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第60話 快適すぎるイザ・カヤル

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ほら見ろ、アダムさんとドナーテルさん、固まっっちゃてるじゃないか、

 たった三日で街が出来上がってるなんて、どんな冗談なんだよ、冒険者ギルド、商人ギルドの支部はもちろん、獣人達が暮らすであろう家屋、冒険者達が泊まる宿屋、広場の噴水の周りは商店が立ち並び、飲食店らしきものも見える。

 無人だけどな! いや、街を歩いてる人達はいるよ、でもさ、箱だけあってもそれを使ってくれる人がいなかったら、映画のセットみたいだけどな。

 おまけに、公衆浴場やら、治療院、学校、交番まであるんだよ、上下水道完備に、街灯も通りに沿って、等間隔で並べられている。見た目の街並みは中世ヨーロッパ風だけど、中身は現代日本の快適設備、あっ、流石にエアコンはない。

 フロア全体を熱帯や寒冷地にするのは出来ても、個別に区切られた場所の管理までは出来ない。とのことだったけど、水洗トイレにウオシュレット、蛇口をひねると水もお湯も使い放題。

 シュバーツェンの街でも、上下水道が幹部してるのなんて、俺の実家と富裕層の住む辺りだけで、もちろん、ウオシュレットもなければ、お湯も出ない。灯りとコンロの火は魔石で代用出来てるけど、生活環境が違い過ぎる!

 もう、二人とも目を見開いて、あれはなんだ、これはなんだ、と質問が止まらない、見たことが無いようなものも多いから仕方がないけどさ。

 これだけの施設をどうやって活用していくのかと聞かれたが、・・・どうしようか?

 ミハルに聞こうとしても、さすがに疲れたのかお昼寝してるし、猫又達に囲まれながら、くーくー寝ているのを起こすのは可哀そうだしな、シンさんは、人間相手にあまり役にたたないな、サファイルさんも。

 あと、残るはナナミなんだが、

「そうですね、いろいろ考えたのですが、これらの施設の管理は全てカイルが致します。カイルの魔力によって保たれてるのですから当然かと。」

「ふーむ、これだけの街並みを全てお館様、御一人の力で支えていらっしゃるのは信じがたいですな。」

「カイル一人の力ではありませんよ、私もミハルも力を貸しておりますし、蛇人族やドワーフの方々にもお手伝いをお願いしておりますし、お二人にもご協力いただいてるんですよ。」

 驚いたように顔を見合わせる、二人を見ながら、クスクスと笑うナナミ。

 ・・・・おかしいな、なんだかナナミが有能そうに見えるんだが、

「先程の噴水の側に、大きな水晶の柱に手をかざしていただきましたでしょう? あちらは魔道具となっておりまして、手をかざすとおよそMP2程度をいただき、この街の維持に役立たせていただかせておりますの。」

「なんと、そのような仕掛けがありましたとは、」

「そして、馬車泊まりの脇に街門を造り、同じ水晶の柱を設置して、街へ入る時の税金として、MPで支払うことも可能にできるようにするつもりなのですよ、そして、街の住人達の税金もMPをいただいた回数に応じて割り引く予定でおります。」

「そこまで、・・・先々のことまで考えておられてるとは。」

 やはり、この御方は素晴らしい。

 ただ、綺麗な街並みを造られるだけでなく、人々の生活まできちんと考えておられる、ダンジョンがあり、この街並みに、領民にきちんと気を配れるご領主様がおられれば、発展しないわけが無い、これはいよいよ老いている場合ではないな。

「それとですね、是非、このイザ・カヤルの街に本日はお泊りいただきご意見、ご感想をいただき、今後の街の発展に強力していただきたいと、カイルが申しておりましたが、いかがでしょうか?」

「この街に泊まる、のですか、特に問題はございませんが・・・。」

「俺も別にかまわねーけどよ、泊まるってどこにだ?」

「それぞれのギルドでも、冒険者向けの宿屋でも、大丈夫ですが、出来ましたらカイルの屋敷にお泊りいただければと思います、設備はありましても人手がございませんので、申し訳ありません。あと、お泊りいただけるのであれば、シュバーツェンの街には知らせを出しますので、ご安心下さい。」

 ふむ、この女性は秘書的な役割なのか? なかなか優秀であるな、ミハル殿もナナミ殿も見た目ではなく、能力で選ばれておるようだ。


 ・・・・・ナナミさん、・・・・ミハルさん、オレさ、知らないことが、さっきから、ちょいちょいあるんだよ、前よりは、ましなんだけどさ、・・・報・連・相って大事じゃね? 今度、ちゃんと話をしようね。

 結局、二人はカイルの屋敷に泊まることになり、夕飯に腕を振るったのはカールさん、アリスさん、ニールさんの三人だ。

 ニールさんは、まだ見習いのような感じだが、一生懸命覚えようと頑張ってるし、カールさん、アリスさんは新しい食材にも興味深々で、いろいろな料理に挑戦してくれてる。

 そんな、三人が作る今日のメニューは、メインはミノタウロスの牛ステーキ、わさび醤油とニンニク醤油の二つのソース、新鮮なサラダにマヨネーズとフレンチドレッシング、こちらも二つ、そして、デザートにレモーネのシャーベット。

 食材もいろいろと増やしていきたいが、ドロップ品で利益を出せるようにと考えると調味料のほうが持ち運びも楽で、日持ちもする。

シュバーツェンの街だけで利益を回すのでは先細りになってしまうから、そう話すと、ドナーテルさんも同じ意見だった、長年商売に携わってる人からのお墨付きをもらえると安心できるね。

 その一方、
「この、ミノタウロスステーキ、スゲー、うめえええ! 元々、美味い肉なのは知ってるけど、こんなやわらけー肉、食ったことねーよ。」

 ステーキにかぶりつき、大声をあげているのはアダムさんだ。

「確かに、このような柔らかさは初めてですな、」

「おお、俺よりも美味い物を食いなれてるドナーテルさんまで、そう言うとはな、このミノタウロスもダンジョンで取れたのか?」

「そうですよ、美味しいでしょう、肉の下拵えにちょっと秘密があるんです。」

 実は、焼く前にエール酒に漬け込んでたんですよ、そうすると抜群に肉が柔らかくなるんです。
 前世でも、安い固めの肉を焼くときに炭酸飲料でを加えて煮込んだりしてたんだ、発砲作用で肉の細胞が柔らかくなるんだって、長時間漬けたりしなければ味に影響ないしね。

「こんな美味い肉が食えるなら、冒険者も押しかけるぞ、カイル!」

 その為の、宣伝役なんですよ、貴方たちお二人は。

よろしく頼みますよ、まだ、デザートもありますし、お風呂も堪能していただいて、明日の朝食も楽しみにして下さいね。

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