【R18】異世界なら彼女の母親とラブラブでもいいよね!

SoftCareer

文字の大きさ
上 下
20 / 64
第一章 本編

第19話 山越え

しおりを挟む
 村を出発してひと月。キャラバンは草原を南に進んでいるが、道らしいはものなどとっくに無く、眼に見える山や星で現在位置を特定するプロの航法士がいて、方角を間違うことはほぼないらしい。

 王都へ向かうルート上の水場なども特定されていて、日々のキャンプ地も決まっていた。キャラバンには専任の調理師やヒーラーもおり、お客様の俺とプルーンはあまりやることがないが、洗濯は自己責任とのことで、シャーリンさんのものも、プルーンに洗ってもらった。

「だいたい、洗濯は助手の仕事じゃないの?」
 プルーンが笑いながら文句を言うが、さすがにシャーリンさんの下着も俺が洗うのは気が引けるというのは判ってくれているようだ。
 なので俺は夜の見張りや日誌書きに精を出した。

 シャーリンさんとの剣道の稽古も、毎日就寝前に行ったが、これは俺自身とても楽しく、お金を貰うのが申し訳ないくらいだった。プルーンもその脇でソードの訓練をしていて、シャーリンさんは俺だけではなくプルーンにもいろいろ教えてくれた。

「いよいよ最初の難関だな」シャーリンさんが言う。
 キャラバンの進む方向に大きな山脈が見える。カステル山脈というらしいが、あの山越えが大変らしい。
 まあ、道らしいものは当然整備されておらず、毎年通るところは、キャラバンが都度、邪魔な木を伐採して整備したりしているとのことだが、山越えでキャラバンの速度が落ちるため、山賊に狙われやすいのだそうだ。

「まあ、私が雇われてから、襲われたのは最初の一回だけだがな」
 シャーリンさんがドヤ顔で言う。
 それって、最初の襲撃で山賊側が懲りたってことだろう。
「でも、こんな辺鄙《へんぴ》なところで山賊やってて、食べていけるんですかね?」
「どちらかというと他に行き場がないというのが正解だろう。山の中までは国の支配が及ばないからな。王都で喰いっぱぐれたり、犯罪を犯した者が逃げ込んだりしているんだ。まあ、あまりに目に余る連中は、辺境守備隊に討伐されるがな」
 はは、それでキャラバンを襲って返り討ちにあうんじゃ、確かに割に会わないな。

 そしていよいよ、キャラバンが山道にはいり途中何事もなく峠を越え、下りに差し掛かってから事件が起こった。

「停止! ていしー!」先頭の馬車から、緊急停止の声が響く。
 何事か見に行こうとしたら、シャーリンさんが俺を止めた。
「ゆうた、油断するな。こういうタイミングが一番危ない」
 俺とプルーンはソードを手に取ってシャーリンさんと馬車を降り、周りの観察に集中した。
 幸い、山賊の襲撃では無かったが、進む先の道が大きく崩れてしまっているらしい。

「行きの時は何でもなかったんだが……」あごひげさんも困惑しているようだ。
 崩れた道は、同行しているドワーフたちが急ぎ修復にあたるが、今日はここで夜を明かさねばならない。そこで、俺だけではなくプルーンもシャーリンさんの指揮の元、警備にあたることになったが、臨時のお手当がもらえる様で、プルーンは喜んでいた。
「それにしても最悪の場所だな。これだと、簡単に馬車が谷に落とされてしまう」
 キャラバンは、斜面に沿って一列に車列が延びてしまっており、確かに、上から攻撃されたら、すぐに下に転がってしまいそうだ。

「ジン様。まだ日のあるうちに、山の上の方を偵察してきたいのですが、ご許可を。万一、山賊側に備えがあって、夜襲に会ったら眼も当てられません」
 シャーリンさんはそう言ってあごひげさんに許可を貰い、守備隊の一部を連れて上の方の偵察に出たが、俺も同行するように言われた。だが、山中で対人の実戦を初体験させる訳にはいかないので、プルーンは馬車に待機させた。

 シャーリンさんはものすごい速度で斜面を登っていき、俺や他のメンバーはついて行くのに必死だったが、ほどなくこのあたりで一番高いところに到着した。
「とりあえず、なにか仕掛けている訳ではなさそうだな。しかし、馬車があの様子だと、少人数でも一台、二台は持っていかれそうだ。幸いここは見晴らしがいい。日没まで、ここで周囲を警戒するぞ」

 そうして俺達は、二人一組で周囲の偵察にあたることになり、俺はシャーリンさんに連れられて、尾根の反対側に降りていった。

 十分位歩いただろうか。妙な気配を感じて俺は足を止めた。

「ほー、ゆうた。大したものだ。お前も気づいたか。あの岩陰に何かいるぞ」
「獣でしょうか?」
「さあな。だが、獣がこんな怯えた気配を出しているのを私は見たことがない……。
 おい、そこ。勝ち目がないのは判っているだろ! さっさと投降しろ!」

 シャーリンさんが大声で威嚇する。反応が無いのを確認し、シャーリンさんは一瞬で岩陰に接近するが、次の瞬間だった。
 岩の側の木の上から、刃物を構えた男がシャーリンさん向かって飛び降りてきた。

「シャーリンさん、上!」
 俺が叫ぶ前にちゃんと気づいていたようで、シャーリンさんはその男を一太刀で薙ぎ払い、男は真っ二つになった。
「きゃーーーー」叫び声がして、岩陰から黒い陰が逃げようとしたが、それも一瞬でシャーリンさんに切り伏せられた。

「シャーリンさん、大丈夫ですか?」俺はあわててシャーリンさんに駆け寄った。
「問題ない。だがまだ油断するな。二人とは限らんぞ!」
 そういわれて、慌てて周囲を見回したが、もう怪しい気配はしない。
「それにしてもなんだ? 山賊にしてはあまりに手ごたえがなかったが……」
 俺は、恐る恐る、シャーリンさんに切り伏せられた賊の側に近寄った。

「えっ? ああああああーーーーっ!」
「どうした、ゆうた? 山賊の死骸くらいで腰を抜かすな!」
「いえ、シャーリンさん……この人達、人間の男女です……」
 深呼吸して遺体を観察したが、間違いない。
 この人達は人間だ。多分、欧米人だろう。

 木の上から襲い掛かった人は、軍服のようなものを着ていて、USアーミーのタグが付いている。岩陰にいた人は……この男性に関係ある女性なのだろうか。俺達の世界で普通に見かけるビジネススーツを身に付けていた。
「人間とは珍しいが……警告はしたし、あっちが先に攻撃してきたんだ。
 仕方なかろう」
 シャーリンさんは、すまなそうに俺に語りかけた。
 
 でも……俺は戦慄した。
 もしこの二人が、俺とあかりさんみたいに、たまたまここに飛ばされてきてしまい、言葉もわからないままこんな目にあったのだとしたら……

 そう思ったら、内臓が激しくひっくりかえり、思わず俺はそこに吐いてしまった。
「ゆうた……?」心配そうに俺を見るシャーリンさんに、俺は今の考えを話した。
「……そうだな。実力差は最初から圧倒的だったんだ。私がもう少し余裕をもって対処すれば、この二人は死なずに済んだかもしれんな。
 だが、ゆうた。私が言うのもなんだが、この二人は運が悪かったんだ。そして……お前とつがい殿は運が良かった。それだけだ」
 確かにそうだ。俺と星さんだって、一歩間違えば、あのままウォーウルフの腹の中だった。

 男性は軍票を身につけていた。
「グレゴリー・アンダーソン……さん……1995年生まれ……」
 おれはその軍票を懐にいれ、万一元の世界に帰ることが出来たら、これを遺族の元に返したいと思った。残念なことに、女性の方は、身分が判る様な物を何も持っていなかった。そして、グレゴリーさんが手にしていたのは刃渡り二十cmくらいの軍用ナイフだった。多分特殊なセラミック合金製で、この世界ではとんでもないオーパーツだろう。

「すごい刃物だな、それ」シャーリンさんにもわかるらしい。
「どうします、これ?」
「ゆうた。これはお前の世界のもので、これが何でどういう風に使えるのか、お前は知っているんだろう? だったらお前が持っていろ。そして、もし自分の世界に帰れたら、さっきの軍票とかいうのと一緒に、遺族に渡してやれ」
「そうですね……そうします」

 二人の関係は全く判らないが、男性が命がけで守ろうとしていたのだ。それなりの仲だったんだろう。そう思って二人を一緒にその場に埋葬し、ちょっと大きめの石を墓標として積んだ。

 その後、他の偵察隊と合流し、山賊のリスクはなさそうだということで、俺達はキャラバンに戻った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

母娘丼W

Zu-Y
恋愛
 外資系木工メーカー、ドライアド・ジャパンに新入社員として入社した新卒の俺、ジョージは、入居した社宅の両隣に挨拶に行き、運命的な出会いを果たす。  左隣りには、金髪碧眼のジェニファーさんとアリスちゃん母娘、右隣には銀髪紅眼のニコルさんとプリシラちゃん母娘が住んでいた。  社宅ではぼさぼさ頭にすっぴんのスウェット姿で、休日は寝だめの日と豪語する残念ママのジェニファーさんとニコルさんは、会社ではスタイリッシュにびしっと決めてきびきび仕事をこなす会社の二枚看板エースだったのだ。  残業続きのママを支える健気で素直な天使のアリスちゃんとプリシラちゃんとの、ほのぼのとした交流から始まって、両母娘との親密度は鰻登りにどんどんと増して行く。  休日は残念ママ、平日は会社の二枚看板エースのジェニファーさんとニコルさんを秘かに狙いつつも、しっかり者の娘たちアリスちゃんとプリシラちゃんに懐かれ、慕われて、ついにはフィアンセ認定されてしまう。こんな楽しく充実した日々を過していた。  しかし子供はあっという間に育つもの。ママたちを狙っていたはずなのに、JS、JC、JKと、日々成長しながら、急激に子供から女性へと変貌して行く天使たちにも、いつしか心は奪われていた。  両母娘といい関係を築いていた日常を乱す奴らも現れる。  大学卒業直前に、俺よりハイスペックな男を見付けたと言って、あっさりと俺を振って去って行った元カノや、ママたちとの復縁を狙っている天使たちの父親が、ウザ絡みをして来て、日々の平穏な生活をかき乱す始末。  ママたちのどちらかを口説き落とすのか?天使たちのどちらかとくっつくのか?まさか、まさかの元カノと元サヤ…いやいや、それだけは絶対にないな。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...