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=私はキミを殺さない=
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さておき、
本部への報告はできないと判った今、
とにかく私はそう遠くない場所に着いているであろう皆とどこかで会い、時間圧延が効いていない灰色くんのことを伝え、
この星の情報を共有したかった。
そして地球の住人である灰色くんに私たちの課題について説明すれば、その持ち前の地球知識で役立つ情報を教えてもらえるかも知れない。
糧は鮮度の良い内に無駄なく利用するべきだ──ってなわけで。
そうと決まれば端末を掴む。
さて本日何度目だろう。
パンパンに膨らんだ鞄が視界の端から寂しく主張しているのに。
すっかりとその重さを忘れていた。
私は灰色くんを置いておいて、今度は友人の一人であるビストに通話をかけた。
「あ、あ、あ、ビストー?聞こえる?不具合無く着いた?調子はどう?」
「んぁー?今、道草眺めてたところだけど」
聞こえてきたのは耳馴染みのあるこえだった。地球に来れてたの……それだけで嬉し……。というか──
「え、三人とも居るじゃん!そろそろ皆に会いたいんだけどさぁ……」
ちょっと、ちょっと──
何分ぶりかの会話をしつつ、私は視界の端の灰色くんを捉えながら近づく。
「この星ではどういうところで人と人とが待ち合せるわけ?ほら、例えばキミが、友達と合うための場所をこの付近で決めるとしたらどういう場所を選ぶかな?」
屈んで灰色くんに質問した。
ここで “自分はこの星のことをなんにも知らないんだ” ということを今一度アピールしておく。
つむじから私を見上げる。顔へ。
「あぁ……と、駅前の喫茶店とかかな?」
キッサテンね。あー、はいはい有名だよね。そんなところで地球人は待ち会うんだ意外だな。
私はまず、キッサテンとはどんな景色が見れるとか、どういうサービスを提供する場所なのか、なんのために生まれてきたのか、誰がどこで生んだのか──てのは言い過ぎだけれど、“存在”を知る必要があった。
どうやら知識が足りていない。
「ふぅん、よくわかんないけど──。」
「あれ?誰かそこにいるの?」
ロロニの疑う声が入り込む。
あ。
「あぁ!聞こえちゃってた?な、なんでもな──……」
「ん?」
そういえば灰色くんに手伝ってもらいたい割にはあの子たちにどういう説明をすれば綺麗に収まるのか考えていない。
上手くいくと思い込んでいた私の脳内は汚れなき白紙のままだった。このまま掻き消して嘘を吐く流れに入ると不自然なのかもしれない。
「ちょっと地球人に挨拶をしたら返されたというか……なんというか。」
素直に言ったものの私の焦りは誤魔化しきれないようです。
「??それって大丈夫なの??ちょ、詳しく教えてよ」
「あ、会ってみる?」
単刀直入な提案をしてみる。このほうが通話での説明より話が早い。
だろうから。
……ふー。困ったかも。
生きたままの姿の、天然物の地球人に会わせようとしていることに、ビストたちは困惑しているみたい。
うーん。そんなことを言われるのも無理はない。
なぜか話せるんだもん。
私も一通り驚いたんだ。
こんな用途も構造も不明の高い建物に皆を出向かせるのは少々不安だ。それに全く別の場所に来ているのだから、現地の待ち合わせ場所スタイルに従いながら待ってみたいという “面倒くさーい欲” が私にはあった。
星の雰囲気をとことん満喫してやる。
「よしよし大丈夫、地球人は怖くないぞ。それでキッサテンってとこに行くんだけれどさ、端末で私の位置情報をそっちに解放するから、道をたどって来てくれない?」
私は灰色くんにキッサテンへ連れて行ってもらい、彼と皆を紹介し合うところまで脳内シミュレーションしていたので、少し強引に誘った。
性格を知り合っている仲だからこそ。
「……まぁいいけど、わかった……大丈夫かなこれ──」
どこか不本意のような返事だったけれど、思った通り来てくれるみたいだ。
うん。やったね。
ま、灰色くんから色々教えてもらえるかもしれないから、今は目をつぶってくれ。
私は両方を困らせないよう、まだ話したいことを頑張って飲み込んで、通話を終えた。
すると、目が合う。
「今、私の友達と約束つけたからさ、ね?というわけで、そこまで案内してよ。」
「……。」
状況を飲み込めていないような素振りが続く。
仕方ない。キミの運命なんだ。
私はテンションが下がりきる前に早く三人に会いたかった。
この場所からの景色を見渡しながら彼の返答を待っている。
なんというか、言い表しきれないけれど、細かい町並みがすごい素敵だ。ラノハクトでは感じられない胸が高鳴るような気品と不完全がある。なんて贅沢なんだ。あの星に居たまま生きていたとしたらずっと見れてないんだろうなぁ。
どういう構造?あの一つ一つが家なのか。へんなの。
住み心地はどうなのか。
中で何をしているのか。
管理は大変そうかもな。
不思議な景色に私の考えが惑わされていく。
つらつらと気が──
「あ、あのさ、ここの時間が止まっているのは君たちが何か関係しているの?」
げ。何て説明しようか。
「……それはあなたに教えていいか分からないの。」
地球人の住まいについて思いを馳せていた私は適当に質問をかわした。
でも、本当だ。
「じゃあ、君の名前は?」
待ち構えていた私の名前を知りたがる灰色くんの顔。
「ごめん、まずは私の友達と会って話し合わさせて。その成り行き次第でキミに教えられることがあるかもしれない」
なんだかさらりと尋ねられたのでうっかりと名を名乗るところだった。
危ないねぇ……!
そうだよね……話してないもんね。
できるだけ傷つけないよう言葉を選び断る。本心はそりゃ教えたいよ。納得はしてくれないだろうけれど私も手一杯なんだ。
そう。今は言うべきか分からない。信用していない訳ではないが、私だけの判断で勝手に情報は教えることはできない……から。
ごめん。
本部への報告はできないと判った今、
とにかく私はそう遠くない場所に着いているであろう皆とどこかで会い、時間圧延が効いていない灰色くんのことを伝え、
この星の情報を共有したかった。
そして地球の住人である灰色くんに私たちの課題について説明すれば、その持ち前の地球知識で役立つ情報を教えてもらえるかも知れない。
糧は鮮度の良い内に無駄なく利用するべきだ──ってなわけで。
そうと決まれば端末を掴む。
さて本日何度目だろう。
パンパンに膨らんだ鞄が視界の端から寂しく主張しているのに。
すっかりとその重さを忘れていた。
私は灰色くんを置いておいて、今度は友人の一人であるビストに通話をかけた。
「あ、あ、あ、ビストー?聞こえる?不具合無く着いた?調子はどう?」
「んぁー?今、道草眺めてたところだけど」
聞こえてきたのは耳馴染みのあるこえだった。地球に来れてたの……それだけで嬉し……。というか──
「え、三人とも居るじゃん!そろそろ皆に会いたいんだけどさぁ……」
ちょっと、ちょっと──
何分ぶりかの会話をしつつ、私は視界の端の灰色くんを捉えながら近づく。
「この星ではどういうところで人と人とが待ち合せるわけ?ほら、例えばキミが、友達と合うための場所をこの付近で決めるとしたらどういう場所を選ぶかな?」
屈んで灰色くんに質問した。
ここで “自分はこの星のことをなんにも知らないんだ” ということを今一度アピールしておく。
つむじから私を見上げる。顔へ。
「あぁ……と、駅前の喫茶店とかかな?」
キッサテンね。あー、はいはい有名だよね。そんなところで地球人は待ち会うんだ意外だな。
私はまず、キッサテンとはどんな景色が見れるとか、どういうサービスを提供する場所なのか、なんのために生まれてきたのか、誰がどこで生んだのか──てのは言い過ぎだけれど、“存在”を知る必要があった。
どうやら知識が足りていない。
「ふぅん、よくわかんないけど──。」
「あれ?誰かそこにいるの?」
ロロニの疑う声が入り込む。
あ。
「あぁ!聞こえちゃってた?な、なんでもな──……」
「ん?」
そういえば灰色くんに手伝ってもらいたい割にはあの子たちにどういう説明をすれば綺麗に収まるのか考えていない。
上手くいくと思い込んでいた私の脳内は汚れなき白紙のままだった。このまま掻き消して嘘を吐く流れに入ると不自然なのかもしれない。
「ちょっと地球人に挨拶をしたら返されたというか……なんというか。」
素直に言ったものの私の焦りは誤魔化しきれないようです。
「??それって大丈夫なの??ちょ、詳しく教えてよ」
「あ、会ってみる?」
単刀直入な提案をしてみる。このほうが通話での説明より話が早い。
だろうから。
……ふー。困ったかも。
生きたままの姿の、天然物の地球人に会わせようとしていることに、ビストたちは困惑しているみたい。
うーん。そんなことを言われるのも無理はない。
なぜか話せるんだもん。
私も一通り驚いたんだ。
こんな用途も構造も不明の高い建物に皆を出向かせるのは少々不安だ。それに全く別の場所に来ているのだから、現地の待ち合わせ場所スタイルに従いながら待ってみたいという “面倒くさーい欲” が私にはあった。
星の雰囲気をとことん満喫してやる。
「よしよし大丈夫、地球人は怖くないぞ。それでキッサテンってとこに行くんだけれどさ、端末で私の位置情報をそっちに解放するから、道をたどって来てくれない?」
私は灰色くんにキッサテンへ連れて行ってもらい、彼と皆を紹介し合うところまで脳内シミュレーションしていたので、少し強引に誘った。
性格を知り合っている仲だからこそ。
「……まぁいいけど、わかった……大丈夫かなこれ──」
どこか不本意のような返事だったけれど、思った通り来てくれるみたいだ。
うん。やったね。
ま、灰色くんから色々教えてもらえるかもしれないから、今は目をつぶってくれ。
私は両方を困らせないよう、まだ話したいことを頑張って飲み込んで、通話を終えた。
すると、目が合う。
「今、私の友達と約束つけたからさ、ね?というわけで、そこまで案内してよ。」
「……。」
状況を飲み込めていないような素振りが続く。
仕方ない。キミの運命なんだ。
私はテンションが下がりきる前に早く三人に会いたかった。
この場所からの景色を見渡しながら彼の返答を待っている。
なんというか、言い表しきれないけれど、細かい町並みがすごい素敵だ。ラノハクトでは感じられない胸が高鳴るような気品と不完全がある。なんて贅沢なんだ。あの星に居たまま生きていたとしたらずっと見れてないんだろうなぁ。
どういう構造?あの一つ一つが家なのか。へんなの。
住み心地はどうなのか。
中で何をしているのか。
管理は大変そうかもな。
不思議な景色に私の考えが惑わされていく。
つらつらと気が──
「あ、あのさ、ここの時間が止まっているのは君たちが何か関係しているの?」
げ。何て説明しようか。
「……それはあなたに教えていいか分からないの。」
地球人の住まいについて思いを馳せていた私は適当に質問をかわした。
でも、本当だ。
「じゃあ、君の名前は?」
待ち構えていた私の名前を知りたがる灰色くんの顔。
「ごめん、まずは私の友達と会って話し合わさせて。その成り行き次第でキミに教えられることがあるかもしれない」
なんだかさらりと尋ねられたのでうっかりと名を名乗るところだった。
危ないねぇ……!
そうだよね……話してないもんね。
できるだけ傷つけないよう言葉を選び断る。本心はそりゃ教えたいよ。納得はしてくれないだろうけれど私も手一杯なんだ。
そう。今は言うべきか分からない。信用していない訳ではないが、私だけの判断で勝手に情報は教えることはできない……から。
ごめん。
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