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2幕 新婚旅行を満喫します!
48場 新たな旅立ち
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「え? グレイグ、今年の夏休みは帰ってこないの?」
料理と酒が並んだテーブルを挟み、向かいに座った両親が神妙な顔で頷く。
今夜はアグニス家で食事会という名の家族飲み会だ。いつもの通り、祖父のトリスタンはお留守番。レイは閉店作業中である。
「そうなんだよ。なんか、魔法学校でなんとか選? があるから、ミルディアさんの手伝いをするんだってさ。あと、来年大学院? に進むから論文? 書かなきゃって」
ミルディアはグレイグが通う魔法学校の教師で、レイの元担任。そして、父親のお得意さまだ。メルディも子供の頃から可愛がってもらっていた。
そのミルディアにお願いされたら帰郷を諦めるのもやむなし……なのだろうが、アルティの説明には疑問符が多すぎてよくわからない。
「何そのはっきりしない説明。パパったら、ちゃんと聞いてないの?」
「いや、聞いたんだけどよくわからなくて。パパ、初等学校しか行ってないし」
「ママも十四歳で軍に放り込まれたからな。学生生活に関してはサッパリわからん」
大事な息子の進路なのに、そんなことでいいのだろうか。とはいえ、メルディも十歳で工房入りしたのでピンとこない。
「たぶん教授選だね。校長先生が歳で引退するって新聞に載ってたから」
親子三人で首を捻っていると、苦笑したレイがキッチンに入ってきた。店まで丸聞こえだったらしい。
「新しい校長先生を選ぶってこと? なんで校長選じゃないの?」
「語呂が悪いし、魔法学校で教授を名乗れるのは校長先生だけなんだよ。だから教授選。確か前回は五百年前じゃなかったかな。初代も二代目も純血のエルフだから、今回で二回目だね」
「ご、五百年……」
魔法学校の創立はラスタの建国と同じく、八百年前だ。わかってはいたものの、スケールの大きい話に目が丸くなる。
「じゃあ、論文ってのは?」
「アルティ、君、それでも父親? ちゃんと息子の話を聞いてあげなよ」
レイはアルティに呆れた顔を向けると、ピースサインのように指を二本立て、出来の悪い生徒に教えるが如く、ゆっくりとした口調で続けた。
「まず、論文には二種類ある。大学院に進むための論文と、研究室に入るための論文。大学院に進むための論文は、そのまんま。四年間学んだことの総まとめを提出して、筆記と実技と面接合わせて合格点だったら院に進める」
「へー、総合計なんだ。それなら合格率高そうだね。あの子は賢いし、リリアナさんに似て強いから、論文がダメでも筆記や実技でカバーできるし」
「残念だけど、そう甘くない。論文の出来によっては、採点がマイナスになる場合もあるからね」
アルティが黙った。不安になったのかもしれない。そんな夫のフォローのため、リリアナが「もう一つの論文って?」と口を挟む。
「大学院に進むと、自分の専攻する学科を決めて研究室に入るんだけど、人気のある研究室はすぐ埋まっちゃうから、少しでも希望のところに入れるように志望動機を書くんだよ。それが、魔法学校の研究室論文」
リリアナとメルディの口から、同時に「へえー」と感心の声が漏れた。アルティはまだ何かを考え込んでいる。
レイが言うには、研究室によって使える予算や機材、教師の力関係が変わってくるので、大学院に進む論文を書くよりも、こちらに気合を入れる生徒の方が多いのだそうだ。
かくいうレイも、現役時代は人を殴り殺せそうな厚さの論文を書き上げて、希望の研究室への切符をもぎ取ったらしい。
「グレイグって、ミルディア先生みたいな教師になりたいって言ってたよね。魔法紋師の道に進むのかな?」
メルディの疑問に、レイが腕を組んで「うーん」と唸る。
「将来を考えると、グレイグは魔法紋よりも魔戦術――魔法での戦いに特化した学科の方がいいだろうね。それに、あの子は教師に向いてないからなあ」
「まあ、向いてないな。母親が言うことじゃないけど」
「うん、確かに向いてないね。姉が言うことでもないけど」
アルティを除く全員で頷く。
末っ子だからか、それとも有能だからか、グレイグは「どう頑張っても上手くできない人」の気持ちに疎い。ものを教えるのも下手だ。
根気よく人の道を説いたおかげで、今でこそ多少マシになったが、子供の頃はメルディも何度か煮湯を飲まされた。
もし将来国軍入りするとしたら、部下の面倒を見られるようにならなければいけないが、そこは母親であり、上司のリリアナが教育していくだろう。デュラハンの腕力で。
「あのさあ、メルディ」
ひとしきり笑い合い、そろそろ乾杯しようか、という雰囲気になったところで、アルティがようやく硬直から解けて姿勢を正した。
「何? というか、いい加減ご飯食べようよパパ。お腹減った。お酒もぬるくなっちゃうし」
「うん、パパもお腹減ったけど、ちょっと待ちなさい。ビールの瓶置いて」
父親に言われては仕方ない。唇を尖らせつつ、手にした瓶をテーブルに戻す。
「悪いんだけど、グレイグの様子を見に行ってやってくれないかな? 旅費は出すからさ」
「え? なんでよ。これから闘技祭もあるし、年末に向けて忙しくなるじゃない。仕事はどうするのよ。鎧の生産管理だってあるし」
闘技祭は冬に首都で行われるイベントで、職人たちはこぞって参加する。年末はそれこそ駆け込み需要が多い。まだ夏とはいえ、早め早めに備えておかないと、時間というものはあっという間に過ぎてしまうのだ。
昨年レイと共同開発した「着るだけでマッチョになれる鎧」も、ありがたいことに受注が途切れず、下請け業者を増やしたところだ。信用できる職人を選別して依頼しているので、多少離れても大丈夫かもしれないが、メルディには開発者としての責任がある。
「仕事はパパと師匠がなんとかする。生産管理は製鉄所のガンツ社長に頼むよ。あの人なら職人たちも言うこと聞くし、安心だろ?」
「それはそうだけどさ。私、結婚してるんだよパパ。旦那さまの了解なしには行けませーん」
ツンとそっぽを向くと、眉を下げたアルティがレイに両手を合わせた。
「頼むよ、レイ。今までグレイグが長期休みに帰ってこないなんてなかったから心配なんだよ。できればレイも一緒に行ってもらって、その論文ってやつに悩んでるようだったら、先輩としてアドバイスしてやってほしいんだ。俺じゃ役に立たないからさ」
「中退したけどね」
展開を予想していたのか、狼狽えることなくレイが笑う。
「僕はいいよ。今は仕事も忙しくないし、八月からでいいなら調整する。あの子の論文の助けになるかはわかんないけどね」
「ありがとう、レイ! 恩にきるよ!」
「もー。パパったらグレイグに甘いんだから。ごめんね、レイさん」
「君の弟なら、僕の弟でもあるからね。でも、メルディはいいの? これ、新婚旅行ってことになるけど」
そういえばそうだった。
去年の夏に婚姻届を出し、今年の春に無事結婚式を挙げたのはいいものの、お互いの仕事が立て込んでいて、ずっと行きそびれたままだったのだ。
行くなら前々から憧れていた、ラスタ南端にあるサモニア海のリゾートに行きたかったのだが……。
そんなメルディの迷いを敏感に察知したのか、リリアナがすかさず口を挟む。
「行ってくれるなら、ママがお小遣いを出してやるぞ。十万エニでどうだ」
「えっ、本当?」
十万エニは初等学校卒の初任給ぐらいだ。思わず食いつくメルディに、リリアナが「本当だとも」と頷いた。
「サモニア海のリゾートには及ばないかもしれないが、魔法学校があるシエラ・シエルは昔から新婚旅行の定番だ。十分楽しめると思うぞ。メルディも小さい頃は気に入ってたじゃないか」
まあ、確かに。子供の頃は家族旅行でよく行った。
ラスタが誇る商業都市リッカと、この大陸に君臨するルクセン帝国に挟まれたシエラ・シエルには、美味しい料理の他に、珍しい武具や工具も集まってくる。店を冷やかしているだけでも楽しい。
それに、ミルディアには家族ぐるみでお世話になっている。授業の関係で結婚式には来てもらえなかったから、挨拶するいい機会かもしれない。レイも戦争が終わってから一度もシエラ・シエルには行っていないというし、懐かしいかも。
「んー……わかった! じゃあ、八月からお休みいただきまーす」
賑やかな夕食を終え、店の前で両親を見送る。独身の頃は「いいなあ」と羨みながら眺めていた大小の背中。レイと結婚して早一年。この光景もすっかり見慣れてしまった。
隣に立つレイの横顔を見上げ、笑みを浮かべる。
「レイさん、本当にありがとうね。グレイグのために、仕事の調整までしてもらっちゃって」
「新婚旅行に行けてないの、ずっと気になってからね。いい機会だったと思うよ。……それよりさあ、メルディ。僕たち結婚して一年経ったよね。そろそろ呼び捨てで呼んでほしいんだけど」
ぐ、と喉が詰まる。婚姻届を出した日から再三言われているのだが、どうしても気恥ずかしさが拭えなくて、まだ呼べずにいた。
「も、もうちょっと待って。だって、レイさんはレイさんなんだもん。呼び捨てなんて、考えるだけでドキドキして死んじゃう」
「……そっか」
熱くなった頬を冷ますように両手で顔を仰いていると、ぎゅうっと後ろから抱きしめられた。
「続きはベッドで聞こうかな?」
「えー? やだあ、レイさんのえっち」
外聞を憚らずにいちゃつく夫婦を見て、近くの通行人が「お熱いねえ!」と冷やかしていく。
だから、メルディは気づかなかった。背後でレイがどんな顔をしていたのか。
料理と酒が並んだテーブルを挟み、向かいに座った両親が神妙な顔で頷く。
今夜はアグニス家で食事会という名の家族飲み会だ。いつもの通り、祖父のトリスタンはお留守番。レイは閉店作業中である。
「そうなんだよ。なんか、魔法学校でなんとか選? があるから、ミルディアさんの手伝いをするんだってさ。あと、来年大学院? に進むから論文? 書かなきゃって」
ミルディアはグレイグが通う魔法学校の教師で、レイの元担任。そして、父親のお得意さまだ。メルディも子供の頃から可愛がってもらっていた。
そのミルディアにお願いされたら帰郷を諦めるのもやむなし……なのだろうが、アルティの説明には疑問符が多すぎてよくわからない。
「何そのはっきりしない説明。パパったら、ちゃんと聞いてないの?」
「いや、聞いたんだけどよくわからなくて。パパ、初等学校しか行ってないし」
「ママも十四歳で軍に放り込まれたからな。学生生活に関してはサッパリわからん」
大事な息子の進路なのに、そんなことでいいのだろうか。とはいえ、メルディも十歳で工房入りしたのでピンとこない。
「たぶん教授選だね。校長先生が歳で引退するって新聞に載ってたから」
親子三人で首を捻っていると、苦笑したレイがキッチンに入ってきた。店まで丸聞こえだったらしい。
「新しい校長先生を選ぶってこと? なんで校長選じゃないの?」
「語呂が悪いし、魔法学校で教授を名乗れるのは校長先生だけなんだよ。だから教授選。確か前回は五百年前じゃなかったかな。初代も二代目も純血のエルフだから、今回で二回目だね」
「ご、五百年……」
魔法学校の創立はラスタの建国と同じく、八百年前だ。わかってはいたものの、スケールの大きい話に目が丸くなる。
「じゃあ、論文ってのは?」
「アルティ、君、それでも父親? ちゃんと息子の話を聞いてあげなよ」
レイはアルティに呆れた顔を向けると、ピースサインのように指を二本立て、出来の悪い生徒に教えるが如く、ゆっくりとした口調で続けた。
「まず、論文には二種類ある。大学院に進むための論文と、研究室に入るための論文。大学院に進むための論文は、そのまんま。四年間学んだことの総まとめを提出して、筆記と実技と面接合わせて合格点だったら院に進める」
「へー、総合計なんだ。それなら合格率高そうだね。あの子は賢いし、リリアナさんに似て強いから、論文がダメでも筆記や実技でカバーできるし」
「残念だけど、そう甘くない。論文の出来によっては、採点がマイナスになる場合もあるからね」
アルティが黙った。不安になったのかもしれない。そんな夫のフォローのため、リリアナが「もう一つの論文って?」と口を挟む。
「大学院に進むと、自分の専攻する学科を決めて研究室に入るんだけど、人気のある研究室はすぐ埋まっちゃうから、少しでも希望のところに入れるように志望動機を書くんだよ。それが、魔法学校の研究室論文」
リリアナとメルディの口から、同時に「へえー」と感心の声が漏れた。アルティはまだ何かを考え込んでいる。
レイが言うには、研究室によって使える予算や機材、教師の力関係が変わってくるので、大学院に進む論文を書くよりも、こちらに気合を入れる生徒の方が多いのだそうだ。
かくいうレイも、現役時代は人を殴り殺せそうな厚さの論文を書き上げて、希望の研究室への切符をもぎ取ったらしい。
「グレイグって、ミルディア先生みたいな教師になりたいって言ってたよね。魔法紋師の道に進むのかな?」
メルディの疑問に、レイが腕を組んで「うーん」と唸る。
「将来を考えると、グレイグは魔法紋よりも魔戦術――魔法での戦いに特化した学科の方がいいだろうね。それに、あの子は教師に向いてないからなあ」
「まあ、向いてないな。母親が言うことじゃないけど」
「うん、確かに向いてないね。姉が言うことでもないけど」
アルティを除く全員で頷く。
末っ子だからか、それとも有能だからか、グレイグは「どう頑張っても上手くできない人」の気持ちに疎い。ものを教えるのも下手だ。
根気よく人の道を説いたおかげで、今でこそ多少マシになったが、子供の頃はメルディも何度か煮湯を飲まされた。
もし将来国軍入りするとしたら、部下の面倒を見られるようにならなければいけないが、そこは母親であり、上司のリリアナが教育していくだろう。デュラハンの腕力で。
「あのさあ、メルディ」
ひとしきり笑い合い、そろそろ乾杯しようか、という雰囲気になったところで、アルティがようやく硬直から解けて姿勢を正した。
「何? というか、いい加減ご飯食べようよパパ。お腹減った。お酒もぬるくなっちゃうし」
「うん、パパもお腹減ったけど、ちょっと待ちなさい。ビールの瓶置いて」
父親に言われては仕方ない。唇を尖らせつつ、手にした瓶をテーブルに戻す。
「悪いんだけど、グレイグの様子を見に行ってやってくれないかな? 旅費は出すからさ」
「え? なんでよ。これから闘技祭もあるし、年末に向けて忙しくなるじゃない。仕事はどうするのよ。鎧の生産管理だってあるし」
闘技祭は冬に首都で行われるイベントで、職人たちはこぞって参加する。年末はそれこそ駆け込み需要が多い。まだ夏とはいえ、早め早めに備えておかないと、時間というものはあっという間に過ぎてしまうのだ。
昨年レイと共同開発した「着るだけでマッチョになれる鎧」も、ありがたいことに受注が途切れず、下請け業者を増やしたところだ。信用できる職人を選別して依頼しているので、多少離れても大丈夫かもしれないが、メルディには開発者としての責任がある。
「仕事はパパと師匠がなんとかする。生産管理は製鉄所のガンツ社長に頼むよ。あの人なら職人たちも言うこと聞くし、安心だろ?」
「それはそうだけどさ。私、結婚してるんだよパパ。旦那さまの了解なしには行けませーん」
ツンとそっぽを向くと、眉を下げたアルティがレイに両手を合わせた。
「頼むよ、レイ。今までグレイグが長期休みに帰ってこないなんてなかったから心配なんだよ。できればレイも一緒に行ってもらって、その論文ってやつに悩んでるようだったら、先輩としてアドバイスしてやってほしいんだ。俺じゃ役に立たないからさ」
「中退したけどね」
展開を予想していたのか、狼狽えることなくレイが笑う。
「僕はいいよ。今は仕事も忙しくないし、八月からでいいなら調整する。あの子の論文の助けになるかはわかんないけどね」
「ありがとう、レイ! 恩にきるよ!」
「もー。パパったらグレイグに甘いんだから。ごめんね、レイさん」
「君の弟なら、僕の弟でもあるからね。でも、メルディはいいの? これ、新婚旅行ってことになるけど」
そういえばそうだった。
去年の夏に婚姻届を出し、今年の春に無事結婚式を挙げたのはいいものの、お互いの仕事が立て込んでいて、ずっと行きそびれたままだったのだ。
行くなら前々から憧れていた、ラスタ南端にあるサモニア海のリゾートに行きたかったのだが……。
そんなメルディの迷いを敏感に察知したのか、リリアナがすかさず口を挟む。
「行ってくれるなら、ママがお小遣いを出してやるぞ。十万エニでどうだ」
「えっ、本当?」
十万エニは初等学校卒の初任給ぐらいだ。思わず食いつくメルディに、リリアナが「本当だとも」と頷いた。
「サモニア海のリゾートには及ばないかもしれないが、魔法学校があるシエラ・シエルは昔から新婚旅行の定番だ。十分楽しめると思うぞ。メルディも小さい頃は気に入ってたじゃないか」
まあ、確かに。子供の頃は家族旅行でよく行った。
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それに、ミルディアには家族ぐるみでお世話になっている。授業の関係で結婚式には来てもらえなかったから、挨拶するいい機会かもしれない。レイも戦争が終わってから一度もシエラ・シエルには行っていないというし、懐かしいかも。
「んー……わかった! じゃあ、八月からお休みいただきまーす」
賑やかな夕食を終え、店の前で両親を見送る。独身の頃は「いいなあ」と羨みながら眺めていた大小の背中。レイと結婚して早一年。この光景もすっかり見慣れてしまった。
隣に立つレイの横顔を見上げ、笑みを浮かべる。
「レイさん、本当にありがとうね。グレイグのために、仕事の調整までしてもらっちゃって」
「新婚旅行に行けてないの、ずっと気になってからね。いい機会だったと思うよ。……それよりさあ、メルディ。僕たち結婚して一年経ったよね。そろそろ呼び捨てで呼んでほしいんだけど」
ぐ、と喉が詰まる。婚姻届を出した日から再三言われているのだが、どうしても気恥ずかしさが拭えなくて、まだ呼べずにいた。
「も、もうちょっと待って。だって、レイさんはレイさんなんだもん。呼び捨てなんて、考えるだけでドキドキして死んじゃう」
「……そっか」
熱くなった頬を冷ますように両手で顔を仰いていると、ぎゅうっと後ろから抱きしめられた。
「続きはベッドで聞こうかな?」
「えー? やだあ、レイさんのえっち」
外聞を憚らずにいちゃつく夫婦を見て、近くの通行人が「お熱いねえ!」と冷やかしていく。
だから、メルディは気づかなかった。背後でレイがどんな顔をしていたのか。
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