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第一章 本編
第31話 写真
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俺とあっちゃんが衝突事故を起こした翌日。
パナレールさんとの約束で、スマホの動作試験を行うため、プルーンと王立博物館を訪れた。事故だと理解はしてくれたようだが、正直、プルーンはまだかなり不機嫌だ。機嫌を直してもらうためにも、俺のスマホが動いたらいいなと思う。
テスト現場には、パナレールさん以外に、六名のエルフの学芸員がいた。
俺はシュリンクを破って乾電池を取り出し充電器にセット、それを博物館が所蔵していたスマホに繋いだ。おっ、充電マークが出た。このスマホ生きてるぞ。
そして電源スイッチをいれると、しばらくして……。
やった! 待ち受けが出てきた。
そこには、母親と子供と思われる人間が写っていた。このスマホの持ち主の家族だろうか。写っている人の後ろに、よく見ると漢字だけのポスターが貼ってあり、中国系の人のものだろうと思われる。
そこに映し出された映像に、学芸員達も感嘆の声を上げていた。
「プルーン。これが写真だよ。こうして、自分の大切な人の画像をスマホにしまっておけるんだ」
「へー。絵とかじゃないんだ。すごいね」
残念なことに、メイン画面に行こうとしたらパスワードを要求された。数字四桁式なので、頑張って一万通り試せば突破できるかもしれないが、時間も電池も足りないだろう。それをパナレールさんに説明したら、後日、手分けしてパスワード突破にトライしてみるかもしれないと言っていた。
せっかく学芸員さん達にも集まってもらっているのに、これだけでは申し訳ない。
続いて、俺のスマホを試すことになった。
こちらの世界に来た時は動いていたので、壊れていないだろうとは思う。
充電器を接続し、電源を入れた。そして表示された待受画面は……
ああ、灯だ! 懐かしいな。
あっ、いかん。眼頭が熱くなってきた……。
「ねえ、ゆうた。この人は誰?」プルーンが尋ねる。
「ああ、これは灯だよ。前に星さんが言ってたろ。星さんの娘の灯!」
「あー、顔は似てないけど、性格が私に似てるって言っていた人だね。確かに私には似てないわね。うん。でも、あかりママの面影もちゃんとある」
自分のスマホなので認証は問題ない。メイン画面に入り、その機能の概略を学芸員さん達に説明していく。
俺は、マイフォルダから何枚かの写真をプルーンに見せてやった。
「これは、俺が惨敗した最後の剣道大会のやつだな」
「なんか、ゆうた変な恰好してる。それにこの、隣にいるともりもスカート短くて、お尻見えそうな恰好だね」
「ああ、これは道着の上に胴と小手を付けているんだ。俺達の世界の剣道は、こんな防具を付けて試合をするのさ。灯の格好は、チアリーダーって言って、いわゆる応援団だな」
「ふーん。そうなんだ……」
これ、明日上京する星さんにも見せてやりたいな。
「ふむ、ゆうたさんの世界では、これを一人一台持っていて、それでお互いがどこにいても会話が出来ると……魔法よりすごいじゃないですか! 我々は人間を馬鹿にしがちですが、なんともすごい技術を持っていたんですね」
パナレールさんは興奮しっぱなしだ。
「そうだ、プルーン。お前の写真を一枚撮らせてくれないか?」
「え、いいの?」
そして、俺はプルーン一人のショットと、学芸員さん達といっしょに並んだショットを撮影した。
「うわー。私、こんな顔してんの?」撮った写真を見て、プルーンがぼやいている。
この世界にも鏡はあるが、金属を磨いたもので、俺達の世界のような明るい鏡はない。こんなにはっきり自分の顔をみたのは初めてなのかもしれないな。
でもよかった。少しは機嫌が直ったようだ。
その後、実際に動画を録って見せたり、いろいろな機能について、原理を俺が知っている範囲で細かくみんなに説明したりして、すっかり夕方になったところで博物館を出た。その間中、ずっと充電させてもらえたので、明日、星さんとメロンが来た時も、灯の写真を見せてやれるだろう。
懐かしいものも見られて、プルーンも少し機嫌を直してくれて、明日はいよいよ星さんとメロンが王都に着く……俺は、ちょっとうれしくなって、足取り軽く家路についていたが、もう少しで家だと言う所で、プルーンが立ち止まって俺に話掛けた。
「ねえ、ゆうた。一つ聞いていい?」
「なんだ? 何が聞きたい?」
「あんたのスマホの写真。なんでともりなの?」
「? 何でって、灯は星さんの子どもで……?」
「おかしいよ……なんであかりママじゃなくてともりなの! しかも最初の画面だけじゃなくて中にあったのも、ともりばっかり……あかりママの写真は一つもなかったじゃない! それに、私、ともりってもっとちっちゃい子だと思ってたのに……どう見ても私と同じくらいじゃない!
ともりはあなたとあかりママの子供じゃないの?」
「あ、あっ……」
核心をついたプルーンの質問に、俺は動揺して言葉を発することが出来ない。
「何よ。だんまり? それじゃ、私が言ってあげるわ。
あっちの世界であんたとつがいだったのは、ともりなんじゃないの!?」
俺は、足元がガラガラと崩れていくような気がした。
迂闊といえば迂闊なのだが、いままでずっと秘密にしていたことが、まずい形で露見した。
だが、こうなっては、もうちゃんと説明するしかないだろう。そう腹を決め、俺の本当のつがいは灯だが、灯の母親である星さんとこの世界に漂着した俺は、ゴーテックさんのアドバイスもあり、彼女とつがいだという事にして今まで暮らしてきたと、プルーンに説明した。
「すまん。プルーン。いつか本当のことを話そうとは思っていたんだが、いいタイミングがなくて……」
「言い訳はやめなさいよ! 結局、最初から私たちをだましていたんじゃない!
私もイメンジも、メロンや村の人たちも……何それ、つがいの母親と淫行ですって
……なんて汚らわしい。それを私ったら、ちゃっとつがって思い出作ってこいって
……とんだ道化だわ!」
プルーンの怒りはすさまじく、とりつく島もない。
「どうするのよ、これ! 明日、二人が来ちゃうじゃない……私、どんな顔してあかりママに会えばいいの! もうやだ……なんでこんな事になっちゃったんだろ……。
……いいわよ。私、もう帰る……あんたは帰ってこなくていいから!」
そう言ってプルーンは、泣きながら俺を置いて駆け出していった。
家の近くの公園のベンチに腰掛け、今までのことを振り返る。
俺はなんて浅はかだったんだろ。結局、最悪の形でプルーンを傷つけてしまった。
訳知り顔で、何が獣人は一夫多妻で人間は一夫一婦制だ。最初からそれを不道徳に無視してたのは自分じゃないか。
俺は、最初から……スタート時点からプルーンを傷つけ続けていたんだ。そう思ったら無性に情けなく、切なく……このまま彼女の前から消えてしまいたい位だが、そうもいかない。
多分、プルーンにはこのまま見放されるだろうが、明日、星さんと合流して、彼女の側には俺がいてやらないと……他に誰もいないのだから。
家には入れないし、明日は商会に二人を出迎えに行かねばならない。あまり遠くに行くこともできず、公園のベンチに寝そべっていたら俺を呼ぶ声がした。
「ゆうたさん。ここでしたか」
「あれ? 姫……じゃないあっちゃん。夜中に一人で外出は危ないですよ。
早くお戻りになって下さい」
「ですが、私もあんなプルちゃん見たことなくて、どうしていいかわからなくて……事情は大体プルちゃんに伺いました。ぷるちゃん、まじめだから……不道徳なことは納得できないんでしょうね」
「はい。おかげですっかり嫌われました。明日、星さんと合流しても、もうプルーン達とは暮らせないでしょう。なんとか二人で生きていく道を探します」
「でも時間はかかるかもしれないけど、いつか判ってくれるのではないでしょうか。
あなたとその星さんという方は、本当に絶望的な状況の中、力を合わせて乗り越えられて来たのでしょう? 本当の愛が芽生えても全然不思議じゃないですもの。むしろエルフなんかのほうが、よっぽどドロドロしていますよ……うん、そう。そう言う意味では私もぷるちゃんに嫌われてしまう可能性大なんです」
「それは、一体?」
「そうですね。後で巻き込んでしまうのも申し訳なくて、ぷるちゃんにも話していないんですが……私の亡命の理由…………わたし、兄に求婚されているんです」
「え? それって、昨日言ってた第二王子?」
「そうです。アロン兄様と私は、母親が違いますがちゃんと血の繋がった兄妹です。
アロン兄様は、なぜか幼いころから私にぞっこんで、アロン兄様のお母上が余り身分の高い方ではなく王位継承権争いに箔をつける意味もあるのでしょうが、私を妃にと望んでいます。他の姉様達は、すでに周辺の貴族の所にお輿入れ済ですしね。
今、王位継承権は第一王子のヨウモ兄様がお持ちですが、各地の領主や重臣たちには、ちょっと頼りなく思われているようで、聡明な第二王子のアロン兄様を推す人も多く、万一、今の国王であるお父様に何かあったら、内紛になりかねない状況なのです。それでアロン兄様は、あまり周囲の眼を気にされることもなく、事あるごとに、私に同衾せよと……」
「なるほど、それで第二王子のアタックが過激になってきて耐えられず逃げ出したと
……それにしても、それも俺に負けず劣らず不道徳ですよね。誰も指摘したりしないのですか?」
「そんな事をして、もしアロン兄様が将来国王になったりしたら、即お家断絶でしょうね。あの兄様は、少し変態が過ぎるというか、サドが過ぎるというか……」
お姫様の口から、そんなワードを聞くのは新鮮な感じだな。
「でも、それならなおさら、あいつに理由を明かすべきです。プルーンは絶対あなたを守ろうとしてくれますよ! 断絶されて困る家もないですし」
「そうでしょうか……そうだとうれしいな。
そうそう、夕べはあんな騒ぎだったのでゆうたさんには伝えられなかったのですが、私、ひと月後に南方のコーラル伯爵領に移ります。行ったことはないんですが、海があって綺麗なところらしいんです。ぷるちゃんにも付いてきてほしいんですが、妹さんも上京されるし、無理ですよね」
「俺の口からは何とも言えませんが、正直にお願いしてみてはどうですか?
俺もこんなざまですし、案外、妹と二人で付いていくかもしれませんよ」
「わかりました。兄のことも含め、私なりに正直にぷるちゃんに相談してみます。
あなたのことも、それとなくフォローしてみますね……あと、夕べの事ですが……やはり私は、はじめての方が、ゆうたさんでよかったと思います。ですが、魔法のせいであまりよく途中経過を覚えていないので、今度、機会があったら、またよろしくお願いしますね」
そう言って、あっちゃんは家に戻っていった。
「えー? あ、いや。光栄です。万一機会がありましたら是非!」
いや、本当に優しくて可愛らしいお姫様だ、って違うだろ。
さっき一夫一婦制の反省をしたばっかりで……まったく俺ってクズ野郎だな。
パナレールさんとの約束で、スマホの動作試験を行うため、プルーンと王立博物館を訪れた。事故だと理解はしてくれたようだが、正直、プルーンはまだかなり不機嫌だ。機嫌を直してもらうためにも、俺のスマホが動いたらいいなと思う。
テスト現場には、パナレールさん以外に、六名のエルフの学芸員がいた。
俺はシュリンクを破って乾電池を取り出し充電器にセット、それを博物館が所蔵していたスマホに繋いだ。おっ、充電マークが出た。このスマホ生きてるぞ。
そして電源スイッチをいれると、しばらくして……。
やった! 待ち受けが出てきた。
そこには、母親と子供と思われる人間が写っていた。このスマホの持ち主の家族だろうか。写っている人の後ろに、よく見ると漢字だけのポスターが貼ってあり、中国系の人のものだろうと思われる。
そこに映し出された映像に、学芸員達も感嘆の声を上げていた。
「プルーン。これが写真だよ。こうして、自分の大切な人の画像をスマホにしまっておけるんだ」
「へー。絵とかじゃないんだ。すごいね」
残念なことに、メイン画面に行こうとしたらパスワードを要求された。数字四桁式なので、頑張って一万通り試せば突破できるかもしれないが、時間も電池も足りないだろう。それをパナレールさんに説明したら、後日、手分けしてパスワード突破にトライしてみるかもしれないと言っていた。
せっかく学芸員さん達にも集まってもらっているのに、これだけでは申し訳ない。
続いて、俺のスマホを試すことになった。
こちらの世界に来た時は動いていたので、壊れていないだろうとは思う。
充電器を接続し、電源を入れた。そして表示された待受画面は……
ああ、灯だ! 懐かしいな。
あっ、いかん。眼頭が熱くなってきた……。
「ねえ、ゆうた。この人は誰?」プルーンが尋ねる。
「ああ、これは灯だよ。前に星さんが言ってたろ。星さんの娘の灯!」
「あー、顔は似てないけど、性格が私に似てるって言っていた人だね。確かに私には似てないわね。うん。でも、あかりママの面影もちゃんとある」
自分のスマホなので認証は問題ない。メイン画面に入り、その機能の概略を学芸員さん達に説明していく。
俺は、マイフォルダから何枚かの写真をプルーンに見せてやった。
「これは、俺が惨敗した最後の剣道大会のやつだな」
「なんか、ゆうた変な恰好してる。それにこの、隣にいるともりもスカート短くて、お尻見えそうな恰好だね」
「ああ、これは道着の上に胴と小手を付けているんだ。俺達の世界の剣道は、こんな防具を付けて試合をするのさ。灯の格好は、チアリーダーって言って、いわゆる応援団だな」
「ふーん。そうなんだ……」
これ、明日上京する星さんにも見せてやりたいな。
「ふむ、ゆうたさんの世界では、これを一人一台持っていて、それでお互いがどこにいても会話が出来ると……魔法よりすごいじゃないですか! 我々は人間を馬鹿にしがちですが、なんともすごい技術を持っていたんですね」
パナレールさんは興奮しっぱなしだ。
「そうだ、プルーン。お前の写真を一枚撮らせてくれないか?」
「え、いいの?」
そして、俺はプルーン一人のショットと、学芸員さん達といっしょに並んだショットを撮影した。
「うわー。私、こんな顔してんの?」撮った写真を見て、プルーンがぼやいている。
この世界にも鏡はあるが、金属を磨いたもので、俺達の世界のような明るい鏡はない。こんなにはっきり自分の顔をみたのは初めてなのかもしれないな。
でもよかった。少しは機嫌が直ったようだ。
その後、実際に動画を録って見せたり、いろいろな機能について、原理を俺が知っている範囲で細かくみんなに説明したりして、すっかり夕方になったところで博物館を出た。その間中、ずっと充電させてもらえたので、明日、星さんとメロンが来た時も、灯の写真を見せてやれるだろう。
懐かしいものも見られて、プルーンも少し機嫌を直してくれて、明日はいよいよ星さんとメロンが王都に着く……俺は、ちょっとうれしくなって、足取り軽く家路についていたが、もう少しで家だと言う所で、プルーンが立ち止まって俺に話掛けた。
「ねえ、ゆうた。一つ聞いていい?」
「なんだ? 何が聞きたい?」
「あんたのスマホの写真。なんでともりなの?」
「? 何でって、灯は星さんの子どもで……?」
「おかしいよ……なんであかりママじゃなくてともりなの! しかも最初の画面だけじゃなくて中にあったのも、ともりばっかり……あかりママの写真は一つもなかったじゃない! それに、私、ともりってもっとちっちゃい子だと思ってたのに……どう見ても私と同じくらいじゃない!
ともりはあなたとあかりママの子供じゃないの?」
「あ、あっ……」
核心をついたプルーンの質問に、俺は動揺して言葉を発することが出来ない。
「何よ。だんまり? それじゃ、私が言ってあげるわ。
あっちの世界であんたとつがいだったのは、ともりなんじゃないの!?」
俺は、足元がガラガラと崩れていくような気がした。
迂闊といえば迂闊なのだが、いままでずっと秘密にしていたことが、まずい形で露見した。
だが、こうなっては、もうちゃんと説明するしかないだろう。そう腹を決め、俺の本当のつがいは灯だが、灯の母親である星さんとこの世界に漂着した俺は、ゴーテックさんのアドバイスもあり、彼女とつがいだという事にして今まで暮らしてきたと、プルーンに説明した。
「すまん。プルーン。いつか本当のことを話そうとは思っていたんだが、いいタイミングがなくて……」
「言い訳はやめなさいよ! 結局、最初から私たちをだましていたんじゃない!
私もイメンジも、メロンや村の人たちも……何それ、つがいの母親と淫行ですって
……なんて汚らわしい。それを私ったら、ちゃっとつがって思い出作ってこいって
……とんだ道化だわ!」
プルーンの怒りはすさまじく、とりつく島もない。
「どうするのよ、これ! 明日、二人が来ちゃうじゃない……私、どんな顔してあかりママに会えばいいの! もうやだ……なんでこんな事になっちゃったんだろ……。
……いいわよ。私、もう帰る……あんたは帰ってこなくていいから!」
そう言ってプルーンは、泣きながら俺を置いて駆け出していった。
家の近くの公園のベンチに腰掛け、今までのことを振り返る。
俺はなんて浅はかだったんだろ。結局、最悪の形でプルーンを傷つけてしまった。
訳知り顔で、何が獣人は一夫多妻で人間は一夫一婦制だ。最初からそれを不道徳に無視してたのは自分じゃないか。
俺は、最初から……スタート時点からプルーンを傷つけ続けていたんだ。そう思ったら無性に情けなく、切なく……このまま彼女の前から消えてしまいたい位だが、そうもいかない。
多分、プルーンにはこのまま見放されるだろうが、明日、星さんと合流して、彼女の側には俺がいてやらないと……他に誰もいないのだから。
家には入れないし、明日は商会に二人を出迎えに行かねばならない。あまり遠くに行くこともできず、公園のベンチに寝そべっていたら俺を呼ぶ声がした。
「ゆうたさん。ここでしたか」
「あれ? 姫……じゃないあっちゃん。夜中に一人で外出は危ないですよ。
早くお戻りになって下さい」
「ですが、私もあんなプルちゃん見たことなくて、どうしていいかわからなくて……事情は大体プルちゃんに伺いました。ぷるちゃん、まじめだから……不道徳なことは納得できないんでしょうね」
「はい。おかげですっかり嫌われました。明日、星さんと合流しても、もうプルーン達とは暮らせないでしょう。なんとか二人で生きていく道を探します」
「でも時間はかかるかもしれないけど、いつか判ってくれるのではないでしょうか。
あなたとその星さんという方は、本当に絶望的な状況の中、力を合わせて乗り越えられて来たのでしょう? 本当の愛が芽生えても全然不思議じゃないですもの。むしろエルフなんかのほうが、よっぽどドロドロしていますよ……うん、そう。そう言う意味では私もぷるちゃんに嫌われてしまう可能性大なんです」
「それは、一体?」
「そうですね。後で巻き込んでしまうのも申し訳なくて、ぷるちゃんにも話していないんですが……私の亡命の理由…………わたし、兄に求婚されているんです」
「え? それって、昨日言ってた第二王子?」
「そうです。アロン兄様と私は、母親が違いますがちゃんと血の繋がった兄妹です。
アロン兄様は、なぜか幼いころから私にぞっこんで、アロン兄様のお母上が余り身分の高い方ではなく王位継承権争いに箔をつける意味もあるのでしょうが、私を妃にと望んでいます。他の姉様達は、すでに周辺の貴族の所にお輿入れ済ですしね。
今、王位継承権は第一王子のヨウモ兄様がお持ちですが、各地の領主や重臣たちには、ちょっと頼りなく思われているようで、聡明な第二王子のアロン兄様を推す人も多く、万一、今の国王であるお父様に何かあったら、内紛になりかねない状況なのです。それでアロン兄様は、あまり周囲の眼を気にされることもなく、事あるごとに、私に同衾せよと……」
「なるほど、それで第二王子のアタックが過激になってきて耐えられず逃げ出したと
……それにしても、それも俺に負けず劣らず不道徳ですよね。誰も指摘したりしないのですか?」
「そんな事をして、もしアロン兄様が将来国王になったりしたら、即お家断絶でしょうね。あの兄様は、少し変態が過ぎるというか、サドが過ぎるというか……」
お姫様の口から、そんなワードを聞くのは新鮮な感じだな。
「でも、それならなおさら、あいつに理由を明かすべきです。プルーンは絶対あなたを守ろうとしてくれますよ! 断絶されて困る家もないですし」
「そうでしょうか……そうだとうれしいな。
そうそう、夕べはあんな騒ぎだったのでゆうたさんには伝えられなかったのですが、私、ひと月後に南方のコーラル伯爵領に移ります。行ったことはないんですが、海があって綺麗なところらしいんです。ぷるちゃんにも付いてきてほしいんですが、妹さんも上京されるし、無理ですよね」
「俺の口からは何とも言えませんが、正直にお願いしてみてはどうですか?
俺もこんなざまですし、案外、妹と二人で付いていくかもしれませんよ」
「わかりました。兄のことも含め、私なりに正直にぷるちゃんに相談してみます。
あなたのことも、それとなくフォローしてみますね……あと、夕べの事ですが……やはり私は、はじめての方が、ゆうたさんでよかったと思います。ですが、魔法のせいであまりよく途中経過を覚えていないので、今度、機会があったら、またよろしくお願いしますね」
そう言って、あっちゃんは家に戻っていった。
「えー? あ、いや。光栄です。万一機会がありましたら是非!」
いや、本当に優しくて可愛らしいお姫様だ、って違うだろ。
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