、なんかちょっと似てるなって思ったんだ」
いや、無事じゃなかったのよ!
のどまで出かかった言葉を飲み込んで、ハジッコが希来里に質問した。
「で、でも、そんな大事件。なんでみんな騒がないの?」
「いやー。もちろん警察は調べていると思うけど、それぞれの事件は散発的で関連性も認められず外傷もないとかで、なにかの祟りとかじゃないかって……私もこの話、都市伝説扱うサイトで見つけたんだけどね。そのコピー見てもらうと分かるけど、なにせ判っただけでも五十年位前の記録もあったし……」
新聞の切り抜きコピーに順番に目を通しながら、ハジッコは思う。
ああ、なんて恐ろしい。でも、それがもし本当にあの夜桜の仕業だったとしたら……そんな恐ろしい相手に私がかなうのだろうか。あっ! 事件って事は……もしかして、豊川さんはこの件を調べているかも! ああ。やっぱり私は豊川刑事に会わないと。そして……ああ、でもなんて言うの?
実は私がハジッコで、スミちゃんの魂が取られましたって? それはダメなのよ!
でも……そう思ってハジッコが立ち上がった時だった。
「ふうぅううううっ!!」いきなりブチャ先生が警戒音を発した。
「ありゃ。なんだあれ。うわー蝶々だね。今時期めずらしい」希来里がそう言いながら指をさした方向に、カラスアゲハが舞っており、それが庭から居間に入ってきた。
「ありゃりゃ。入ってきちゃたよ。外に出してあげないと、猫ちゃんに捕られちゃうかも」そう言いながら希来里が手で蝶を追い払おうとしたその時、ブチャ先生がいきなりその蝶々に飛び掛かった。
「あーだめだよ! 蝶々さんが死んじゃうよ」希来里がそう言った瞬間、蝶に飛び掛かったブチャ先生が、バットで撃ち返されたかのように、居間の柱にたたきつけられた。
「ブチャ先生!!」ハジッコは慌ててブチャ先生に駆け寄るが、意識が無いようだ。
「ちょっと! 何が起きたの!」希来里が慌てて立ち上がると、どこかでチーンとおりんの様な音がして、次の瞬間、周りが暗闇に包まれた。
「ははは、すみっ子。すっかりブチャを気に入ったみたいだね。でもあんまり仲良くなりすぎると、あいつも結構いい歳だからまた別れがつらくなるぞー」理恵がそんな事を言って脅したが、まあゆっくりしていきなよと、ブチャとハジッコを置いて家族と買い物に出かけて行った。
「あの。ブチャ先生! 先日は貴重なアドバイス有難うございました!」
「先生とはずいぶん出世させてくれた様じゃが……わしはそんなにお主の役にたったか?」
「はい! 人間としての適切なアドバイスもそうですが、私の悩みを聞いていただき、すごく心が軽くなりました!」
「じゃが、前にも言ったが聞く事しか出来んぞ……それにアドバイスとか言っても、単にニャン生経験が長いだけじゃ」
「ああ、そんなご謙遜を。私もワン生経験は、先生とはさほど変わらないのですが、そんなに鋭く人間を観察出来ていなくて……これからもアドバイス宜しくお願い致します!」
「まあ好きにしニャさい。それで今日も溜まった鬱憤を語りにきたのじゃろ? 聞いてやるから話して見ろ」
そしてハジッコは、前回踏み込めなかった詳細までをブチャに話した。
「ニャるほどのう。その希来里という人間は、悪い奴ではないが的外れか……仕方ないのではニャいか? 所詮人間などに、我らの様にファンタジーでスピリチュアルな世界は理解出来まい。それよりも気にニャったのじゃが……お主、その虎と希来里の関係をそのまま認めてしまっていいのか?」
「はい? とおっしゃいますと?」ハジッコが怪訝そうな顔をする。
「いや。その、お主の飼い主でその身体の持ち主の澄子は、虎が好きニャのじゃろう? このまま虎と希来里の中が進展してしまってから、澄子に身体を返した時、すでに自分の想いが遂げられニャいと分かった澄子は嘆かニャいかのう」
「ああ、そうなのですか!? すいません。私もそうした惚れた脹れたの所にめっぽう弱くて……自分自身、子犬の際に不妊手術を施されていまして色恋事はとんと……」
「ああ、すまん。嫌な事を思い出させたかの?」
「いいえそれは全く……ですが先生。それでは私はどうすればよいのでしょうか?」
「いや。露骨に希来里の恋路を邪魔しては馬に蹴られてしまう。正々堂々と、人間の女の魅力で虎にアタックするしかニャいのではニャいか?」
「はあ……それはいったいどうすれば」
「わしにもわからん。わしも長く生きたがほとんど家猫で、色恋事に縁はニャかったのでな。まあテレビの昼ドラという奴はよく見ていたが……」
「たっだいまー」そんな話をしていたら理恵が帰ってきた。
「すみっ子、どう。ブチャとたくさんお話出来た?」
「ああ、有難う理恵。お陰様でストレスが解消したみたい。ブチャ先生もありがとうね」
「ブチャ先生? はは、ブチャよ。お前ついに、すみっ子の心の師になったか。でも……それなら丁度いいかな」
「丁度いいって、何が?」
「あのね。すみっ子にお願いがあるんだけど……今度のゴールデンウィークの間、ブチャ預かってくれないかな?」
「えっ!? それは構わないけど。どうして?」
「今、買い物行きがてら両親と話してたんだけど、二人でサイパンにゴルフしに行く計画立ててんのよ。それで私も行くかって聞かれたんだけど、ブチャ置いてけないしって言ったら、ペットホテルでいいじゃないってさ。ああ、それならすみっ子に預かってもらってもいいかなって思ったんだ」
「ああ。そういう事なら大歓迎だよ。ブチャ先生もいいよね?」
「にゃーーー!」
「いいってさ」
「ははは。それじゃ決まりだね。お父さんに伝えて来る」
そう言って理恵は下に降りていった。
◇◇◇
ハジッコがいなくなり、二人ともモフモフ不足がひどかった事もあったのか、ブチャ先生を預かる件は、お父さんとおばあちゃんも二つ返事で了解してくれた。
連休の前日、虎兄の車で理恵の家に行き、ブチャ先生をお迎えした。
(これが虎か。いい男じゃの)
ブチャ先生がそう言うが、もちろん虎兄には、ニャーニャーとしか聞こえない。
車はそのうち九重家に到着した。
「それじゃ俺はこれで……ああスミ。あさって希来里が、また調査報告にくるってさ。お前、家にいるよな?」虎兄が、別れ際にスマホを見ながらそう言った。
「うん。ブチャ先生もいるし、どこにもいかないよ」ハジッコがそう答えた。
「先生。狭い家だけどゆっくりして下さいね」そういいながらブチャ先生を家の中に案内したが、早速おばあちゃんが触りに来た。
「あらあら、可愛いねー。ぷよぷよだねー」
猫はお腹を触られるのが嫌なはずだが、ブチャ先生は我慢してくれている様だ。
やがてお父さんも帰ってきて、おばあちゃんと同じ様にブチャ先生のお腹を撫でていた。いやそれ、私だったらうれしいんだけど……ハジッコはそう思いながら、我慢してくれているブチャに感謝した。
夕食を終え、ブチャ先生といっしょにお風呂に入ったハジッコは、浴衣姿でブチャと縁側で涼んでいた。今日は日中かなり気温が上がったためか、まだちょっと蒸し暑く、縁側が心地よい。
「いい家ではニャいか。庭も広いし風通しもいい」
ブチャ先生も気に入ってくれた様だ。
「でしょ? それでその垣根の向こうが虎之助さんの家なんですよ」
「ニャんと! それではいつでも夜這いに行けるではニャいか!」
「そんな先生! 夜這いだなんて……そんなはしたない事はしません!」
「いや、犬ならするじゃろ?」
「だから。今は犬じゃありません!」
その時、二人の眼の前を、ひらひらと黒いものが通り過ぎた。
「アゲハ蝶?」ハジッコが気付いた。
「うむ。カラスアゲハじゃのう。まだこの時期に珍しいが……そう言えばこの前も……」
「この前も? 何かあったのですか?」
「いや、何でもニャい。ただの偶然じゃろう」
そして夜も更け、ハジッコはブチャ先生といっしょの布団に入って休んだ。
◇◇◇
二日後の午後。希来里がやってきた。お父さんとおばあちゃんは千葉のおじさんの家に用があって出かけていたが、虎兄は日中バイトだけど三時には終わるとの事で、そしたら顔出してくれると言っていた。
「あれ、スミちゃん。その猫どうしたの? えらい不細工だねぇ」
希来里がそう言うと、ブチャ先生が怒っている。
(ふん。これが希来里か。やっぱり気が利かなそうな感じだね。これじゃあの虎には釣り合わニャいよ!)ニャーニャー言いながらブチャ先生が悪態をついていた。
「ああ、この子はブチャっていいます。友達んちの子なんですが、連休中預かってるんです」
「そっか。それでねスミちゃん。例の件なんだけど……」
「何か分かりましたか?」ハジッコがテーブル越しに身体を乗り出す。
すると、希来里が新聞の切り抜きをスクラップした様なもののコピーを数枚広げた。
「これは?」
「連続美少女変死事件のスクラップよ」
「連続美少女変死事件!?」ハジッコは驚いて声がうわずった。
その膝の上にいたブチャ先生も思わす顔をあげる。
「そう。もうずっと以前から続いているらしいんだけれど、毎年春に数名。美人の誉れ高い女性が原因不明の心肺停止で変死する事件が連続していて……遡れる限りでその情報を集めてみたの。どれも多分お花見の時、突然パタリといっちゃってて……まあ、スミちゃんは無事だったんだけど、なんかちょっと似てるなって思ったんだ」
いや、無事じゃなかったのよ!
のどまで出かかった言葉を飲み込んで、ハジッコが希来里に質問した。
「で、でも、そんな大事件。なんでみんな騒がないの?」
「いやー。もちろん警察は調べていると思うけど、それぞれの事件は散発的で関連性も認められず外傷もないとかで、なにかの祟りとかじゃないかって……私もこの話、都市伝説扱うサイトで見つけたんだけどね。そのコピー見てもらうと分かるけど、なにせ判っただけでも五十年位前の記録もあったし……」
新聞の切り抜きコピーに順番に目を通しながら、ハジッコは思う。
ああ、なんて恐ろしい。でも、それがもし本当にあの夜桜の仕業だったとしたら……そんな恐ろしい相手に私がかなうのだろうか。あっ! 事件って事は……もしかして、豊川さんはこの件を調べているかも! ああ。やっぱり私は豊川刑事に会わないと。そして……ああ、でもなんて言うの?
実は私がハジッコで、スミちゃんの魂が取られましたって? それはダメなのよ!
でも……そう思ってハジッコが立ち上がった時だった。
「ふうぅううううっ!!」いきなりブチャ先生が警戒音を発した。
「ありゃ。なんだあれ。うわー蝶々だね。今時期めずらしい」希来里がそう言いながら指をさした方向に、カラスアゲハが舞っており、それが庭から居間に入ってきた。
「ありゃりゃ。入ってきちゃたよ。外に出してあげないと、猫ちゃんに捕られちゃうかも」そう言いながら希来里が手で蝶を追い払おうとしたその時、ブチャ先生がいきなりその蝶々に飛び掛かった。
「あーだめだよ! 蝶々さんが死んじゃうよ」希来里がそう言った瞬間、蝶に飛び掛かったブチャ先生が、バットで撃ち返されたかのように、居間の柱にたたきつけられた。
「ブチャ先生!!」ハジッコは慌ててブチャ先生に駆け寄るが、意識が無いようだ。
「ちょっと! 何が起きたの!」希来里が慌てて立ち上がると、どこかでチーンとおりんの様な音がして、次の瞬間、周りが暗闇に包まれた。
20
お気に入りに追加
5
あなたにおすすめの小説
コボンとニャンコ
魔界の風リーテ
児童書・童話
吸血コウモリのコボンは、リンゴの森で暮らしていた。
その日常は、木枯らしの秋に倒壊し、冬が厳粛に咲き誇る。
放浪の最中、箱入りニャンコと出会ったのだ。
「お前は、バン。オレが…気まぐれに決めた」
三日月の霞が晴れるとき、黒き羽衣に火が灯る。
そばにはいつも、夜空と暦十二神。
『コボンの愛称以外のなにかを探して……』
眠りの先には、イルカのエクアルが待っていた。
残酷で美しい自然を描いた、物悲しくも心温まる物語。
※縦書き推奨
アルファポリス、ノベルデイズにて掲載
【文章が長く、読みにくいので、修正します】(2/23)
【話を分割。文字数、表現などを整えました】(2/24)
【規定数を超えたので、長編に変更。20話前後で完結予定】(2/25)
【描写を追加、変更。整えました】(2/26)
筆者の体調を破壊()3/
今、この瞬間を走りゆく
佐々森りろ
児童書・童話
【第2回きずな児童書大賞 奨励賞】
皆様読んでくださり、応援、投票ありがとうございました!
小学校五年生の涼暮ミナは、父の知り合いの詩人・松風洋さんの住む東北に夏休みを利用して東京からやってきた。同い年の洋さんの孫のキカと、その友達ハヅキとアオイと仲良くなる。洋さんが初めて書いた物語を読ませてもらったミナは、みんなでその小説の通りに街を巡り、その中でそれぞれが抱いている見えない未来への不安や、過去の悲しみ、現実の自分と向き合っていく。
「時あかり、青嵐が吹いたら、一気に走り出せ」
合言葉を言いながら、もう使われていない古い鉄橋の上を走り抜ける覚悟を決めるが──
ひと夏の冒険ファンタジー
【完】ノラ・ジョイ シリーズ
丹斗大巴
児童書・童話
✴* ✴* 母の教えを励みに健気に頑張る女の子の成長と恋の物語 ✴* ✴*
▶【シリーズ1】ノラ・ジョイのむげんのいずみ ~みなしごノラの母の教えと盗賊のおかしらイサイアスの知られざる正体~ 母を亡くしてみなしごになったノラ。職探しの果てに、なんと盗賊団に入ることに! 非道な盗賊のお頭イサイアスの元、母の教えを励みに働くノラ。あるとき、イサイアスの正体が発覚! 「え~っ、イサイアスって、王子だったの!?」いつからか互いに惹かれあっていた二人の運命は……? 母の教えを信じ続けた少女が最後に幸せをつかむシンデレラ&サクセスストーリー
▶【シリーズ2】ノラ・ジョイの白獣の末裔 お互いの正体が明らかになり、再会したノラとイサイアス。ノラは令嬢として相応しい教育を受けるために学校へ通うことに。その道中でトラブルに巻き込まれて失踪してしまう。慌てて後を追うイサイアスの前に現れたのは、なんと、ノラにうりふたつの辺境の民の少女。はてさて、この少女はノラなのかそれとも別人なのか……!?
✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴* ✴*
とじこめラビリンス
トキワオレンジ
児童書・童話
【東宝×アルファポリス第10回絵本・児童書大賞 優秀賞受賞】
太郎、麻衣子、章純、希未の仲良し4人組。
いつものように公園で遊んでいたら、飼い犬のロロが逃げてしまった。
ロロが迷い込んだのは、使われなくなった古い美術館の建物。ロロを追って、半開きの搬入口から侵入したら、シャッターが締まり閉じ込められてしまった。
ここから外に出るためには、ゲームをクリアしなければならない――
お弁当ミュージカル
燦一郎
児童書・童話
学校の行事で六年生の「ぼく」は一年生のユウトとペアで遠足にでかける。
ぼくはお弁当を作ってくれる人がいないのでコンビニ弁当。
ユウトはおかずの種類が豊富な豪華な弁当。
ユウトの前でコンビニ弁当を開きたくなくて、お腹が痛いといって寝てしまう。
夢の中で見たのはお弁当ミュージカル。
弁当の惣菜が歌をうたったり、踊ったりする。
ぼくはそのミュージカルを見て、お弁当への感謝の気持ちを持つ。
♪ぼくの母さん生きている
ぼくが優しい気持ちを持ったとき
そこに母さんいるんだよ
お店の弁当に優しさを
ユウトの弁当に優しさを
ぼくは心に 誓います♪
そうして、女の子は人形へ戻ってしまいました。
桗梛葉 (たなは)
児童書・童話
神様がある日人形を作りました。
それは女の子の人形で、あまりに上手にできていたので神様はその人形に命を与える事にしました。
でも笑わないその子はやっぱりお人形だと言われました。
そこで神様は心に1つの袋をあげたのです。
守護霊のお仕事なんて出来ません!
柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。
死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。
そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。
助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。
・守護霊代行の仕事を手伝うか。
・死亡手続きを進められるか。
究極の選択を迫られた未蘭。
守護霊代行の仕事を引き受けることに。
人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。
「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」
話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎
ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

迷宮階段
西羽咲 花月
児童書・童話
その学校にはある噂がある
「この学校は三階建てでしょう? だけど、屋上に出るための階段がある。そこに、放課後の四時四十四分に行くの。階段の、下から四段目に立って『誰々を、誰々に交換』って口に出して言うの。そうすれば翌日、相手が本当に交換されてるんだって!」
そんな噂を聞いた主人公は自分の人生を変えるために階段へ向かう
そして待ち受けていたのは恐怖だった!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる