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魔王の息子、地上で学校生活
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しおりを挟む昼休みの間、色々と歩き周り校舎裏まで辿り着いた。源一郎は、ぐったりした大戸と、大戸に貸したはずの本を奪っている早川達がいた。
「おい、愚民ども。何故お前達がその魔本を持っている」
早川は舌打ちをした。「あーあ、話が面倒になりそうだ」
「何故その者が倒れている」
曽根はニヤケ面を見せた。「ちょっと考えたら分かるだろ」
「貴様ら、まさか…」
源一郎は怒りに震えた。
「そんなにその本が読みたかったのか!? 順番に貸してやるから、我に自ら進言すればよかったものを!」
早川以外の3人は、爆笑した。「そっか、そりゃそうか。そういう勘違いになるか!」
「何も殴って奪う必要はなかろう!」
「ごめんごめん、どうしても読みたくてさ!」3人は話を合わせた。大戸は「それは、違うよ」と源一郎に伝えようとしたが、早川がそれを許さなかった。曽根は本を源一郎に渡そうとしたその時。源一郎の左手が青白く光り、顔面に拳をぶつけた。「読み終えて返してくれるのは良いが、この者が傷ついた分は返させてもらうぞ」
源一郎がそう言って、初めて早川は笑った。
「本当に俺たちがそれを読みたいと思ってたのか? あのな、単にお前に嫌がらせしてるだけなんだよバーカ。俺がお前に世間ってモンを教えてやる、お前みんなに嫌われてるんだぞ。空気が読めなくてイタいやつだって。だからお前はこうやって俺たちに狙われてんだよ」
源一郎は「…みんな?」と、その単語を切り取った。
「皆とは誰だ?」
「皆は学校の皆だよ」
「学校の皆とは誰だ?」
「…学校の皆は学校の皆だよ」
「では、そこにいる大戸も我を嫌っているのか」
大戸は、首を静かに横に振った。
「どうやら『皆』ではなさそうだな」
「そいつ一人以外の皆から嫌われてんだよ、お前は!」
「…支配者というのは、民衆から嫌われるものだ。統治のために首を締め上げる必要もあるから、多少の批判は受け入れよう。…しかし! 貴様のように、嫌われる勇気もなければ民衆を勝手に味方にしているつもりでいる者は決して許しはせんぞ!」
源一郎の両腕が再び青白く光り、大きな腕のとなった。そしてそれは早川たちの喉元に向かって伸びていった。文字通り、4人の首を締め上げた。
「…なんだよこれ、何すんだよ、空気読めよ、空気読んで俺にボコられろよバカが」
「空気とはなんだ。貴様のいう空気は、単なる貴様自身の願望だろう。それが叶いそうもないから、民衆の意見かのように仕立てた。そうだろう」
「お前に何が分かる」
「六〇〇年生きていれば分かる」
光の腕に力を込めようとした時、大戸が声を上げた。「待って!」
「待って、高橋くん…」
「何故待つ必要がある。この愚民どもは貴様を傷つけたんだぞ」
「そうだけど…そう、だけど…。あ、問題が起きる度に、そうやって殺して解決したら、支配する民衆が誰もいなくなるんじゃないかな…!」
源一郎は光の腕の力を緩めた。「確かにそうだな」4人は地面に落ちた。
「貴様は優しいな。このような心の器こそが、真の支配者になり得るのかもしれない」
4人に向かって、「其の者の言葉に免じて、貴様らはここで放してやる。クーデターを起こしたくなったら、今度は我を直接狙いにくる事だな」と吐き捨て、その場を立ち去った。
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