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意外なキミの…
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怪訝そうに片眉を釣り上げて一夢は寧々子を振り返っていた。今まで何度もすれ違ったことがあっても、こうして目を合わせたことは一度もなかった。少し切長の目がこちらを向くだけで凄みがあり、その鋭さから逃げようと金縛りにあう視線を無理矢理に下へずらした。その先で目に飛び込んできたのは、彼の手元でギラリと鈍く光る刃物だった。
「あ、お前もしか…」
「や、やめて!それで何してるの!?」
咄嗟に腕を上げて身を守るような体勢をとる寧々子に対して一夢は言葉を遮られたことに一瞬眉を顰めた。
「なにって、穴開けてバラしてる」
「う、うそでしょ!?そんなひどいっ!」
「何の話してんの」
まるで怪物にでもあったような顔で一夢を見る瞳は完全に怯えていた。一夢はめんどくさそうに頭をかいて足元に転がったそれを雑に持ち上げて見せた。ビクッと怯える寧々子が目にしたのは子猫ではなく四角い塊だった。
「…段ボール。古いのバラして、新しいのに穴開けてた」
「………へ?」
少しきまりが悪そうに一夢が呟くと、少し遅れて寧々子が声を裏返した。一夢の手にある段ボールは四面全てが塞がれていて、丸く切り抜かれた穴がいくつかあった。そこまで見て漸く寧々子は理解した。
「子猫のおうち…?」
「まあ……」
「なんだぁ。そっか、子猫のための……え、鍋島君が?」
つい意外そうな声を出してしまった寧々子をまた鋭い視線が襲う。とにかくもうこれ以上この人に関わってしまっては寧々子の平穏ライフに支障が出ることを考え、もう絶対に刺激するようなことのないように立ち去ろうと決めた。落としていたタオルを拾い上げながら、足早に一夢のそばまでやってきて必死で笑顔を作り早口で捲し立てた。
「あのこれっ、その子のベッド代わりにっ!じゃあ私はこれで!」
精一杯振り絞った声は萎縮して思った半分の声量も出てなかった気がする。その後相手の様子を確認することもできないまま半ば強引にタオルを押しつけて踵を返し、気がつけばあっという間に予世橋にいた。
未だに緊張で心臓が早鐘をうつ。まさかあんな場所で鍋島一夢に会うとは思ってもみなかったし、彼が子猫の世話をしていたなんてもっと予想外だった。初めてまともに顔を見て会話をしたが、よくよく考えれば彼とは同じクラスだったのだ。一夢も寧々子に対して「誰だ」と気づいていないようだったし、たった三十人そこそこのクラスでも無関心でいれば本当に接点がないのだなぁとまるで他人事のように感じた。
やっと少し落ち着きを取り戻してきた時、肩に冷たいものが当たってふと見上げた空からはまばらに雨が落ちてきていた。このタイミングで子猫のために屋根付きの家を作った一夢に寧々子は感心していた。子猫も喜んでいるだろう。
「鍋島君、帰り間に合ったのかなぁ」
少し彼が心配になったけれど、明日からも何事もなかったかのようにいつも通り知らない他人のフリで生活することは寧々子の中で決まっている。突然出会ってしまったものの、平穏を守るためには一番絡んではいけない人だった。明日からは徹底して軌道修正をしようと静かに気合を入れ直した。
「あ、お前もしか…」
「や、やめて!それで何してるの!?」
咄嗟に腕を上げて身を守るような体勢をとる寧々子に対して一夢は言葉を遮られたことに一瞬眉を顰めた。
「なにって、穴開けてバラしてる」
「う、うそでしょ!?そんなひどいっ!」
「何の話してんの」
まるで怪物にでもあったような顔で一夢を見る瞳は完全に怯えていた。一夢はめんどくさそうに頭をかいて足元に転がったそれを雑に持ち上げて見せた。ビクッと怯える寧々子が目にしたのは子猫ではなく四角い塊だった。
「…段ボール。古いのバラして、新しいのに穴開けてた」
「………へ?」
少しきまりが悪そうに一夢が呟くと、少し遅れて寧々子が声を裏返した。一夢の手にある段ボールは四面全てが塞がれていて、丸く切り抜かれた穴がいくつかあった。そこまで見て漸く寧々子は理解した。
「子猫のおうち…?」
「まあ……」
「なんだぁ。そっか、子猫のための……え、鍋島君が?」
つい意外そうな声を出してしまった寧々子をまた鋭い視線が襲う。とにかくもうこれ以上この人に関わってしまっては寧々子の平穏ライフに支障が出ることを考え、もう絶対に刺激するようなことのないように立ち去ろうと決めた。落としていたタオルを拾い上げながら、足早に一夢のそばまでやってきて必死で笑顔を作り早口で捲し立てた。
「あのこれっ、その子のベッド代わりにっ!じゃあ私はこれで!」
精一杯振り絞った声は萎縮して思った半分の声量も出てなかった気がする。その後相手の様子を確認することもできないまま半ば強引にタオルを押しつけて踵を返し、気がつけばあっという間に予世橋にいた。
未だに緊張で心臓が早鐘をうつ。まさかあんな場所で鍋島一夢に会うとは思ってもみなかったし、彼が子猫の世話をしていたなんてもっと予想外だった。初めてまともに顔を見て会話をしたが、よくよく考えれば彼とは同じクラスだったのだ。一夢も寧々子に対して「誰だ」と気づいていないようだったし、たった三十人そこそこのクラスでも無関心でいれば本当に接点がないのだなぁとまるで他人事のように感じた。
やっと少し落ち着きを取り戻してきた時、肩に冷たいものが当たってふと見上げた空からはまばらに雨が落ちてきていた。このタイミングで子猫のために屋根付きの家を作った一夢に寧々子は感心していた。子猫も喜んでいるだろう。
「鍋島君、帰り間に合ったのかなぁ」
少し彼が心配になったけれど、明日からも何事もなかったかのようにいつも通り知らない他人のフリで生活することは寧々子の中で決まっている。突然出会ってしまったものの、平穏を守るためには一番絡んではいけない人だった。明日からは徹底して軌道修正をしようと静かに気合を入れ直した。
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