7 / 190
#07 魔法でお米を育てましょ。その3
しおりを挟む
食堂の裏に回ると、整備された庭が広がっていた。奥に木製の#柵#さく__#が建てられているので、そこまでが食堂の裏庭という事なのだろう。
「本来なら専用の#苗箱#なえばこ__#がいるカピが、無いので代わりに植木鉢を使うカピ。1粒1粒離して#丁寧#ていねい__#に蒔くカピ」
サユリの指示に従って、壱と茂造は食堂に沿って伏せられていた、茶色い陶器の植木鉢に畑から貰って来た土を入れ、等間隔に種を#蒔#ま__#いて行く。
たくさんある植木鉢の大きさは様々で、植えられる種の数も違う。何個の植木鉢が#要#い__#るか判らない。壱と茂造は大きな植木鉢を選び、ひとつの鉢が終われば次の鉢に土を入れ、を繰り返した。
「蒔けたカピね。じゃあしっかり水をやるカピ。土を乾かしたら駄目カピよ。と言っても我の時間魔法を使うカピが」
庭の端の水道から、銅製のじょうろに水を入れ、植木鉢の下から染み出すまで撒いて行った。
「うむ。なら育てるカピ」
サユリが右足を上げて回すと、植木鉢の土から青い芽が出て来た。それはしっかりと眼に見える速さで育ち、あっと言う間に20センチほどの高さになった。
「さて、植え替えるカピ。と言っても田んぼは無いので、また植木鉢を使うカピよ。今回は水が抜けない様にするカピ。底の穴をきちんと#塞#ふさ__#ぐカピ」
壱と茂造は出た苗を抜き、土も出して植木鉢を空ける。そのまま底に大きめの石を置いて穴を塞ぎ、出したばかりの土と水を同時に入れて泥を作って行く。それを#繰#く__#り返した。
「田んぼってこんな感じかな」
「そうじゃな。水がかなり多めの泥ってところかの」
「出来たカピね。では苗を植えて行くなり。今度は時間魔法を使っても少し時間が掛かるカピ。何せ普通に育てると4ヶ月以上は掛かるカピね」
壱は簡易田んぼに、テレビでの見よう#見真似#みまね__#で苗を植え付けて行く。茂造も壱を手本に#黙々#もくもく__#と手を動かす。
種もみは1粒ずつ植えるのだが、苗は5本程を纏めて植えるので、合計20束程度。慣れて来るとスムーズに行き、あまり時間は掛からずに済んだ。
「こんなところかな?」
「うむ。上出来だと思うがの」
「では、育てるカピ」
またサユリが右前足を回す。すると種もみが苗になった時よりも速く育って行った。
「おお、凄い!」
「凄いのう!」
壱と茂造が歓声を上げる。苗はまだまだぐんぐんと伸び、#分蘖#ぶんけつ__#で太くなり、実り始まり、穂がなり、重みを持ち垂れる。そこまで2分程だった。
「さ、上に浮いている水を抜くカピ。あと少しカピよ」
底からは抜けないので、壱と茂造は植木鉢を傾けて水を抜く。
「ここからは水はやらないカピ。土を乾かして行くカピよ」
またサユリが時間魔法を掛けると、土が乾いて色が淡くなって行く。
「出来たカピ!」
壱や茂造が見た事がある#稲穂#いなほ__#が立派になっていた。
「本当に凄いな。本当なら種植えてからここまで半年近く掛かるんだろ? それが数十分だもんなぁ」
「もっと誉めるが良いカピ。さ、刈り取るカピ」
茂造が#鎌#かま__#を持って来た。壱は受け取ると、#既#すで__#に刈り取り始めている茂造を見本に、慣れない手付きで刈り始める。鎌を使うのは初めてだった。
刈り取った稲穂は一#箇所#かしょ__#に積んで行く。刈り取りもそんなに時間は掛からなかった。
「さ、乾燥させるカピ。そしたら#脱穀#だっこく__#カピ。それは道具が無いので、また我の魔法の出番カピ。#籾摺#もみす__#りも精米も、今回は我がするカピ。今度道具を開発させねばならないカピね」
サユリが稲穂に魔法を掛けると、#僅#わず__#かに残っていた緑も茶色に乾燥される。
「さ、脱穀するカピよ。大きなボウルいくつかと、種もみを入れて来た袋を持って来るカピ」
壱が食堂に戻り、言われたものを持って来る。
「さ、見るが良いカピ」
サユリの魔法で、稲穂からふっくらと実った#籾#もみ__#が面白い様にするすると外れ、ボウルに入って行く。
「おおー!」
それはなかなか壮観で、壱は声を上げた。
「ここから種もみにする分を分けておくカピ。袋に入るだけ入れておくカピ」
言われ、壱は籾を掴み、袋に詰めた。
「こんなもんかな」
「いいカピ。じゃあ精米するカピよ! どうせなら無洗米とやらにしてやるカピ」
サユリが魔法を掛けると、ボウルから#籾殻#もみがら__#が飛び出して来た。それらは軽いので、ふわりと宙に舞いながら、ゆっくりと地面の上に落ちて行く。それらはそのまま自然に還るだろう。
「出来たカピ!」
壱と茂造がボウルを覗き込むと、そこにはつやつやと白く輝く米が出来上がっていた。
「本来なら専用の#苗箱#なえばこ__#がいるカピが、無いので代わりに植木鉢を使うカピ。1粒1粒離して#丁寧#ていねい__#に蒔くカピ」
サユリの指示に従って、壱と茂造は食堂に沿って伏せられていた、茶色い陶器の植木鉢に畑から貰って来た土を入れ、等間隔に種を#蒔#ま__#いて行く。
たくさんある植木鉢の大きさは様々で、植えられる種の数も違う。何個の植木鉢が#要#い__#るか判らない。壱と茂造は大きな植木鉢を選び、ひとつの鉢が終われば次の鉢に土を入れ、を繰り返した。
「蒔けたカピね。じゃあしっかり水をやるカピ。土を乾かしたら駄目カピよ。と言っても我の時間魔法を使うカピが」
庭の端の水道から、銅製のじょうろに水を入れ、植木鉢の下から染み出すまで撒いて行った。
「うむ。なら育てるカピ」
サユリが右足を上げて回すと、植木鉢の土から青い芽が出て来た。それはしっかりと眼に見える速さで育ち、あっと言う間に20センチほどの高さになった。
「さて、植え替えるカピ。と言っても田んぼは無いので、また植木鉢を使うカピよ。今回は水が抜けない様にするカピ。底の穴をきちんと#塞#ふさ__#ぐカピ」
壱と茂造は出た苗を抜き、土も出して植木鉢を空ける。そのまま底に大きめの石を置いて穴を塞ぎ、出したばかりの土と水を同時に入れて泥を作って行く。それを#繰#く__#り返した。
「田んぼってこんな感じかな」
「そうじゃな。水がかなり多めの泥ってところかの」
「出来たカピね。では苗を植えて行くなり。今度は時間魔法を使っても少し時間が掛かるカピ。何せ普通に育てると4ヶ月以上は掛かるカピね」
壱は簡易田んぼに、テレビでの見よう#見真似#みまね__#で苗を植え付けて行く。茂造も壱を手本に#黙々#もくもく__#と手を動かす。
種もみは1粒ずつ植えるのだが、苗は5本程を纏めて植えるので、合計20束程度。慣れて来るとスムーズに行き、あまり時間は掛からずに済んだ。
「こんなところかな?」
「うむ。上出来だと思うがの」
「では、育てるカピ」
またサユリが右前足を回す。すると種もみが苗になった時よりも速く育って行った。
「おお、凄い!」
「凄いのう!」
壱と茂造が歓声を上げる。苗はまだまだぐんぐんと伸び、#分蘖#ぶんけつ__#で太くなり、実り始まり、穂がなり、重みを持ち垂れる。そこまで2分程だった。
「さ、上に浮いている水を抜くカピ。あと少しカピよ」
底からは抜けないので、壱と茂造は植木鉢を傾けて水を抜く。
「ここからは水はやらないカピ。土を乾かして行くカピよ」
またサユリが時間魔法を掛けると、土が乾いて色が淡くなって行く。
「出来たカピ!」
壱や茂造が見た事がある#稲穂#いなほ__#が立派になっていた。
「本当に凄いな。本当なら種植えてからここまで半年近く掛かるんだろ? それが数十分だもんなぁ」
「もっと誉めるが良いカピ。さ、刈り取るカピ」
茂造が#鎌#かま__#を持って来た。壱は受け取ると、#既#すで__#に刈り取り始めている茂造を見本に、慣れない手付きで刈り始める。鎌を使うのは初めてだった。
刈り取った稲穂は一#箇所#かしょ__#に積んで行く。刈り取りもそんなに時間は掛からなかった。
「さ、乾燥させるカピ。そしたら#脱穀#だっこく__#カピ。それは道具が無いので、また我の魔法の出番カピ。#籾摺#もみす__#りも精米も、今回は我がするカピ。今度道具を開発させねばならないカピね」
サユリが稲穂に魔法を掛けると、#僅#わず__#かに残っていた緑も茶色に乾燥される。
「さ、脱穀するカピよ。大きなボウルいくつかと、種もみを入れて来た袋を持って来るカピ」
壱が食堂に戻り、言われたものを持って来る。
「さ、見るが良いカピ」
サユリの魔法で、稲穂からふっくらと実った#籾#もみ__#が面白い様にするすると外れ、ボウルに入って行く。
「おおー!」
それはなかなか壮観で、壱は声を上げた。
「ここから種もみにする分を分けておくカピ。袋に入るだけ入れておくカピ」
言われ、壱は籾を掴み、袋に詰めた。
「こんなもんかな」
「いいカピ。じゃあ精米するカピよ! どうせなら無洗米とやらにしてやるカピ」
サユリが魔法を掛けると、ボウルから#籾殻#もみがら__#が飛び出して来た。それらは軽いので、ふわりと宙に舞いながら、ゆっくりと地面の上に落ちて行く。それらはそのまま自然に還るだろう。
「出来たカピ!」
壱と茂造がボウルを覗き込むと、そこにはつやつやと白く輝く米が出来上がっていた。
14
あなたにおすすめの小説
目立ちたくない召喚勇者の、スローライフな(こっそり)恩返し
gari@七柚カリン
ファンタジー
突然、異世界の村に転移したカズキは、村長父娘に保護された。
知らない間に脳内に寄生していた自称大魔法使いから、自分が召喚勇者であることを知るが、庶民の彼は勇者として生きるつもりはない。
正体がバレないようギルドには登録せず一般人としてひっそり生活を始めたら、固有スキル『蚊奪取』で得た規格外の能力と(この世界の)常識に疎い行動で逆に目立ったり、村長の娘と徐々に親しくなったり。
過疎化に悩む村の窮状を知り、恩返しのために温泉を開発すると見事大当たり! でも、その弊害で恩人父娘が窮地に陥ってしまう。
一方、とある国では、召喚した勇者(カズキ)の捜索が密かに行われていた。
父娘と村を守るため、武闘大会に出場しよう!
地域限定土産の開発や冒険者ギルドの誘致等々、召喚勇者の村おこしは、従魔や息子(?)や役人や騎士や冒険者も加わり順調に進んでいたが……
ついに、居場所が特定されて大ピンチ!!
どうする? どうなる? 召喚勇者。
※ 基本は主人公視点。時折、第三者視点が入ります。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
「キヅイセ。」 ~気づいたら異世界にいた。おまけに目の前にはATMがあった。異世界転移、通算一万人目の冒険者~
あめの みかな
ファンタジー
秋月レンジ。高校2年生。
彼は気づいたら異世界にいた。
その世界は、彼が元いた世界とのゲート開通から100周年を迎え、彼は通算一万人目の冒険者だった。
科学ではなく魔法が発達した、もうひとつの地球を舞台に、秋月レンジとふたりの巫女ステラ・リヴァイアサンとピノア・カーバンクルの冒険が今始まる。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活
空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。
最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。
――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に……
どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。
顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。
魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。
こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す――
※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~
サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。
ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。
木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。
そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。
もう一度言う。
手違いだったのだ。もしくは事故。
出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた!
そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて――
※本作は他サイトでも掲載しています
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる