47 / 79
第47話 迷宮の邸宅
しおりを挟む
「し、師匠、聖女だったのか?、」
「そうだね。カイルの実家と似たようなものよ、姉を溺愛する母は私が邪魔だったみたい。」
もう、隠してもしょうがないとあっさり認める。
「聖女って、もっとこう、お淑やかな、深窓のご令嬢じゃないのか?」
「そんな、性格だったらとっくに死んでるわ!」
その通りです。
「で、ダイチは時空魔法の使い手で、聖女を上回る魔力量って本当なのか?」
あの、のほほんとしたダイチが・・・時空魔法、最低でもAランクの賢者でないと使えないと言われている最上級の魔法を?
「本当じゃ、ダイチはSSSランクの時空魔法をつかえるのじゃ。」
SSSランク、人族では使える者はいないと言われている人外ランク。
「なんだよ、それ、本当に王様でもなれんじゃねーの。もう、いいよ、ダイチが獣人の王でさ。」
「よく言った! これで、主様は、獣人と蛇人の王となった。」
「あっ、私もダイチが王様でいいよ。」
まさかのナナミが参戦。
「我も、ダイチとナナミには恩があるからのう、ナナミがそういうのであれば、従おう。じゃが、近々移転してくるドワーフは、どうするのじゃ?」
「従わねば、この地に住む資格などないわ! 我が追い払ってくれる。」
鼻息も荒く、まだ来てもいないのに追い返すというシン。
「ドワーフは大丈夫だと思うよ、ダイチが酒神の加護を受けて、この地にドワーフを導いたことにすればいいんじゃないかな。
なんなら、主神の加護もつけておけばいいんじゃないんの、私、聖女だから、主神の加護持ちだしね。」
さくさくと、話が進んで行くが、王になる予定のダイチの意見は一つも無い。
そもそも、本人に王になる予定などこれっぽっちも無いのだから、仕方がない、・・・のかもしれない。
「では、イザカヤ国の建国に向けて。」
「ねえ、ちょっと待って、本当にイザカヤ国にするの?」
その名前はちょっとな、どうなんだろうか?
「そうじゃなあ、」
「そうだよな、」
なんか、もうちょっとセンスが欲しいところではある。
んー、なんか、いいネーミングはないのか・・・・・イ、ザ、カ、ヤ・・
淫 酒屋・・・もっとダメだ。
イ・ザカヤ・・・・・イ・ザカヤル・・・・もう、何でもいいか。
「何をグダグダとしておるのじゃ、名前などどうでも良かろう、イザカヤでも、ザカヤルでも。
どのような名であれ、大事なのは名前ではなく、その名前が背負う中身であろう。」
シンが珍しく? まともな意見を述べ、皆もそうだな、と納得する。
それに国とは言え、誰もが、せいぜい地方都市ぐらいにしか思っていなかったのだ。
子供が作る秘密基地、その延長線上の感覚でいたナナミは、すぐに異世界、魔法の威力を甘く見ていた自分に気付くことになるのだが、今は目の前の問題を片付けるほうが先だった。
「そうよの、シンの言うと通りじゃ。」
「そうかもね。」
「だな。」
「では、最終決定は主様にしていただくとして、イザカヤ国(仮)で良いな。」
ああ、うん、まあ、 消極的賛成だ。
まずは、主様の屋敷を準備せねばならぬ、王都から職人を呼び寄せるか、蛇人族にやらせるか、いや、ドワーフは武器、防具の他に建築も得意だったな、とシンの頭の中は忙しい。
「主様の屋敷は、この世の王にふさわしく、豪奢で華麗なものにせねばならぬな。」
この世の王? 地方貴族の領主さえ逃げ出したのに?
一人でヒートアップするシン、サイゾーくんがいないのは、せめてもの救い・・。
生暖かい目で見られているが、気にならない。
「シン、盛り上がっているところを悪いがな、ダイチの屋敷は我にまかせてはくれぬか? 」
更なる、妄想の世界に駆けだそうとしていたところだったが、引き留める声がかかった。
「ぬ、ミハルが、屋敷を造るのか? 」
「うむ、ダイチの勧めによって、このダンジョンの1階層は地表になっておるのじゃ。
シンなら分かるであろうが、ダンジョンの中ではマスターである我の力に制限はないからのう。
魔力量に準じた力をふるうことが可能じゃ。」
そこで、にやりと笑い、
「そこの二人には、言葉よりも見せるほうが早かろう、【迷宮の邸宅】」
ゴゴゴゴゴッ、洞窟が揺れ始める。ミハルの魔力により守られてはいるものの空気の振動は伝わってくる。
ゴッッ、ガッガッ、ガゴッ、最後に大きく揺れ、ゆっくりと治まっていった。
ミハルの魔力に守られたまま、地表部分に出てみると、洞窟の入り口しかなかった荒野に、一軒の屋敷があった。
小さいながらも門構えもしっかりしており、 何よりも草がぽつぽつとしか生えていない周りと比べると、手入れされた庭に噴水まであり、花壇に花が咲いている風景は人の温もりを感じさせるものであった。
「ふむ、小さ過ぎぬか、もっと広大な屋敷はつくれぬのか? しかも、何やら貧相な感じがするではないか・・」
屋敷の大きさや豪華さに不満があるのを、隠そうともしないシンには、苦笑するしかない。
「周りに人がおらぬのに、デカい屋敷など不要じゃろう、使用人さえおらぬのにどうするのじゃ?
ドワーフや蛇人族が移り住んでから、必要があれば広げれば良かろう。」
確かに、荒野の中に豪華で広大な無人の屋敷など、怖いかもしれない。
それでも、まだ、納得がいかない様子で腕組みをしたまま、屋敷を凝視していたが、やがてあきらめたように、これで完成というわけではないから・・・などと、ぶつぶつ言っていた。
イレギュラーな展開の連続に、もはや理解することをあきらめたイルガーは、ただ、黙ってあるがままの現実を受け入れた。
「そうだね。カイルの実家と似たようなものよ、姉を溺愛する母は私が邪魔だったみたい。」
もう、隠してもしょうがないとあっさり認める。
「聖女って、もっとこう、お淑やかな、深窓のご令嬢じゃないのか?」
「そんな、性格だったらとっくに死んでるわ!」
その通りです。
「で、ダイチは時空魔法の使い手で、聖女を上回る魔力量って本当なのか?」
あの、のほほんとしたダイチが・・・時空魔法、最低でもAランクの賢者でないと使えないと言われている最上級の魔法を?
「本当じゃ、ダイチはSSSランクの時空魔法をつかえるのじゃ。」
SSSランク、人族では使える者はいないと言われている人外ランク。
「なんだよ、それ、本当に王様でもなれんじゃねーの。もう、いいよ、ダイチが獣人の王でさ。」
「よく言った! これで、主様は、獣人と蛇人の王となった。」
「あっ、私もダイチが王様でいいよ。」
まさかのナナミが参戦。
「我も、ダイチとナナミには恩があるからのう、ナナミがそういうのであれば、従おう。じゃが、近々移転してくるドワーフは、どうするのじゃ?」
「従わねば、この地に住む資格などないわ! 我が追い払ってくれる。」
鼻息も荒く、まだ来てもいないのに追い返すというシン。
「ドワーフは大丈夫だと思うよ、ダイチが酒神の加護を受けて、この地にドワーフを導いたことにすればいいんじゃないかな。
なんなら、主神の加護もつけておけばいいんじゃないんの、私、聖女だから、主神の加護持ちだしね。」
さくさくと、話が進んで行くが、王になる予定のダイチの意見は一つも無い。
そもそも、本人に王になる予定などこれっぽっちも無いのだから、仕方がない、・・・のかもしれない。
「では、イザカヤ国の建国に向けて。」
「ねえ、ちょっと待って、本当にイザカヤ国にするの?」
その名前はちょっとな、どうなんだろうか?
「そうじゃなあ、」
「そうだよな、」
なんか、もうちょっとセンスが欲しいところではある。
んー、なんか、いいネーミングはないのか・・・・・イ、ザ、カ、ヤ・・
淫 酒屋・・・もっとダメだ。
イ・ザカヤ・・・・・イ・ザカヤル・・・・もう、何でもいいか。
「何をグダグダとしておるのじゃ、名前などどうでも良かろう、イザカヤでも、ザカヤルでも。
どのような名であれ、大事なのは名前ではなく、その名前が背負う中身であろう。」
シンが珍しく? まともな意見を述べ、皆もそうだな、と納得する。
それに国とは言え、誰もが、せいぜい地方都市ぐらいにしか思っていなかったのだ。
子供が作る秘密基地、その延長線上の感覚でいたナナミは、すぐに異世界、魔法の威力を甘く見ていた自分に気付くことになるのだが、今は目の前の問題を片付けるほうが先だった。
「そうよの、シンの言うと通りじゃ。」
「そうかもね。」
「だな。」
「では、最終決定は主様にしていただくとして、イザカヤ国(仮)で良いな。」
ああ、うん、まあ、 消極的賛成だ。
まずは、主様の屋敷を準備せねばならぬ、王都から職人を呼び寄せるか、蛇人族にやらせるか、いや、ドワーフは武器、防具の他に建築も得意だったな、とシンの頭の中は忙しい。
「主様の屋敷は、この世の王にふさわしく、豪奢で華麗なものにせねばならぬな。」
この世の王? 地方貴族の領主さえ逃げ出したのに?
一人でヒートアップするシン、サイゾーくんがいないのは、せめてもの救い・・。
生暖かい目で見られているが、気にならない。
「シン、盛り上がっているところを悪いがな、ダイチの屋敷は我にまかせてはくれぬか? 」
更なる、妄想の世界に駆けだそうとしていたところだったが、引き留める声がかかった。
「ぬ、ミハルが、屋敷を造るのか? 」
「うむ、ダイチの勧めによって、このダンジョンの1階層は地表になっておるのじゃ。
シンなら分かるであろうが、ダンジョンの中ではマスターである我の力に制限はないからのう。
魔力量に準じた力をふるうことが可能じゃ。」
そこで、にやりと笑い、
「そこの二人には、言葉よりも見せるほうが早かろう、【迷宮の邸宅】」
ゴゴゴゴゴッ、洞窟が揺れ始める。ミハルの魔力により守られてはいるものの空気の振動は伝わってくる。
ゴッッ、ガッガッ、ガゴッ、最後に大きく揺れ、ゆっくりと治まっていった。
ミハルの魔力に守られたまま、地表部分に出てみると、洞窟の入り口しかなかった荒野に、一軒の屋敷があった。
小さいながらも門構えもしっかりしており、 何よりも草がぽつぽつとしか生えていない周りと比べると、手入れされた庭に噴水まであり、花壇に花が咲いている風景は人の温もりを感じさせるものであった。
「ふむ、小さ過ぎぬか、もっと広大な屋敷はつくれぬのか? しかも、何やら貧相な感じがするではないか・・」
屋敷の大きさや豪華さに不満があるのを、隠そうともしないシンには、苦笑するしかない。
「周りに人がおらぬのに、デカい屋敷など不要じゃろう、使用人さえおらぬのにどうするのじゃ?
ドワーフや蛇人族が移り住んでから、必要があれば広げれば良かろう。」
確かに、荒野の中に豪華で広大な無人の屋敷など、怖いかもしれない。
それでも、まだ、納得がいかない様子で腕組みをしたまま、屋敷を凝視していたが、やがてあきらめたように、これで完成というわけではないから・・・などと、ぶつぶつ言っていた。
イレギュラーな展開の連続に、もはや理解することをあきらめたイルガーは、ただ、黙ってあるがままの現実を受け入れた。
0
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
悪徳貴族の、イメージ改善、慈善事業
ウィリアム・ブロック
ファンタジー
現代日本から死亡したラスティは貴族に転生する。しかしその世界では貴族はあんまり良く思われていなかった。なのでノブリス・オブリージュを徹底させて、貴族のイメージ改善を目指すのだった。
ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
転生王子の異世界無双
海凪
ファンタジー
幼い頃から病弱だった俺、柊 悠馬は、ある日神様のミスで死んでしまう。
特別に転生させてもらえることになったんだけど、神様に全部お任せしたら……
魔族とエルフのハーフっていう超ハイスペック王子、エミルとして生まれていた!
それに神様の祝福が凄すぎて俺、強すぎじゃない?どうやら世界に危機が訪れるらしいけど、チートを駆使して俺が救ってみせる!
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
ちーとにゃんこの異世界日記
譚音アルン
ファンタジー
「吾輩は猫である」
神様の手違いで事故死してしまった元女子大生の主人公は異世界へと転生した。しかし、お詫びとして神より授かったのは絶大な力と二足歩行の猫の外見。喋れば神の呪いかもしれない自動変換されてしまう『にゃ〜語』に嘆きつつも、愛苦しいケット・シーとして生まれ変わったニャンコ=コネコの笑いあり、涙あり? ふるもっふあり!! の冒険活劇が今始まる――。
※2014-08-06より小説家になろうで掲載済。
魔力無し転生者の最強異世界物語 ~なぜ、こうなる!!~
月見酒
ファンタジー
俺の名前は鬼瓦仁(おにがわらじん)。どこにでもある普通の家庭で育ち、漫画、アニメ、ゲームが大好きな会社員。今年で32歳の俺は交通事故で死んだ。
そして気がつくと白い空間に居た。そこで創造の女神と名乗る女を怒らせてしまうが、どうにか幾つかのスキルを貰う事に成功した。
しかし転生した場所は高原でも野原でも森の中でもなく、なにも無い荒野のど真ん中に異世界転生していた。
「ここはどこだよ!」
夢であった異世界転生。無双してハーレム作って大富豪になって一生遊んで暮らせる!って思っていたのに荒野にとばされる始末。
あげくにステータスを見ると魔力は皆無。
仕方なくアイテムボックスを探ると入っていたのは何故か石ころだけ。
「え、なに、俺の所持品石ころだけなの? てか、なんで石ころ?」
それどころか、創造の女神ののせいで武器すら持てない始末。もうこれ詰んでね?最初からゲームオーバーじゃね?
それから五年後。
どうにか化物たちが群雄割拠する無人島から脱出することに成功した俺だったが、空腹で倒れてしまったところを一人の少女に助けてもらう。
魔力無し、チート能力無し、武器も使えない、だけど最強!!!
見た目は青年、中身はおっさんの自由気ままな物語が今、始まる!
「いや、俺はあの最低女神に直で文句を言いたいだけなんだが……」
================================
月見酒です。
正直、タイトルがこれだ!ってのが思い付きません。なにか良いのがあれば感想に下さい。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】
一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。
追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。
無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。
そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード!
異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。
【諸注意】
以前投稿した同名の短編の連載版になります。
連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。
なんでも大丈夫な方向けです。
小説の形をしていないので、読む人を選びます。
以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。
disりに見えてしまう表現があります。
以上の点から気分を害されても責任は負えません。
閲覧は自己責任でお願いします。
小説家になろう、pixivでも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる