上 下
22 / 79

第22話 いい訳

しおりを挟む
予定通りにフロアボスを倒して無事に全員のダンジョンカードと、ドロップ品のウイスキー1本,ワイルド・ブルーボアの肉と牙を手に入れた。

 小躍りして喜ぶバルサさんは、もう何本か手に入れるため地上に戻らず、フロアボスの入り口の前で待つと言っていたが、どれだけ待つか分からない、又来ればいいと全員に説得され、しぶしぶと転移陣に乗って、地上に戻った。

 そして、次の絆ダンジョン、やっぱりダンジョンカードを持たないと進むことが出来ず、メンバー全員がこんなダンジョンは初めてだ!聞いたことが無い! と興奮を隠しきれずその勢いのまま、ダンジョンを進もうとするので、引き留めるのが本当に大変だった。・・・・疲れた。

 いい人達だと思うけど、さすがに全部本当のことは話せない。ダンジョンとしてどうにか形になったが、まだまだ魔物が少ないから人を集めたい、

 人が集まるほど豊かなダンジョンになるらしいからさ、豊かになれば魔物も増える。絆ダンジョンを踏破される訳には行かないから、なるべく時間を稼ぎつつ、人も集めたいんだよな。


 日帰りの用意しかしていない、もう、そろそろ戻らないと街に戻るのが遅くなり門が閉められてしまう、
 そう言っても、野宿で十分、ドロップ品でエール水やお肉も出たし、2~3日は何の問題も無い!と言い切られてしまった。冒険者の熱意を甘くみてましたよ。

 必死になってる俺を見て、ナナミが目配せをしてきた。なに、なに?

 〈そのまま、続けて〉口パクをなんとか読み取り、そっと頷く。ナナミが気づかれないように姿勢を入れ替えるとサイゾーではなく、グレーのネコを抱えていた。えっ、・・?
 そっと、唇に一本立てた指を当てて、〈静かに〉と言っている。

 フワッとさわやかな風が吹くと、タイガーヴァイスのメンバー達の興奮が抑えられたようで、落ち着きが戻った?  

 ???、よくわかんないけど、チャンスなのか?  それならと、ダンジョンを進むよりこの報告をどうするかのほうが大事だと言い切った俺に、

「このダンジョンを、最初に見つけたのはダイチ達だから、決定権はダイチにあるんじゃないか?」
 と、イルガーが言い出してくれたので、やっと収まった。良かった、・・ 本当に疲れたよ、はあ。

 そして、俺達はこのダンジョンをギルドに報告する前に、ドワーフの長老に来てもらいあの鍛冶神(ヘファイトス)様のシンボルを見てもらいたいと伝えたら、バルサがはっとした顔になり、少し目をそらした。・・・・バルサさん、シンボルのある大岩の事、忘れてただろう。

「ねえ、なんでそんなにドワーフに肩入れするの? ギルドにさっさと報告したほうが報奨金確実だし?」

 ぎくっ。



 うーーー、不自然だと思われても仕方ないよな。


「実はまだ、村にいるときナナミが村長の息子に目をつけられて、いろいろ嫌がらせをされてたんだけど、相手にしてなかったんだ、そうしたら10人位に襲われて・・・ナナミは無事だったんだけど相手が大怪我をしてしまい、ナナミは悪くなかったんだけど村に居づらくなって、それで俺も一緒に村を出たんだ、どうせ家も継げないし、継ぐ気もなかったしね。」

「へえー、そうなんだ、で、?」
 ニヤニヤしながら、俺とナナミを生温かい目で見るのは止めていただきたいんですが、アナさん。

「それで、村を出てもどこに行く当てもなくて、ふらふらと旅してた時に助けてくれたのがドワーフ族だったんだ。

 しばらく一緒に旅をして本当に助かったんだよ、俺達は危機感がなさすぎて見ていて冷や冷やするって、いろいろ教えてくれてさ、この家もそのドワーフ、タンガルさんのものなんだけど、奥さんが亡くなってしまって息子さんを探してるって言ってた。

 戻ってくるまでここを好きに使っていいって言ってくれたんだ。で、その息子さんは遠い昔に失われたオルハ・リコンの製造方法を探してるそうなんだ、だから、もしかしたら、ほんの少しでも手掛かりにならないかなって・・・。」

 そこで、皆の顔を見回してみる。・・・・・大丈夫か?・・・ちょっと強引だけど、多少怪しまれても今は時間稼ぎをしないと、ダンジョンを訪れた人が5人増えただけで魔物って増やせるのか?・・・今は様子を見ながら対処するしか・・・。

「お前って、いい奴なんだな!」
 ガシッとイリアンに肩を抱かれて戸惑っていたら、

「恩を受けたら恩で返す! 分かるぜ! それが男だよな。おおおおっ、これが正義(ジャスティス)だ。」
 バンバンと背中を叩かれて痛いんだが・・・、20後半になっても熱血の血は衰えないらしい。暑苦しいことこの上ない、ヒーローと正義が大好きなお調子者。それがジャスティス・イリアンだった。

 そんな兄を冷たい眼で見つつ、ダイチとナナミを生温かい眼で見る恋バナ大好きアナ。

 義理堅くて情に厚いが、単純でもあるドワーフのバルサもうんうん、と頷いている。

 巨人族のドローウィッシュが何も言わないのは、いつもの事。
 虎人族のイルガーは口元がニヤニヤしているが、何も言わない。


 街までは三時間以上かかるため、歩きながら今後の事も話し合った。
 まずは、バルサがドワーフの長老に会いに行戻ってくるまで約一か月。

 その間はダンジョンが他の人に見つからないよう見張るグループと街に残るグループに分ける。もし、阻止出来ずにダンジョンが見つかった場合に、素早くギルドに報告できろうようにする。新ダンジョンの発見と報告はどんなに安く見ても白金貨10枚(約1億)はくだらないだろう。と言っていた。

 ・・・・そりゃあ、負けられないですよね。   納得。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

トレンダム辺境伯の結婚 妻は俺の妻じゃないようです。

白雪なこ
ファンタジー
両親の怪我により爵位を継ぎ、トレンダム辺境伯となったジークス。辺境地の男は女性に人気がないが、ルマルド侯爵家の次女シルビナは喜んで嫁入りしてくれた。だが、初夜の晩、シルビナは告げる。「生憎と、月のものが来てしまいました」と。環境に慣れ、辺境伯夫人の仕事を覚えるまで、初夜は延期らしい。だが、頑張っているのは別のことだった……。 *外部サイトにも掲載しています。

【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する

雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。 その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。 代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。 それを見た柊茜は 「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」 【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。 追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん….... 主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

ちっちゃくなった俺の異世界攻略

鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた! 精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

僕のギフトは規格外!?〜大好きなもふもふたちと異世界で品質開拓を始めます〜

犬社護
ファンタジー
5歳の誕生日、アキトは不思議な夢を見た。舞台は日本、自分は小学生6年生の子供、様々なシーンが走馬灯のように進んでいき、突然の交通事故で終幕となり、そこでの経験と知識の一部を引き継いだまま目を覚ます。それが前世の記憶で、自分が異世界へと転生していることに気付かないまま日常生活を送るある日、父親の職場見学のため、街中にある遺跡へと出かけ、そこで出会った貴族の幼女と話し合っている時に誘拐されてしまい、大ピンチ! 目隠しされ不安の中でどうしようかと思案していると、小さなもふもふ精霊-白虎が救いの手を差し伸べて、アキトの秘めたる力が解放される。 この小さき白虎との出会いにより、アキトの運命が思わぬ方向へと動き出す。 これは、アキトと訳ありモフモフたちの起こす品質開拓物語。

処理中です...