異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome

文字の大きさ
上 下
19 / 68
序章 迷宮脱出編

え!?

しおりを挟む
「…ちょっと、こっち来て」
「…」

 怯えたように震えていたのはあずまだった。それに気づいた相馬は事情を聞くべく、皆とはさらに離れた隅の方へ東を誘導した。

「どうしたの?何か様子がおかしいみたいだけど」
「……あの、さ。あ、ちょっとここだけ、念話にできる?」

(これでいい?とりあえず私たち二人だけにしておいたよ)
(ありがと。あのね、私たちって、なんか種族が…人間じゃないっぽいよね?この国が戦争してる相手は魔族って話だったけど…)
(うん。なんか微妙に違うよね。ネオヒューマンってなってたけど)

「…え!?」

 驚きのあまり、思わず声が出た東。その声はクラスメイトらには聞こえたのか、一様にこちらを凝視している。

(今になって、それ、そんなに驚くことなの?)
(あ…ごめん。ちょっとびっくりしちゃって…。みんな同じじゃないの…?)
(何が?…ちなみに、咲希さきは何だったの?)
(私…魔人まじんって…なってたんだけど…)

「え!?」

 今度は相馬が声を上げた。クラスメイトらは訝しげにこちらを伺い始める。

(え、なに。実はみんな種族バラバラだったの?ちゃんと聞いてたわけじゃなかったけど、なんとなく一緒なんだと思ってた…)
(私も…。だから驚いちゃった。さっきは、戦争相手が魔族って聞いて、魔人なんてバレたらどうなるんだろうって、なんか怖くなって)
(あ、そういうことか…。他の種族はヒューマンしかまだ見たことないから何とも言えないけど、見た目は私たち何も違わないよね?まぁフォルガーさんたちは、ちょっと彫りの深い浅黒系の外国人って感じだけど。でも、この種族って何なんだろうね…人種程度にしか思ってなかったな。他のみんなにも聞いてみる?)
(…うん。そうしよ)

 二人は揃ってクラスメイトらの輪に戻ると、相馬が全員共有の念話に切り替えて話しかけた。

(ちょっと聞きたいんだけど。ステータスに種族ってあったよね?みんなは何て表示されてた?)
(あぁ、あれか。微妙に人間じゃない感じだったやつ。俺はネオヒューマンってなってたけど)
(私も~)
(僕も。見た目は変わってないし、みんな同じじゃないの?)

 次々と返答があり、結局、東を除く全員が〈ネオヒューマン〉という種族だったことが判明した。東の顔は引き攣っている。
 相馬は再び二者間念話に切り替えて、東を伺う。

(…どうする?言ってもいい?)
(……うん)

(あのね、咲希がさ、どうも種族が魔人になってるらしくて)
『え!?』
(…私も驚いたけど、今はデリケートだから、話は念話でしてね)
(ごめん。魔人って、あの戦争してるって言ってたあの魔族のとこの?)
(…そうみたい、だねぇ)
(それでなんか様子が変だったのか。てか見た目、全然変わらなくね?種族ってさ、何なの?)
(それね。私もその辺よく分からなくなって、こうやって聞いてみたわけなんだけど)
(鑑定によれば種族は色々あって、エルフやドワーフなんかもいるらしいんだが…てっきり、映画とかゲームのような、ファンタジーなイメージしてたわ)
(俺も。ただ、あの騎士たちと俺らじゃ、明らかに人種は違うよな?言ってもネオが付くかどうかだけだし、その程度の差と思ってたけど、俺たちは魔人寄りの外見をしてるってことか?)
(…うーん、どうだろ。最初のフォルガーさんの警戒ぶりを思うと、その可能性も捨て切れないけど…。にしてはいくらある程度予想してたとしても、どこから召喚されたかもわからない、もしかしたら魔族の国から召喚されたかもしれないのに、あまりに態度が明け透けのような…)
(だよな。たぶんあの様子だと、始めに警戒されてたのは、王族しか知らないはずの場所に、不審な人物がわらわらいたからだったと思うけど。側に遺体もあったわけだしな)
(まぁそう考えるのが妥当か。外見ですぐ判断できるのなら、見かけた瞬間に逃げるか攻撃されてたと思うし)
(そもそもさ、なんか頭から信用しちゃってたけど、この鑑定が表示する情報って本当に正しいものなの?)
(あーそれ思ったぁ。数値も全部同じで違和感ありまくりだし、なんかバグってる気がしてるんだよねー)
(話との整合性を取ると、最低でも一部は正確なんじゃないか?)
(そこ疑い出したら、もうなんもできねーよ。とりあえずさ、実際に見た種族ってヒューマンくらいじゃん?今はまだ比較するのは無理っしょ)
(まぁ、この先どうするか分からないけどさ。見た目じゃ判別できない、鑑定もできていそうにない、となれば、バレるようなこともないんじゃない?そもそも、この国にヒューマン以外も普通にいるかもしんないし)
(でも迫害とかあるかもしれないし、念のため私たちの種族については秘密にしておこうよ。違和感持たれてないなら、ヒューマンで押し通そう)
(…そうだな。こんな閉じこもった場所でもし衝突なんかすれば、お互いほぼ自滅行為になる)
(あんなに小さな子たちがいる前で、そんな血生臭い事になるとはさすがに思いたくないけど…。ここの人たちの価値観とかわからないから、警戒し過ぎるくらいが今はちょうど良いのかもね)

 種族の件はこれで一旦話がまとまった。その事に考えを集中していたからか、先ほどまであった直情的な怒りは少し落ち着いていたが、流石に皆の顔が晴れるようなことはない。モヤモヤした感情を胸に抱いたままだ。

 とりあえず当面はここに留まることになりそうだと溜め息を吐くと、皆ポツポツとその場に座り込み始めた。騎士たちとの距離は遠く保ったまま、隅の方で壁や柱を背にしてもたれかかったりなどして、顔だけは向き合うように、円になるような形で固まった。

(…で、これからどうする?)
(どうするもこうするも、な。ここにいるか、出ていくか、しかないだろ)
(結局また振り出しか…。もういい加減、気分的に疲れてきたな。身体は全然軽いままだけどさ)
(うん、でも、なんかお腹は空いてきた)
(それはさすがにね…。時間がわからないけど、差し込んでる陽が陰ってきているから、もう夕方くらいなんじゃないかな。誰かサバイバルとかに詳しい人いない?)
(キャンプの経験は少しあるけど、文明の利器あってこそ、だからねあれは)
(それより、自然あってこそだろ。こんな地下に身一つで潜ったまま、何ができるかって話よ)
(あーやだやだ。こないだ見たグロ映画思い出した)
(ちょっとやめて。それ以上は何も聞きたくない)
(…このチョコ、食べる?)
(ありがたいけど、それは最後まで取っておいて)
(最後とか言うなよぉ)

 皆浮かない顔つきで、これでもかというくらい溜め息を吐き合った。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

神によって転移すると思ったら異世界人に召喚されたので好きに生きます。

SaToo
ファンタジー
仕事帰りの満員電車に揺られていたサト。気がつくと一面が真っ白な空間に。そこで神に異世界に行く話を聞く。異世界に行く準備をしている最中突然体が光だした。そしてサトは異世界へと召喚された。神ではなく、異世界人によって。しかも召喚されたのは2人。面食いの国王はとっととサトを城から追い出した。いや、自ら望んで出て行った。そうして神から授かったチート能力を存分に発揮し、異世界では自分の好きなように暮らしていく。 サトの一言「異世界のイケメン比率高っ。」

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜

ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。 社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。 せめて「男」になって死にたかった…… そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった! もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

石しか生成出来ないと追放されましたが、それでOKです!

うどん五段
ファンタジー
夏祭り中に異世界召喚に巻き込まれた、ただの一般人の桜木ユリ。 皆がそれぞれ素晴らしいスキルを持っている中、桜木の持つスキルは【石を出す程度の力】しかなく、余りにも貧相なそれは皆に笑われて城から金だけ受け取り追い出される。 この国ではもう直ぐ戦争が始まるらしい……。 召喚された3人は戦うスキルを持っていて、桜木だけが【石を出す程度の能力】……。 確かに貧相だけれど――と思っていたが、意外と強いスキルだったようで!? 「こうなったらこの国を抜け出して平和な国で就職よ!」 気合いを入れ直した桜木は、商業ギルド相手に提案し、国を出て違う場所で新生活を送る事になるのだが、辿り着いた国にて、とある家族と出会う事となる――。 ★暫く書き溜めが結構あるので、一日三回更新していきます! 応援よろしくお願いします! ★カクヨム・小説家になろう・アルファポリスで連載中です。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

神様がチートをくれたんだが、いやこれは流石にチートすぎんだろ...

自称猫好き
ファンタジー
幼い頃に両親を無くし、ショックで引きこもっていた俺、井上亮太は高校生になり覚悟をきめやり直そう!!そう思った矢先足元に魔法陣が「えっ、、、なにこれ」 意識がなくなり目覚めたら神様が土下座していた「すまんのぉー、少々不具合が起きてのぉ、其方を召喚させてしもたわい」 「大丈夫ですから頭を上げて下さい」 「じゃがのぅ、其方大事な両親も本当は私のせいで死んでしもうてのぉー、本当にすまない事をした。ゆるしてはくれぬだろうがぁ」「そんなのすぎた事です。それに今更どうにもなりませんし、頭を上げて下さい」 「なんて良い子なんじゃ。其方の両親の件も合わせて何か欲しいものとかは、あるかい?」欲しいものとかねぇ~。「いえ大丈夫ですよ。これを期に今からやり直そうと思います。頑張ります!」そして召喚されたらチートのなかのチートな能力が「いや、これはおかしいだろぉよ...」 初めて書きます!作者です。自分は、語学が苦手でところどころ変になってたりするかもしれないですけどそのときは教えてくれたら嬉しいです!アドバイスもどんどん下さい。気分しだいの更新ですが優しく見守ってください。これから頑張ります!

チート転生~チートって本当にあるものですね~

水魔沙希
ファンタジー
死んでしまった片瀬彼方は、突然異世界に転生してしまう。しかも、赤ちゃん時代からやり直せと!?何げにステータスを見ていたら、何やら面白そうなユニークスキルがあった!! そのスキルが、随分チートな事に気付くのは神の加護を得てからだった。 亀更新で気が向いたら、随時更新しようと思います。ご了承お願いいたします。

【☆完結☆】転生箱庭師は引き籠り人生を送りたい

うどん五段
ファンタジー
昔やっていたゲームに、大型アップデートで追加されたソレは、小さな箱庭の様だった。 ビーチがあって、畑があって、釣り堀があって、伐採も出来れば採掘も出来る。 ビーチには人が軽く住めるくらいの広さがあって、畑は枯れず、釣りも伐採も発掘もレベルが上がれば上がる程、レアリティの高いものが取れる仕組みだった。 時折、海から流れつくアイテムは、ハズレだったり当たりだったり、クジを引いてる気分で楽しかった。 だから――。 「リディア・マルシャン様のスキルは――箱庭師です」 異世界転生したわたくし、リディアは――そんな箱庭を目指しますわ! ============ 小説家になろうにも上げています。 一気に更新させて頂きました。 中国でコピーされていたので自衛です。 「天安門事件」

いきなり異世界って理不尽だ!

みーか
ファンタジー
 三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。   自称神様の作った機械のシステムエラーで地球には帰れない。地球の物は何でも魔力と交換できるようにしてもらい、異世界で居心地良く暮らしていきます!

お前じゃないと、追い出されたが最強に成りました。ざまぁ~見ろ(笑)

いくみ
ファンタジー
お前じゃないと、追い出されたので楽しく復讐させて貰いますね。実は転生者で今世紀では貴族出身、前世の記憶が在る、今まで能力を隠して居たがもう我慢しなくて良いな、開き直った男が楽しくパーティーメンバーに復讐していく物語。 --------- 掲載は不定期になります。 追記 「ざまぁ」までがかなり時間が掛かります。 お知らせ カクヨム様でも掲載中です。

処理中です...