【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

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後日談:エルルゥのツェルラント通信 

第1話 渋谷で出会った事

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「着いたー! はっらじゅくー」

 エルルゥは大はしゃぎだ。
 途中、自動改札で引っかかったり、電車を大きなヘビだと恐れおののいたり、紆余曲折あったが、なんとか連れて来られた。

 灯《ともり》とエルルゥが、異世界からこの世界に来て、三か月が経過した。
 どうやらあっちとこっちでは季節が三か月くらいずれているようで、あっちで真夏にゲートをくぐったら、こっちではまだ春だった。

 それから約三か月……。
 雄太の家にお世話になりながらエルルゥをこっちの世界に慣れさせたのだが、肝心のデザイナーの勉強をどうしたものかと考えあぐね、気晴らしと東京見物も兼ねて、灯はエルルゥを連れ出し原宿に来たのだ。

(エルルゥはこっちの戸籍ないし……。
 普通の学校とかは無理でも、どっかの店で修行出来たりしないかしら……)
 そんな思いもちょっとある。

 東京は七月の中旬を迎え、夏休みに入った学生などで、竹下通りはすごい人だかりだ。それでも、見るもの見るものすべてが珍しく、エルルゥは眼をキラキラさせながら、人混みを掻き分けてあちこちを見て回っている。
 
 家を出る時、雄太のお母さんが、エルルゥの耳が隠れるようにと、おおきな帽子を貸してくれたのだが、エルルゥの着ているワンピースが明らかに異質だ。

「ちょっとエルルゥ、あんたそんな恰好でいくの?」
「えっ、そんな恰好って……これはトクラ村の正装だよ!」

 なんだかアイヌの民族衣装みたいな感じで、見慣れない幾何学文様が入っており、はっきりいって帽子にまったく似合っていない。
 しかもこの子、膝上十五センチくらいが好きな様で、裾部分は明らかに自分で直したのではないかという感じでちょっといびつになっている。
 だが、せっかくファッションの聖地にいくのなら正装で行くと言って聞かないので、まあ、あそこなら結構突拍子もない恰好の人もかなりいるし、大丈夫かと思い直してそのまま連れてきたのだが……。
 よかった。あまり周りの人達は気にしていないようだ。さすが原宿!

 あたりを一通り見て回って、エルルゥもさすがに人混みに疲れたようだったので、そのまま明治神宮に立ち寄った。

「この小石、歩きにくい」
 玉砂利に文句をいっているので、脇の舗装しているところを歩かせた。
「あっ、ともり、ともり! あの衣装、すごく可愛い! あの赤いのすごくいい!」
「あー、あれは巫女さんだね。
 ここは神様を祭っていて、あの子たちはその神様にお仕えしているんだよ。
 赤いのは袴だね」
「わたしもあの衣装ほしい!」
「はは、年末になったら、どこかの神社でバイトでもさがそうか……」

 その後、お昼を食べ、せっかくなので山手線沿いに歩いて、渋谷に出た。
 さすがのエルルゥも渋谷交差点の人の多さには驚いたようで、人をよけて道路を渡るだけでヘトヘトになった様だ。
 まあ、こちらの夏はあちらに比べ気温も湿度もかなり高いし……。
 仕方ないのでハチ公のところでちょっと休憩にした。

 ◇◇◇

美冬みふゆ、美冬。ちょっとあれ見て……あのハチ公の脇!」
「んー、なんかいい人いたー? ん? 何あれ。ダッサ……アイヌの衣装? 
 それに対して帽子はおしゃれなんだけど、かえってミスマッチで……。
 すっごい目を引くね!」
「じゃあ、今日の配信は、あの人にインタビューしてみようか」
 そう言われて、美冬と呼ばれた女の子が、ハンドカメラのスイッチを入れた。

「あのー、すいません。ちょっといいですかー」

 美冬がカメラを構える横で、もう一人の女の子がエルルゥに声をかけた。
「何よ! 宗教の勧誘?」灯が、最大警戒でエルルゥとカメラの間に割って入る。
「あっ、違います! 
 私達、夏冬コン美《び》っていうチューバーで、今、渋谷で目立つ子に突撃インタビューするって生配信やってるんです。
 ちょっとお話を……」
「生配信? ちょっと、そんな……いい訳ないでしょ! 
 何勝手に人の顔Liveで撮ってんのよ!」灯が二人に喰ってかかる。

(冗談じゃない! エルルゥが目立っちゃう!)

 灯が二人と押し問答しているその時、一陣のビル風が渋谷交差点一体を吹き抜け、エルルゥの帽子を飛ばした。
 焦ったエルルゥが帽子を取ろうとジャンプした瞬間、ワンピースの裾も持ち上がって、ぱんつが丸見えになった。

「あっ、やば! ぱんつ写っちゃった……」
 美冬が絶句した。

 ◇◇◇

「申し訳ありませーーーん!」
 道玄坂を上がったところのファミレスの一角で、さっきのチューバの二人が、灯とエルルゥに平謝りしている。

「まったく、何してくれてんのよ。
 それで、さっきの動画は消してくれるんでしょうね?」
「あー。それはもちろん……放送事故ですし……」
 そういいながら、スマホを取り出した美冬が素っ頓狂な声を上げた。

「げっ……再生が十万超えてる……」

「なんですってぇーーーーー!」
 灯が怒りを抑えきれず、思わず美冬のスマホを取り上げ、深呼吸してから動画を再生した。

「…………」
(なんてこった。ぱんつだけじゃなく、耳までしっかり写ってるじゃん……)
 コメントにも、耳がリアルすぎとか上がってるし……。

「ねえねえ、灯。なにをそんなに怒ってるの?」
 エルルゥが不思議そうに聞いてくる。
「……ふっ、たった今あんたのぱんつが全世界に公開されているのよ……。
 とにかく、すぐ消しなさい!」灯が二人に怒鳴りつける。
「は、はいっ! ですが、こうなっちゃうと、もうミラーとかにも上がっちゃってて……この世から消すのは不可能かと……」
 そう言われて、灯は頭を抱えて無言のまま座り込んだ。

「あのー。私、佐藤夏美といいます。そんでこっちは片桐美冬。
 二人で『夏冬コン美』って、突撃系チューバーやっているんですが……。
 こんなこと言えた義理ではないんですが……これからもいっしょにチューバー活動していただけませんか? 私たちの配信。千超えた事無いんですよ……」
「はぁ?」
 まったく最近の若い奴はずうずうしい……まあ、私もまだ若いんだけど。

「私たち、日の丸短大の服飾科の一年生で、ファッションの勉強兼ねて渋谷や原宿の奇抜な恰好の人に声かけているんですけど、こちらの外人さんのは特に目を引いてて
……なんかいろんなことが出来そうな気がするんですけど、ダメですか?」

 なるほど、服飾科の学生か……もしかしたら、これは使えるかも? 
 それにネットって、情報出さない様にするとかえって変に勘繰られるし、小出しにして情報をコントロールした方がいいかも……灯の思考はまとまった。

「あんた達の言い分は判ったわ。
 でも、保護者にも相談してみるから時間くれないかな」
「それはもちろん」
 灯は二人と連絡先を交換した。
 どっちにしろこの二人を野放しには出来ないだろう。

「私は、佐倉灯。こっちはエルルゥ。
 まあこれは芸名ということで……本人情報は極秘!」
「はい、心得ております。学校の友達にもそう言う設定の奴いますし。
 エルルゥさんって獣人コスですよね。
 耳もしっぽもすごくリアルで、感動しちゃいました!」

 設定? そうか、それで行くか……灯はちょっと安堵した。
「そうよ。エルルゥはツェルラント王国のトクラ村から来た、狐型獣人なのよ」
「戸倉村って、群馬県の尾瀬戸倉? あ、でも架空設定か!」
(そこは片品村でしょ……)灯は突っ込もうと思ってやめた。

「トクラ村は、すっごい田舎! このワンピもそこの民族衣装なの」
 エルルゥが嬉しそうに説明する。
「うわー、エルルゥさん、設定凝ってる!」
「それでさ、ものは相談なんだけどさ。エルルゥもファッションの勉強がしたいんだけど、ワケアリで学校いけないのよ。
 あんた達の教材とか、たまに貸してもらえると助かるんだけど」
 灯が小声で二人に相談した。

「えー、そんなことなら、全然OKです。
 教科書でも教材でも出来る事は協力します。
 これでギブアンドテイク成立ですね!」


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