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第18話 試飲
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しばらく、お目当てのパーティを観察し人柄も悪くなそうだったので、食事が一段落した頃合いをみて話しかける。
「お食事中すみません、ちょっとよろしいですか?」
5人の目が一斉に向けられる。・・・びびるな、俺。
「なんだ?」 無愛想に人族の男性が答える。
・・・そんな胡散臭い目で見なくてもいいのに・・・。
「どうしたの?」 それとは逆ににっこりと人族の女が話しかける。
「あっ、その、俺達、この町に来たばっかりで冒険者になったばっかりなんですけど、ちょっと、聞きたいことがあって、」
「ああ、ンなもんギルドで聞けよ、新人ペアやパーティの訓練(つきそい)なんざ、こんなとこでやらねーぞ。」
「ああ、いえ、そういう依頼じゃなくて、出来ればドワーフの方にお願いがありまして、その、お話を聞いていただきたいのですが、」
「なんじゃ、儂か、知り合い・・・じゃないよな?」
怪訝そうにダイチの顔をジロジロと見ながら、首を傾げる。
「ええ、知り合いではないのですが、実はお酒の件で聞きたい事がありまして、」
なんだか雰囲気があまり良くないので、さっさと本題に入る。
「酒! なんじゃ、酒の話か、言うてみい。」
急にノリノリになったドワーフと、それ以外のメンバーは面倒くさい話じゃなさそうだと安心してそれぞれのグラスに手を伸ばす。
「実は珍しい酒を手に入れたんで、味見をしていただければなあと思って、」
「珍しい酒じゃと! だがな、ワシらドワーフを舐めてもらっちゃ困る。高級な酒は無理じゃが、酒に関する情熱と知識はどの種族にも負けんわい。どれ、試してやるから、出してみい、ほれ。」
店員に6個のコップと、お水をもらう。氷が無いのが残念だが仕方ない。
コップに1/4位、ウイスキーを注いだ。
「ずいぶん、ケチくさいのう。これでは味見にもならんだろう。」
鼻にしわを寄せて不機嫌さを隠そうともしないドワーフに苦笑しながら説明をする。
「これは、私も試しましたが、かなり酒精が強いです。初めて飲む方には水で割って飲むことをお勧めします。一気に飲む干すのはやめておいたほうがいいと思います。まずは、毒見を兼ねて私が一口飲みますね。」
ごくっ。と一口含む。18年ぶりのウイスキー。ストレートで呷るにはちょっときついけど、懐かしいし、やっぱり旨い。こちらの世界にも蒸留酒はあるが、無職透明だし、やっぱり味気ない。
「なんじゃ、色がついておるが、濁っておらんぞう、すごくいい香りもするし、んん・・・?」
しばらくいろいろな角度から眺め、臭いをかぎ、思い切って一気に呑み込む。
「旨い! かあぁぁっ、旨いわ!」 ぷはぁ、と息を吐いてダン!と勢いよくコップをテーブルに置く。
「これは。儂も知らん酒じゃ、昔、ワシらドワーフが酒神に奉納していた酒にこのように琥珀色で香り高い酒があったときいたことがあるが、すでに失われてから数百年、300年近くなるかのう、死ぬまでにそのような酒を一度飲んでみたいとは思っていたがのう。」
「へえー、バルサがそこまで言うなんて、俺も飲んでみようかな。」
と、先程まで不機嫌だった男がコップに鼻を近づけて臭いを嗅ぐが、嗅いだことがない強いアルコールの臭いに思わず手を遠ざけてしまう。
その様子を見ながら、再度、水で割ることを勧める。
「あっ、確かに、これでも酒精は強いけどおいしいね、すごい高級なお酒だよね?」
その様子を見て、他のメンバーも水で割り、そろそろと口をつけ目を丸くする。
「珍しいとは、思ったんですが、良く分からなかったので、ドワーフの方なら詳しいかなと思ってお話をききたかったんです。」
「酒の話ならいつでも大歓迎じゃが、この酒は初めてじゃ。もっと無いのか?」
「ありますが、出来ればもっとお話しを・・」
と言いかけたところで、三人組の柄の悪そうな男達に話しかけられた。
「おいおい、珍しい酒持ってんだって、俺達が味見してやんよ、そっちの美味そうなお嬢ちゃんも一緒にな!」
「よくみりゃ、なかなかいねえぐれーの上玉じゃねえかよ、そんなひょろい小僧といたって満足出来ねえだろうがよ、あっちもよ、なあ、俺なら朝までじっくり満足させてやんぜ、」
「ちげえねえ、兄貴はしつこいっすからねえ。」
「しつけえんじゃなくて、ただ、優しいだけだろうがよ、ああ、」
ゲラゲラと笑いながら、ナナミの肩をつかもうとすると、バシッと床に叩きつけられ、片腕を取られ、後ろ手に捻り上げられ関節を押さえられていた。
「痛い、痛い、いでーってんだろ、はなせよ、」
威勢はいいが、顔色は悪く、暴れようとしても押さえつけられ、更に痛みが走る。
「おいおい、お嬢ちゃん、大人しくしとけよ、俺達はてめーに優しくしてやるって言ってるだけじゃねーかよ。」
ナナミは睨みつけたまま、動かない。
「てめえ、ほんとう、いい加減にしやがれっ!ふざけてんじゃ・・・・。」
【ギフトスキル:怒髪天】
三人の男達は、その場で固まり、ヒザをついた。テーブルの周りの酔客達も一瞬凍り付き、そのスキルが自分達に向けられていないことを悟り、ほっと息を吐く。
三人の男達を除き、がやがやとした時間が戻ってきた。酔っ払い同士のからみなど良くある事。
いちいち構ってられないのだ。
「お食事中すみません、ちょっとよろしいですか?」
5人の目が一斉に向けられる。・・・びびるな、俺。
「なんだ?」 無愛想に人族の男性が答える。
・・・そんな胡散臭い目で見なくてもいいのに・・・。
「どうしたの?」 それとは逆ににっこりと人族の女が話しかける。
「あっ、その、俺達、この町に来たばっかりで冒険者になったばっかりなんですけど、ちょっと、聞きたいことがあって、」
「ああ、ンなもんギルドで聞けよ、新人ペアやパーティの訓練(つきそい)なんざ、こんなとこでやらねーぞ。」
「ああ、いえ、そういう依頼じゃなくて、出来ればドワーフの方にお願いがありまして、その、お話を聞いていただきたいのですが、」
「なんじゃ、儂か、知り合い・・・じゃないよな?」
怪訝そうにダイチの顔をジロジロと見ながら、首を傾げる。
「ええ、知り合いではないのですが、実はお酒の件で聞きたい事がありまして、」
なんだか雰囲気があまり良くないので、さっさと本題に入る。
「酒! なんじゃ、酒の話か、言うてみい。」
急にノリノリになったドワーフと、それ以外のメンバーは面倒くさい話じゃなさそうだと安心してそれぞれのグラスに手を伸ばす。
「実は珍しい酒を手に入れたんで、味見をしていただければなあと思って、」
「珍しい酒じゃと! だがな、ワシらドワーフを舐めてもらっちゃ困る。高級な酒は無理じゃが、酒に関する情熱と知識はどの種族にも負けんわい。どれ、試してやるから、出してみい、ほれ。」
店員に6個のコップと、お水をもらう。氷が無いのが残念だが仕方ない。
コップに1/4位、ウイスキーを注いだ。
「ずいぶん、ケチくさいのう。これでは味見にもならんだろう。」
鼻にしわを寄せて不機嫌さを隠そうともしないドワーフに苦笑しながら説明をする。
「これは、私も試しましたが、かなり酒精が強いです。初めて飲む方には水で割って飲むことをお勧めします。一気に飲む干すのはやめておいたほうがいいと思います。まずは、毒見を兼ねて私が一口飲みますね。」
ごくっ。と一口含む。18年ぶりのウイスキー。ストレートで呷るにはちょっときついけど、懐かしいし、やっぱり旨い。こちらの世界にも蒸留酒はあるが、無職透明だし、やっぱり味気ない。
「なんじゃ、色がついておるが、濁っておらんぞう、すごくいい香りもするし、んん・・・?」
しばらくいろいろな角度から眺め、臭いをかぎ、思い切って一気に呑み込む。
「旨い! かあぁぁっ、旨いわ!」 ぷはぁ、と息を吐いてダン!と勢いよくコップをテーブルに置く。
「これは。儂も知らん酒じゃ、昔、ワシらドワーフが酒神に奉納していた酒にこのように琥珀色で香り高い酒があったときいたことがあるが、すでに失われてから数百年、300年近くなるかのう、死ぬまでにそのような酒を一度飲んでみたいとは思っていたがのう。」
「へえー、バルサがそこまで言うなんて、俺も飲んでみようかな。」
と、先程まで不機嫌だった男がコップに鼻を近づけて臭いを嗅ぐが、嗅いだことがない強いアルコールの臭いに思わず手を遠ざけてしまう。
その様子を見ながら、再度、水で割ることを勧める。
「あっ、確かに、これでも酒精は強いけどおいしいね、すごい高級なお酒だよね?」
その様子を見て、他のメンバーも水で割り、そろそろと口をつけ目を丸くする。
「珍しいとは、思ったんですが、良く分からなかったので、ドワーフの方なら詳しいかなと思ってお話をききたかったんです。」
「酒の話ならいつでも大歓迎じゃが、この酒は初めてじゃ。もっと無いのか?」
「ありますが、出来ればもっとお話しを・・」
と言いかけたところで、三人組の柄の悪そうな男達に話しかけられた。
「おいおい、珍しい酒持ってんだって、俺達が味見してやんよ、そっちの美味そうなお嬢ちゃんも一緒にな!」
「よくみりゃ、なかなかいねえぐれーの上玉じゃねえかよ、そんなひょろい小僧といたって満足出来ねえだろうがよ、あっちもよ、なあ、俺なら朝までじっくり満足させてやんぜ、」
「ちげえねえ、兄貴はしつこいっすからねえ。」
「しつけえんじゃなくて、ただ、優しいだけだろうがよ、ああ、」
ゲラゲラと笑いながら、ナナミの肩をつかもうとすると、バシッと床に叩きつけられ、片腕を取られ、後ろ手に捻り上げられ関節を押さえられていた。
「痛い、痛い、いでーってんだろ、はなせよ、」
威勢はいいが、顔色は悪く、暴れようとしても押さえつけられ、更に痛みが走る。
「おいおい、お嬢ちゃん、大人しくしとけよ、俺達はてめーに優しくしてやるって言ってるだけじゃねーかよ。」
ナナミは睨みつけたまま、動かない。
「てめえ、ほんとう、いい加減にしやがれっ!ふざけてんじゃ・・・・。」
【ギフトスキル:怒髪天】
三人の男達は、その場で固まり、ヒザをついた。テーブルの周りの酔客達も一瞬凍り付き、そのスキルが自分達に向けられていないことを悟り、ほっと息を吐く。
三人の男達を除き、がやがやとした時間が戻ってきた。酔っ払い同士のからみなど良くある事。
いちいち構ってられないのだ。
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