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第66話 お知り合いですか

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 終了の合図が響き、参加者たちが戻ってくる、結局、バンダナを奪えたのは僅か三名のみで、イブルさんとエルミオ、あと一人はカシムという30過ぎたぐらいのガタイのいい冒険者だった。

 カシムさんが、いつバンダナを奪ったのか見ていなかったので、確認したら、イリアンから奪ったようだ、エルミオ達の相手をした後、あっさりと奪われてしまったらしい。特にグループを組んでいるのでもなく、一人だったようだ。

 何となく興味を覚えたが、今はまだ、選抜の最中なので後回しだね。

 三人ではあまりに少ないから、あと、面接は30名位、最終的にはその半分は欲しいかな、ナナミやタイガーヴァイス、猫又達にも意見をきいて人数を調整してみた。

ナナミはこの後、ダンジョンの社畜ゾーンで二次試験をやる予定だったみたいだけど、そこまでしのぎを削る程のレベルでもないから、このまま面接をする。

 まず、最初は、イブルさん、本当に自警団に入りたいのかと聞いたら、どっちでもいい、という答えが返ってきたよ、うん、そんな気がしてたんだけどさ……、

 シンさんに言われたから参加しただけっぽいんだよな、で、確認してみたら、その通りだった……

「別に働く理由がないからな、始祖様にこの街の役に立つようにと言われたたが、体力、魔力の勝負では大抵の人間は我ら蛇人族には敵わないだろうから、参加も自分一人だけにしたんだし、報酬もそれほど必要ないんだ、安全に住む場所さえあれば、半年ぐらいは何も食べずとも平気だからな」

 そんな、コスパのいいお体してるんですね、初めて知りました。

「だが、美味いものは好きだ、煮卵10個ほどで、みな、喜んで働くと思うぞ、あれはいい!」

 1日、煮卵10個ですか、……蛇人族の能力考えると釣り合い取れないです、コスパ最強。

「それに、あまり人と交わらないようにしていたから、蓄えも十分すぎる程あるしな、だから、どっちでもいいんだ」

「わかりました、イブルさんの能力で毎日の訓練は必要なさそうですし、手助けいただきたいときは声をかけますので、その時に助力いただければ十分ですね」

「わかった、何かあれば手伝おう」

あっさりと、面接は終了した。

 んー、次はエルミオさんかな、

「どうぞ、そこの椅子にかけて下さい」

「あっ、えっと、おれ、礼儀作法とかあんま知らねーけど、大丈夫か……な」

 見るからに緊張してるよね、モニターで見てた時は落ち付いた様子に見えたけど、今は年相応って感じだね。

「気にしなくて大丈夫だよ、自分の話したいように話してくれればいいから、だけど、もし自警団に入ることになったら、覚えてもらうかもしれないけどね」

「あ、はい、そうなれたら、頑張るんで!」

 ああ、いいよね、若いって、今の俺は18だけど、中身は30オーバーだからさ、こういう元気な若者は応援したくなっちゃうんだよな。

「じゃあ、まず、名前と年齢、あと今回の志望の動機を教えてもらおうかな」

「死亡の、ドウキ?」

意味が分からないという顔をしているので、簡単な言葉に直してみた。

「えーとね、なんで自警団に入りかたったのか、その理由を教えて欲しいんだ」

「それは、生活が安定するから、やっと冒険者に成れたんだけど、やっぱ収入なんかあんま無いし、あ、えと、俺は、エルミオ、12才、親がいないから家名は知らない、それでも、大丈夫か?」

 すがるような目つきで俺を見上げてくる。

「それも、問題ないよ、親がいないってことは、ひょっとしてスラムに住んでるのかな?」

「そう……で、す」

 両手をギュと膝の上で、固く握りしめて、それでも俯かずにちゃんと、俺を見てる、不安そうな表情まで隠せれるような大人じゃないけど、やっぱり、この子は育て方次第で面白くなりそうだ。

「スラムに住んでるのも問題ないよ」

 ぱああ、と表情が一気に明るくなる。

「ここに街を造るにあたって、シュバーツェンの街と連携して発展させていくつもりだし、スラムの人達は働きたくても働く場所が無い人も多いんだろ、そういう人達を減らしていくのも目標だからね、でも、君だけ自警団に入ることになったら、さっきの作戦で一緒のグループの子達は何も言わないのかな?」

「どうせ、全員が受かるなんてはなから思っちゃいねーから、誰か一人でも受かればそれでいいんだ、そうしたら、受かった奴の最初の給料を全員で山分けするんだ、それでも俺達全員の半年分ぐらいの稼ぎになるからな」

 そっか、ちゃんと考えてんだな。

「ねえねえ、キアン草って誰が用意したの? あの作戦考えたのもエルミオ君かな?」

 急にナナミが口をはさんできたけど、俺も気になってた部分だからお任せする。

「作戦考えたのは俺だけど、キアン草を用意したのは俺じゃねえ、薬草に詳しいのはカルーギナだ」

「ふうーん、そのカルーギナ君って、どこで薬草の勉強したのかな?」

「えっ、良くわかんねーけど、薬師に育てられて、途中でいなくなったって言ってたな」

「分かったわ、ありがとう」

 そう言って、エルミオを下がらせると、

「あの、キアン草ってすっごく上手に乾燥してあったんだって、コウガくんとシノブちゃんが褒めてたくらいだからさ、きっと役に立ってくれるよ」

 猫又達に誉められるって、すげーじゃん、これで、エルミオとカルーギナは決まりだな。

 あとは、カシムさんか、

「どうぞ、お入り下さい」

 ぬっと、部屋に入ってきたのは、いかにも歴戦の冒険者です、みたいなガタイのいいおっさんだ。

 身長はイルガーさんと同じくらいだけど、横幅はおっさんのほうが勝ってるな。

「ではまず、名前と年齢、あと今回の志望の動機を教えて下さい」

「俺は、カシム・グラーツェン、32才、王都の近衛騎士団にいたんだが、先月辞めてきた、で、冒険者やりながら新しい勤め先を探してたんだ、役に立つと思うぜ」

 にやりと笑う顔は、なかなかのイケメン……いや、そこはどうでもいい、グラーツェンって、まさか、次期将軍候補のあの、グラーツェンなのか?

「あと、そっちのお嬢ちゃん、ナナミって言ってたか、その顔見覚えがあるぜ、雰囲気は随分変わったみたいだがな、髪の色と名前だけ変えても、顔がそのまんまじゃねえか、あんた、フレイムニル家の聖女様だろ」

 えーと、知り合い?

「聖女は私じゃないわ、聖教会を追い出されたもの、あいつらにとっての聖女様は他にいるんでしょう、私は王子様達の夜のお供をして、事故に遭う予定だったから、いないと同じよ」

「いいや、あんたが聖女だ,俺は陛下から聖女を守れと言われたから、聖教会を出てきたんだ、これ以上陛下に面倒かけるわけにはいかねーけど、あんな、腐った奴らの御守なんかやってらんねーし、でも、こんなに早く見つかると思わなかったけどな、やっぱ、生きてたんだな、聖女様」

 二人して、何か通じ合ってるようだが、俺にはさっぱりわからない、そろそろ、紹介なんかしてくれると嬉しいな、ナナミさん。
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