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#31 コンシャリド村の始まり。その3

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「なるほど、それがこの村の前身な訳か」

「そうカピ。それから我と3人で助け合って、森の恵みを頂いたり海の恵みを頂いたりしたカピ。そして、半年も経たぬうちに他の人間が現れたたカピ。不思議とまた、罪を犯して、罪は償ったカピが、その場所にいられなくなった者だったりしたカピ。我が見たところ、みんな魔法の素養がある者ばかりたっだカピ。科学的にその関連性は証明されていないカピが、元々持っている性質以外に、内にこもった魔法が罪に走らせるのかも知れないカピ。そこを自制できるかどうかは個人差があるだろうカピが。少なくとも逃げて来た女性は前科も何も無かったカピ。気性も穏やかだったカピ」

「そっか。それはそれで大変だよな」

 壱が相槌あいづちを打つと、サユリは頷き、また口を開く。

「だから、この村では全員が、男も女も子どもも働かせるカピよ。勿論我の加護にはまた罪を犯させない様にする効果もあるカピ。けど、それを全て抑え込んでしまっては、個性を殺してしまう事になるカピ。なので、働かせる事で発散させ、罪の事などを考えさせない様にしているのだカピ。過去には男は仕事、女は家事と男の世話、そう考える男もいたカピが、そういう人間は結局村から出て行くカピよ。合わないし、誰にも世話して貰えないカピからな。家事も立派な仕事だカピが、時間的に家事だけだと足りないカピ。毎日家中隅々すみずみまで磨くのならともかくカピが」

「でも、中にはいたんじゃないか? 働くの嫌って人」

 壱が聞くと、サユリは眉の代わりに眼をひそめた。

「男にも女にもいたカピよ。農業や酪農らくのう、いろんな仕事を紹介したカピが、どれも嫌だと言う者がカピ。「何で自分がそんな仕事をしなければならないんだ」と言ったカピ。女でも「結婚して専業主婦になって旦那さんのお世話したい、尽くしたい」と言う者がいたカピが、甘やかしては駄目なのだカピ。結婚したとしても、どちらかに寄り掛かっては駄目なのだカピ。依存性でも生まれたら、またそれが罪の元になるカピ。尽くしたいというのは特に危ないカピ。昨日、シェムスとボニーの一件があったカピ?」

「ああ、うん、シェムスさんの浮気がどうこうって」

「あれも、このシステムを取っているから、あの程度で済んだカピ。シェムスは女癖おんなぐせの悪さが元でトラブルに巻き込まれた結果罪を犯し、ボニーは激昂しやすい性格で暴力沙汰を起こして、それぞれ実刑を食らったカピ。我の加護が無ければ、仕事をしていなければ、もっと酷い事になっていたと思われるカピ。ミェムスの浮気も、ボニーの制裁もカピ」

「そして、サユリとじいちゃんが話を聞いてやると」

「そうカピ。それもガス抜きの一環カピ。基本は大丈夫カピよ。罪を犯したけども、反省して償って、本気でやり直したと思っている人間しかこの村にはいないカピ。あ、人間だけでは無かったカピね。メリアンはエルフだったカピ。他にドワーフとかもいるカピ」

「ドワーフ、聞いた事がある。背が低くて、力仕事とかが得意だって確か」

おおむね間違ってはいないカピ。勿論前科の無い人間もいるカピよ。この村で生まれた者もいるカピ。マユリがこの村生まれカピ」

 シンプルな様でややこしい。壱はそんな印象を受けた。下手にこちらが構えるのは良く無い事だと解っている。だが、どこが逆鱗げきりんなのかが判らない。それは勿論人それぞれなのだから、今考えても仕方の無い事なのだろうが。

「村人には、普通に接して欲しいカピ。我の見たところ、壱は人のかんさわる様なタイプでは無い様だから、大丈夫カピ。さて、そろそろ寝るカピか。我も少し酔ってしまって、喋りすぎたカピ」

 確かに饒舌じょうぜつだった。普段から口数が少ない訳では無いが、余計な事は喋らないイメージだったから。いや、話に要らない内容はほとんど無かった訳だが。

 壱がベッドに入ると、サユリも壱の横に落ち着く。

「では、お休みカピ」

「お休み」

 飲んだ白ワインは寝酒にちょうど良い量だった様で、壱はすみやかに眠りにちて行った。
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