58 / 88
2幕 新婚旅行を満喫します!
58場 渡された謎②
しおりを挟む
羊皮紙はメルディの手のひらよりも一回り小さく、綺麗に四つ折りにされていた。
エルドラドによると、百年以上前のものだという。色は黄ばんでいるが、保護魔法がかかっているのか、虫食いや破れはない。
開いた紙面には、やや右上がりな文字でこう書かれていた。
『七つの不思議と七つの仲間。
力を合わせて何を生む?
時の流れに導かれ、たどり着いたその先に、
大いなる力を秘めた賢者の雫。
飲めばたちまち賢者の仲間入り!』
まるで子供が考えたような文章だが、気になるのはその中にある一つの単語だ。昨夜、ミルディアの家で聞いた話が脳裏に浮かぶ。
「賢者の雫って、あの八不思議の? まさか本当にあるんですか? ただの噂じゃなくて?」
困惑するメルディに、エルドラドが優しく目を細める。
「そうとも。賢者の雫は実在する。今まで誰一人として解けなかった謎じゃよ。あのレイでさえもな。暇つぶしにはもってこいじゃとは思わんか?」
「ええ……。レイさんが解けない謎なんて、とても暇つぶしのレベルとは思えないんですけど……」
初等学校しか行っていない身には荷が重すぎる。つい弱音をこぼすと、エルドラドはこほんと咳払いをした。
「もし解けたらレイも喜ぶじゃろうのう。何しろ、世界で一つのレアアイテム。とても金には変えられんものじゃよ。『僕の奥さん素敵だね』なんて言われたり……」
「やります!」
手のひらをくるっと返して、頂いた羊皮紙をありがたくズボンのポケットにしまう。
メルディの行動原理はいつだってレイの笑顔だ。レイが喜んでくれるならなんでもやる。
「うむうむ、良いぞ。謎の探究に必要なのは、迸る好奇心と、絶対に謎を解いてやるという気概じゃ。お嬢さんなら、最後まで諦めずにやり遂げられそうじゃのう」
それはメルディの唯一の才能だ。「頑張ります!」と高らかと宣言し、カップに残っていた紅茶を飲み干す。
気づけば、窓の外ではひぐらしが鳴いていた。
筆記試験は無事に終わっただろうか。結局、二日目も探検できなかった。メルディがまた迷子になったと知ったら、レイはどんな顔をするだろう。想像するだけで怖い。
「そろそろ、レイが迎えに来よるな。アルバムは片付けておくか。勝手に見せたと知られたら怒られそうじゃ」
杖を一振りしてアルバムを浮かせたエルドラドに、ふと違和感を覚える。
その場の勢いで「やる!」と言ってしまったが、どうして彼はこの羊皮紙を持っていたのだろう。ミルディアもグレイグも、賢者の雫についての具体的な内容は知らなかった。レイに至っては忘れているようだったし。
そもそも、魔力爆上げのアイテムなんて、みんな喉から手が出るほどほしがるはずだ。メルディに謎を渡すより、自分で解いたほうがいいだろうに。
「あの、エル先生……」
「メルディ!」
部屋のドアが音を立てて開き、息せき切ったレイが飛び込んできた。
全力で走ってきたのだろう。額には汗が光っている。その後ろにグレイグはいない。お留守番しているようだ。
「もう、びっくりしたよ。試験会場から戻ったら、また迷子になってるって言うんだもん。どうして鈴を鳴らしてくれないの。グレイグから預かってたでしょ?」
「仕事の邪魔しちゃ悪いと思って……」
「いいよ、そんなこと考えなくて。次は絶対鳴らしてよね。いい?」
レイは額の汗を拭うと、エルドラドに向かって頭を下げた。
「申し訳ありません、校長先生。妻がお世話になりました」
「えっ、校長先生?」
目を丸くするメルディに、エルドラドが笑顔で頷く。咄嗟に椅子から立ち上がり、レイに倣って頭を下げる。
「ごめんなさい、ご挨拶が遅れました! グレイグがお世話になってます!」
「いい、いい。そんなに畏まらんで。優秀な生徒が来てくれてこちらもありがたい」
優しく肩を叩かれ、恐る恐る顔を上げる。
まさか校長先生だったとは。アルバムの肖像画はなんだったのか。誤植だろうか?
現金なもので、校長だとわかった途端、目の前のエルドラドがとても威厳に満ちているように見えてきた。顔つきもさっきより精悍な気がするし、まるで魔法が解けたみたいだ。
「もしかして、今まで気づかなかったの? 部屋の入り口のプレートに『校長室』って大きく書いてあったでしょ?」
「ええ……。そんなのなかったよ? アルバムにも名前だけで、役職名は書いてなかったし、校長先生の肖像画もエル先生とは別の人で……」
「アルバム?」
レイが鋭い目でエルドラドを睨む。エルドラドは「バレてしもうたか」と舌を出すと、こらえきれないといった様子で大きく肩を揺らした。
「こ、校長先生?」
「すまんすまん。いつ気づくかと思っての。光魔法で目を眩ましとったんじゃ。わしはエルフじゃが、光魔法が専門でな。――ほれ、もう一度見てみい」
飛んできたアルバムを開く。すると、さっきは別人だった校長の肖像画が、エルドラドの顔に変わっていた。教師の集合絵にも、『エルドラド・フーディ学校長』としっかり書いてある。
呆然とアルバムに目を落とすメルディに、エルドラドがウインクをする。
「目に見えるものだけが真実じゃない。入学生たちに毎年言っとることじゃ。魔法学校で過ごす間は、念頭に入れとくといいじゃろう」
迷路蝶に続き、魔法学校の洗礼を受けてしまったようだ。魔法使いというのは、こうして人を簡単に騙すから困る。
「先生、あまり妻を揶揄わないでください。彼女は生徒じゃないんですよ」
「ほっほ。お嬢さんがあまりにも幸せそうで、羨ましくなってのう。さっきも惚気られての。レイの全てを愛しとるんじゃと」
「きゃー! やめて! バラさないで!」
エルドラドの声を掻き消すように叫ぶも、一度出た言葉が引っ込むわけではない。
レイの視線が容赦なく刺さり、顔が焼けるように熱くなる。あれだけ好き好き言っておいてなんだが、第三者の口から聞かされると恥ずかしくて死ぬ。
レイは突然のラブコールに戸惑っているようだったが、やがてふっと笑みを漏らすと、メルディの耳元で「僕も愛してるよ」と囁いた。
いつもより甘い声だ。腰が砕けてしまう。やばい。
「仲睦まじそうで何よりじゃ。……レイ、幸せか?」
レイはエルドラドに視線を移すと、しばし彼の目をじっと見つめたあと、メルディの肩を力強く抱き寄せた。
「はい。今が一番幸せです」
ストレートな惚気に、さらに顔が熱くなった。肩に置かれた手が、とても愛しく感じる。
迷子になって、こんなにいい思いをするとは。今まで真面目に生きてきたご褒美かもしれない。
「今更じゃが、結婚おめでとう。嫁さんを連れて戻ってくれて嬉しかったぞい。末長く幸せにな、レイ」
深々と頭を下げ、レイの手に引かれて校長室を後にする。
メルディの目線より少し高い位置にある耳が赤く染まっているのは、夕日に照らされているだけじゃないはずだ。
「……筆記試験も終わったし、今日はもうフリーなんだ。今夜はさ、ゆっくりしようよ」
「……うん」
言葉に込められた意味に気づかないほど子供ではない。きっかけを作ってくれたエルドラドに心の中で感謝する。
エルドラドが校長だというのは驚いたが、だからこそ賢者の雫について知っていたのだと腑に落ちた。校長なら、学内のことは全て把握しているだろうから。
ただ、新たな疑惑が胸に湧く。
もしかして、エルドラドが賢者の雫を作ったのでは? と。
エルドラドによると、百年以上前のものだという。色は黄ばんでいるが、保護魔法がかかっているのか、虫食いや破れはない。
開いた紙面には、やや右上がりな文字でこう書かれていた。
『七つの不思議と七つの仲間。
力を合わせて何を生む?
時の流れに導かれ、たどり着いたその先に、
大いなる力を秘めた賢者の雫。
飲めばたちまち賢者の仲間入り!』
まるで子供が考えたような文章だが、気になるのはその中にある一つの単語だ。昨夜、ミルディアの家で聞いた話が脳裏に浮かぶ。
「賢者の雫って、あの八不思議の? まさか本当にあるんですか? ただの噂じゃなくて?」
困惑するメルディに、エルドラドが優しく目を細める。
「そうとも。賢者の雫は実在する。今まで誰一人として解けなかった謎じゃよ。あのレイでさえもな。暇つぶしにはもってこいじゃとは思わんか?」
「ええ……。レイさんが解けない謎なんて、とても暇つぶしのレベルとは思えないんですけど……」
初等学校しか行っていない身には荷が重すぎる。つい弱音をこぼすと、エルドラドはこほんと咳払いをした。
「もし解けたらレイも喜ぶじゃろうのう。何しろ、世界で一つのレアアイテム。とても金には変えられんものじゃよ。『僕の奥さん素敵だね』なんて言われたり……」
「やります!」
手のひらをくるっと返して、頂いた羊皮紙をありがたくズボンのポケットにしまう。
メルディの行動原理はいつだってレイの笑顔だ。レイが喜んでくれるならなんでもやる。
「うむうむ、良いぞ。謎の探究に必要なのは、迸る好奇心と、絶対に謎を解いてやるという気概じゃ。お嬢さんなら、最後まで諦めずにやり遂げられそうじゃのう」
それはメルディの唯一の才能だ。「頑張ります!」と高らかと宣言し、カップに残っていた紅茶を飲み干す。
気づけば、窓の外ではひぐらしが鳴いていた。
筆記試験は無事に終わっただろうか。結局、二日目も探検できなかった。メルディがまた迷子になったと知ったら、レイはどんな顔をするだろう。想像するだけで怖い。
「そろそろ、レイが迎えに来よるな。アルバムは片付けておくか。勝手に見せたと知られたら怒られそうじゃ」
杖を一振りしてアルバムを浮かせたエルドラドに、ふと違和感を覚える。
その場の勢いで「やる!」と言ってしまったが、どうして彼はこの羊皮紙を持っていたのだろう。ミルディアもグレイグも、賢者の雫についての具体的な内容は知らなかった。レイに至っては忘れているようだったし。
そもそも、魔力爆上げのアイテムなんて、みんな喉から手が出るほどほしがるはずだ。メルディに謎を渡すより、自分で解いたほうがいいだろうに。
「あの、エル先生……」
「メルディ!」
部屋のドアが音を立てて開き、息せき切ったレイが飛び込んできた。
全力で走ってきたのだろう。額には汗が光っている。その後ろにグレイグはいない。お留守番しているようだ。
「もう、びっくりしたよ。試験会場から戻ったら、また迷子になってるって言うんだもん。どうして鈴を鳴らしてくれないの。グレイグから預かってたでしょ?」
「仕事の邪魔しちゃ悪いと思って……」
「いいよ、そんなこと考えなくて。次は絶対鳴らしてよね。いい?」
レイは額の汗を拭うと、エルドラドに向かって頭を下げた。
「申し訳ありません、校長先生。妻がお世話になりました」
「えっ、校長先生?」
目を丸くするメルディに、エルドラドが笑顔で頷く。咄嗟に椅子から立ち上がり、レイに倣って頭を下げる。
「ごめんなさい、ご挨拶が遅れました! グレイグがお世話になってます!」
「いい、いい。そんなに畏まらんで。優秀な生徒が来てくれてこちらもありがたい」
優しく肩を叩かれ、恐る恐る顔を上げる。
まさか校長先生だったとは。アルバムの肖像画はなんだったのか。誤植だろうか?
現金なもので、校長だとわかった途端、目の前のエルドラドがとても威厳に満ちているように見えてきた。顔つきもさっきより精悍な気がするし、まるで魔法が解けたみたいだ。
「もしかして、今まで気づかなかったの? 部屋の入り口のプレートに『校長室』って大きく書いてあったでしょ?」
「ええ……。そんなのなかったよ? アルバムにも名前だけで、役職名は書いてなかったし、校長先生の肖像画もエル先生とは別の人で……」
「アルバム?」
レイが鋭い目でエルドラドを睨む。エルドラドは「バレてしもうたか」と舌を出すと、こらえきれないといった様子で大きく肩を揺らした。
「こ、校長先生?」
「すまんすまん。いつ気づくかと思っての。光魔法で目を眩ましとったんじゃ。わしはエルフじゃが、光魔法が専門でな。――ほれ、もう一度見てみい」
飛んできたアルバムを開く。すると、さっきは別人だった校長の肖像画が、エルドラドの顔に変わっていた。教師の集合絵にも、『エルドラド・フーディ学校長』としっかり書いてある。
呆然とアルバムに目を落とすメルディに、エルドラドがウインクをする。
「目に見えるものだけが真実じゃない。入学生たちに毎年言っとることじゃ。魔法学校で過ごす間は、念頭に入れとくといいじゃろう」
迷路蝶に続き、魔法学校の洗礼を受けてしまったようだ。魔法使いというのは、こうして人を簡単に騙すから困る。
「先生、あまり妻を揶揄わないでください。彼女は生徒じゃないんですよ」
「ほっほ。お嬢さんがあまりにも幸せそうで、羨ましくなってのう。さっきも惚気られての。レイの全てを愛しとるんじゃと」
「きゃー! やめて! バラさないで!」
エルドラドの声を掻き消すように叫ぶも、一度出た言葉が引っ込むわけではない。
レイの視線が容赦なく刺さり、顔が焼けるように熱くなる。あれだけ好き好き言っておいてなんだが、第三者の口から聞かされると恥ずかしくて死ぬ。
レイは突然のラブコールに戸惑っているようだったが、やがてふっと笑みを漏らすと、メルディの耳元で「僕も愛してるよ」と囁いた。
いつもより甘い声だ。腰が砕けてしまう。やばい。
「仲睦まじそうで何よりじゃ。……レイ、幸せか?」
レイはエルドラドに視線を移すと、しばし彼の目をじっと見つめたあと、メルディの肩を力強く抱き寄せた。
「はい。今が一番幸せです」
ストレートな惚気に、さらに顔が熱くなった。肩に置かれた手が、とても愛しく感じる。
迷子になって、こんなにいい思いをするとは。今まで真面目に生きてきたご褒美かもしれない。
「今更じゃが、結婚おめでとう。嫁さんを連れて戻ってくれて嬉しかったぞい。末長く幸せにな、レイ」
深々と頭を下げ、レイの手に引かれて校長室を後にする。
メルディの目線より少し高い位置にある耳が赤く染まっているのは、夕日に照らされているだけじゃないはずだ。
「……筆記試験も終わったし、今日はもうフリーなんだ。今夜はさ、ゆっくりしようよ」
「……うん」
言葉に込められた意味に気づかないほど子供ではない。きっかけを作ってくれたエルドラドに心の中で感謝する。
エルドラドが校長だというのは驚いたが、だからこそ賢者の雫について知っていたのだと腑に落ちた。校長なら、学内のことは全て把握しているだろうから。
ただ、新たな疑惑が胸に湧く。
もしかして、エルドラドが賢者の雫を作ったのでは? と。
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方
ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。
注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。

ある王国の王室の物語
朝山みどり
恋愛
平和が続くある王国の一室で婚約者破棄を宣言された少女がいた。カップを持ったまま下を向いて無言の彼女を国王夫妻、侯爵夫妻、王太子、異母妹がじっと見つめた。
顔をあげた彼女はカップを皿に置くと、レモンパイに手を伸ばすと皿に取った。
それから
「承知しました」とだけ言った。
ゆっくりレモンパイを食べるとお茶のおかわりを注ぐように侍女に合図をした。
それからバウンドケーキに手を伸ばした。
カクヨムで公開したものに手を入れたものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる