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4章 心と身体の痩せ方太り方
第7話 心も身体もバランス良く
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「……こんばんは」
照れ臭そうに言いながら入ってきたのはお茄子さん。8月になり、すっかりと真夏の気候だった。陽が陰ってもなかなか気温と湿度は下がってくれず、熱帯夜が続いている。
「いらっしゃいませ」
お茄子さんの首筋には汗が光っている。外は相当暑かっただろう。みのりは冷たいおしぼりとお冷を渡した。
「あの、これで汗拭かせてもろてええすか? 冷たくて気持ち良さそうす」
「もちろんですよ。今日もほんまに暑いですもんねぇ」
おずおずと聞いてきたお茄子さんに、みのりは笑顔で応える。本当に育ちの良い人だと思う。これが大阪のおっちゃんなら、断りなど無く流れ作業の様にごしごしと顔を拭く。それが当たり前だと言う様に。
「ありがとうっす」
ほっとした様に表情を綻ばせたお茄子さんは、心地よさげに汗を拭いた。みのりは新しいおしぼりを用意し、使い終わったものと交換する。
「あ、ありがとうす。助かるっす」
そうして氷を浮かべたお冷も一気に飲み干した。みのりはピッチャーでお代わりを注ぎ足す。
「あの、竜田揚げも魅力なんすけど、今日はお魚を食べてみたいんす。量は多いすか?」
「ひと切れのもんなら他のお肉料理よりも控えめになりますよ。今日は太刀魚の照り焼きかムニエルをご用意してます。あとはあじフライ、こちらは1尾からご注文いただけます」
以前、お茄子さんの竜田揚げの量を加減してから、竜田揚げも最小1個から1個単位で選んでもらえる様にした。そうすればお茄子さんにもいつでも食べてもらえる。少食などで敬遠していた様なお客さまにも注文してもらえるかも知れない。
「ほな、太刀魚の照り焼きください。お惣菜は蒸しなすください。ごはんは白米の小でお願いします」
「はい。お味噌汁もお付けしてええですか?」
「はい。お願いします」
太刀魚はぶつ切りの状態で仕入れている。3枚おろしにすれば骨も気にならなくなるが、太刀魚は平べったい魚で、また、おろしてしまうと火を通しているうちに身がばらばらになってしまう。太刀魚は繊細なお魚なのだ。もちろん背びれと内臓はきちんと処理をし、お塩と日本酒で臭み抜きもする。
太刀魚の表面に片栗粉を薄くまぶし、菜種油で両面をこんがりと焼いて火を通し、お醤油と日本酒、みりんを合わせた照り焼きのたれを流し入れてしっかりと絡める。
その間に蒸しなすだ。今日は水なすでは無く、普通のお茄子である。乱切りにして蒸したお茄子をしょうが出汁醤油で和える。
しょうが出汁醤油はお出汁と煮切った日本酒とみりん、お醤油とすり下ろしたしょうがを合わせて作る。それを出す直前にお茄子と和えるのだ。
淡白ながらもほのかに甘いとろりとしたお茄子に、爽やかなしょうがが香る一品だ。
そうして整えた定食を、お茄子さんにお出しする。
「ありがとうっす。あの、おれ、自分でも調べてみたんす。おれ、発芽玄米の食感が好きで、家でもそれを食べてたんすけど、それよりも白米の方がエネルギーになるんすね。それから白米を食べる様にしてるんす。でも白米も美味しいっすね」
「そうですね。でも実際のところ、カロリーに関しては白米と発芽玄米はあんま変わらんのですよ。ですのでお好きな方を食べてもらえたら大丈夫やと思いますよ。お魚も大事ですよね。お肉ばっかりやったら、中性脂肪とかが上がってしもたりしますから。卵もええですよね」
ダイエット中のお米に玄米や発芽玄米が適していると言われているのは、その栄養価からであるとみのりは思っている。
発芽玄米は、その名の通り玄米を発芽させたものである。玄米は収穫したお米から籾殻のみを取り除いたもので、脂質は白米よりも高いのだが、食物繊維やカリウム、マグネシウムなどの含有量が格段に上がる。
その玄米を発芽させてやると玄米中の酵素が活性化されるので、玄米よりも栄養価が上がるとされている。特にストレス軽減に役立つと言われているギャバが豊富に含まれる。ギャバは他にも血圧上昇を抑えたり睡眠の質向上、中性脂肪軽減が期待できるのだ。
「そうなんすね。ほなまた、次からは発芽玄米にするっす」
「よろしかったら交換しますよ」
「いえ、今日は白米で。これはこれで美味しいっす。いただきます」
お茄子さんは言って、まずはお味噌汁をすすった。
今のお茄子さんは、自信がみなぎっている様に見える。目は輝き、頬も心なしかふっくらとしてきている様な。運動を始め、身体にも力が蓄えられている様に思える。
バランスの良いお食事も運動も、続けることが大事である。それができれば自信にもなるし、身体も整えられる。いいこと尽くめだ。
目的は大きな声を出すことだったが、これなら自然にお腹に力が入って、叶えられるだろう。健康を自覚することができれば、自然とできる様にもなる。
そうなればお仕事にももっと張りが出て、独立されるためにもっと励むことができるだろう。
お茄子さんにはぜひとも夢を叶えて欲しい。みのりがお茄子さんにできることは少ないだろうが、こうしてお食事で支えることができたなら。
きっと、みんなが幸せを感じることができると思うのだ。
照れ臭そうに言いながら入ってきたのはお茄子さん。8月になり、すっかりと真夏の気候だった。陽が陰ってもなかなか気温と湿度は下がってくれず、熱帯夜が続いている。
「いらっしゃいませ」
お茄子さんの首筋には汗が光っている。外は相当暑かっただろう。みのりは冷たいおしぼりとお冷を渡した。
「あの、これで汗拭かせてもろてええすか? 冷たくて気持ち良さそうす」
「もちろんですよ。今日もほんまに暑いですもんねぇ」
おずおずと聞いてきたお茄子さんに、みのりは笑顔で応える。本当に育ちの良い人だと思う。これが大阪のおっちゃんなら、断りなど無く流れ作業の様にごしごしと顔を拭く。それが当たり前だと言う様に。
「ありがとうっす」
ほっとした様に表情を綻ばせたお茄子さんは、心地よさげに汗を拭いた。みのりは新しいおしぼりを用意し、使い終わったものと交換する。
「あ、ありがとうす。助かるっす」
そうして氷を浮かべたお冷も一気に飲み干した。みのりはピッチャーでお代わりを注ぎ足す。
「あの、竜田揚げも魅力なんすけど、今日はお魚を食べてみたいんす。量は多いすか?」
「ひと切れのもんなら他のお肉料理よりも控えめになりますよ。今日は太刀魚の照り焼きかムニエルをご用意してます。あとはあじフライ、こちらは1尾からご注文いただけます」
以前、お茄子さんの竜田揚げの量を加減してから、竜田揚げも最小1個から1個単位で選んでもらえる様にした。そうすればお茄子さんにもいつでも食べてもらえる。少食などで敬遠していた様なお客さまにも注文してもらえるかも知れない。
「ほな、太刀魚の照り焼きください。お惣菜は蒸しなすください。ごはんは白米の小でお願いします」
「はい。お味噌汁もお付けしてええですか?」
「はい。お願いします」
太刀魚はぶつ切りの状態で仕入れている。3枚おろしにすれば骨も気にならなくなるが、太刀魚は平べったい魚で、また、おろしてしまうと火を通しているうちに身がばらばらになってしまう。太刀魚は繊細なお魚なのだ。もちろん背びれと内臓はきちんと処理をし、お塩と日本酒で臭み抜きもする。
太刀魚の表面に片栗粉を薄くまぶし、菜種油で両面をこんがりと焼いて火を通し、お醤油と日本酒、みりんを合わせた照り焼きのたれを流し入れてしっかりと絡める。
その間に蒸しなすだ。今日は水なすでは無く、普通のお茄子である。乱切りにして蒸したお茄子をしょうが出汁醤油で和える。
しょうが出汁醤油はお出汁と煮切った日本酒とみりん、お醤油とすり下ろしたしょうがを合わせて作る。それを出す直前にお茄子と和えるのだ。
淡白ながらもほのかに甘いとろりとしたお茄子に、爽やかなしょうがが香る一品だ。
そうして整えた定食を、お茄子さんにお出しする。
「ありがとうっす。あの、おれ、自分でも調べてみたんす。おれ、発芽玄米の食感が好きで、家でもそれを食べてたんすけど、それよりも白米の方がエネルギーになるんすね。それから白米を食べる様にしてるんす。でも白米も美味しいっすね」
「そうですね。でも実際のところ、カロリーに関しては白米と発芽玄米はあんま変わらんのですよ。ですのでお好きな方を食べてもらえたら大丈夫やと思いますよ。お魚も大事ですよね。お肉ばっかりやったら、中性脂肪とかが上がってしもたりしますから。卵もええですよね」
ダイエット中のお米に玄米や発芽玄米が適していると言われているのは、その栄養価からであるとみのりは思っている。
発芽玄米は、その名の通り玄米を発芽させたものである。玄米は収穫したお米から籾殻のみを取り除いたもので、脂質は白米よりも高いのだが、食物繊維やカリウム、マグネシウムなどの含有量が格段に上がる。
その玄米を発芽させてやると玄米中の酵素が活性化されるので、玄米よりも栄養価が上がるとされている。特にストレス軽減に役立つと言われているギャバが豊富に含まれる。ギャバは他にも血圧上昇を抑えたり睡眠の質向上、中性脂肪軽減が期待できるのだ。
「そうなんすね。ほなまた、次からは発芽玄米にするっす」
「よろしかったら交換しますよ」
「いえ、今日は白米で。これはこれで美味しいっす。いただきます」
お茄子さんは言って、まずはお味噌汁をすすった。
今のお茄子さんは、自信がみなぎっている様に見える。目は輝き、頬も心なしかふっくらとしてきている様な。運動を始め、身体にも力が蓄えられている様に思える。
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目的は大きな声を出すことだったが、これなら自然にお腹に力が入って、叶えられるだろう。健康を自覚することができれば、自然とできる様にもなる。
そうなればお仕事にももっと張りが出て、独立されるためにもっと励むことができるだろう。
お茄子さんにはぜひとも夢を叶えて欲しい。みのりがお茄子さんにできることは少ないだろうが、こうしてお食事で支えることができたなら。
きっと、みんなが幸せを感じることができると思うのだ。
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