【R18】特攻E小隊

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第五話 弱点を克服せよ!

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 あの歓迎会から一ヵ月が経過した。

 日々訓練を続けているが、正直、いまだ暗中模索の状態が続いている。
 他のエルフ小隊の話も耳に入るが、まあ、うちが最弱っぽい、というかA小隊は、もう前線に出兵するらしい。

 A小隊の隊長は、この間まで俺の上官だった、あのサンダー中尉だ。当初、参謀本部は「エルフにはエルフの上官を……」みたいな事を言っていたような気もするが、こと戦闘指揮に関しては、やはりエルフより人間の方が抜きん出ていることが多く、実際、彼は指揮官としてかなり優秀だし、部下がエルフであっても(うちのメンバ―を除けば)安心して任せられると思う。

 普段、E小隊の訓練は、師団本部から五Kmほど離れた演習場内の林の中で実施している。我が軍の演習場は結構広く、山や谷や森がいくつもすっぽり入る程だが、いつも準備運動を兼ねてそこまでマラソンで行くことにしている。もっとも、宿舎近くに訓練用の広場もあるのだが、正直、我が隊の訓練を他人様に見られたくないのが本音かも知れない。

 いちおう、エルとカレンの軍服は人間用のものにしてもらったが、沙羅はマナ吸収にこだわって、クリスタルコアを編み込んだエルフ用の軍服をいまだに着けている。そのためか、沙羅は訓練中、意識してエルと距離を置いているようで、あまりドレスブレイクに巻き込まれる事は少なくなって来たが、それでもたまにぱんつ一丁になってしまうことがあったりする。

「ねえ小隊長。
 僕、最近おっぱい大きくなったと思わない?」
 朝っぱらから、大馬鹿な質問がいつものように飛んでくる。

「……いや、あまり変わったようには見えないが」
「誰かさんが揉んでくれないからさ。
 この一ヵ月の間、夜寝る前に、必ず自分で揉むようにしてるんだよ!」
 まだ根に持ってたのか……
「変ナ揉ミ方ヲシテ、乳首ガ腫レテイルだけデハナイですカ?」
「なんだと~ このポンコツポコ~」

 話が聞こえていたのか、向こうで座禅を組んでいるエルがこっちを見ていた。そして次の瞬間、後ろで警策を持っていたカレンに、したたか打ち据えられていた。

「エルちゃん、ちゃんと集中しないとお姉さんが変な道に目覚めちゃうかもよ~」
「は、はい、すいません……」

 結局、エルについては、とにかく集中力を鍛えるしかなかろうと、この一ヵ月、座禅・瞑想・滝行・真剣の素振り・読経から、食事の工夫・シエスタ・音楽鑑賞など、効果のありそうなものを片っ端から試してみているが、あまり芳しい効果は現れていない。
 砲身のようなもので無理やりエネルギーを集められないかとも考えたが、なにせ全方向への拡散のため、自分自身が砲身に入らないとダメなことに気が付いた。
 うまくいけば威力は期待できるため、なんとも手詰まりで歯がゆい状態だ。

 沙羅に関しては、一発でマナを全部使わず、分割して発射するような訓練を指示した。
 大艦巨砲主義なのか、本人は最初かなり嫌がっていたが、複数の敵に対抗出来て一撃で致命傷にならずとも敵の隙をついて次の行動や連携などがやりやすくなり、生存率が向上すると、こんこんと説得して、しぶしぶ了承させた。

 カレンについては、男にも慣れる可能性はないか何回か模索したが、いかんせん拒否感が強く、男慣れの訓練をあまり強要しても、マイノリティを虐待しているような構図になってしまうため、とりあえず彼女の能力発動は女性起点でよいと発想を変えることにした。
 そうして訓練を進めるうちに新しい発見もあった。

 まず、カレンの魔力発動の起点となる女性はエルフでなくてもよい事。これはB小隊のアイリス小隊長(人間女性)に頭を下げて協力してもらい確認できた。
 また、シールドを張る際、半径十mほどのエネルギードームが構成されるが、カレンに触れてさえいなければ男性でもその中に入れてもらえる事。これは大きな前進と言える。使い方が限定的とはいえ、人間の部隊とも共同作戦が出来る可能性が垣間見える。まあ、それでも大抵の場合、エルか沙羅に人身御供になってもらわなければならないが……

 とある昼食後の休憩時、沙羅が言った。

「ねえ小隊長―。ばばぁは女性に触れて魔力発動するけど、僕もすいかの姉ちゃんに触ったらマナもらえたりしないかな?」
 また、おかしな事を言いだしたかとちょっと呆れつつも、的外れながら、こいつも問題点に対し常に思考を巡らせているのかと思うとぞんざいにも扱えない。

「いや、そんな話は聞いた事が無いな。
 そもそもカレンは、発動トリガーにするだけでマナは自前のものを使うだろ」
「そうか~。あんなに溜め込んでるのに、使えないのもったいないんだよな」
 それは同感だと自分も思う。

「すいかの姉ちゃん。おっぱい吸ってみていい?」

 どんっ。

 俺と沙羅の会話を聞いていて、さっきから警戒気味だったエルが、沙羅の言葉に突然椅子から立ち上がった。

「沙羅ちゃん! 何馬鹿な事言ってんですかっ。そんなんでマナ渡せたら、もし将来出来るかも知れない私の赤ちゃんはマナ酔いしちゃいますっ!」

「あら~、なんかちゃんと将来の事も考えてるのね~」
とカレンが横からチャチャを入れる。
「違いま……いや違わないけど、軍に来ちゃっても、私の夢はお嫁さんなんです!」
 どんどん話が逸れる。

「おいこら、みんな落ち着け。確かにマナの受け渡しが出来たりすれば便利だと思うが、実際に可能なのかどうか……ポコ、なんかデータはあるか?」

「検索シマス……ヒット四十六件。
 今ノ会話ノ流レニ近イモノでフィルタリング……
 チ―ン。二件該当シマシタ!」
「概略を教えてくれ。」

「一件目ハ特定ノ魔族ニヨルえなじーどれいんノ事例デス」
「サキュバスとかか? それは多分関係ないな。次は?」

「えるふノ能力デ、自身ノまなヲ他ノえるふニ渡スことガ出来タ事例ガ、三百年ホド前に一例報告されてイマス」
「ほ~、あるにはあるんだ。もっと詳細の情報は無いのか」
「事例ノ報告ダケデ、具体的ナ方法ナドハ記サレテいまセン。
 マア、ホトンドノえるふハ自前ノまなデ用ガ足リますカラネ」
「ああ、しかし三百年前だと、ちょうどエルフと人間がやり合っていた時期か。
 戦争でもしてなきゃ、そんなスキルもいらないんだろうがな……」

「でもそれってなんか、ばばぁみたいな方法でやったんじゃないかな。
 そんな気がする」
「確かに~。マナ貰うんだったら接触しないとね~。でも~私も何人も触ってきてけど、マナが入ってくるなんて事一度もなかったわよ~。
 っていうか、いい加減、その、ばばぁはやめてよね!」

「試してみていい? 
 おっぱいじゃなくて、手を握るだけでいいからさ」
「……握手だけですよ」
 根負けしたかのように、エルが右手を沙羅の方に差し出し、沙羅は両手でグイっと力強くエルの右手を握った。

「…………」
「いっ、痛い痛いっ。
 沙羅ちゃん、もうちょっと優しく!」
「……だめだ、全然マナ吸えてる感じしない」
「はは~。サキュバスに、精気の吸い方でも習いに行ってみる?」
 カレンがまたからかう。
「うるせ―ばばぁ、サキュバスの知り合いいるのかよ!」

「ほらほら、もうあきらめろ。
 三百年前に一件だけの事例が、そうやすやすと実現したりはせんだろ。
 俺が指示した通り、分割で発射する精度を高める訓練を続けるんだな」
と言いながら沙羅の頭に手をやって、ポンと叩いたその時だった。

「あ―っ、なんか入ってきたぁ!」


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