【R18】冒険者兄妹(仮)

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その7:リーマの休日(後編)

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「はははは。二人ともずぶぬれになっちゃったね。帰ったら怒られない?」
「うん、めちゃくちゃ怒られる……買い物も出来なかったし……」
「仕方ないよ。ちゃんと謝ろう。なんなら僕もいっしょに叱られてあげる」
「本当? うれしい! それでお願い! でも、さすがにこの格好のまま帰ったら、鞭打ちじゃすまないわ。お兄さん。まずは着替えるので付き合ってくれない?」
「ああ、いいよ」

 そして二人は、朝出会った王宮の宿舎側の裏門から王宮に入り、そのまま裏庭に回って、タルトちゃんに手を引かれ、ちょっと大きめの木の陰の茂みに分け入った。
「ここが、私の秘密基地なんだ!」
 タルトちゃんがドヤ顔で指さしたのは、板やら木箱やらが積み上げられた、まあ、いかにもと言った感じの子供の秘密基地なのだが、どうやら、ようやく人が入れる位の部屋になっているらしい。

「それじゃ、着替えてくるから……」そういってタルトちゃんが秘密基地の中に入って行ったが、しばらくして声が聞こえた。
「あのお兄さん。ファスナーがひっかかって……動けなくなっちゃった。助けて」
 ええっ? 僕はその秘密基地に入ろうとしたが、さすがに無理だ。
 仕方がないので、タルトちゃんに出て来てもらうと、確かに着ていたボロが、首に引っかかって頭が隠れて……って、服の下、すっぽんぽんじゃん! この子、一日僕とノーパンで過ごしていたのか? いやいや、濡れたんで先に脱いだんだよな?
 
 僕が引っかかったファスナーをはずすと、ボロがスポンとはずれ、目の前にすっぽんぽんのタルトちゃんが現れた。
「ふはー、ありがとうお兄さん。でも……寒かったー」そう言いながら、タルトちゃんが僕にすがりついてくる。
「いやいや、タルトちゃん。まず服を着ようよ。それに下着だって……」
「この下着、嫌いなの。なんか窮屈で履きづらいし……そしたらお兄さんが履かせてくれますか?」
「えーっ? でも……なんか陽も暮れて来て寒くなってきたし、急ごうか……」
 そして、僕は、タルトちゃんに手渡された彼女の下着を手にとり、彼女の正面で足を片方づつ持ち上げて、なるべく彼女を見ない様にと、目をつぶりながらそれを履かせ始めたのだが……

「姫様発見!!」突然、後ろで大声がして、僕は何かで殴られたのか、その場で気を失った。
 
 ◇◇◇

 足元の炎は瞬く間に大きくなり、履いているズボンの裾に引火し始めた。
 うわっちちっ。いやこれ……ほんとにもうダメなのか……あまりの絶望に目を閉じ、ヨリの顔を思い浮かべていたら、遠くの方から大きな声が近づいてきた。

「中止―!! その処刑、中止―!!」
 見ると、伝令の兵士が王城から駆け付けて来た様なのだが、神官が何事かと、その兵士を足留めした。いや、いま中止って言ってたよね!? 早く火を消してよー……

「何事じゃ!? すでに処刑は始まっておる。我が国では十五歳以下の児童への性的暴力は、裁判なしで即時火あぶりと法律に定められておる! たとえ国王であっても曲げる事は出来んぞ!!」神官が居丈高いたけだかにそう言った。ううっーこの頑固おやじ。でも性的暴力?
「それが……どうやら姫様とその男は、恋人の泉で正式な手続きを踏んでいたらしく……国王様が一度、直々に詮議せんぎするとおっしゃられていまして……」
「なんと!? 正式な手続きじゃと? であれば、姫様はもう十歳じゃ。この男の所業も合法になってしまうが……あの可愛らしい姫様に淫行をしたこの男。八つ裂きにしても飽き足らんが、そういう事ならば致し方なし。処断を王に委ねよう」
 そうして僕は、すね毛が大分焦げたところで許され、後ろ手に縛られたまま、王城に引っ立てられた。

「お兄さん!!」王城の入り口のところで声をかけられたが、タルトちゃん? いや、確かにタルトちゃんなのだが、今日はまたえらくめかし込んでいる。まるでお姫様みたいだ。
「ああ、タルトちゃん。昨日はゴメン。いっしょに怒られる予定だったのに……」
 そう言ったら、近くにいた兵士に、いきなり木の棒で打ち据えられた。
「ええい痴れ者。姫様に向かって直言じきげんは無礼であるぞ!!」
「ええっ? 姫様?」事態が呑み込めていない僕にタルトちゃんが近寄ってきて、兵士に「少し私にこの人と話をさせて下さい」と言った。

「お兄さん。ごめんなさい。私も一晩中、反省室だったもので……お助けするのが遅れましたが間に合ってよかった。それでその……もうお気づきだとは存じますが、私はタルトと言う名ではありません。この国の第七王女、リーマと申します。昨日は私のわがままにお付き合い戴いたばかりにこんな目に会わせてしまい本当に申し訳ありませんでした」

 そしてリーマ姫が事情を話してくれたが、なるほど……僕は、王宮の外に逃げ出したいお姫様に、まんまと利用されたという事か。
「それでその、お兄さん。これからのお話なのですが……何があっても、Yes以外は答えないで戴けますか? そうでないと、私もあなたの命を保証出来ないのです」
「ええっ!? でも……その話、マジなんですよね?」リーマ姫の顔が真剣だったので、僕もそれを信用する事にした。

 そして僕は、国王の前に引き出された。国王には、ここに赴任した時最初に挨拶をしたので、顔はよく覚えている。
「まったく。Sランク冒険者ともあろうものが、よりによって我が最愛の愛娘に手を出すとは……この場で、そっ首はねてやりたいところだが、聞くところによると、君はリーマと、恋人の泉で正式な手続きをしたと言うではないか? それは本当なのか?」
 えっ? 何の事だ? 何の事か分からないので、詳しく聞いてみようかと口を開きかけた時、脇に立っていたリーマ姫が、大声で「Yes!!」と怒鳴ったので、国王もあっけに取られていたが「いやいや聞いているのはお前ではない」といなした。
 ああ、そうだった。何がなんでもYesだっけ。

「Yes!!」僕はそう叫んだ。おおーっと周囲から歓声が上がる。
「うーむ。君もリーマも答えはYesか……そうであれば、致し方なし。君とリーマの婚約を認め、夕べの淫行は婚約者同志のちょっとしたじゃれ合いという事で目をつぶろう」国王が立ち上がり、みんなに分かる様な大声でそう言った。
 えっ? えっ? それどういう事?

「おめでとうございます。国王様、リーマ姫。このものは名だたるSランク冒険者です。将来必ずや我が国の力になってくれるでしょう!!」側近の人達が口々にそんな事を言いながら、王に祝福の言葉を贈っていた。

 ◇◇◇

「ふーん。私がいない間にそんな事があったんだ……お兄ちゃんって、ほんと隙だらけよね。私達もこれだけ有名になっちゃってるんだから、もう少し警戒しなさいよ。でも、マジでこの異世界も油断ならないわー」その夜、外の訓練から戻ってきたヨリがそう言った。
「でも、まあお兄ちゃんがほんとに幼女にいたずらしてたんじゃなくてよかったよ。
 万一、それが本当だったらDBSに登録の上、私自らお兄ちゃんを灰にしてあげるわよ!」

 いやー。ヨリがそんなに怒ってなくてよかったんだけど、姫の婚約者って……僕、これからどうなるんだろ?

(さらに続く)
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