勇者様、姫が処女を捧げに参りました!

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第23話 本当に好きな人

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 フロントで他の部屋を案内してもらい、勇者ノボルはそこで風呂に入った。
 フロントのオヤジにサインを求められたが、こんな連れ込み旅館にマホガニーのセシルのサインがあっちゃまずいだろとお断りした。
 だが、このオヤジがあと数日でここを退職するらしく、家族用にとの事だったので、仕方なく応じてやった。まあ、今日の宿代、タダにしてくれてるしな。

 それにしても、あのりんたろー、高校生だろうに、なんでこんな旅館に顔が利くんだ?

 風呂に入りながら、姫様と交わる時のことを想像し、少し股間が固くなる。
(そんなに好みの体形でも無いんだがなー……でも、やっぱ、あの子可愛いよなー)
 つい、そんなことも考えてしまう。
(いやいや。せっかくこれで縁が切れるんだ。俺はこの世界でもっとメジャーになるんだ! 
 せいぜい、ひーひー言わせてやって、ツヤツヤで御国に帰って貰わないとな……)
 そんな身勝手な事を考えながら、奥の間に戻った。

 部屋に入ってみると、照明が消えていたが、庭に向かった縁側のカーテンは開いていて、月明りでうっすらと部屋の様子が分かる。
 奥の間の布団の上に、浴衣姿で正座しているのが分かった。

「ずいぶん緊張してるな……まあ、初めてだしな……暗いまま、ヤッてやるよ……」

「セシル……」
 そういいながら勇者ノボルは、後ろからのしかかり、浴衣の胸元に手を入れる。

 あれ? なんか、大きくないか?

「あはーん。勇者! そこはだめにゃん!」
 な、なんだー? セシルじゃない?

 勇者ノボルはあわてて部屋の電気のスイッチを探し、照明を付けた。

 え! えー? 猫?
 驚く勇者に、セシルと入れ替わっていたマホミンが語り掛けた。

「あはー、姫様から伝言にゃん。
 『くそったれ!』
 ……以上にゃ!」

 勇者ノボルは、しばし呆然としていたが、やがて大声で笑いだした。
「ははははははっ。やりやがったな。従順そうな顔して、意趣返しとはやるじゃないか。
 すっかりその気にさせられちまった……はは、どうするこれ?」勇者は自分が勃起したままな事に気付いた。

「女の子をあんまり甘く見ちゃだめにゃ。
 本気で好きになってくれない男に、女の子は股を開かないにゃ!」
「はは、猫姉さん……あんたの言う通りかもな……でも、よく見りゃあんたも結構いい女じゃないか。俺、もうさっきから興奮しっぱなしでさ……あんたも、こんなとこいるのが運の尽きって事で……」

「は? うにゃ? あー、待て待て待て……ニャー!!!?!?」

 ◇◇◇

 りんたろーは、電車の中で、何度も時間を確認していた。急がないと……姫様が勇者とエッチしちゃう前に、取り戻さないと……。

 一時間位前、カス姉から呼び出された。
 そして姫様の本当の気持ちを教えてくれた。
 カス姉にしてみれば、かなりの葛藤があっただろう事は想像に難くない。
 でも、それに報いるのは後日として、今は姫様と会わないと……。
 小岩駅を出て、まっすぐ寿旅館に向かって全速で走った。

「あれ? りんたろーさん。どうしたの?」
 そう言うマサハルを無視して、一目散に奥の間に駆け込んだ。

「あっ……ふん……」
 ダメだ! 間に合わなかったのか! 戸口越しに喘ぎ越えが聞こえる。どうする?

「あっ、ああーーーん」
 くそ、もうヤケクソだ! そう思ってりんたろーは、思い切りドアを開け放った。
「んあ、ふあっ……いっちゃうにゃーん!」

 にゃーん?
 部屋に踏み込んだりんたろーが目の当たりにしたのは、性交真っ最中の、勇者ノボルとマホミンだった。ふたりとも、眼の玉が飛び出んばかりに驚いている。

「えっ? あっ? ……これは一体……」
「ばかー! 見るにゃー!」
 マホミンに枕を投げつけられ、りんたろーは訳も分からず部屋を飛び出した。
 えっ、えっ……混乱するりんたろーを、マサハルが遠くから手招きした。

「あの、マサハルさん。これは一体全体……?」
「うーん。なんか私にもよくわからんのですが、アホミンさんと勇者さんがデキちゃったみたいですねー。そんでね、こっちこっち」
 マサハルに導かれて、旅館の二階に上がり、一番奥の部屋に入った。

 そこには、浴衣姿のセシルが居た。

「りんたろーさん!」
「あ、姫様……あの、何て言っていいのか……勇者さんとはうまく行きましたか?」
 ああ。俺なんて馬鹿なの。俺は姫様を略奪しに来たんじゃん!

「ああ。大丈夫です。お話は出来ましたが、性交はしていません! 
 マホミンさんに助けていただいたんです」
「あー、それで……マホミンさんと勇者さんがエッチしちゃってるんだ……」
「えっ?」
 おや、姫様がとっても驚いているが、そこまでは知らなかったのかな……。

「そんじゃー、明日の夕方まではお客も来ませんので、お二人でごゆっくりー」
 そう言いながら、マサハルさんは、下に降りていった。

「…………」
「…………」
「あの、りんたろーさん。どうしてここに?」
「いや、その。カス姉から、姫様の本当の気持ち教えられて……。
 そしたら、いてもたってもいられなくなって。姫様を奪い返さなくっちゃって……」
「……あ、ありがとうございます。そして昨日は、すいませんでした。私、言葉足らずで……。りんたろーさんが決して私の身体目当てだとは思っていません……そして、私は本当にあなたをお慕い申し上げております」
「はい。わかっています……思いが伝わるって、こんなにうれしい事なんですね」
 りんたろーの眼から涙がぼろぼろこぼれた。

「それで、りんたろーさん。勇者とのことも決着しましたし、私は国に帰らないといけません。ミルダも心配だし……それで、それでね、リンタローさん。私の国に一緒に来てはいただけませんか?」
「……ありがとうございます。ですがそれはやはり難しいです。
 勇者さんのヘタレを笑えた事ではないんですが……こっちの世界には、両親も友人も、カス姉も真理ちゃんもいますし、それらを捨ててまで、姫様の世界に行く踏ん切りはつきません。行ったらそう簡単には戻って来られないんでしょうし……」

「……そうですよね。無理を申し上げてすいません……それで、あの、怒らないで聞いて下さいね」
「なんでしょう? 多分、今は何を言われても怒る気にならないです。
 姫様がこうして眼の前にいてくれるのですから……」
「今、この時……今夜だけで構いません。身も心も……本当の恋人同士になって過ごしませんか? りんたろーさんが嫌でなければ……ですが……。
 私はその思い出を胸に、堂々と国に帰れそうな気がします」

「姫さま…………セシル……」

 そう言いながらりんたろーは、セシルを抱き寄せ、熱い口づけを交わし、二人は重なりあいながら、布団の上に横になった。
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