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第45話 イルガーの願い

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猫又達は、ミハルとお茶を楽しみながら、ナナミ達を待っていた。

「面白そうなことを考えたものじゃのう、我のダンジョンの中にドワーフと蛇人族を住まわせ、ダイチがその王となり、ダイチの屋敷もダンジョン内につくらせるのか?」

熱めのお茶をふーふーしながら、姫子が答える。

「そうなのですにゃ、そして、その屋敷の中にミハル様と我ら猫又も一緒に住むのですにゃ。」

「ふ、む、ダンジョンは地上にも広げておるので、屋敷に住むことも可能ではあろうがな、蛇人族は、シンシア、いや、今はシンか、あ奴が声をかければ問題はないであろうが、ドワーフはどうじゃろうの?、頑固ものが多い故にのう。」

ミハルが独り言のように呟いていると、シノブが声をかけてきた。

「ミハル様、ナナミがきたのにゃ、お迎えに行ってくるにゃ。」

シノブがナナミを連れて戻ってくると、ミハルに駆け寄っていく。

「ミハルちゃーん、猫又達も会いたかったよ。」

「うむ、こ奴らから、今、話を聞いておったよ。」

猫又達を順番に撫でぐりながら、|お供え(おみやげ)のシャーベットを差し出す。
それを受け取りながら、お茶を入れに姫子が下がって行く。

「ミハルちゃんはどうかな? もちろん、嫌なら無理強いなんかしないけど、私は、一緒に暮らせたら嬉しいな。」

「我は、かまわぬよ。蛇人族も、ここに来るとなれば魔力の強化も期待出来よう、ダンジョン・コアは守らねばならぬがのう。」

そう、言いながら自分達の周りで、シャーベットを前に喉をゴロゴロと鳴らせている猫又達を見ると、ちょうど、ぶたね・・・こ・・・、ではなく、、一番体格の良いヨコヅナが、
「お前らは、昨日も食べたんにゃら、ゆずらんかーい。」

と、ネコパンチのような、張り手のような一撃でハットリが飛ばされていき、お留守番だったコウガ、サスケ、アズミとシャーベットを分け合っていた。

そんな、猫又達を見て、ふっと顔が緩むミハル、ほんの少し前まで、消えゆく未来しか見えなかったのに、猫又達の生き生きとした様子に、わずかながら目が潤む。

洞窟の奥で、ひっそりと身を寄せ合い、わずかに残った魔力を、みんなでつなぎとめていた頃には、猫又達は笑うこともなかった。交代で眠りに就き、最後の時を迎えようとしていたのに、誰一人、ミハルを責めることも無く、ただ、ただ、寄り添っていたのだ。

そんな、小さくて暖かい優しさに、どれだけ救われたかことか、おそらくミハル一人だったら、とっくに諦めていたかもしれない、
 でも、自分の都合で生み出し、寂しさを紛らわすために召喚されたこの子達が、この暗い洞窟から出ることもなく、成すすべもなく消えていくのが耐えられなかった。

 自分が消えればこの子達も消える。その思いがミハルの生きる気力となっていたのだ。

 実のところは、猫又達にそれほどの悲壮感は無かったのだが、使役神として召喚された猫又達は、ミハルに仕えることだけが全てであり、自分の魔力が少なくなっても、誰一人消すことも無く、魔力が尽きるまで支えようとしてくれる主人に感謝しかなかったから。

 使役神は、多大な魔力を消費するので、自分が危なくなれば消されたり、なにか身代わりにされたりと道具のように使い捨てされることも多い中、愛情をかけ、自分達が消えてしまうかもしれないと泣いてくれる主人と最後を迎えられるなら、何の不満もなかったのだ。


「ミハルちゃんが、OKしてくれて良かった、それでね、シンさんと、虎人族のイルガーさんにも会ってほしいんだけど、どうかな?」

「シンはかまわんが、イルガーとは、ナナミと訓練していたやつかの、なぜじゃ?」

「あのね、イルガーさんは、獣人達もここに住まわせて欲しいんだって。」

しばらく考えこんでいたが、

「良かろう、会うて話を聞こうではないか。、」

ミハルの言葉を受け、洞窟の入り口で待機していた二人が、猫又の案内ですぐにやってきた。

「そなたがダンジョン・マスターのミハルか? 我は蛇神族のシンじゃ、我が眷属、蛇人達が世話になると思うので、よろしく頼む。」

どこか、上からの言い方のシンさんだった。

「うむ、こちらも猫又共々、よろしく頼む。」

一方のイルガーは、ふだんからは想像できない程、ガチガチに緊張していた。

「虎人族のイルガーと言います、初めて、お目にかかりまして、ございましゅ。」

ガタイも良く、堂々とした見かけからは、何とも似合わない噛みまくりぶりに、思わず苦笑するミハルだった。

「そのように、硬くならずとも良い、しゃべりかたなど気にせんからな。」
 
「あー、ありがとうございます、お上品な話かたなんて、良くわからないから、助かる、です。」

ピンクのフワフワ巻き毛でネコに囲まれた幼い美少女に、どんな態度をとればいいのかわからなかったのだが、とりあえず、話は聞いてくれそうだと、少し安心して、ぽつぽつと話し始めた。

獣人達には、定まった王はおらず、小領地に各部族毎、分かれて住んでいたが、獣人に友好的だったアンガス家の没落により、今は隠れ住むようにひっそりと暮らしている。

 虎人族と黒狼族が王位種族と呼ばれてはいたが、どちらが王となっても争いは起こるだろうといわれているが、もしも、シン様が獣人の王となっていただけるのであれば、獣人もまとまることが出来るのではないかと、考えていたこと。

更に今、小領地で獣人狩りが行われているらしく、獣人達が、安心して住める場所を探していたこと、シン様や猫又達がいるこの場所でなら、争いも起こらないと思う、ミハルの存在に関しては、決して誰にも話さない、信用されないなら従属魔法をかけてくれてかまわないと、頭を下げて頼み込んだ。

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