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6章 肝臓不調のお爺ちゃんと、癒しのご飯
第4話 アサギくんが丁寧に教えてくれたからなぁ
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買い物を済ませてバリーの家に行くと、バリーは嬉しそうに笑顔で出迎えてくれた。
バリーには「浅葱が食事を作るので、一緒に食べよう」と言ってある。
だが勿論別の魂胆があるのだ。
浅葱は買い込んで来た材料を台所で広げる。
「楽しみじゃなぁ。何を作ってくれるのかなぁ」
「それなんですが」
浅葱はにっこりと笑うと、俎板に出した包丁をすすっとバリーの方に寄せた。
「バリーさん、お料理してみませんか?」
「え、わ、儂が!?」
浅葱の台詞に、バリーが眼を剥く。
「いや、儂は料理なんぞまともにした事が無くて」
「はい。なのでそんな方でも作りやすいお料理を考えてみました。一緒に作ってみませんか?」
「だが、儂に出来るんだろうか」
「大丈夫ですよ。お教えします。毎日外食とかお惣菜ですと、やっぱりあまり身体に良く無いと思いますよ。少しでも作れるものがある方が良いと思います」
「そんなものなのかなぁ」
「そんなものなんですよ。なので、まずは比較的手軽なものから作ってみましょう」
「そうだなぁ。そう言うのなら、やってみようかなぁ」
バリーはまだ少し戸惑いながら、それでもやる気を見せてくれた。
「その意気です。では、下拵えから初めて行きましょう。まずは、浅蜊の砂出しをします。水を張ったバットに浅蜊を平たく入れて、蓋をして中を暗くしたら、浅蜊が呼吸をして砂を吐きます。浅蜊は夜行性なんですよ」
「成る程なぁ」
バリーが浅葱に言われた通りに手を動かす。
この世界の海水は真水なので、塩水では無く普通に水道の水で砂出しが出来るのである。
「では、その間にお野菜を準備しましょう。まずはにんにくを包丁の側面で潰します。こうして」
俎板の上に皮を剥いたにんにくを置き、包丁の側面を押し付ける。
「手を切らない様に気を付けて、包丁でにんにくを押し潰します。掌でぐいっと」
「お、おお、こんな事して大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。ぐっと力を入れてやっちゃってください」
慣れない刃物を扱うからか、バリーは恐る恐る力を込める。するとにんにくから小さくめりっと音がした。
「その調子です。思い切ってやっちゃって大丈夫ですよ」
「ふ、ふん!」
バリーは少し鼻息を荒くし、気合いを入れた様な声を上げると、一気に包丁を押し込んだ。
「ど、どうじゃろうか」
包丁を上げると、にんにくは見事に潰れてぺちゃんこになっていた。繊維も程良く裂けて良い感じだ。それを2欠分用意する。
「バッチリです。で、この中心の新芽は苦味があるので取っちゃいます。この部分です」
浅葱が指差す先にあるのは、にんにくの中心に出来始めている新芽だ。
「これかな?」
「そうです。で、これをざくざく適当に切ります。あまり細かくしなくても大丈夫ですよ。潰してあるので適度に崩れますし、風味も出ますから」
浅葱が作る時には、微塵切りにするところだ。だが料理初心者にそれはハードルが高い。なので潰す事にしたのだ。
バリーが恐々と包丁を持ち、左手の遣り場に困りながらも、にんにくを切って行く。
「左手は、軽く握って食材に添える様に抑えて、そうです」
俗に言う猫の手である。にんにくが小さい事と、やはり刃物の近くは怖いのか、にんにくの端を少し抑える程度ではあるが、これも慣れである。慌てる事は無い。
「こんなものかなぁ」
切り終わったにんにくは、不揃いながらも適度に切れていた。そこで深めのフライパンを用意する。
「はい、大丈夫です。ではフライパンに入れて貰って、と。次にきゃべつです。今日は半玉を使いますね。まずは半分に切って貰って」
バリーがきゃべつに包丁を入れる。
「もう半分に切ります。その方が芯を外しやすいですから。斜めに包丁を入れて、芯を切り落とします」
そうして、芯を取り終えた半月状のきゃべつがふたつ出来た。それを丁寧に洗って、水分を切る。
「これをざく切りにして行きます。縦と横に、ざくざく切っちゃってください。大雑把で大丈夫ですよ」
「ど、どれぐらいの大きさになれば良いのかなぁ」
「2、3センチぐらいで行きましょう。ああ、そんな厳密で無くても大丈夫ですから」
「う、うむ」
少しは慣れて来たのか、バリーはざく、ざく、ときゃべつを切って行く。
「後は浅蜊ですね。もう砂出しも終わっていると思うので、洗います。流水の中で貝の殻同士を擦り合わせる様にして行きます。余り力を入れない様に。強くすると貝が割れちゃいますから」
バリーは浅蜊を手で掬い、恐々と言う調子でがちゃがちゃと洗って行く。
「では作って行きましょう。白ワインを用意して、と」
「材料はこれだけなのか?」
「はい。手軽に揃えられるでしょう?」
「そうじゃなぁ。余り色々入っていると、作るのも難しそうだからなぁ」
それはね、とは口に出さず、にっこりと笑うに留める。
「にんにくを入れたフライパンに、オリーブオイルを入れます。少し多めに。火はまだ点けなくて良いですよ。オイルをにんにくの下に行く様にフライパンを回して、と。ここで火を点けます。弱火です」
そうして、じっくりとにんにくに火を入れて行く。やがてぱちぱちと音がして、香りが上がってくる。
「おお、良い匂いだなぁ」
バリーは楽しそうに鼻をひくつかせる。
「ここにきゃべつを入れて炒めて行きます。さっとで良いですよ。木べらをこう動かして。そうです」
辿々しい手付きながら、バリーは木べらを動かす。
「ここに浅蜊を加えます。まだ炒めますよ」
ざらっと浅蜊を入れる。続けて炒めて。
「ここに白ワインを入れます」
白ワインを入れると、じゅわっと音が立ち、フライパンの端から沸いて来る。酸味とアルコールが適度に飛んだところで。
「蓋をして、蒸して行きます」
「むす。煮るんじゃ無いのか?」
「はい。煮るのならもっと白ワインを入れて蓋もしないんですけど、今回は白ワインから上がる湯気で火を入れて行くんです」
そうして蓋をして、数分待つ。浅蜊が全て開いたら蓋を開けて。
「おお、また良い匂いだ。しかし酒を控えろと言われているのに、ワインを使っても大丈夫なんじゃろうか」
「お酒は火を通したらアルコール分が飛ぶんです。なので大丈夫なんですよ。ワイン煮込みとかを食べても酔っ払わないでしょう?」
「そうか、それもそうだな。それにしても旨そうだ」
出来上がったものを器に盛ったら。
浅蜊ときゃべつの白ワイン蒸し、完成である。
添えるパンは、胡桃がたっぷり練り込まれたもの。ワイン蒸しをメインにするには少し軽いので、食べ応えを加えた。
胡桃はビタミンEがたっぷりと含まれているので、肝臓にも良いのである。他の栄養素も豊富である。
テーブルに運ぶと、ロロアとカロムが「おお」と声を上げた。
「とても美味しそうなのですカピ」
「ああ、旨そうだな。汁気が少ないって事は、蒸したのか」
「そうだよ。バリーさんが作ったんだよ」
「いやいや、とんでもない。アサギくんが丁寧に教えてくれたからなぁ。包丁など難しいもんじゃなぁ」
バリーが照れた様に手を振る。
「いえ、お上手でしたよ。不器用だって仰っていたって聞いたんですけど、全然そんな事無いと思いますよ」
浅葱が言うと、バリーは嬉しそうにはにかんだ。
「そう言ってくれると嬉しいなぁ」
「じゃあ食うか。楽しみだ」
神に祈り、いただきますと手を合わせる。いただきますにバリーは一瞬きょとんと首を傾げたが、特に突っ込んで来る事は無かった。
まずは白ワインの出汁をスプーンで一口。にんにくの風味、そして浅蜊の出汁がしっかりと染み出した白ワインは、しっかりと酸味も飛んで、優しいながらもしっかりとした味だ。
そして歯応えを残したきゃべつはその旨味をたっぷりと吸い、とても美味しく仕上がっていた。浅蜊の身もぷりぷりだ。
「旨いな! バリー爺さん、旨いぜ」
「はい! 美味しいですカピ!」
「本当に美味しく出来てますよ。凄いです」
浅葱たちが口々に褒めると、バリーは嬉しそうに眼を細めた。
「嬉しいなぁ。じゃがアサギくんが教えてくれなかったら作れなかった。アサギくん、ありがとうなぁ」
「いえ、とんでも無いです。このお料理、と言うか使っている食材が、肝臓を労わるものなんです」
「そうなのか? それは一体どういう事かな?」
浅葱の台詞に、バリーは首を傾げる。
「食べ物には色々な栄養素が含まれています。浅蜊にはタウリンって言う成分がたっぷり入っていて、これが肝臓の働きを良くするんです。なのでそれが染み出しているお出汁も飲んでくださいね。きゃべつはですね、こちらは胃に良いんです。お酒を沢山飲まれるんでしたら胃も疲れていると思うので。あ、パンの胡桃も肝臓に良いんですよ」
「ほう、何だか良くは判らんが、とにかく身体に良いものなんだな。そうかぁ、食べ物で病気とかそういうのを楽にしたり出来るものなのか」
バリーが関心した様に言うと、カロムが「そうなんだよな」と頷く。
「ほら、この世界ってそんな事考えないだろ。だから俺もアサギに言われて初めて知ったんだ。ほら、ナリノ婆さんいるだろ、関節痛を良くする料理を考えたりもしたんだぜ」
「そうなのか。凄いなぁ」
「はいですカピ。アサギさんは本当に凄いのですカピ」
言われ、浅葱は照れて苦笑した。さて、それはともかく。
「バリーさん、お料理作ってみてどうでした?」
浅葱が聞くと、バリーは「うむ」と満足そうに頷いた。
「アサギくんが初心者の儂でも作れるものを、と考えてくれたからだと思うが、楽しかったなぁ。アサギくん、良かったらまた教えてくれたら嬉しいなぁ」
「はい、勿論です。いつでも来ますね」
浅葱が言うと、バリーは「ありがとうなぁ」と微笑んだ。
バリーには「浅葱が食事を作るので、一緒に食べよう」と言ってある。
だが勿論別の魂胆があるのだ。
浅葱は買い込んで来た材料を台所で広げる。
「楽しみじゃなぁ。何を作ってくれるのかなぁ」
「それなんですが」
浅葱はにっこりと笑うと、俎板に出した包丁をすすっとバリーの方に寄せた。
「バリーさん、お料理してみませんか?」
「え、わ、儂が!?」
浅葱の台詞に、バリーが眼を剥く。
「いや、儂は料理なんぞまともにした事が無くて」
「はい。なのでそんな方でも作りやすいお料理を考えてみました。一緒に作ってみませんか?」
「だが、儂に出来るんだろうか」
「大丈夫ですよ。お教えします。毎日外食とかお惣菜ですと、やっぱりあまり身体に良く無いと思いますよ。少しでも作れるものがある方が良いと思います」
「そんなものなのかなぁ」
「そんなものなんですよ。なので、まずは比較的手軽なものから作ってみましょう」
「そうだなぁ。そう言うのなら、やってみようかなぁ」
バリーはまだ少し戸惑いながら、それでもやる気を見せてくれた。
「その意気です。では、下拵えから初めて行きましょう。まずは、浅蜊の砂出しをします。水を張ったバットに浅蜊を平たく入れて、蓋をして中を暗くしたら、浅蜊が呼吸をして砂を吐きます。浅蜊は夜行性なんですよ」
「成る程なぁ」
バリーが浅葱に言われた通りに手を動かす。
この世界の海水は真水なので、塩水では無く普通に水道の水で砂出しが出来るのである。
「では、その間にお野菜を準備しましょう。まずはにんにくを包丁の側面で潰します。こうして」
俎板の上に皮を剥いたにんにくを置き、包丁の側面を押し付ける。
「手を切らない様に気を付けて、包丁でにんにくを押し潰します。掌でぐいっと」
「お、おお、こんな事して大丈夫なのか?」
「大丈夫ですよ。ぐっと力を入れてやっちゃってください」
慣れない刃物を扱うからか、バリーは恐る恐る力を込める。するとにんにくから小さくめりっと音がした。
「その調子です。思い切ってやっちゃって大丈夫ですよ」
「ふ、ふん!」
バリーは少し鼻息を荒くし、気合いを入れた様な声を上げると、一気に包丁を押し込んだ。
「ど、どうじゃろうか」
包丁を上げると、にんにくは見事に潰れてぺちゃんこになっていた。繊維も程良く裂けて良い感じだ。それを2欠分用意する。
「バッチリです。で、この中心の新芽は苦味があるので取っちゃいます。この部分です」
浅葱が指差す先にあるのは、にんにくの中心に出来始めている新芽だ。
「これかな?」
「そうです。で、これをざくざく適当に切ります。あまり細かくしなくても大丈夫ですよ。潰してあるので適度に崩れますし、風味も出ますから」
浅葱が作る時には、微塵切りにするところだ。だが料理初心者にそれはハードルが高い。なので潰す事にしたのだ。
バリーが恐々と包丁を持ち、左手の遣り場に困りながらも、にんにくを切って行く。
「左手は、軽く握って食材に添える様に抑えて、そうです」
俗に言う猫の手である。にんにくが小さい事と、やはり刃物の近くは怖いのか、にんにくの端を少し抑える程度ではあるが、これも慣れである。慌てる事は無い。
「こんなものかなぁ」
切り終わったにんにくは、不揃いながらも適度に切れていた。そこで深めのフライパンを用意する。
「はい、大丈夫です。ではフライパンに入れて貰って、と。次にきゃべつです。今日は半玉を使いますね。まずは半分に切って貰って」
バリーがきゃべつに包丁を入れる。
「もう半分に切ります。その方が芯を外しやすいですから。斜めに包丁を入れて、芯を切り落とします」
そうして、芯を取り終えた半月状のきゃべつがふたつ出来た。それを丁寧に洗って、水分を切る。
「これをざく切りにして行きます。縦と横に、ざくざく切っちゃってください。大雑把で大丈夫ですよ」
「ど、どれぐらいの大きさになれば良いのかなぁ」
「2、3センチぐらいで行きましょう。ああ、そんな厳密で無くても大丈夫ですから」
「う、うむ」
少しは慣れて来たのか、バリーはざく、ざく、ときゃべつを切って行く。
「後は浅蜊ですね。もう砂出しも終わっていると思うので、洗います。流水の中で貝の殻同士を擦り合わせる様にして行きます。余り力を入れない様に。強くすると貝が割れちゃいますから」
バリーは浅蜊を手で掬い、恐々と言う調子でがちゃがちゃと洗って行く。
「では作って行きましょう。白ワインを用意して、と」
「材料はこれだけなのか?」
「はい。手軽に揃えられるでしょう?」
「そうじゃなぁ。余り色々入っていると、作るのも難しそうだからなぁ」
それはね、とは口に出さず、にっこりと笑うに留める。
「にんにくを入れたフライパンに、オリーブオイルを入れます。少し多めに。火はまだ点けなくて良いですよ。オイルをにんにくの下に行く様にフライパンを回して、と。ここで火を点けます。弱火です」
そうして、じっくりとにんにくに火を入れて行く。やがてぱちぱちと音がして、香りが上がってくる。
「おお、良い匂いだなぁ」
バリーは楽しそうに鼻をひくつかせる。
「ここにきゃべつを入れて炒めて行きます。さっとで良いですよ。木べらをこう動かして。そうです」
辿々しい手付きながら、バリーは木べらを動かす。
「ここに浅蜊を加えます。まだ炒めますよ」
ざらっと浅蜊を入れる。続けて炒めて。
「ここに白ワインを入れます」
白ワインを入れると、じゅわっと音が立ち、フライパンの端から沸いて来る。酸味とアルコールが適度に飛んだところで。
「蓋をして、蒸して行きます」
「むす。煮るんじゃ無いのか?」
「はい。煮るのならもっと白ワインを入れて蓋もしないんですけど、今回は白ワインから上がる湯気で火を入れて行くんです」
そうして蓋をして、数分待つ。浅蜊が全て開いたら蓋を開けて。
「おお、また良い匂いだ。しかし酒を控えろと言われているのに、ワインを使っても大丈夫なんじゃろうか」
「お酒は火を通したらアルコール分が飛ぶんです。なので大丈夫なんですよ。ワイン煮込みとかを食べても酔っ払わないでしょう?」
「そうか、それもそうだな。それにしても旨そうだ」
出来上がったものを器に盛ったら。
浅蜊ときゃべつの白ワイン蒸し、完成である。
添えるパンは、胡桃がたっぷり練り込まれたもの。ワイン蒸しをメインにするには少し軽いので、食べ応えを加えた。
胡桃はビタミンEがたっぷりと含まれているので、肝臓にも良いのである。他の栄養素も豊富である。
テーブルに運ぶと、ロロアとカロムが「おお」と声を上げた。
「とても美味しそうなのですカピ」
「ああ、旨そうだな。汁気が少ないって事は、蒸したのか」
「そうだよ。バリーさんが作ったんだよ」
「いやいや、とんでもない。アサギくんが丁寧に教えてくれたからなぁ。包丁など難しいもんじゃなぁ」
バリーが照れた様に手を振る。
「いえ、お上手でしたよ。不器用だって仰っていたって聞いたんですけど、全然そんな事無いと思いますよ」
浅葱が言うと、バリーは嬉しそうにはにかんだ。
「そう言ってくれると嬉しいなぁ」
「じゃあ食うか。楽しみだ」
神に祈り、いただきますと手を合わせる。いただきますにバリーは一瞬きょとんと首を傾げたが、特に突っ込んで来る事は無かった。
まずは白ワインの出汁をスプーンで一口。にんにくの風味、そして浅蜊の出汁がしっかりと染み出した白ワインは、しっかりと酸味も飛んで、優しいながらもしっかりとした味だ。
そして歯応えを残したきゃべつはその旨味をたっぷりと吸い、とても美味しく仕上がっていた。浅蜊の身もぷりぷりだ。
「旨いな! バリー爺さん、旨いぜ」
「はい! 美味しいですカピ!」
「本当に美味しく出来てますよ。凄いです」
浅葱たちが口々に褒めると、バリーは嬉しそうに眼を細めた。
「嬉しいなぁ。じゃがアサギくんが教えてくれなかったら作れなかった。アサギくん、ありがとうなぁ」
「いえ、とんでも無いです。このお料理、と言うか使っている食材が、肝臓を労わるものなんです」
「そうなのか? それは一体どういう事かな?」
浅葱の台詞に、バリーは首を傾げる。
「食べ物には色々な栄養素が含まれています。浅蜊にはタウリンって言う成分がたっぷり入っていて、これが肝臓の働きを良くするんです。なのでそれが染み出しているお出汁も飲んでくださいね。きゃべつはですね、こちらは胃に良いんです。お酒を沢山飲まれるんでしたら胃も疲れていると思うので。あ、パンの胡桃も肝臓に良いんですよ」
「ほう、何だか良くは判らんが、とにかく身体に良いものなんだな。そうかぁ、食べ物で病気とかそういうのを楽にしたり出来るものなのか」
バリーが関心した様に言うと、カロムが「そうなんだよな」と頷く。
「ほら、この世界ってそんな事考えないだろ。だから俺もアサギに言われて初めて知ったんだ。ほら、ナリノ婆さんいるだろ、関節痛を良くする料理を考えたりもしたんだぜ」
「そうなのか。凄いなぁ」
「はいですカピ。アサギさんは本当に凄いのですカピ」
言われ、浅葱は照れて苦笑した。さて、それはともかく。
「バリーさん、お料理作ってみてどうでした?」
浅葱が聞くと、バリーは「うむ」と満足そうに頷いた。
「アサギくんが初心者の儂でも作れるものを、と考えてくれたからだと思うが、楽しかったなぁ。アサギくん、良かったらまた教えてくれたら嬉しいなぁ」
「はい、勿論です。いつでも来ますね」
浅葱が言うと、バリーは「ありがとうなぁ」と微笑んだ。
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