上 下
17 / 79

第17話 居酒屋

しおりを挟む
ナナミと猫又達が気持ち良さそうにお昼寝していたので、そっと近づくと、目を覚ましたようだ。

「ダイチ様、お久振りでございます。そして、ミハル様、初めてお目にかかります。私、フレイアと申します。お会い出来まして光栄に存じます。」

 なんと、フレイア様だった。

「うむ、確かにそなたとは初めてじゃな、今代の聖女であろう。命の危機があったようじゃが、聖教会におらんで良いのか?」

「はい、戻るつもりではおりましたが、今の聖教会の在り方、王族や限られた方達のための聖女なのかと思うようになりまして・・・。ナナミ様、ダイチ様がトレーニングという修練をされておられる時に初めてスラムとういう場所で生活をされてる方々がおられる事を知りました。恥ずかしながら、私は与えられたものを、ただ当たり前に受け止め、言われた事をするだけが聖女の役割だと思っておりました。・・・・・お腹を満たす食事にさえ事欠く方々がおられることさえ知らなかったのです。」

 うつむきながらも、はっきりとした口調だった。

「それと、ナナミ様のお好きな”もふもふ”というのでしょうか?猫又様達との触れ合いは、暖かい気持ちになれ、とても良いものだと思います。私は、知らない事が多すぎます。もっといろいろなものを自分の目で確かめたいのです。ナナミ様頼りになってはしまいますが・・・」

「閉ざされた世界におったのじゃろう、知らぬことを恥と感じる必要は無いであろう。知ろうとしないのは怠惰であり、傲慢でもあるがのう。そなたは歩みだそうとしておる。知らぬことと、知ろうとしないことは全く異なるものなんじゃよ。」

 どうしたんだ、なんかスゲーいい事言ってるんじゃね?見た目は12才位のふわふわ美少女なのに、威厳?・・・あー100年以上生きてるんだったよな、そういえば、

 ・・・ただのロリババ・・・あっ、いや、そんな、そんな目で見ないで下さい・・。さっきまでいい関係でしたよね?

 眼圧を物理的に感じられるほど、空気が重い。しまったと思った頃には既に遅いと学んだダイチだった。

「やっぱり、どこか抜けてるっていうか、残念感漂うよね、ダイチってさ、」
「残念感は否定しないがのう、世の中全員勇者でも面白くなかろうよ。」

 そう言って笑いあう二人。・・・おかしい。アイデア出したのほぼ俺で、・・・ナナミは寝てただけなのに・・・フレイア様のほうが、良かったな・・・。

「あー、なんかまた残念なこと考えてたんでしょう?すぐ、顔に出るからね。」
「そうじゃのう、身分を考えても、もう少し感情を抑えたほうが良いのではないかのう。」

 うぐぐぐぐぐ。なんで・・・いつも・・・・。
 考えても無駄である。

 ひとしきり笑って気が済んだようだ。
「ねえねえ、それでどうやってここまで人を引っ張てくるの? 街からここまで結構あるよ。」

「そのための”命の水”だからさ、どうなるか分からないけどやってみる価値はある。」

 そう言った、ダイチ達が向かったのは、一軒の宿屋だった。食堂兼居酒屋は夕方にはまだしばし時間があるが、すでにいくつかの席が埋まり賑わいを見せている。

早めに仕事を終えた冒険者達が集まり始めていたのだ。内心は、かなりウキウキしながらも努めて顔に出ないよう普通にふるまっていた。この世界にきて初めての居酒屋なので。無理もない。隣にいるナナミにバカにされないようはしゃぎたい気持ちを必死に抑えているのだ。

 ナナミはと言えば、隣にいるダイチなど気にすることなく、物珍し気にキョロキョロと辺りを見回し、猫耳、狐耳、あっちは熊耳かな?と脳内もふもふワールドを堪能している。

12才から独りで稼ぎ始めることも多いこの世界に年齢確認は無いので、入り口に近く、店内全体を見渡せる席を選び、元気よく厨房と店内を往復している女の子に声をかける。

「いらっしゃいませ、ご注文はお決まりですか?」

「エールと果実水、そうだなあ、リゴーネはあるかな?」

「ありますよ、他にもレモーネ、マスカローネ、甘いのがいいならメローネ、ピーネがおすすめです。」

 どうする?とナナミを見る、

「じゃあ、レモーネで、あとお食事のおすすめは何かある?」

「はい、今日はジャイアントフロッグがお出しできますが、少しお高いですけどね、あとホーンラビットの香草焼きは評判いいですよ。」

「じゃあ、ホーンラビットの香草焼きとスープを二つ、あとテキトーにおつまみを2,3品お願いします。」

 店の賑わいを見渡しながら、あー、やっぱ、こういう雰囲気いいよな、皆がわいわいやって、酒が入ってほぐれて笑顔になって、愚痴も出てさ、一日働いたあとの旨い酒とつまみがあればそれでいいんだよな、俺も、いつかは・・

 なんて思っていたら、お目当てのグループが入ってきた。ドワーフ、獣人、人族2人、巨人族の5人グループだ。ドワーフは外せないが、あとあまり若すぎず、かといってランクもそこそこ、出来ればDランク(一般)程度のパーティを探していたのだ。

 あまり若いと勢いだけで突っ走られ、ダンジョンとして機能する前に大勢で押しかけられても困るし、高ランクの冒険者を引き付ける程のドロップ品おたからは、まだ無いので、武骨で無愛想なものが多いが本当は情が厚く義理堅い。そんなドワーフにダンジョン再生の要になって欲しいと考えていたのだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが…… アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。 そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。  実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。  剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。  アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

テンプレな異世界を楽しんでね♪~元おっさんの異世界生活~【加筆修正版】

永倉伊織
ファンタジー
神の力によって異世界に転生した長倉真八(39歳)、転生した世界は彼のよく知る「異世界小説」のような世界だった。 転生した彼の身体は20歳の若者になったが、精神は何故か39歳のおっさんのままだった。 こうして元おっさんとして第2の人生を歩む事になった彼は異世界小説でよくある展開、いわゆるテンプレな出来事に巻き込まれながらも、出逢いや別れ、時には仲間とゆる~い冒険の旅に出たり 授かった能力を使いつつも普通に生きていこうとする、おっさんの物語である。 ◇ ◇ ◇ 本作は主人公が異世界で「生活」していく事がメインのお話しなので、派手な出来事は起こりません。 序盤は1話あたりの文字数が少なめですが 全体的には1話2000文字前後でサクッと読める内容を目指してます。

エデンワールド〜退屈を紛らわせるために戦っていたら、勝手に英雄視されていた件〜

ラリックマ
ファンタジー
「簡単なあらすじ」 死んだら本当に死ぬ仮想世界で戦闘狂の主人公がもてはやされる話です。 「ちゃんとしたあらすじ」 西暦2022年。科学力の進歩により、人々は新たなるステージである仮想現実の世界に身を移していた。食事も必要ない。怪我や病気にもかからない。めんどくさいことは全てAIがやってくれる。 そんな楽園のような世界に生きる人々は、いつしか働くことを放棄し、怠け者ばかりになってしまっていた。 本作の主人公である三木彼方は、そんな仮想世界に嫌気がさしていた。AIが管理してくれる世界で、ただ何もせず娯楽のみに興じる人類はなぜ生きているのだろうと、自らの生きる意味を考えるようになる。 退屈な世界、何か生きがいは見つからないものかと考えていたそんなある日のこと。楽園であったはずの仮想世界は、始めて感情と自我を手に入れたAIによって支配されてしまう。 まるでゲームのような世界に形を変えられ、クリアしなくては元に戻さないとまで言われた人類は、恐怖し、絶望した。 しかし彼方だけは違った。崩れる退屈に高揚感を抱き、AIに世界を壊してくれたことを感謝をすると、彼は自らの退屈を紛らわせるため攻略を開始する。 ーーー 評価や感想をもらえると大変嬉しいです!

幸福の魔法使い〜ただの転生者が史上最高の魔法使いになるまで〜

霊鬼
ファンタジー
生まれつき魔力が見えるという特異体質を持つ現代日本の会社員、草薙真はある日死んでしまう。しかし何故か目を覚ませば自分が幼い子供に戻っていて……? 生まれ直した彼の目的は、ずっと憧れていた魔法を極めること。様々な地へ訪れ、様々な人と会い、平凡な彼はやがて英雄へと成り上がっていく。 これは、ただの転生者が、やがて史上最高の魔法使いになるまでの物語である。 (小説家になろう様、カクヨム様にも掲載をしています。)

辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい

ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆ 気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。 チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。 第一章 テンプレの異世界転生 第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!? 第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ! 第四章 魔族襲来!?王国を守れ 第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!? 第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~ 第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~ 第八章 クリフ一家と領地改革!? 第九章 魔国へ〜魔族大決戦!? 第十章 自分探しと家族サービス

処理中です...