野鍛冶

内藤 亮

文字の大きさ
上 下
4 / 8

4

しおりを挟む
 小春の鍛造した道具は、百姓や職人の間で、たちまち評判となった。やはり、兼正の目に狂いはなかったのだ。
「手を見せていただけますか」
 若い娘にいきなり手を握られて、百姓の又吉は目を白黒させている。
「また小春の見立てが始まったぞ」
 小平太が省吾に目配せした。
「みねぇ、あの顔。又吉のやつ、顔を真っ赤にしてらぁ」
 又吉はまだ独り者である。鎌でも新調しようかと工房に来ただけなのに、小春にいきなり手を握られて、耳まで赤くなっている。
「こんな所にマメが出来てる。手が小さいから、力が伝わりずらいのね。刃の曲がり具合を少し大きくしたらいいかしら」
 又吉の手を捏ねくり回しながら、小春は一人ぶつぶつと呟いている。
「又吉、気にするな。小春はどの客にもそうなんだ」
 兼正に言われ、又吉は何やら残念そうな顔になった。
「三日もしたら鎌は出来る。そうだな、小春?」
「あ、はい」
 我に返った小春がようやく又吉の手を離した。
 小春は自分が体得した技術を職人に惜しげもなく伝授したから、兼正の工房は使いやすい道具を作ってくれる、と評判になった。『兼正』は日々の道具を作る職人集団だ。己の技術を独り占めしていては工房の経営は成り立たない。
 硬い鉄と柔らかい鉄。鍛造のやり方で鉄の硬度は変わってくる。いい道具を作れるか否かは、剛柔の鉄を組み合わせる職人の腕にかかっているのである。
「ね、面白いでしょう」
 小春に言われると、ありふれた農具や大工道具も特別な刀を鍛えているかのような気持ちになってくる。各々が一心に鉄を鍛える兼正の工房はいつも活気に満ちていた。
 夏になった。男達は半裸になって鉄を鍛えている。小春は一応、木綿の単衣を着ているが、襟元を寛げたところでやはり暑い。真っ赤な顔をして鉄を鍛えていると、休みをとっていた小平太が戸口からひょいと顔を出した。
「親方、小春をちょっとかりてもいいですか」
 鎚を打つ音が仕事場に鳴り響いている。小平太は大声を張り上げた。
「おう、構わんぞ。小春、少し休んでこい。ついでに、小平太に冷たいもんでもおごってもらえ」
 兼正もやはり大声で答えた。
 そろそろ八つだ。白く乾ききった通りを歩く者はほとんどいない。工房の裏手を流れる小川のせせらぎが耳に心地よい。
「氷でも食うか?」
「いいの?」
 木陰から吹く風に目を細めていた小春が目を瞠った。
 製氷機などない時代、氷は贅沢品だった。氷を作るためには、まず製氷用の池を掘るか、湖に足場を作る。それから、冬の間中、塵芥が入らないよう細心の注意をはらって透明な氷を作り上げていく。切り出した氷は氷室に保存されて、暑くなると市中にも出回るのだ。
 氷は貴族だけが口にできる高級品だったが、今は金さえ出せば庶民の口にも入るようになった。
「おうよ」
 小平太が力強く頷いた。表通りにぬけて、門前町を暫く歩くとお目当ての茶屋が見えてきた。
「あそこだ」 
 葦簾を巡らせ打ち水をした店先はすっかり夏仕様で、『氷』と染め抜かれたのぼり旗が誇らしげに掲げてある。
「お待たせしました」
 床几に腰かけて待っていると、小女がぎやまんの器に盛られた氷を持ってきた。氷を鉋で薄く削り、糖蜜をかけ回した氷はいかにも涼しげだ。
「私、初めてなの」
 小春がギヤマンを手に取り、器の美しさと冷たさに感心していると、小平太が笑った。
「早く食わねぇと溶けちまうぞ」
「小平太さんはいいの?」
「俺は前に食ったことがあるから」
 そう言って、小平太は麦湯をさも旨そうに飲んだ。
「いただきます」
「おう」
 氷を口に入れると、冷たさを残してあっという間に溶けていく。ゆっくり味わいたいのだが、溶けてしまったらただの砂糖水だ。小春はもったいない、と思ったのだが、さっさと食べることに決めた。
 食べ終わった小春がため息をつくと、小平太が満足げな笑みを浮かべた。
「うまかったか?」
「ええ、とっても。ありがとう、小平太さん。夏の楽しみが一つ増えたわ」
 小春は嬉しそうな笑みを浮かべた。鉄一筋で、娘らしい着物や紅の類いには一切興味がない。金は貯まる一方だった。少々氷を食べたくらいでは、小春の蓄えは減りそうもない。
「礼を言わないとなのは俺の方だ。小春のやり方で笄を作ってやったら由緒のやつ、大喜びだった。ありがとな」 
 小平太が珍しく殊勝な顔をして、小春に深々と頭を下げた。
 流行りの錺屋を知らないか、と小平太に聞かれたのがきっかけだった。とはいえ、鉄一筋の小春がそんな店を知るはずもない。
「小平太さんが作れば?」
「できればそうしたいがなぁ」
 小平太は残念そうに言った。この頃やっと兼正の銘を刻むことを許されるようになった小平太だ。自信がないのも無理はない。そこで小春は、昔、鯉を作る時に教えを請うた芳兵衛にビラビラ簪の作り方を教わってきた。基本の作り方さえ分かれば、あとは小春の面目躍如である。
 笄は簪の一種で、小刀が仕込まれたタイプもあり、護身やペーパーナイフとして使った。簪には貴女を守る、という意味や、魔除けの意味があり、生涯を共にしたい女性に送る習慣があった。
「それって……」
「ああ、あいつと一緒になることに決めた」
 修行に身が入らず、親方を心配させた小平太だったが、このところ急に真面目になり、一心に鍛冶仕事に打ち込んでいた。所帯を持つ、とはそういうことなのだ。今までは出来の悪い兄、くらいに思っていた小平太が、急に男らしくみえた。
「これからは通いになる。親方の鼾ともおさらばだな」
 そう言うと、小平太はへへっと照れ臭そうに笑った。
「そろそろ戻るか」
「ええ」 
「近くまで送ろう」
 気持ちよさそうに大股で歩く小平太のあとを小春は黙ってついていった。
 鍛冶仕事をしている小平太の背中は肩張り、尻が固そうに盛り上がっている。不意に由緒との淫らな姿が目に浮かんだ。
「じゃあな、小春」
 気がつくと工房の前だった。
「どうした? 顔が赤いぞ」
 小平太が心配そうに小春の顔を覗き込んだ。
「な、何でもないわ」
 頭の中など覗かれるはずもないのに、小春はいつものように小平太と顔を合わせられなかった。
「変なやつだな。親方には俺から話しをするから。小春、勝手に話したりするなよ」
「そんなこと、分かっているわ」
「じゃあな」
「また明日」
「おう」 
 小平太はもう背中をみせていて、振り返りもせずに片手だけをあげて小春にこたえた。

 小雪のちらつく、ひどく冷え込む夜だった。時折吹く風が氷片を木戸に叩きつけていく。屏風の向こうから聞こえてくる兼正の豪快な鼾を聞きながら、小春は掻巻の中でうつらうつらしていた。
 鍛冶仕事は大きな音がするから、町中に仕事場を構えるわけにはいかない。そこで、兼正は町外れにある納屋を手直しして住んでいた。小春の寝間は、だだっ広い板間の一部を屏風で囲って作られている。小平太が居なくなって、夜ここに寝泊まりするのは兼正と小春の二人きりだ。野中の一軒家なので、こんな夜は兼正の鼾さえも心強かった。
 どれほど眠っていたのか。小春は引戸を激しく叩く音で目が覚めた。
「親父、開けてくれ! 俺だ」
「てめえ、どの面下げて帰ってきた!」
 今まで聞いたことのないような兼正の怒声だった。
「こんな所にいたら凍えちまう。早く入れてくれよ」
 声が急に小さくなり、ぼそぼそとした話し声になった。やがて戸の開く音がして、乱暴な足音が板間に響いた。
「女が居るのか」 
 屏風には小春の着物がかけてある。小春は掻巻にくるまったまま、身を固くして息を潜めていた。
「うちの職人だ」
「へぇ」
 男の顔が屏風からひょいとのぞいた。
「これはこれは。お初にお目にかかる。俺は清次だ」
 うちの職人、という兼正の言葉が、小春を勇気づけた。臆することなく見返す小春に、清次はニッと笑いかけた。
「人の寝床を覗くもんじゃねぇ。こっちにこい」
 清次はちょっと肩をすくめると、顔をひっこめた。
「夜分にすまねぇ。少し話がある」
 屏風越しに兼正の声がした。

 小春が身支度を整えて屏風から出ていくと、囲炉裏を囲んで兼正と清次が座っていた。兼正は胡座をかき腕を組んで顔をしかめている。清次は憮然とした顔で囲炉裏の火を見ていた。
「夜分にすまない」 
 兼正は再び小春に謝ると、座るよう促した。
「息子の清次だ」 
 息子がいることは知っている。悪い遊びを覚えて家を出た、という話は兼正本人から聞いた。余計なことは言うまい、と小春は黙って頭を下げた。
 重苦しい沈黙を最初に破ったのは兼正だった。
「今更、鍛冶屋か」 
「だから、生根を入れ替えて精進するって言ってるだろう。跡継ぎが帰ってきたんだ。もう少し喜んでくれたっていいだろう」
「おめえ、何歳いくつになった」
「二十七だ」
「小春、清次に手を見せてやってくれ」
 清次は兼正と似た所が一つもない。涼やかな目元をしていて肌が抜けるように白い。厳つい兼正と違って、誰もが振り返るような優男だ。が、纏っている空気は小平太や省吾とは全く異質のものだった。
 居心地の悪い違和感を感じ、小春が躊躇していると、兼正が、大丈夫だ、というように頷いてみせた。
 小春は清次のほうに膝をすすめ、おずおずと手を見せた。
 十二から鍛冶仕事をしてきた小春の手は固い肉が付き、掌が厚くなっている。がっしりとした手は、まだ幼さの残る華奢な身体とひどく不釣り合いだった。
「それが鍛冶屋の手だ」
 小春の手を見た清次の顔が醜く歪んだ。兼正が静かに言った。
「諦めるんだな。仕事を探すなら口添えしてやる」
 最後の一言はせめてもの手向けだったのか。言い終えると、兼正は口を引き結び息子から目を逸らせた。
 どこで齟齬が生じてしまったのか。
 項垂れている親子は、やはりよく似ていた。
「あの、親方」
 兼正が目をあげた。
「清次さんに鍛冶仕事を教えてあげてください。私だって最初は何も分からなかった。けれど親方のおかげでここまでこれたんです」
 清次が縋るような眼差しを兼正にむけた。顔を逸らし黙っていた兼正が初めて息子を正面から見据えた。
「これが最後だぞ」
「ありがとう、親父」
「明日から仕事だからな」 
 兼正に言われ清次は目を剥いたが、分かった、とほっとしたように言った。
 朝から兼正の大声が響いている。小春がとうに身支度をすませても、清次はまだ寝ているのだ。
「さっさと起きろ!」 
「まだ真っ暗だぜ。勘弁してくれ」
 仕事場には百姓が持ち込んだ鍬や鋤、千歯こきまでもが乱雑に積み上げられている。秋の刈り入れが終わり、農閑期となるこれからの季節が野鍛冶は一番忙しいのだ。山のような仕事の片がつく頃には歳の瀬になっていて、兼正の工房も慌てて年越しの準備を始めるのだった。
「飯が済んだら仕事だ。おまえは水を汲んでこい」  
 いつもは兼正が水を汲んでくるのだが、若い清次が水を汲むのが妥当だろう。深井戸から水を汲むのは重労働だ。炊事だけでなく、鍛冶仕事にも水を使うから、真冬でもかなりの水が必要なのだ。
 清次ははだけた寝着に褞袍を羽織ると、うう、さみぃと、ぼやきながら水を汲みに外へ出て行った。
「おせぇな。あいつは何をやっているんだ」 
 鍛治場の火を起こしていた兼正が苛立たしげに舌打ちした。
「見に行ってきます」
 一歩外に出ると、身を切るような寒さだった。天秤棒を危なっかしい足取りで歩いてくる清次が目にはいった。小春は思わず駆け寄っていった。
「手伝うわ」
 桶を覗くと、水はあらかたこぼれてしまっている。
「もう一度水を汲んでください。一つ持つから」
「恩に着るぜ」
 もうすぐ夜が明ける。曙光のもとで清次と話していると、昨夜の違和感は自分の思い過ごしだったように思えてきた。
「どういたしまして」
 小春が笑みを浮かべると、清次はひどく眩しそうな顔をした。

 

 


 
 



 
 
 
 

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

偽夫婦お家騒動始末記

紫紺
歴史・時代
【第10回歴史時代大賞、奨励賞受賞しました!】 故郷を捨て、江戸で寺子屋の先生を生業として暮らす篠宮隼(しのみやはやて)は、ある夜、茶屋から足抜けしてきた陰間と出会う。 紫音(しおん)という若い男との奇妙な共同生活が始まるのだが。 隼には胸に秘めた決意があり、紫音との生活はそれを遂げるための策の一つだ。だが、紫音の方にも実は裏があって……。 江戸を舞台に様々な陰謀が駆け巡る。敢えて裏街道を走る隼に、念願を叶える日はくるのだろうか。 そして、拾った陰間、紫音の正体は。 活劇と謎解き、そして恋心の長編エンタメ時代小説です。

信長の弟

浮田葉子
歴史・時代
尾張国の守護代の配下に三奉行家と呼ばれる家があった。 その家のひとつを弾正忠家といった。当主は織田信秀。 信秀の息子に信長と信勝という兄弟がいた。 兄は大うつけ(大バカ者)、弟は品行方正と名高かった。 兄を廃嫡し、弟に家督を継がせよと専らの評判である。 信勝は美貌で利発な上、優しかった。男女問わず人に好かれた。 その信勝の話。

【完結】女神は推考する

仲 奈華 (nakanaka)
歴史・時代
父や夫、兄弟を相次いで失った太后は途方にくれた。 直系の男子が相次いて死亡し、残っているのは幼い皇子か血筋が遠いものしかいない。 強欲な叔父から持ち掛けられたのは、女である私が即位するというものだった。 まだ幼い息子を想い決心する。子孫の為、夫の為、家の為私の役目を果たさなければならない。 今までは子供を産む事が役割だった。だけど、これからは亡き夫に変わり、残された私が守る必要がある。 これは、大王となる私の守る為の物語。 額田部姫(ヌカタベヒメ) 主人公。母が蘇我一族。皇女。 穴穂部皇子(アナホベノミコ) 主人公の従弟。 他田皇子(オサダノオオジ) 皇太子。主人公より16歳年上。後の大王。 広姫(ヒロヒメ) 他田皇子の正妻。他田皇子との間に3人の子供がいる。 彦人皇子(ヒコヒトノミコ) 他田大王と広姫の嫡子。 大兄皇子(オオエノミコ) 主人公の同母兄。 厩戸皇子(ウマヤドノミコ) 大兄皇子の嫡子。主人公の甥。 ※飛鳥時代、推古天皇が主人公の小説です。 ※歴史的に年齢が分かっていない人物については、推定年齢を記載しています。※異母兄弟についての明記をさけ、母方の親類表記にしています。 ※名前については、できるだけ本名を記載するようにしています。(馴染みが無い呼び方かもしれません。) ※史実や事実と異なる表現があります。 ※主人公が大王になった後の話を、第2部として追加する可能性があります。その時は完結→連載へ設定変更いたします。  

梅すだれ

木花薫
歴史・時代
江戸時代の女の子、お千代の一生の物語。恋に仕事に頑張るお千代は悲しいことも多いけど充実した女の人生を生き抜きます。が、現在お千代の物語から逸れて、九州の隠れキリシタンの話になっています。島原の乱の前後、農民たちがどのように生きていたのか、仏教やキリスト教の世界観も組み込んで書いています。 登場人物の繋がりで主人公がバトンタッチして物語が次々と移っていきます隠れキリシタンの次は戦国時代の姉妹のストーリーとなっていきます。 時代背景は戦国時代から江戸時代初期の歴史とリンクさせてあります。長編時代小説。長々と続きます。

拾われ子だって、姫なのです!

田古みゆう
歴史・時代
南蛮人、南蛮人って。わたくしはれっきとした倭人よ! お江戸の町で与力をしている井上正道と、部下の高山小十郎は、二人の赤子をそれぞれ引き取り、千代と太郎と名付け育てることに。 月日は流れ、二人の赤子はすくすくと成長した。見目麗しい姿と珍しい青眼を持つため、周囲からは奇異の眼で見られる。こそこそと噂をされるたび、千代は自分は一体何者なのだろうかと、自身の出自について悩んでいた。唯一同じ青眼を持つ太郎と悩みを分かち合おうにも、何かを知っていそうな太郎はあまり多くを語らない。それがまた千代を悶々とさせていた。 そんな千代を周囲の者は遠巻きに見ながらも、その麗しさに心奪われる者は多く、やがて年頃の千代にも縁談話が持ち上がる。 しかし、当の千代はそんなことには興味がなく。寄ってくる男を、口八丁手八丁で退けてばかり。 果たして勝気な姫様の心を射止める者が、このお江戸にいるのかっ!? 痛快求婚譚、これよりはじまりはじまり〜♪

戦国三法師伝

kya
歴史・時代
歴史物だけれども、誰にでも見てもらえるような作品にしていこうと思っています。 異世界転生物を見る気分で読んでみてください。 本能寺の変は戦国の覇王織田信長ばかりではなく織田家当主織田信忠をも戦国の世から葬り去り、織田家没落の危機を迎えるはずだったが。 信忠が子、三法師は平成日本の人間が転生した者だった…

裏長屋の若殿、限られた自由を満喫する

克全
歴史・時代
貧乏人が肩を寄せ合って暮らす聖天長屋に徳田新之丞と名乗る人品卑しからぬ若侍がいた。月のうち数日しか長屋にいないのだが、いる時には自ら竈で米を炊き七輪で魚を焼く小まめな男だった。

南町奉行所お耳役貞永正太郎の捕物帳

勇内一人
歴史・時代
第9回歴史・時代小説大賞奨励賞受賞作品に2024年6月1日より新章「材木商桧木屋お七の訴え」を追加しています(続きではなく途中からなので、わかりづらいかもしれません) 南町奉行所吟味方与力の貞永平一郎の一人息子、正太郎はお多福風邪にかかり両耳の聴覚を失ってしまう。父の跡目を継げない彼は吟味方書物役見習いとして南町奉行所に勤めている。ある時から聞こえない正太郎の耳が死者の声を拾うようになる。それは犯人や証言に不服がある場合、殺された本人が異議を唱える声だった。声を頼りに事件を再捜査すると、思わぬ真実が発覚していく。やがて、平一郎が喧嘩の巻き添えで殺され、正太郎の耳に亡き父の声が届く。 表紙はパブリックドメインQ 著作権フリー絵画:小原古邨 「月と蝙蝠」を使用しております。 2024年10月17日〜エブリスタにも公開を始めました。

処理中です...