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後日談:エルルゥのツェルラント通信
第6話 ボディーガードの事
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学園祭まであと一週間。
灯は、エルルゥ、夏冬らとショーの衣装の最終確認を終え、駅から家への帰宅途中、誰かに付けられているような気がした。
(また、ヤバいファンかしら……)
このまま尾行されて家バレするのも嫌だし、途中で襲われるのも嫌なので、一旦駅まで引き返した。おばさんに連絡してみると、特に異変はなさそうだが、今日はおじさんが出張でいないため、怖いから早めに帰ってきてとの事だった。
交番の前に立っていたら、つけられている気配はなくなったので、タクシーでわざと遠回りをして帰った。おかげですっかり遅くなってしまった。
家の玄関を開けたが、中は真っ暗だ。
(おばさん、もう寝ちゃったかな……)
そう思いながら、エルルゥと居間に入り、電気をつけた瞬間だった。
陰から人影が飛び出し、灯とエルルゥは羽交い絞めにされ、口をふさがれた。
「あー、騒がないでね。ぼくらエルルゥちゃんの信者だから……。
抵抗しなければ何もしないよん」二人組の覆面をかぶった男がそう言った。
(くそ、こいつらストーカーか!
ダメだ、動けない……おばさんは大丈夫かしら……)
灯は何とか抵抗しようとするが、手足を縛られ口も塞がれていて何も出来ない。
エルルゥも手足を縛られ、口にガムテープを張られてしまっている。
「おい、まず耳、耳!」
そういって男たちがエルルゥの耳を舐《ねぶ》りだす。
「んー! んー!」
エルルゥも体をよじりながら必死の抵抗を試みるが、まったく効果がない。
「すげー、本当に本物みたいだ。そんじゃ次はしっぽね!」
そう言ってエルルゥはうつ伏せにされ、履いていたジャージを脱がされてしまった。中に隠してあったエルルゥの綺麗なしっぽと純白のショーツが丸見えになる。
「おー! この生え際とかどうなってんだ? ほんとに生えてるみたいだぜ……」
「おいー、そんじゃ次はこれだよなー」
「そうだよなー」
男たちはそう言って、エルルゥのショーツに手をかける。
(ああ、ダメー! 誰か助けて! 雄太ー!)
その時、玄関から誰かが居間に飛び込んできた。
えっ、雄太? 一瞬、灯にはそう見えた。
その男はすかさず暴漢たちにローキックを入れ、賊の男たちは壁際に吹っ飛んだ。
飛び込んできた男は容赦なく二人の男を殴打し、やがて二人とも気絶した様だった。
「大丈夫ですか?」
助けれくれた男が、灯とエルルゥの拘束を解いてくれた。
背格好は似ていたが、よく見ると雄太とは似ても似つかない別人だった……。
というより、この人日本人じゃないよね?
あっ、もしかして前に中将がメールくれた人?
それはそれでヤバいじゃん。灯は警戒体勢をとった。
「怪しいものではありません。僕はジョージ・アンダーソン。
ミハエル・アンダーソンの息子で、グレゴリーの弟です」
あっ、中将さんのお身内……ホっとして、灯はそこに座り込んでしまった。
おばさんは、お風呂場で拘束されていたが、怪我もなく無事だった。
暴漢たちはグルグル巻きにしているので、気がついても言葉も出せないだろう。
「どうします? 警察に突き出しますか?」ジョージさんが灯に尋ねる。
「いえー、警察は私も関わりたくなくて……」
「そうですよね。それじゃ‥‥‥」
ジョージさんは、暴漢二人の免許証を探し出し、顔写真も撮影した。
もちろん二人のスマホは没収だ。さっき、さんざんエルルゥ撮っていたし……。
そして、水をぶっかけて暴漢を起こし、今後、ここに近づいたら社会的に抹殺するぞと脅して、家の外に叩き出した。
「以前、灯さんに父がメールしたと思うのですが、モリソン・スタンフォードが日本に渡ったとの情報が入ったのです。彼があなた達に接触することを恐れ、父は職権を乱用して私をキャンプ座間からここへ、あなた達の護衛として派遣したのです。
当面、離れて監視させていただくつもりだったのですが、様子がおかしい様だったので家に踏み込ませていただきました」
あの時、駅からついてきたのはジョージさんだったのか……。
灯はあの暴漢が、エルルゥのファンがストーカー化したものだと説明した。
「本当に助かりました。ジョージさんがいなければ私達どうなっていたか……。
それにしてもそのスタンフォードって奴、そんなにヤバイんですか?」
「もともと、モー博士と同じ研究室にいた男で、あなた方に接触して、あちらの世界に行こうとしています。モー博士は、もうお亡くなりになっていると軍から伝えたのですが、信じません。彼の精神は病んでしまっている様なのです。
今、父が彼の別件容疑を捏造して、軍にも探させていますが、彼が捕まるまで、よろしければ私をそばに置いていただけませんか?
そのほうが私も任務を全うしやすいのです」
灯が、おばさんから今の状況をおじさんに伝えてもらったところ、おじさんからは「米軍さんが護衛してくれるならむしろ大歓迎だ」といった趣旨で返答が来た。
たしかに、そのスタンフォードってのもあるけど、ストーカーがここまでやるかという状況でもあり、灯はジョージの申し出を有難く受けることとし、当分の間、ジョージは柏木家の居候となる事になった。
◇◇◇
「えー! 灯マネ。こんなイケメンボディガード、どこで雇ったんですか?」
夏冬が、興味深々な目つきで、ジョージさんを舐めるようにガン見している。
皆には、暴漢騒ぎの事を伝え、家の人がボディガードを雇ってくれたという建付けで説明した。こうしておけば、ジョージさんが私達といつも一緒にいても、誰も不審がらないだろう。
ジョージさんは、確かにイケメンで物腰も柔らかく、服飾科のメンバーも羨望のまなざしで見ていることが多い。雄太より五歳年上なのだが、息子が帰ってきたみたいでうれしいのか、おじさんが、昨夜晩酌に付き合わせていた。
灯は、エルルゥ、夏冬らとショーの衣装の最終確認を終え、駅から家への帰宅途中、誰かに付けられているような気がした。
(また、ヤバいファンかしら……)
このまま尾行されて家バレするのも嫌だし、途中で襲われるのも嫌なので、一旦駅まで引き返した。おばさんに連絡してみると、特に異変はなさそうだが、今日はおじさんが出張でいないため、怖いから早めに帰ってきてとの事だった。
交番の前に立っていたら、つけられている気配はなくなったので、タクシーでわざと遠回りをして帰った。おかげですっかり遅くなってしまった。
家の玄関を開けたが、中は真っ暗だ。
(おばさん、もう寝ちゃったかな……)
そう思いながら、エルルゥと居間に入り、電気をつけた瞬間だった。
陰から人影が飛び出し、灯とエルルゥは羽交い絞めにされ、口をふさがれた。
「あー、騒がないでね。ぼくらエルルゥちゃんの信者だから……。
抵抗しなければ何もしないよん」二人組の覆面をかぶった男がそう言った。
(くそ、こいつらストーカーか!
ダメだ、動けない……おばさんは大丈夫かしら……)
灯は何とか抵抗しようとするが、手足を縛られ口も塞がれていて何も出来ない。
エルルゥも手足を縛られ、口にガムテープを張られてしまっている。
「おい、まず耳、耳!」
そういって男たちがエルルゥの耳を舐《ねぶ》りだす。
「んー! んー!」
エルルゥも体をよじりながら必死の抵抗を試みるが、まったく効果がない。
「すげー、本当に本物みたいだ。そんじゃ次はしっぽね!」
そう言ってエルルゥはうつ伏せにされ、履いていたジャージを脱がされてしまった。中に隠してあったエルルゥの綺麗なしっぽと純白のショーツが丸見えになる。
「おー! この生え際とかどうなってんだ? ほんとに生えてるみたいだぜ……」
「おいー、そんじゃ次はこれだよなー」
「そうだよなー」
男たちはそう言って、エルルゥのショーツに手をかける。
(ああ、ダメー! 誰か助けて! 雄太ー!)
その時、玄関から誰かが居間に飛び込んできた。
えっ、雄太? 一瞬、灯にはそう見えた。
その男はすかさず暴漢たちにローキックを入れ、賊の男たちは壁際に吹っ飛んだ。
飛び込んできた男は容赦なく二人の男を殴打し、やがて二人とも気絶した様だった。
「大丈夫ですか?」
助けれくれた男が、灯とエルルゥの拘束を解いてくれた。
背格好は似ていたが、よく見ると雄太とは似ても似つかない別人だった……。
というより、この人日本人じゃないよね?
あっ、もしかして前に中将がメールくれた人?
それはそれでヤバいじゃん。灯は警戒体勢をとった。
「怪しいものではありません。僕はジョージ・アンダーソン。
ミハエル・アンダーソンの息子で、グレゴリーの弟です」
あっ、中将さんのお身内……ホっとして、灯はそこに座り込んでしまった。
おばさんは、お風呂場で拘束されていたが、怪我もなく無事だった。
暴漢たちはグルグル巻きにしているので、気がついても言葉も出せないだろう。
「どうします? 警察に突き出しますか?」ジョージさんが灯に尋ねる。
「いえー、警察は私も関わりたくなくて……」
「そうですよね。それじゃ‥‥‥」
ジョージさんは、暴漢二人の免許証を探し出し、顔写真も撮影した。
もちろん二人のスマホは没収だ。さっき、さんざんエルルゥ撮っていたし……。
そして、水をぶっかけて暴漢を起こし、今後、ここに近づいたら社会的に抹殺するぞと脅して、家の外に叩き出した。
「以前、灯さんに父がメールしたと思うのですが、モリソン・スタンフォードが日本に渡ったとの情報が入ったのです。彼があなた達に接触することを恐れ、父は職権を乱用して私をキャンプ座間からここへ、あなた達の護衛として派遣したのです。
当面、離れて監視させていただくつもりだったのですが、様子がおかしい様だったので家に踏み込ませていただきました」
あの時、駅からついてきたのはジョージさんだったのか……。
灯はあの暴漢が、エルルゥのファンがストーカー化したものだと説明した。
「本当に助かりました。ジョージさんがいなければ私達どうなっていたか……。
それにしてもそのスタンフォードって奴、そんなにヤバイんですか?」
「もともと、モー博士と同じ研究室にいた男で、あなた方に接触して、あちらの世界に行こうとしています。モー博士は、もうお亡くなりになっていると軍から伝えたのですが、信じません。彼の精神は病んでしまっている様なのです。
今、父が彼の別件容疑を捏造して、軍にも探させていますが、彼が捕まるまで、よろしければ私をそばに置いていただけませんか?
そのほうが私も任務を全うしやすいのです」
灯が、おばさんから今の状況をおじさんに伝えてもらったところ、おじさんからは「米軍さんが護衛してくれるならむしろ大歓迎だ」といった趣旨で返答が来た。
たしかに、そのスタンフォードってのもあるけど、ストーカーがここまでやるかという状況でもあり、灯はジョージの申し出を有難く受けることとし、当分の間、ジョージは柏木家の居候となる事になった。
◇◇◇
「えー! 灯マネ。こんなイケメンボディガード、どこで雇ったんですか?」
夏冬が、興味深々な目つきで、ジョージさんを舐めるようにガン見している。
皆には、暴漢騒ぎの事を伝え、家の人がボディガードを雇ってくれたという建付けで説明した。こうしておけば、ジョージさんが私達といつも一緒にいても、誰も不審がらないだろう。
ジョージさんは、確かにイケメンで物腰も柔らかく、服飾科のメンバーも羨望のまなざしで見ていることが多い。雄太より五歳年上なのだが、息子が帰ってきたみたいでうれしいのか、おじさんが、昨夜晩酌に付き合わせていた。
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