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序章 迷宮脱出編
探索一日目: 生還
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「いくら何でも、遅すぎる」
ついに痺れを切らした河内が、捜索チームを組んで、探索に向かった先行組を探しに行こうと言い出した。
辺りはすっかり陽が落ちてしまっていた。
何か想定外のことが起きたのだろうと、陽が傾き始めてから皆とずっとその話をしていたが、リスクが高すぎてなかなか結論が出ないでいた。
騎士たちは問題があったのなら尚更、王子王女を危険に晒せないと言って、ここから離れようとしない。
クラスメイト内では、マップのスキルで外の異変に気づいた東の話を元に、どうするべきか議論が交わされていた。
何故かはわからないが、マップが更新される度に建物の構造が少しずつ変化して、経路がめちゃくちゃになっていくという。
広間で留まったままでは更新範囲が限られるので、全ての場所がそうなっているのかは不明だが、少なくとも、ここから出ると二度と戻って来られないかもしれなかった。
そうなれば、手分けして探しに向かったところで分断されてしまい、それぞれが行方不明になっていくだけではないか。
だからと言って、ここでただ手をこまねいているわけにもいかない。
もし敵方の魔族に見つかっていたとしたら。
怪我をして動けないでいるとしたら。
昨日亡くなった隊長のことが思い出されて、その可能性には現実味があった。
探しに行くなら東は同行すると言った。
更新されるマップがあれば、見つけ出して戻って来られるかもしれない。
相馬もそれに追随した。
念話エリア内まで近づくことができれば、状況を聞き出して合流できるかもしれない。
新田も進み出た。
もし怪我をしているようなら、自分なら治癒することができる。
乃愛もおずおずと手を挙げた。
危険がありそうなら、防御面で役立ちたい。
その他の皆はまだ明確なスキルを習得できていないので、足手纏いになるかもしれないと躊躇していたが、このまま分断されるかもしれないことを考えると、むしろ全員で探しに向かった方がいいのではないか、との意見が数多く出る。
戻れなくても、合流さえできれば、そのまま出口へ繋がる経路を見つけ出して、あわよくば脱出してしまえば良い。
騎士たちは頑として動こうとしないので置いて行くことになるが、全員で探しに向かおう、という結論に達したところで、大扉の方から何者かが叩いているような音が広間に響き渡った。
—-ドンドン、ドン、ドン、ゴンッ
この独特の叩き方は、外にいるのがフォルガーたちであるという合図だ。安全のために閉扉しておきたいというので、出発前に決めていた。
皆飛び上がるように動いて、急いで扉を開けに行く。
開けたその先に居たのは間違いなく先行組一行で、五体満足の姿を見てホッとするも、その異様な佇まいに圧倒されてしまい、数瞬言葉を失った。
六人全員が満身創痍の様子で、肩で息をしながら、どこか虚ろな目をしていた。
鏑木は伝説の剣のような豪奢で神々しい武器を手にしている。
千田は体に冷気を纏って髪がふわふわと浮き上がっている。
上総は足元に土人形のようなものを従えている。
武石は石を削って槍を模ったような武器を手にしている。
それを横目に沙奈とフォルガーの顔は引き攣っている。
「……み…みんな、無事で…?よかった…よ」
相馬がなんとか声をかけたが、本当の意味で無事なのかは疑わしかった。
心ここに在らずといった風情で、六人とも無言で広間に入っていく。
一体何があったのか、誰もが物凄く気になってはいたが、口も開かないほどの疲労感ある姿を見ては、今はその様子を遠巻きに見守るしかない。
焚き火の前に座り込むと、焦点の合わない目でただぼうっとしている。
新田がすかさず紅茶を用意して、六人に手渡していった。
たっぷりと時間をかけてから、フォルガーが徐に口を開いた。
「…戻るのがこんなに遅くなってしまって済まない。探索して得た情報を共有しよう」
ここがダンジョン化していることなど含めて、事の経緯をフォルガーはポツポツと話し始めた。
「いくら何でも、遅すぎる」
ついに痺れを切らした河内が、捜索チームを組んで、探索に向かった先行組を探しに行こうと言い出した。
辺りはすっかり陽が落ちてしまっていた。
何か想定外のことが起きたのだろうと、陽が傾き始めてから皆とずっとその話をしていたが、リスクが高すぎてなかなか結論が出ないでいた。
騎士たちは問題があったのなら尚更、王子王女を危険に晒せないと言って、ここから離れようとしない。
クラスメイト内では、マップのスキルで外の異変に気づいた東の話を元に、どうするべきか議論が交わされていた。
何故かはわからないが、マップが更新される度に建物の構造が少しずつ変化して、経路がめちゃくちゃになっていくという。
広間で留まったままでは更新範囲が限られるので、全ての場所がそうなっているのかは不明だが、少なくとも、ここから出ると二度と戻って来られないかもしれなかった。
そうなれば、手分けして探しに向かったところで分断されてしまい、それぞれが行方不明になっていくだけではないか。
だからと言って、ここでただ手をこまねいているわけにもいかない。
もし敵方の魔族に見つかっていたとしたら。
怪我をして動けないでいるとしたら。
昨日亡くなった隊長のことが思い出されて、その可能性には現実味があった。
探しに行くなら東は同行すると言った。
更新されるマップがあれば、見つけ出して戻って来られるかもしれない。
相馬もそれに追随した。
念話エリア内まで近づくことができれば、状況を聞き出して合流できるかもしれない。
新田も進み出た。
もし怪我をしているようなら、自分なら治癒することができる。
乃愛もおずおずと手を挙げた。
危険がありそうなら、防御面で役立ちたい。
その他の皆はまだ明確なスキルを習得できていないので、足手纏いになるかもしれないと躊躇していたが、このまま分断されるかもしれないことを考えると、むしろ全員で探しに向かった方がいいのではないか、との意見が数多く出る。
戻れなくても、合流さえできれば、そのまま出口へ繋がる経路を見つけ出して、あわよくば脱出してしまえば良い。
騎士たちは頑として動こうとしないので置いて行くことになるが、全員で探しに向かおう、という結論に達したところで、大扉の方から何者かが叩いているような音が広間に響き渡った。
—-ドンドン、ドン、ドン、ゴンッ
この独特の叩き方は、外にいるのがフォルガーたちであるという合図だ。安全のために閉扉しておきたいというので、出発前に決めていた。
皆飛び上がるように動いて、急いで扉を開けに行く。
開けたその先に居たのは間違いなく先行組一行で、五体満足の姿を見てホッとするも、その異様な佇まいに圧倒されてしまい、数瞬言葉を失った。
六人全員が満身創痍の様子で、肩で息をしながら、どこか虚ろな目をしていた。
鏑木は伝説の剣のような豪奢で神々しい武器を手にしている。
千田は体に冷気を纏って髪がふわふわと浮き上がっている。
上総は足元に土人形のようなものを従えている。
武石は石を削って槍を模ったような武器を手にしている。
それを横目に沙奈とフォルガーの顔は引き攣っている。
「……み…みんな、無事で…?よかった…よ」
相馬がなんとか声をかけたが、本当の意味で無事なのかは疑わしかった。
心ここに在らずといった風情で、六人とも無言で広間に入っていく。
一体何があったのか、誰もが物凄く気になってはいたが、口も開かないほどの疲労感ある姿を見ては、今はその様子を遠巻きに見守るしかない。
焚き火の前に座り込むと、焦点の合わない目でただぼうっとしている。
新田がすかさず紅茶を用意して、六人に手渡していった。
たっぷりと時間をかけてから、フォルガーが徐に口を開いた。
「…戻るのがこんなに遅くなってしまって済まない。探索して得た情報を共有しよう」
ここがダンジョン化していることなど含めて、事の経緯をフォルガーはポツポツと話し始めた。
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