勇者様、姫が処女を捧げに参りました!

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第13話 共同戦線

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 今年も旧盆が近づいてきた。そしてこの時期は夏コミの季節でもある。
 カス姉は当然、万全の準備で臨んでおり、りんたろーは荷物持ち兼助手でもある。
 カス姉の今回のコスは、ゲーム・ぬるぬるスマッシュのエロ担キャラ、メメルちゃんなのだが……これ、ほとんど裸じゃん。実際には、薄い全身タイツみたいのを着てその上に衣装を装着するので、まあ丸裸と言うわけではないのだが……どうもカス姉は、こうした露出過剰なキャラを好む傾向があるよな。

 いよいよ明日は本番なので、コスの最終チェックのため、カス姉の部屋へ向かった。

 部屋に入ると、いきなり、ほぼ全裸のカス姉が飛びついてきた。
「りんたろー! どうどう、このコス?」
「いや、カス姉。しがみつかれてたら見られないって……」そう言ってりんたろーがカスミから離れる。イヤー、この衣装、何度見てもほぼ全裸……って、あれ? 
「カス姉。タイツはどうしたの!」りんたろーが絶叫する。

「あー、あれ着るの面倒で……パーツチェックだけなら生でいいかなって……。
 どうせあんたのチェックだし」
「いや、だめだって……ニプレスも前張りもしてないじゃん! 丸見えだよー」

「あのー、玄関先で騒がれていないで、中でじっくりご覧になっては?」
 そう言いながらセシルが奥から出てきた。
「そーだよ、りんたろー。隅々までじっくりチェックしてよね!」
「もう、カス姉……からかわないでよ……」
 まあ、見えてはいけないものが見えてしまわないかのチェックも重要なので、カス姉にはいろんなポーズをとってもらうのだが……だめだ、刺激が強すぎるぞ。
 ブレタムさんが「まさに痴女だな」と言うから、カス姉はムキになって怒っていた。
 姫様とブレタムさんは、あの人混みは慣れないし追手も心配なので、夏コミには行かず家で留守番しているとの事だった。

 そして当日、カスミとりんたろーは、始発電車でビッグサイトに向かい、早くからコスプレ会場に出たが、ものすごく暑い。気温もそうだが風もなく湿度も半端なくて、気を付けないとすぐに熱中症で倒れそうだ。りんたろーは、カスミのそばについて、撮影列の整理をしたり、休憩時間をコントロールしたりしている。
 うわ、あのカメラマン。あんな際どいポーズ指示してる……うん。でも大丈夫。見えてない! しかし全身タイツも、汗で濡れてくると変な意味でいやらしくなってしまうので、注意は必要だな……という感じでりんたろーは常に注意を怠らない。

 やがて午後になり、カスミが日陰に入って小休憩をとっていた時、すぐ近くで「救護班―」という声が聞こえた。
「ああ、だれかやっちゃったかな……」ベテランレイヤーを自負するカスミは、他のレイヤーが倒れたりするのを見過ごせず、声のした方に駆け寄っていった。
 りんたろーも、イオン水のペットボトルを両手に持って後を追ったが、そこには、ケモミミのレイヤーさんが倒れていて、カスミが寄り添っていた。

「大丈夫ですかー。水持ってきましたー」
 りんたろーが倒れたレイヤーさんにペットボトルを渡した時、後ろから声がした。

「あれ? 青葉君?」
 えっ? と、りんたろーが後ろを振り返ると、魔女っ娘ポックルが立っている。
(だれだ? 知ってる人か?)

「って、えー! 浜松さん?」
 そう。後ろにたっていた魔女っ娘ポックルは、浜松真理のコスだった。
 ということは……ああ! 倒れているのはあの猫姉さんだ……アホミンさんだっけ?
 この状況で二人を突き放して逃げるわけにも行かず、りんたろーとカスミは、真理とマホミンを連れて救護テントに向かった。

 りんたろーは、カスミと小声で話しをする。
「えー! この子たちが姫様の追手だったの? でも、この猫さん絶対熱中症だし、放っては置けないよ」カスミが困り顔で言う。
「それじゃ、カス姉は猫姉さんを見てあげて。僕は、浜松さんとちょっと話してくるから」りんたろーは、真理と連れだって、建物の中に入った。

「こんなとこまで追いかけてくるなんて……」りんたろーは半ばあきれ顔で言う。
「ちがうの、違うの! まったくの偶然。マホミンさんに、私の趣味に付き合ってもらっただけなの! それで青葉君……あの時は、本当にごめんなさい!
 マサハルさんに、あなたが私に好意を持っているって聞かされて、かなり舞い上がってて……あの後、もうあなた達には協力しないって私もすごく怒ったんだけど……」
「もういいよ。そんなに簡単にエッチしたがるような女の子は、やっぱり信用出来ないから」
「違うの! 本当に信じて……私、あんな事、あなただけだから……多分、私……貴方に一目ぼれしちゃってる…………うう、そんな眼で見ないで……信じてもらえないのが辛い……」
「……そこまで言われちゃうと、まあ、僕もそんなに悪い気はしないけど……」
「それで……私もね。この事に関わっちゃって、ちょっと怖いの。もう自分だけで抱えるのも不安で不安で……だから、青葉君に助けてほしいって気持ちも正直あるわ。
 私は、第三者的な立場で、マサハルさん達とは距離を置いて接するつもりだし……」
「……そう。それがいいかもね。マサハルさんが今度こそ本当に、策を弄せず、ちゃんと一緒に考えて行動してくれるなら、それが一番いいかとは思うよ」

「ありがとう。最後のチャンスをくれて。
 あー、そうそう。青葉君って、あのカスミ様の弟さんなの?」
「えっ、カス姉知ってるの? まあ、弟ではないんだけど……」
「知ってるも何も、コスプレを目指す者には神みたいな人でしょ。雑誌とかにもたくさん載ってたし……私、勇者の件とか関係なく、カスミ様に弟子入りしたい!」
「いや、それは直接本人に言ってよ。それから、僕はりんたろーでいいから。なぜかみんな苗字で呼んでくれないんで、そっちのほうが慣れてるんだ」
「わかった! それじゃ私は、真理でいいから」

 りんたろーと真理が救護テントに戻ると、マホミンは正気を取り戻した様ではあったが、ぐったりとイスにもたれかかっていて、カス姉が隣でうちわを仰いでいた。
 りんたろーが真理とした話をカスミにし、カスミもそれならと賛同してくれた。

「えー、真理ちゃん……いつの間にりんたろー君と仲直りしたにゃ? ぬぷぬぷ作戦がうまく進行したみたいで何よりにゃ……」マホミンが、か細い声で言った。
「ぬぷぬぷ作戦?」カスミが怪訝そうに真理の顔を見る。
「マホミンさん! そのいかがわしい作戦名はやめてって言ったでしょ!」
 そう言いながら、真理は真っ赤になってしまった。
「こらー、そこの魔女っ娘ポックル! りんたろーは私のもんだからねー!」
 カスミが脇で大声をあげた。

「ひえっ。カス姉まで突然何を!」リンタローも恥ずかしさに固まる。
「ああ、めんごめんご。半分冗談……あなた、真理さんだっけ? 
 コス始めて、日は浅いんだっけ?」
「はい、会場デビューは今日がはじめてです。本当はもっと早くからやりたかったんですけど、勇気がなくて……マホミンさんが一緒に来てくれるっていうので、今回は勇気出したんです」
「そっか。なかなかよく出来てるよ、その衣装。市販品じゃなくて、ちゃんと自分で造ったんだね……それで、ごめん。私、弟子とか取らないんで……」
「そうですか……残念です……」

「でも、お友達ならいいんじゃない?」
「えっ? それじゃあ」
「うん。まあ、姫様の事もあるけど、コス好きに悪い奴はいない! 
 みんなで協力しようよ!」
「はい! ありがとうございます!」嬉しそうな真理の脇からマホミンが口を挟んだ。
「なんか、話が進展したようでよかったにゃ……この間はもう、どうしようかと……。
 りんたろー、真理はバージンだから、優しく交尾してやってほしいにゃ!」
「だから違うって! このアホミン!」
 魔女っ娘ポックルのハンドステッキが、マホミンの頭に思い切り振り落とされた。
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