40 / 88
幕間 カーテンコールのその後で
40場 引っ越し準備と婚姻届①
しおりを挟む
「ええ……。ちょっとパパ、全然引っ越し準備進んでないじゃない。このままじゃ、一緒に住めるようになるまでに年越しちゃうよお」
「仕方ないだろ! なんだよ、この本の量! 運んでも運んでも終わんないんだよ!」
首にタオルをかけ、全身汗びっしょりになったアルティが、レイの店先に積んだコンテナの中を指差す。そこには古今東西ありとあらゆる魔法書が、蟻一匹入る隙間もないぐらいぎっちりと詰め込まれていた。
「百二十年分だからなあ。地下室にもあるし」
「だから定期的に整理しろって言ったじゃん! 普段きっちりしてるのに、なんで本の整理だけはダメなんだよ!」
叫ぶアルティに呼応するように、店のドアが開いた。
「アルティ君、これはダメだね。個人で出来る範疇を超えてる。業者に頼んで一気にやった方がいいよ」
「そうですね。ワーグナー商会で手配しましょうか? 最近、古美術品の配送も始めたんです。古書専門の配送人を呼びますよ」
店の中から現れたのは、ルビーみたいに真っ赤な鎧兜を着たデュラハンと、海みたいに深い青色の鎧兜を着たデュラハンだった。この暑いのにフル装備である。
二人ともグレイグを越える体格の良さなので、揃って見下ろされると圧迫感がすごい。
「て、手伝ってくれてるのって、ラドクリフさんとハンスさんだったの? ご近所さんたちにお願いするんじゃなかったの?」
赤い鎧のラドクリフはエスメラルダの叔父で、国軍士官学校の校長。青い鎧のハンスは母親の部下で、首都の治安を守る警備隊と消防隊の責任者だ。こんなところで肉体労働をさせていい立場の人間じゃない。
「組合の職人たちは、君たちの披露宴会場の建設にかかりっきりになってるからね。パワーのあるデュラハンは適材適所でしょ」
恐縮するメルディを宥めるように、ラドクリフが笑う。
「それに最近、時間に余裕があるんだ。エミィは教会の仕事で忙しいし、マーガレットもロビンとかいう熊のぬいぐるみと仲良くしてるし、士官学校は夏休み中だしね」
「僕は最初から選択肢ありません。連隊長には逆らえませんから」
ハンスはリリアナのことを昔の役職名で呼ぶ。アルティの敬語と同じで、染み付いてしまっているらしい。なんでも二十年以上前からリリアナの部下として苦労……いや、頑張ってくれているそうだ。
ロビンもマルグリテ家で楽しくやっているみたいで安心した。ラドクリフ曰く、最近はどこに行くのもマーガレットと一緒なのだとか。
新しい春が来たということだろうか?
喜ばしい反面、ウィンストンでは常にそばにいてくれただけに、ちょっとだけ寂しい。
「懐かしいなあ。こんな本、あったあった」
「ちょっと、やめてよレイ。それ、やり出すと終わらないやつだから」
コンテナの中の本を手に取るレイを、アルティが慌てて止める……が、ちっとも聞いちゃいない。
次々ページをめくっては、にこにこと嬉しそうに笑っている。その手つきも目つきもとても優しくて、レイが本をどんなに愛しているか伝わってきて胸が痛んだ。
「ねえ、レイさん。本当にいいの? 本を全部手放すなんて」
レイの店舗兼住居はシュトライザー&ジャーノ工房よりも小さい。つまり、収納スペースには限りがある。
メルディの持ち物は一般的な女子に比べて少ないが、それでもゼロというわけにはいかない。そのまま詰め込めば、足の踏み場もなくなるのが目に見えていた。
だから、レイは二人で暮らすスペースを確保するために、店の本を王城の魔学研究所に寄贈すると言ったのだ。
何しろ貴重な文献たち。王城側は狂喜乱舞で専用の書庫まで増設してくれる上、閉架にしてレイ以外には貸し出し禁止にしてくれるらしいが、それでも手元からなくなることには変わらない。
「いいよ。読みたくなったら、いつでも読みにいけるしね。それに、頭の中には全部入っているから。僕にはこの本さえあれば十分なんだ」
レイはコンテナとは逆の位置に広げた、店に残すものを置くブルーシートの前に移動すると、汚さないよう丁寧に布で包まれていた本を手に取った。
何度も何度も読み込んだのだろう。修繕を重ねた表紙には『魔法紋理論体系 ルミナス・セプテンバー著』と文字が見える。本の隙間からも、色とりどりの付箋がいくつも飛び出していた。
「それって……。魔法紋の創始者が書いたって本?」
「そう。僕の原点。これね、父さんが最後に手に入れてくれた本なんだ。昔は本って貴重だったから、なかなかウルカナまで回ってこなくてさ。僕の手元に届いたのは父さんが亡くなったあとだった。これを読んで、僕は魔法紋の道に進むと決めたんだよ」
メルディとアルティから同時に喉が詰まった音がした。次いで鼻を啜る音も。そんな二人を見て、レイが困ったように笑う。
「相変わらず、君たち親子は涙もろいね。別に泣かせるつもりじゃなかったんだけど」
本を元に戻し、メルディにハンカチを渡したレイが、元気づけるように殊更明るい声で続けた。
「さあ、引っ越し準備を再開しようか。手間をかけて申し訳ないけど、ハンスくんは業者呼んでくれる? ラドクリフくんも、もうちょっと付き合ってね。泣いてる暇はないよ、メルディ。一分一秒でも長く君と居たいからね」
「レイさん……!」
「……親の目の前で娘を口説かないでくれる?」
感動するメルディに反して、涙を拭ったアルティがレイを睨む。そのとき、道の向こうから「お姉ちゃーん」と聞き慣れた声が届いた。
「お帰りー。無事にお姑さんたちとお話しできた?」
「グレイグ! ただいま! 無事に仲良くなれたわよ。何をかついで来たの?」
グレイグの両肩には丁寧に梱包された大きな荷物が抱えられている。右肩は台形、左肩は長方形だ。
新しい家具だろうか。首を傾げるメルディに目を細め、グレイグは荷物をどしんと地面に下ろした。
「お姉ちゃんの鏡台とタンス。今日届いたんだ。ルフト伯父さんたちからのお祝いだよ。できる限りコンパクトにしてもらったから、本をどけたら十分置けると思うよ」
「えっ、ひょっとして作ってくれたの? いつの間に……」
「結婚が決まった直後かな。工房の部屋も狭かったもんね。今まで持ってなかったんでしょ? レイさんとママが、それじゃ可哀想だからって相談したら作ってくれたんだって。あとでお礼言っておきなね」
ルフトはアルティの一番上の兄で、双子の弟と共にルビ村で大工の職についている。家具はお手のものとはいえ、こんな短期間で二個も作ってくれるとは。
震える手で梱包を外す。メルディの好みを汲んでか、鏡台もタンスもシンプルな白木で統一されていた。取っ手が緑色なのは、レイの瞳の色に合わせてくれたのだろう。
今まで化粧は部屋の机に小さな鏡を置いてしていたし、服は適当な木箱に放り込んでいた。
自分の鏡台とタンス。必要だと思ったことはないけれど、実際に見ると胸がじんとする。
「ママ、ずっと気にしてたらしいよ。年頃の娘なのに鏡台もないのかって」
「えっ……。なら、もっと早く言ってくれれば。俺だってそのぐらいの甲斐性は……」
「パパは実用性重視で、そういう情緒わかんないからダメだってさ。お姉ちゃんもパパに似て自分のことには無頓着だしね。いい機会だと思ったんじゃない」
容赦ないグレイグの言葉にアルティが肩を落とす。それを慰めるラドクリフとハンスたちを背に、メルディは袖を捲った。
「よし、頑張るわよー!」
「仕方ないだろ! なんだよ、この本の量! 運んでも運んでも終わんないんだよ!」
首にタオルをかけ、全身汗びっしょりになったアルティが、レイの店先に積んだコンテナの中を指差す。そこには古今東西ありとあらゆる魔法書が、蟻一匹入る隙間もないぐらいぎっちりと詰め込まれていた。
「百二十年分だからなあ。地下室にもあるし」
「だから定期的に整理しろって言ったじゃん! 普段きっちりしてるのに、なんで本の整理だけはダメなんだよ!」
叫ぶアルティに呼応するように、店のドアが開いた。
「アルティ君、これはダメだね。個人で出来る範疇を超えてる。業者に頼んで一気にやった方がいいよ」
「そうですね。ワーグナー商会で手配しましょうか? 最近、古美術品の配送も始めたんです。古書専門の配送人を呼びますよ」
店の中から現れたのは、ルビーみたいに真っ赤な鎧兜を着たデュラハンと、海みたいに深い青色の鎧兜を着たデュラハンだった。この暑いのにフル装備である。
二人ともグレイグを越える体格の良さなので、揃って見下ろされると圧迫感がすごい。
「て、手伝ってくれてるのって、ラドクリフさんとハンスさんだったの? ご近所さんたちにお願いするんじゃなかったの?」
赤い鎧のラドクリフはエスメラルダの叔父で、国軍士官学校の校長。青い鎧のハンスは母親の部下で、首都の治安を守る警備隊と消防隊の責任者だ。こんなところで肉体労働をさせていい立場の人間じゃない。
「組合の職人たちは、君たちの披露宴会場の建設にかかりっきりになってるからね。パワーのあるデュラハンは適材適所でしょ」
恐縮するメルディを宥めるように、ラドクリフが笑う。
「それに最近、時間に余裕があるんだ。エミィは教会の仕事で忙しいし、マーガレットもロビンとかいう熊のぬいぐるみと仲良くしてるし、士官学校は夏休み中だしね」
「僕は最初から選択肢ありません。連隊長には逆らえませんから」
ハンスはリリアナのことを昔の役職名で呼ぶ。アルティの敬語と同じで、染み付いてしまっているらしい。なんでも二十年以上前からリリアナの部下として苦労……いや、頑張ってくれているそうだ。
ロビンもマルグリテ家で楽しくやっているみたいで安心した。ラドクリフ曰く、最近はどこに行くのもマーガレットと一緒なのだとか。
新しい春が来たということだろうか?
喜ばしい反面、ウィンストンでは常にそばにいてくれただけに、ちょっとだけ寂しい。
「懐かしいなあ。こんな本、あったあった」
「ちょっと、やめてよレイ。それ、やり出すと終わらないやつだから」
コンテナの中の本を手に取るレイを、アルティが慌てて止める……が、ちっとも聞いちゃいない。
次々ページをめくっては、にこにこと嬉しそうに笑っている。その手つきも目つきもとても優しくて、レイが本をどんなに愛しているか伝わってきて胸が痛んだ。
「ねえ、レイさん。本当にいいの? 本を全部手放すなんて」
レイの店舗兼住居はシュトライザー&ジャーノ工房よりも小さい。つまり、収納スペースには限りがある。
メルディの持ち物は一般的な女子に比べて少ないが、それでもゼロというわけにはいかない。そのまま詰め込めば、足の踏み場もなくなるのが目に見えていた。
だから、レイは二人で暮らすスペースを確保するために、店の本を王城の魔学研究所に寄贈すると言ったのだ。
何しろ貴重な文献たち。王城側は狂喜乱舞で専用の書庫まで増設してくれる上、閉架にしてレイ以外には貸し出し禁止にしてくれるらしいが、それでも手元からなくなることには変わらない。
「いいよ。読みたくなったら、いつでも読みにいけるしね。それに、頭の中には全部入っているから。僕にはこの本さえあれば十分なんだ」
レイはコンテナとは逆の位置に広げた、店に残すものを置くブルーシートの前に移動すると、汚さないよう丁寧に布で包まれていた本を手に取った。
何度も何度も読み込んだのだろう。修繕を重ねた表紙には『魔法紋理論体系 ルミナス・セプテンバー著』と文字が見える。本の隙間からも、色とりどりの付箋がいくつも飛び出していた。
「それって……。魔法紋の創始者が書いたって本?」
「そう。僕の原点。これね、父さんが最後に手に入れてくれた本なんだ。昔は本って貴重だったから、なかなかウルカナまで回ってこなくてさ。僕の手元に届いたのは父さんが亡くなったあとだった。これを読んで、僕は魔法紋の道に進むと決めたんだよ」
メルディとアルティから同時に喉が詰まった音がした。次いで鼻を啜る音も。そんな二人を見て、レイが困ったように笑う。
「相変わらず、君たち親子は涙もろいね。別に泣かせるつもりじゃなかったんだけど」
本を元に戻し、メルディにハンカチを渡したレイが、元気づけるように殊更明るい声で続けた。
「さあ、引っ越し準備を再開しようか。手間をかけて申し訳ないけど、ハンスくんは業者呼んでくれる? ラドクリフくんも、もうちょっと付き合ってね。泣いてる暇はないよ、メルディ。一分一秒でも長く君と居たいからね」
「レイさん……!」
「……親の目の前で娘を口説かないでくれる?」
感動するメルディに反して、涙を拭ったアルティがレイを睨む。そのとき、道の向こうから「お姉ちゃーん」と聞き慣れた声が届いた。
「お帰りー。無事にお姑さんたちとお話しできた?」
「グレイグ! ただいま! 無事に仲良くなれたわよ。何をかついで来たの?」
グレイグの両肩には丁寧に梱包された大きな荷物が抱えられている。右肩は台形、左肩は長方形だ。
新しい家具だろうか。首を傾げるメルディに目を細め、グレイグは荷物をどしんと地面に下ろした。
「お姉ちゃんの鏡台とタンス。今日届いたんだ。ルフト伯父さんたちからのお祝いだよ。できる限りコンパクトにしてもらったから、本をどけたら十分置けると思うよ」
「えっ、ひょっとして作ってくれたの? いつの間に……」
「結婚が決まった直後かな。工房の部屋も狭かったもんね。今まで持ってなかったんでしょ? レイさんとママが、それじゃ可哀想だからって相談したら作ってくれたんだって。あとでお礼言っておきなね」
ルフトはアルティの一番上の兄で、双子の弟と共にルビ村で大工の職についている。家具はお手のものとはいえ、こんな短期間で二個も作ってくれるとは。
震える手で梱包を外す。メルディの好みを汲んでか、鏡台もタンスもシンプルな白木で統一されていた。取っ手が緑色なのは、レイの瞳の色に合わせてくれたのだろう。
今まで化粧は部屋の机に小さな鏡を置いてしていたし、服は適当な木箱に放り込んでいた。
自分の鏡台とタンス。必要だと思ったことはないけれど、実際に見ると胸がじんとする。
「ママ、ずっと気にしてたらしいよ。年頃の娘なのに鏡台もないのかって」
「えっ……。なら、もっと早く言ってくれれば。俺だってそのぐらいの甲斐性は……」
「パパは実用性重視で、そういう情緒わかんないからダメだってさ。お姉ちゃんもパパに似て自分のことには無頓着だしね。いい機会だと思ったんじゃない」
容赦ないグレイグの言葉にアルティが肩を落とす。それを慰めるラドクリフとハンスたちを背に、メルディは袖を捲った。
「よし、頑張るわよー!」
0
お気に入りに追加
36
あなたにおすすめの小説

追放された悪役令嬢はシングルマザー
ララ
恋愛
神様の手違いで死んでしまった主人公。第二の人生を幸せに生きてほしいと言われ転生するも何と転生先は悪役令嬢。
断罪回避に奮闘するも失敗。
国外追放先で国王の子を孕んでいることに気がつく。
この子は私の子よ!守ってみせるわ。
1人、子を育てる決心をする。
そんな彼女を暖かく見守る人たち。彼女を愛するもの。
さまざまな思惑が蠢く中彼女の掴み取る未来はいかに‥‥
ーーーー
完結確約 9話完結です。
短編のくくりですが10000字ちょっとで少し短いです。

雪解けの白い結婚 〜触れることもないし触れないでほしい……からの純愛!?〜
川奈あさ
恋愛
セレンは前世で夫と友人から酷い裏切りを受けたレスられ・不倫サレ妻だった。
前世の深い傷は、転生先の心にも残ったまま。
恋人も友人も一人もいないけれど、大好きな魔法具の開発をしながらそれなりに楽しい仕事人生を送っていたセレンは、祖父のために結婚相手を探すことになる。
だけど凍り付いた表情は、舞踏会で恐れられるだけで……。
そんな時に出会った壁の花仲間かつ高嶺の花でもあるレインに契約結婚を持ちかけられる。
「私は貴女に触れることもないし、私にも触れないでほしい」
レインの条件はひとつ、触らないこと、触ることを求めないこと。
実はレインは女性に触れられると、身体にひどいアレルギー症状が出てしまうのだった。
女性アレルギーのスノープリンス侯爵 × 誰かを愛することが怖いブリザード令嬢。
過去に深い傷を抱えて、人を愛することが怖い。
二人がゆっくり夫婦になっていくお話です。

【完結】勘当されたい悪役は自由に生きる
雨野
恋愛
難病に罹り、15歳で人生を終えた私。
だが気がつくと、生前読んだ漫画の貴族で悪役に転生していた!?タイトルは忘れてしまったし、ラストまで読むことは出来なかったけど…確かこのキャラは、家を勘当され追放されたんじゃなかったっけ?
でも…手足は自由に動くし、ご飯は美味しく食べられる。すうっと深呼吸することだって出来る!!追放ったって殺される訳でもなし、貴族じゃなくなっても問題ないよね?むしろ私、庶民の生活のほうが大歓迎!!
ただ…私が転生したこのキャラ、セレスタン・ラサーニュ。悪役令息、男だったよね?どこからどう見ても女の身体なんですが。上に無いはずのモノがあり、下にあるはずのアレが無いんですが!?どうなってんのよ!!?
1話目はシリアスな感じですが、最終的にはほのぼの目指します。
ずっと病弱だったが故に、目に映る全てのものが輝いて見えるセレスタン。自分が変われば世界も変わる、私は…自由だ!!!
主人公は最初のうちは卑屈だったりしますが、次第に前向きに成長します。それまで見守っていただければと!
愛され主人公のつもりですが、逆ハーレムはありません。逆ハー風味はある。男装主人公なので、側から見るとBLカップルです。
予告なく痛々しい、残酷な描写あり。
サブタイトルに◼️が付いている話はシリアスになりがち。
小説家になろうさんでも掲載しております。そっちのほうが先行公開中。後書きなんかで、ちょいちょいネタ挟んでます。よろしければご覧ください。
こちらでは僅かに加筆&話が増えてたりします。
本編完結。番外編を順次公開していきます。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました!

今日結婚した夫から2年経ったら出ていけと言われました
四折 柊
恋愛
子爵令嬢であるコーデリアは高位貴族である公爵家から是非にと望まれ結婚した。美しくもなく身分の低い自分が何故? 理由は分からないが自分にひどい扱いをする実家を出て幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱く。ところがそこには思惑があり……。公爵は本当に愛する女性を妻にするためにコーデリアを利用したのだ。夫となった男は言った。「お前と本当の夫婦になるつもりはない。2年後には公爵邸から国外へ出ていってもらう。そして二度と戻ってくるな」と。(いいんですか? それは私にとって……ご褒美です!)

せっかく家の借金を返したのに、妹に婚約者を奪われて追放されました。でも、気にしなくていいみたいです。私には頼れる公爵様がいらっしゃいますから
甘海そら
恋愛
ヤルス伯爵家の長女、セリアには商才があった。
であれば、ヤルス家の借金を見事に返済し、いよいよ婚礼を間近にする。
だが、
「セリア。君には悪いと思っているが、私は運命の人を見つけたのだよ」
婚約者であるはずのクワイフからそう告げられる。
そのクワイフの隣には、妹であるヨカが目を細めて笑っていた。
気がつけば、セリアは全てを失っていた。
今までの功績は何故か妹のものになり、婚約者もまた妹のものとなった。
さらには、あらぬ悪名を着せられ、屋敷から追放される憂き目にも会う。
失意のどん底に陥ることになる。
ただ、そんな時だった。
セリアの目の前に、かつての親友が現れた。
大国シュリナの雄。
ユーガルド公爵家が当主、ケネス・トルゴー。
彼が仏頂面で手を差し伸べてくれば、彼女の運命は大きく変化していく。

みんながみんな「あの子の方がお似合いだ」というので、婚約の白紙化を提案してみようと思います
下菊みこと
恋愛
ちょっとどころかだいぶ天然の入ったお嬢さんが、なんとか頑張って婚約の白紙化を狙った結果のお話。
御都合主義のハッピーエンドです。
元鞘に戻ります。
ざまぁはうるさい外野に添えるだけ。
小説家になろう様でも投稿しています。
踏み台令嬢はへこたれない
三屋城衣智子
恋愛
「婚約破棄してくれ!」
公爵令嬢のメルティアーラは婚約者からの何度目かの申し出を受けていたーー。
春、学院に入学しいつしかついたあだ名は踏み台令嬢。……幸せを運んでいますのに、その名付けはあんまりでは……。
そう思いつつも学院生活を満喫していたら、噂を聞きつけた第三王子がチラチラこっちを見ている。しかもうっかり婚約者になってしまったわ……?!?
これは無自覚に他人の踏み台になって引っ張り上げる主人公が、たまにしょげては踏ん張りながらやっぱり周りを幸せにしたりやっと自分も幸せになったりするかもしれない物語。
「わたくし、甘い砂を吐くのには慣れておりますの」
ーー踏み台令嬢は今日も誰かを幸せにする。
なろうでも投稿しています。

筆頭婚約者候補は「一抜け」を叫んでさっさと逃げ出した
基本二度寝
恋愛
王太子には婚約者候補が二十名ほどいた。
その中でも筆頭にいたのは、顔よし頭良し、すべての条件を持っていた公爵家の令嬢。
王太子を立てることも忘れない彼女に、ひとつだけ不満があった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる