30 / 79
第30話 義母フェルミーナ
しおりを挟む
翌朝、ダイチとナナミ、サイゾーくんは大広場に来ていた。大広場に入りきれない人達も大勢いる。
ナナミはサイゾーくんをしっかりと胸に抱いていた。歩けるにゃ、と言われてもこんな人込みの中危ないからダメと抱え込む。もふるチャンスは逃しません。
10時になり、設置された台上に冒険者ギルドマスターのアダムが上ると、全員の目が注がれる。マイクを手に持ち拡散の魔力が込められた魔石に魔力を通す。警備隊の手により既に街のあちらこちらに魔石が設置されていた。固唾を呑んで何が起こるのかと見守る人々に声が届く。
「俺は冒険者ギルドのマスター、アダムだ。単刀直入に言おう、ピンクバレーの近くに新しいダンジョンが発見された。」
どよめきが起き、騒然となりかかるが、アダムの「静かに!」 その一言で静まりかえる。
「そして、驚く事にこのダンジョンは出来たばかりらしく、成長中でもあるらしい。ダンジョンは生き物だ、時代とともに変化すると言われているが、今回のダンジョンは今までのものと全く違ったオリジナルなダンジョンになると思っている。そのため今後、冒険者やギルドの本部職員、王都の魔術師達も来るかもしれない、勿論、冒険者も増えるだろう、ダンジョンは恵みをもたらす、この街は今後発展をしていくだろう、どんな発展をしていくかは俺達次第だ、皆、力を貸してくれ!俺達の街を俺達の手で発展させるんだ!」
おおおおっ、当たり前だ! 協力するぞ、何でも言ってくれ、この街のために、シュバーツェンのために、人々の熱気は明るい未来を夢見て、更に高まっていく。
「ダンジョンはしばらく、入場制限を行う、ピンクバレーに近づくにも許可が必要となる。詳しい話は明日、冒険者ギルドで8時からするつもりだ、今日は冒険者ギルドから今後の発展を祈って、振舞の酒と料理が用意してあるが、悪いが今まで弱小ギルドだったから、質も量も足りないんだ。コップも皿も酒も料理も持ち込み大歓迎だ。よろしくな。」
よっしゃー! 酒持って行くぜ! あったりめーだろ、俺もだ、俺も、俺も、私も、よーし、俺の店からも振舞うぜ、持ってけドロボー、遠慮なく持ってくぜ!
朝から酒が振舞われ、明るい未来を誰もが思い描いていた。そして、この日はオリジン祭と呼ばれ、来年以降も続いていく。
街が賑やかな活気に包まれている頃、少し離れた高台の上に建つシュバーツェンの屋敷から忌々し気に街を見下ろしている一人の女性がいた。フェルミーナ・アンガス・フォン・シュバーツェン、カイルの義母だ。
こちらが先にダンジョンを探していたのに、先を越された。冒険者ギルドからダンジョン発見の知らせをきき、確認したらカイルがダンジョンマスターの魔石を持っていることがわかった。契約を交わすのはこの私のはずなのに。ギリッ と美しく整えられた爪を噛む。
フェルミーナは何度も人を雇ったり、自分の使い魔にも探させていたのにダンジョンは見つからなかった。ミハルはダイチ達に会うまでは、ひっそりと洞窟の奥で過ごしていて、ミハル自身の魔力も年々弱まり、そんなミハルを守るために猫又達は悪意の強いもの、負の気が多いものを目くらましや様々な手を使って近寄れないようにしていたからだ。
そのダンジョンがやっと見つかった! あとはただダンジョンマスターを探し出し、力づくでも契約させるだけだ。朽ちかけたダンジョンならばマスターとの契約も容易いはず。早速、使い魔のメアをダンジョンに送り出した。メアはブルーピジョンという魔鳥で青い羽根が美しく戦闘能力はあまりないが主人と意識共有が出来る。ダンジョンの近くまで行くと、一組の冒険者達が見張りをしていた。気づかれないようそっと気配を消して近づいてみる。
冒険者達は、ダンジョン攻略について盛り上がっていた。聞き耳を立てているとダンジョンマスターについては何の話題も出てこない。最下層まで辿り着いたものなど今までに二人しかいないとされており、一人は800年前、アスガルドの建国王オーディエルとそれから300年後の魔族との聖魔大戦で命を落とした大賢者、ケンタウロスだけなのだから、マスターの話題が出ないことは当たり前だと思いながらもほっと一息ついていたら、不意に猫又達の話題が出たので、一層気配を消してじっと聞いていた。
フェルミーナは、ピンクバレーの近くにダンジョンがあるのを父から聞いて知っていた。そしてそのダンジョンに時折現れるネコの存在もだ。おそらくはマスターの目や耳となっていのではないかと聞いていたのだ。それなのに、そのネコが人間と一緒にいる?シュバーツェンの街に居る?
慌てて、街へと戻りネコと人間を探すと、すぐにナナミが見つかった。しばらく尾行してみるとカイルが魔石を持っていることがわかり、キリキリと胃を掴まれるような焦燥感がフェルミーナをひりつかせる。
やっとお父様と約束した獣人達を助け出せる力が手に入る。お母様を殺した奴らに復讐してやる。
・・・それなのに、なんで、なんでカイルがマスターと契約をしているの? あり得ない! 邪魔をするなら殺してやる。
この屋敷は既に私のもの。邪魔なカイルは自ら出て行った。なぜかジェドはあいつに懐いていたから、手出しをしなかったが、私の計画の邪魔にさえならなければどうでも良かった。
可愛いジェドさえ無事に後継ぎになれれば。ジェド、私の子供。このアスガルドの貴族に殺されたお母様。私はアンガス家の血をひくジェドをこの国の貴族にするの。お前達が潰したアンガスの恨みを知るがいい。あんな世間知らずの子供を殺るなんて、簡単だわ。
カイル自身に恨みはないけど、同じ貴族としてお前の命で責任を取ってもらうわ。
ナナミはサイゾーくんをしっかりと胸に抱いていた。歩けるにゃ、と言われてもこんな人込みの中危ないからダメと抱え込む。もふるチャンスは逃しません。
10時になり、設置された台上に冒険者ギルドマスターのアダムが上ると、全員の目が注がれる。マイクを手に持ち拡散の魔力が込められた魔石に魔力を通す。警備隊の手により既に街のあちらこちらに魔石が設置されていた。固唾を呑んで何が起こるのかと見守る人々に声が届く。
「俺は冒険者ギルドのマスター、アダムだ。単刀直入に言おう、ピンクバレーの近くに新しいダンジョンが発見された。」
どよめきが起き、騒然となりかかるが、アダムの「静かに!」 その一言で静まりかえる。
「そして、驚く事にこのダンジョンは出来たばかりらしく、成長中でもあるらしい。ダンジョンは生き物だ、時代とともに変化すると言われているが、今回のダンジョンは今までのものと全く違ったオリジナルなダンジョンになると思っている。そのため今後、冒険者やギルドの本部職員、王都の魔術師達も来るかもしれない、勿論、冒険者も増えるだろう、ダンジョンは恵みをもたらす、この街は今後発展をしていくだろう、どんな発展をしていくかは俺達次第だ、皆、力を貸してくれ!俺達の街を俺達の手で発展させるんだ!」
おおおおっ、当たり前だ! 協力するぞ、何でも言ってくれ、この街のために、シュバーツェンのために、人々の熱気は明るい未来を夢見て、更に高まっていく。
「ダンジョンはしばらく、入場制限を行う、ピンクバレーに近づくにも許可が必要となる。詳しい話は明日、冒険者ギルドで8時からするつもりだ、今日は冒険者ギルドから今後の発展を祈って、振舞の酒と料理が用意してあるが、悪いが今まで弱小ギルドだったから、質も量も足りないんだ。コップも皿も酒も料理も持ち込み大歓迎だ。よろしくな。」
よっしゃー! 酒持って行くぜ! あったりめーだろ、俺もだ、俺も、俺も、私も、よーし、俺の店からも振舞うぜ、持ってけドロボー、遠慮なく持ってくぜ!
朝から酒が振舞われ、明るい未来を誰もが思い描いていた。そして、この日はオリジン祭と呼ばれ、来年以降も続いていく。
街が賑やかな活気に包まれている頃、少し離れた高台の上に建つシュバーツェンの屋敷から忌々し気に街を見下ろしている一人の女性がいた。フェルミーナ・アンガス・フォン・シュバーツェン、カイルの義母だ。
こちらが先にダンジョンを探していたのに、先を越された。冒険者ギルドからダンジョン発見の知らせをきき、確認したらカイルがダンジョンマスターの魔石を持っていることがわかった。契約を交わすのはこの私のはずなのに。ギリッ と美しく整えられた爪を噛む。
フェルミーナは何度も人を雇ったり、自分の使い魔にも探させていたのにダンジョンは見つからなかった。ミハルはダイチ達に会うまでは、ひっそりと洞窟の奥で過ごしていて、ミハル自身の魔力も年々弱まり、そんなミハルを守るために猫又達は悪意の強いもの、負の気が多いものを目くらましや様々な手を使って近寄れないようにしていたからだ。
そのダンジョンがやっと見つかった! あとはただダンジョンマスターを探し出し、力づくでも契約させるだけだ。朽ちかけたダンジョンならばマスターとの契約も容易いはず。早速、使い魔のメアをダンジョンに送り出した。メアはブルーピジョンという魔鳥で青い羽根が美しく戦闘能力はあまりないが主人と意識共有が出来る。ダンジョンの近くまで行くと、一組の冒険者達が見張りをしていた。気づかれないようそっと気配を消して近づいてみる。
冒険者達は、ダンジョン攻略について盛り上がっていた。聞き耳を立てているとダンジョンマスターについては何の話題も出てこない。最下層まで辿り着いたものなど今までに二人しかいないとされており、一人は800年前、アスガルドの建国王オーディエルとそれから300年後の魔族との聖魔大戦で命を落とした大賢者、ケンタウロスだけなのだから、マスターの話題が出ないことは当たり前だと思いながらもほっと一息ついていたら、不意に猫又達の話題が出たので、一層気配を消してじっと聞いていた。
フェルミーナは、ピンクバレーの近くにダンジョンがあるのを父から聞いて知っていた。そしてそのダンジョンに時折現れるネコの存在もだ。おそらくはマスターの目や耳となっていのではないかと聞いていたのだ。それなのに、そのネコが人間と一緒にいる?シュバーツェンの街に居る?
慌てて、街へと戻りネコと人間を探すと、すぐにナナミが見つかった。しばらく尾行してみるとカイルが魔石を持っていることがわかり、キリキリと胃を掴まれるような焦燥感がフェルミーナをひりつかせる。
やっとお父様と約束した獣人達を助け出せる力が手に入る。お母様を殺した奴らに復讐してやる。
・・・それなのに、なんで、なんでカイルがマスターと契約をしているの? あり得ない! 邪魔をするなら殺してやる。
この屋敷は既に私のもの。邪魔なカイルは自ら出て行った。なぜかジェドはあいつに懐いていたから、手出しをしなかったが、私の計画の邪魔にさえならなければどうでも良かった。
可愛いジェドさえ無事に後継ぎになれれば。ジェド、私の子供。このアスガルドの貴族に殺されたお母様。私はアンガス家の血をひくジェドをこの国の貴族にするの。お前達が潰したアンガスの恨みを知るがいい。あんな世間知らずの子供を殺るなんて、簡単だわ。
カイル自身に恨みはないけど、同じ貴族としてお前の命で責任を取ってもらうわ。
0
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説
外れスキルは、レベル1!~異世界転生したのに、外れスキルでした!
武蔵野純平
ファンタジー
異世界転生したユウトは、十三歳になり成人の儀式を受け神様からスキルを授かった。
しかし、授かったスキルは『レベル1』という聞いたこともないスキルだった。
『ハズレスキルだ!』
同世代の仲間からバカにされるが、ユウトが冒険者として活動を始めると『レベル1』はとんでもないチートスキルだった。ユウトは仲間と一緒にダンジョンを探索し成り上がっていく。
そんなユウトたちに一人の少女た頼み事をする。『お父さんを助けて!』
素材採取家の異世界旅行記
木乃子増緒
ファンタジー
28歳会社員、ある日突然死にました。謎の青年にとある惑星へと転生させられ、溢れんばかりの能力を便利に使って地味に旅をするお話です。主人公最強だけど最強だと気づいていない。
可愛い女子がやたら出てくるお話ではありません。ハーレムしません。恋愛要素一切ありません。
個性的な仲間と共に素材採取をしながら旅を続ける青年の異世界暮らし。たまーに戦っています。
このお話はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。
裏話やネタバレはついったーにて。たまにぼやいております。
この度アルファポリスより書籍化致しました。
書籍化部分はレンタルしております。
貴族家三男の成り上がりライフ 生まれてすぐに人外認定された少年は異世界を満喫する
美原風香
ファンタジー
「残念ながらあなたはお亡くなりになりました」
御山聖夜はトラックに轢かれそうになった少女を助け、代わりに死んでしまう。しかし、聖夜の心の内の一言を聴いた女神から気に入られ、多くの能力を貰って異世界へ転生した。
ーけれども、彼は知らなかった。数多の神から愛された彼は生まれた時点で人外の能力を持っていたことを。表では貴族として、裏では神々の使徒として、異世界のヒエラルキーを駆け上っていく!これは生まれてすぐに人外認定された少年の最強に無双していく、そんなお話。
✳︎不定期更新です。
21/12/17 1巻発売!
22/05/25 2巻発売!
コミカライズ決定!
20/11/19 HOTランキング1位
ありがとうございます!
転生して貴族になったけど、与えられたのは瑕疵物件で有名な領地だった件
桜月雪兎
ファンタジー
神様のドジによって人生を終幕してしまった七瀬結希。
神様からお詫びとしていくつかのスキルを貰い、転生したのはなんと貴族の三男坊ユキルディス・フォン・アルフレッドだった。
しかし、家族とはあまり折り合いが良くなく、成人したらさっさと追い出された。
ユキルディスが唯一信頼している従者アルフォンス・グレイルのみを連れて、追い出された先は国内で有名な瑕疵物件であるユンゲート領だった。
ユキルディスはユキルディス・フォン・ユンゲートとして開拓から始まる物語だ。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

調子に乗りすぎて処刑されてしまった悪役貴族のやり直し自制生活 〜ただし自制できるとは言っていない〜
EAT
ファンタジー
「どうしてこうなった?」
優れた血統、高貴な家柄、天賦の才能────生まれときから勝ち組の人生により調子に乗りまくっていた侯爵家嫡男クレイム・ブラッドレイは殺された。
傍から見ればそれは当然の報いであり、殺されて当然な悪逆非道の限りを彼は尽くしてきた。しかし、彼はなぜ自分が殺されなければならないのか理解できなかった。そして、死ぬ間際にてその答えにたどり着く。簡単な話だ………信頼し、友と思っていた人間に騙されていたのである。
そうして誰もにも助けてもらえずに彼は一生を終えた。意識が薄れゆく最中でクレイムは思う。「願うことならば今度の人生は平穏に過ごしたい」と「決して調子に乗らず、謙虚に慎ましく穏やかな自制生活を送ろう」と。
次に目が覚めればまた新しい人生が始まると思っていたクレイムであったが、目覚めてみればそれは10年前の少年時代であった。
最初はどういうことか理解が追いつかなかったが、また同じ未来を繰り返すのかと絶望さえしたが、同時にそれはクレイムにとって悪い話ではなかった。「同じ轍は踏まない。今度は全てを投げ出して平穏なスローライフを送るんだ!」と目標を定め、もう一度人生をやり直すことを決意する。
しかし、運命がそれを許さない。
一度目の人生では考えられないほどの苦難と試練が真人間へと更生したクレイムに次々と降りかかる。果たしてクレイムは本当にのんびり平穏なスローライフを遅れるのだろうか?
※他サイトにも掲載中

転生したら貴族の息子の友人A(庶民)になりました。
襲
ファンタジー
〈あらすじ〉
信号無視で突っ込んできたトラックに轢かれそうになった子どもを助けて代わりに轢かれた俺。
目が覚めると、そこは異世界!?
あぁ、よくあるやつか。
食堂兼居酒屋を営む両親の元に転生した俺は、庶民なのに、領主の息子、つまりは貴族の坊ちゃんと関わることに……
面倒ごとは御免なんだが。
魔力量“だけ”チートな主人公が、店を手伝いながら、学校で学びながら、冒険もしながら、領主の息子をからかいつつ(オイ)、のんびり(できたらいいな)ライフを満喫するお話。
誤字脱字の訂正、感想、などなど、お待ちしております。
やんわり決まってるけど、大体行き当たりばったりです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる