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18章 穴を埋めてくれるもの
第5話 満ち足りるもの
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次に青木さんが来られたのは、少し間が開いた3週間後の日曜日だった。青木さんは以前とは見違える様に顔色も良く、はつらつとしたした笑顔を浮かべている。
「青木さんいらっしゃい。なぁに? 凄っごく元気そう」
「えへへ」
青木さんは嬉しそうに笑うと、これまで通りドアから近い開いている席に掛ける。佳鳴が渡したおしぼりで手を拭いて「ふぅ」と心地よさげな溜め息を吐いた。
「今日はさばの味噌煮なのよね。凄く楽しみ」
「うん。焼き豆腐と白ねぎと一緒に煮込んだよ。今日もお酒無しで?」
「ううん、お酒ちょうだい。ウイスキーの水割りで」
「あれ、珍しいね」
以前はウイスキーを避けていたのに。
「うん。今は美味しく飲める様になったの」
青木さんはにこにこと応える。
今日のメインはさばと焼き豆腐と白ねぎの味噌煮である。さばは霜降りをして臭みを抜き、焼き豆腐と斜め切りにしたたっぷりの白ねぎと一緒に味噌で煮込んでいる。白ねぎは青いところも余すとこなく使っていて、それが彩りになっている。しょうがの千切りも使っていてそれがほのかなアクセントになる。
小鉢一品目は糸こんにゃくの明太子和えだ。茹でてあく抜きをした白い糸こんにゃくを酒とみりんで炒りつけて、粗熱をとったらほぐした明太子と和えた。
もう一品は長芋とわかめの酢の物だ。拍子木切りにした長芋と塩抜きした塩蔵わかめを合わせて、お酢ベースで作った和え衣で和えてある。
ウイスキーの水割りに続けて整えたお料理をお出しすると、青木さんは「今日も美味しそう。少しご無沙汰になっちゃったから余計に嬉しい」と笑った。
青木さんはさっそく「いただきます」と手を合わせて箸を取る。さばをほぐして味噌をたっぷりと絡めて口に入れた。
「あ~さば味噌美味しい~。私結構お魚好きなの。特に背の青い魚。ひとり暮らしだとやっぱりお惣菜に頼っちゃうんだけどね。だからちょっと味が濃く感じちゃう。ここのはやっぱり優しい味で良いね。癒されるな~」
「ありがとうございます」
千隼がにっこりと微笑む。
「これもハヤさんが作ったのよねぇ。凄いなぁ。小鉢も美味しい。明太子大好き。これこんにゃくなのよね?」
「うん、白い糸こんにゃくだよ。味が淡白だから明太子合うでしょ」
「うん。酢の物も美味しい。長芋とお酢ってさっぱりして良いね。ここでご飯食べると健康になれる気がする」
「ありがとう」
青木さんは一通り食べた後箸を置いてウイスキーの水割りを傾ける。そして口を開いた。
「扇木さん、ハヤさん、あのね」
「うん?」
「私ね、転職したの」
「あら、そうなんだ。お昼のお仕事?」
「ううん、夜は夜なの。でもね、小料理屋なの」
「へぇ?」
佳鳴は目を丸くする。小料理屋だとクラブよりお給金はそれなりに下がってしまうと思うが。それは昼の仕事でも同様だが。
経営者になるか、会社勤めであってもそれなりの地位にならなければ、どうしてもホストクラブに支払える充分な額を稼ぐのは難しいと思われる。
「勤めてたクラブと同じ系列会社の小料理屋なの。前に先輩のおこぼれで同伴させてもらったことがあって、その時に連れて行ってもらったお店でね。カウンタに座ったんだけど、お店の人とした世間話とかが楽しかったなぁって思い出したの。きっかけはこの煮物屋さんの中に入らせてもらったことでね。お店の人にしてみたらそれがお仕事なんだろうけど、私にとっては久しぶりの他愛の無い会話だったの。楽しかったな、癒されたなって。その後は店に入ってまたがんがん飲む羽目になったからすっかり忘れちゃってたけど、思い出したの。でね」
青木さんは「へへ」と照れた様に小さく笑う。
「ホストクラブに通わなくても大丈夫になったの」
「そうなの? 心境の変化があったんだ」
「あったあった。大有りよ。ここで働かせてもらったのがあったからあの時のことを思い出せたんだと思う。転職は賭けだったんだけど、初日からお客さまが皆良くしてくださってね。お客さまはクラブに行く前の同伴も多いからね。先輩ホステスも一緒だから気安く話し掛けてくれるの。クラブみたいにたくさんお酒が入っているわけじゃ無いから普通のお話を普通にして、笑ったりもしてね。でね、仕事が終わったら達成感というか満足感? 充足感って言ったら良いのかな、そういうのがあって、ホストクラブに行こうっていう気が無くなってたの。前はね、胸の中にぽっかり穴が開いた様な感じで、それでホストにすがってたんだけど、その必要が無くなったって言うか」
青木さんは一旦言葉を切り、「ふぅ」とひと心地つく。そして苦笑する様に首を傾げた。
「私、やっぱり扇木さんが言ってた通り寂しかったんだと思う。別に家庭環境がどうとかとか全然無くて、ただ単にもともと寂しがりやなんだろうね。だからそれを埋めるために男性を追っかけてたんだと思う。でも他愛の無い話で充分だったのね。本質のところを解って無かったのね。それが解ったらすっと腑に落ちて。バーとかに行ってた時のバーテンとのお話もそうよね。今更だけど、自分に向けてくれる厚意とか優しさって凄いのね。すっと染み入って心が喜ぶの。彼氏と付き合っててもあるものだけど、そこにこだわること無かったのね」
「それはさ、青木さん」
佳鳴が言うと、青木さんは「ん?」と目を丸くする。
「青木さんがお客さまに真摯に向かっているからだよ。お客さまを尊重して気遣っているからこそ、お客さまも応えてくださると思う。そういうお店だったら繁華街にあるのかな」
「うん。勤めてたクラブの近く」
「だったら客層がややこしいこともあると思う。遅い時間だったら来た時点で酔っ払ってたり。そういうお客さまとの接し方って難しいと思う。うちではそういうの滅多に無いもん。でもそういうお客さまにも分け隔てなく接するから、そういう暖かいものが帰って来るんだと思うよ。誰だってにこにこ話し掛けてくれたら嬉しいもんね」
「そうね。ホスト相手だったらどうしてもすがっちゃうんだけど、お客さま相手だったら、ええっと、対等って言うのも違うけど、うん、違うな、こっちがお客さまに楽しんで欲しいって思うから、自然と優しい気持ちになれるって言うか」
「だから心が癒されるのかもね。解るよ。もちろん気は使うと思うよ。お客さまだもん。それは当たり前だよね。でもお客さまも同じ様に心を砕いてくださるんだよね」
「そっか、そうよね。これからどうなるかなんて判らないけど、私、どうにかやっていけそう。親もね、ホストクラブ通い止められたって言ったら家に帰って来て良いって言ってくれて。でもこれを機にちゃんと自立もしようかなって思って。まずは引越し資金を貯めるの。今安アパートに住んでるからセキュリティ心配なのよね」
「良く今までなんとも無かったね。無かったんだよね?」
「うん。幸いね。住むところもだけど、少しでもちゃんとしたい。ホスト代払うためにホステスやってた時は本当に心が荒んでた。私には荷が勝ちすぎる仕事だったのよ。あれはね、本当に向かないなら大変な仕事よ。どんな仕事でもそうなんだけど、酔っ払い相手があんなに大変だなんてね。会社の上司のくだ巻きなんて比じゃ無いよ。今も酔っ払いの相手ではあるんだけど、場が違うからね」
「じゃあその小料理屋さんでは良いお仕事ができてるんだね。良かった」
「うん。扇木さんとハヤさんのお陰だよ。本当にありがとう」
「ううん、私たちは何もしてないよ」
佳鳴が小首を傾げると、青木さんは「ううん」と首を振る。
「扇木さんとハヤさんが話を聞いてくれて、大切なこのお店に立たせてくれたから、私は自分を変えようって思うことができたの。ありがとう」
そう言う青木さんの笑顔は本当に晴れ晴れとしたもので、青木さんの心が浮上していることが判る。
「少しでもお役に立てたんだったら良かったよ。私も嬉しい」
「うん」
青木さんも嬉しそうに笑って、ウイスキーの水割りを傾ける。
「あはは、ウイスキーってやっぱり美味しいよね」
「うちでお出ししているのはそんな高価なものじゃ無いけどね。でも外国ブランドの美味しいやつ選んでるよ」
「国産ウイスキーの美味しいのって高いのよねぇ。外国のも充分美味しいよね。これも嬉しいことのひとつ。ウイスキーもだけどお酒が美味しいって思えること。お仕事後の缶ビールが本当に美味しくてね」
「解るなぁ。私も飲むよ。家の方の冷蔵庫、いつでも缶ビール入ってるもん」
「働く女の癒しアイテムだよね」
すると近くにいた千隼から「男の癒しでもありますよー」と突っ込みが入り、佳鳴と青木さんは「あはは」と笑い声を上げた。
ホステスだってホストだって、需要があるからこそ成り立っている。どちらも大変なお仕事だ。
佳鳴も千隼も、そして青木さんも、それを否定しているわけでは無いのだ。必要な存在だと思っている。
だが今回青木さんは自身のキャパシティを超えてしまった。そして荒んでしまったのだ。
それにも食傷気味になっていて、佳鳴には抜け出すきっかけを欲しがっている様に見えた。だから後押しになればとカウンタに入ってもらったのだ。
今青木さんは、初めてこの煮物屋さんに来られた時と打って変わって、心の底から笑っている様に見えた。
佳鳴はそんな青木さんの笑顔を見てそっと微笑む。小料理屋さんの仕事も良いことばかりでは無いだろうが、今の青木さんなら乗り越えられるだろう。
そしてまた、この煮物屋さんがその一助になれば良いなと思った。
「青木さんいらっしゃい。なぁに? 凄っごく元気そう」
「えへへ」
青木さんは嬉しそうに笑うと、これまで通りドアから近い開いている席に掛ける。佳鳴が渡したおしぼりで手を拭いて「ふぅ」と心地よさげな溜め息を吐いた。
「今日はさばの味噌煮なのよね。凄く楽しみ」
「うん。焼き豆腐と白ねぎと一緒に煮込んだよ。今日もお酒無しで?」
「ううん、お酒ちょうだい。ウイスキーの水割りで」
「あれ、珍しいね」
以前はウイスキーを避けていたのに。
「うん。今は美味しく飲める様になったの」
青木さんはにこにこと応える。
今日のメインはさばと焼き豆腐と白ねぎの味噌煮である。さばは霜降りをして臭みを抜き、焼き豆腐と斜め切りにしたたっぷりの白ねぎと一緒に味噌で煮込んでいる。白ねぎは青いところも余すとこなく使っていて、それが彩りになっている。しょうがの千切りも使っていてそれがほのかなアクセントになる。
小鉢一品目は糸こんにゃくの明太子和えだ。茹でてあく抜きをした白い糸こんにゃくを酒とみりんで炒りつけて、粗熱をとったらほぐした明太子と和えた。
もう一品は長芋とわかめの酢の物だ。拍子木切りにした長芋と塩抜きした塩蔵わかめを合わせて、お酢ベースで作った和え衣で和えてある。
ウイスキーの水割りに続けて整えたお料理をお出しすると、青木さんは「今日も美味しそう。少しご無沙汰になっちゃったから余計に嬉しい」と笑った。
青木さんはさっそく「いただきます」と手を合わせて箸を取る。さばをほぐして味噌をたっぷりと絡めて口に入れた。
「あ~さば味噌美味しい~。私結構お魚好きなの。特に背の青い魚。ひとり暮らしだとやっぱりお惣菜に頼っちゃうんだけどね。だからちょっと味が濃く感じちゃう。ここのはやっぱり優しい味で良いね。癒されるな~」
「ありがとうございます」
千隼がにっこりと微笑む。
「これもハヤさんが作ったのよねぇ。凄いなぁ。小鉢も美味しい。明太子大好き。これこんにゃくなのよね?」
「うん、白い糸こんにゃくだよ。味が淡白だから明太子合うでしょ」
「うん。酢の物も美味しい。長芋とお酢ってさっぱりして良いね。ここでご飯食べると健康になれる気がする」
「ありがとう」
青木さんは一通り食べた後箸を置いてウイスキーの水割りを傾ける。そして口を開いた。
「扇木さん、ハヤさん、あのね」
「うん?」
「私ね、転職したの」
「あら、そうなんだ。お昼のお仕事?」
「ううん、夜は夜なの。でもね、小料理屋なの」
「へぇ?」
佳鳴は目を丸くする。小料理屋だとクラブよりお給金はそれなりに下がってしまうと思うが。それは昼の仕事でも同様だが。
経営者になるか、会社勤めであってもそれなりの地位にならなければ、どうしてもホストクラブに支払える充分な額を稼ぐのは難しいと思われる。
「勤めてたクラブと同じ系列会社の小料理屋なの。前に先輩のおこぼれで同伴させてもらったことがあって、その時に連れて行ってもらったお店でね。カウンタに座ったんだけど、お店の人とした世間話とかが楽しかったなぁって思い出したの。きっかけはこの煮物屋さんの中に入らせてもらったことでね。お店の人にしてみたらそれがお仕事なんだろうけど、私にとっては久しぶりの他愛の無い会話だったの。楽しかったな、癒されたなって。その後は店に入ってまたがんがん飲む羽目になったからすっかり忘れちゃってたけど、思い出したの。でね」
青木さんは「へへ」と照れた様に小さく笑う。
「ホストクラブに通わなくても大丈夫になったの」
「そうなの? 心境の変化があったんだ」
「あったあった。大有りよ。ここで働かせてもらったのがあったからあの時のことを思い出せたんだと思う。転職は賭けだったんだけど、初日からお客さまが皆良くしてくださってね。お客さまはクラブに行く前の同伴も多いからね。先輩ホステスも一緒だから気安く話し掛けてくれるの。クラブみたいにたくさんお酒が入っているわけじゃ無いから普通のお話を普通にして、笑ったりもしてね。でね、仕事が終わったら達成感というか満足感? 充足感って言ったら良いのかな、そういうのがあって、ホストクラブに行こうっていう気が無くなってたの。前はね、胸の中にぽっかり穴が開いた様な感じで、それでホストにすがってたんだけど、その必要が無くなったって言うか」
青木さんは一旦言葉を切り、「ふぅ」とひと心地つく。そして苦笑する様に首を傾げた。
「私、やっぱり扇木さんが言ってた通り寂しかったんだと思う。別に家庭環境がどうとかとか全然無くて、ただ単にもともと寂しがりやなんだろうね。だからそれを埋めるために男性を追っかけてたんだと思う。でも他愛の無い話で充分だったのね。本質のところを解って無かったのね。それが解ったらすっと腑に落ちて。バーとかに行ってた時のバーテンとのお話もそうよね。今更だけど、自分に向けてくれる厚意とか優しさって凄いのね。すっと染み入って心が喜ぶの。彼氏と付き合っててもあるものだけど、そこにこだわること無かったのね」
「それはさ、青木さん」
佳鳴が言うと、青木さんは「ん?」と目を丸くする。
「青木さんがお客さまに真摯に向かっているからだよ。お客さまを尊重して気遣っているからこそ、お客さまも応えてくださると思う。そういうお店だったら繁華街にあるのかな」
「うん。勤めてたクラブの近く」
「だったら客層がややこしいこともあると思う。遅い時間だったら来た時点で酔っ払ってたり。そういうお客さまとの接し方って難しいと思う。うちではそういうの滅多に無いもん。でもそういうお客さまにも分け隔てなく接するから、そういう暖かいものが帰って来るんだと思うよ。誰だってにこにこ話し掛けてくれたら嬉しいもんね」
「そうね。ホスト相手だったらどうしてもすがっちゃうんだけど、お客さま相手だったら、ええっと、対等って言うのも違うけど、うん、違うな、こっちがお客さまに楽しんで欲しいって思うから、自然と優しい気持ちになれるって言うか」
「だから心が癒されるのかもね。解るよ。もちろん気は使うと思うよ。お客さまだもん。それは当たり前だよね。でもお客さまも同じ様に心を砕いてくださるんだよね」
「そっか、そうよね。これからどうなるかなんて判らないけど、私、どうにかやっていけそう。親もね、ホストクラブ通い止められたって言ったら家に帰って来て良いって言ってくれて。でもこれを機にちゃんと自立もしようかなって思って。まずは引越し資金を貯めるの。今安アパートに住んでるからセキュリティ心配なのよね」
「良く今までなんとも無かったね。無かったんだよね?」
「うん。幸いね。住むところもだけど、少しでもちゃんとしたい。ホスト代払うためにホステスやってた時は本当に心が荒んでた。私には荷が勝ちすぎる仕事だったのよ。あれはね、本当に向かないなら大変な仕事よ。どんな仕事でもそうなんだけど、酔っ払い相手があんなに大変だなんてね。会社の上司のくだ巻きなんて比じゃ無いよ。今も酔っ払いの相手ではあるんだけど、場が違うからね」
「じゃあその小料理屋さんでは良いお仕事ができてるんだね。良かった」
「うん。扇木さんとハヤさんのお陰だよ。本当にありがとう」
「ううん、私たちは何もしてないよ」
佳鳴が小首を傾げると、青木さんは「ううん」と首を振る。
「扇木さんとハヤさんが話を聞いてくれて、大切なこのお店に立たせてくれたから、私は自分を変えようって思うことができたの。ありがとう」
そう言う青木さんの笑顔は本当に晴れ晴れとしたもので、青木さんの心が浮上していることが判る。
「少しでもお役に立てたんだったら良かったよ。私も嬉しい」
「うん」
青木さんも嬉しそうに笑って、ウイスキーの水割りを傾ける。
「あはは、ウイスキーってやっぱり美味しいよね」
「うちでお出ししているのはそんな高価なものじゃ無いけどね。でも外国ブランドの美味しいやつ選んでるよ」
「国産ウイスキーの美味しいのって高いのよねぇ。外国のも充分美味しいよね。これも嬉しいことのひとつ。ウイスキーもだけどお酒が美味しいって思えること。お仕事後の缶ビールが本当に美味しくてね」
「解るなぁ。私も飲むよ。家の方の冷蔵庫、いつでも缶ビール入ってるもん」
「働く女の癒しアイテムだよね」
すると近くにいた千隼から「男の癒しでもありますよー」と突っ込みが入り、佳鳴と青木さんは「あはは」と笑い声を上げた。
ホステスだってホストだって、需要があるからこそ成り立っている。どちらも大変なお仕事だ。
佳鳴も千隼も、そして青木さんも、それを否定しているわけでは無いのだ。必要な存在だと思っている。
だが今回青木さんは自身のキャパシティを超えてしまった。そして荒んでしまったのだ。
それにも食傷気味になっていて、佳鳴には抜け出すきっかけを欲しがっている様に見えた。だから後押しになればとカウンタに入ってもらったのだ。
今青木さんは、初めてこの煮物屋さんに来られた時と打って変わって、心の底から笑っている様に見えた。
佳鳴はそんな青木さんの笑顔を見てそっと微笑む。小料理屋さんの仕事も良いことばかりでは無いだろうが、今の青木さんなら乗り越えられるだろう。
そしてまた、この煮物屋さんがその一助になれば良いなと思った。
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