5 / 79
第5話 自己紹介 カイル
しおりを挟む
淡い光が収まり、目の前にいる彼女は七海だ。
「ふあ~、すごいね、聖女様、ザ・聖女!って感じだね。」
ご自分の事ですよ、分かってんのかな、この人。
「ねえねえ、それよりさ、カイル君の事教えて、この家のこととかさ、」
いきなり君付け?
思い切り怪訝な顔をしてしまったが、どちみち説明は必要だろうと意識を切り替える。
「俺は、家出をしてきた。この家もそのために用意していたんだ。
しばらく隠れるつもりでいたから、日用品や食料も用意してあるし、もちろんお金も。」
「なんで、家出したの?」
水色の瞳が興味深そうに、俺を見てる。
人格が変わるとこんなにも印象って変わるんだ。
美少女なのは変わらないが、神秘的で凛とした浮世離れした美しさが月の光なら、
今の彼女は生命力に溢れた陽の光がお似合いだ。
「俺は、生まれた時から前世の記憶を持っていたんだ。大学を卒業して8年務めた会社を辞めて、居酒屋を始めるつもりだったんだ。店舗の契約を済ませて、さあ、これから、ずっとやりたかった居酒屋をやれるんだ!って時に交通事故にあった。森山 大地。31才。七海さんより年上だよ。」
ちょっとびっくりしてるな。
そりゃあ、目の前の18才の少年が中身は30オーバーなんて、違和感しかない。
分かってるけどしょうがない。
だいたい自分だって聖女の中身が元・女刑事でギフト:狂戦士持ちなんて、
違和感というより最早、偽造品。 別物ですよ。
「で、この世界で体が動くようになってから、いろんな本を読んで知識を詰め込み、体も鍛えた。
魔法も覚えた。でもさ、俺、気が付いたんだけど、料理好きなんだよ。たまに厨房に入り込んで
料理作ったりしたけど、なんか、すげー不満でさ。公爵家に比べたらしょーもないような田舎貴族だけど、やっぱ格式っていうか、習慣っていうかあってさ、せっかく料理を作っても着替えて、ダイニングテーブルに座らないと食べれないし、まして父が亡くなってから、俺が食事をしないと屋敷の者が誰も食事出来ないなんてばかげてると思うんだ。」
なんか同情的な目で見られてるけど、やっとわかってもらえる人がいた!
そう思うと、ついつい熱が入ってしまう。
「この世界の常識しか知らない人から見れば、俺が何を言っても、何をやっても”カイル様はお優しいが、貴族としてのお振舞も大切なこと、平民や使用人と同じテーブルで食事などありえない事でございます。”とかなんとか言われて、貴族らしい貴族を要求してその先陣を務めてるのが、私の義母、フォルセティアで、義弟のジェフリードも同じなんだ。」
・・・・ただ、二人共、私に良かれと思ってやっているだけに、嫌いはしないが、少々うっとおしい。
「俺は! 普通でいいんだ! 皆がぐちを言ったり、バカな話をしながら酒を飲み、俺の作った料理
をおいしいって言ってくれる、そんな場所が欲しかったんだよ!!」
本人にとってはとても大事な熱い思いをきいて、
転生者として貴族に生まれた時点で普通じゃないけど、と思ったが黙っていた。
それは、貴族としての義務を義弟に丸投げしたのでは? だが、空気の読める七海さんは黙っていた。
貴族としてのストレスもあっただろうが、貴族としての特権も享受していたはずで、
平民に生まれたら生きていくのも大変だったのでは? ・・・それ以上突っ込むのは止めた。
下手に口出しして、シュバーツェン家に戻られたら困る。
今、一人きりになるわけにはいかない。
いつだって女性のほうが現実的である。
そして、元刑事としての経験から情報や協力を求めたい相手に対しては、不快に思われそうなことは口にしない。そして、相手に対して共感を示す。
女性としての経験から、とならないところが残念な七海さん。
「そっかー。カイン君もいろいろ大変だったんだね。」
「いや、フレイア様に比べたら俺なんて・・ぜんぜん。」
カイルの七海に対する好感度があがった。↑ ちょろい奴。
「ところで、カイル君の前世の名前って聞いてもいいかな。」
「俺は、森山 大地。」
「じゃあ、ダイチって呼んでいい? 私の事はナナミって呼んで。」
「そうだね、お互い身を隠すんだから、そのほうがいいよな。
よろしく、ナナミ。」
「こちらこそ、よろしくダイチ君。」
「えっ、俺ってやっぱり君づけ?」
「だって、ナナミは27才だよ。」
それを言うなら、俺も31だけど、まあ、いいか。
「ふあ~、すごいね、聖女様、ザ・聖女!って感じだね。」
ご自分の事ですよ、分かってんのかな、この人。
「ねえねえ、それよりさ、カイル君の事教えて、この家のこととかさ、」
いきなり君付け?
思い切り怪訝な顔をしてしまったが、どちみち説明は必要だろうと意識を切り替える。
「俺は、家出をしてきた。この家もそのために用意していたんだ。
しばらく隠れるつもりでいたから、日用品や食料も用意してあるし、もちろんお金も。」
「なんで、家出したの?」
水色の瞳が興味深そうに、俺を見てる。
人格が変わるとこんなにも印象って変わるんだ。
美少女なのは変わらないが、神秘的で凛とした浮世離れした美しさが月の光なら、
今の彼女は生命力に溢れた陽の光がお似合いだ。
「俺は、生まれた時から前世の記憶を持っていたんだ。大学を卒業して8年務めた会社を辞めて、居酒屋を始めるつもりだったんだ。店舗の契約を済ませて、さあ、これから、ずっとやりたかった居酒屋をやれるんだ!って時に交通事故にあった。森山 大地。31才。七海さんより年上だよ。」
ちょっとびっくりしてるな。
そりゃあ、目の前の18才の少年が中身は30オーバーなんて、違和感しかない。
分かってるけどしょうがない。
だいたい自分だって聖女の中身が元・女刑事でギフト:狂戦士持ちなんて、
違和感というより最早、偽造品。 別物ですよ。
「で、この世界で体が動くようになってから、いろんな本を読んで知識を詰め込み、体も鍛えた。
魔法も覚えた。でもさ、俺、気が付いたんだけど、料理好きなんだよ。たまに厨房に入り込んで
料理作ったりしたけど、なんか、すげー不満でさ。公爵家に比べたらしょーもないような田舎貴族だけど、やっぱ格式っていうか、習慣っていうかあってさ、せっかく料理を作っても着替えて、ダイニングテーブルに座らないと食べれないし、まして父が亡くなってから、俺が食事をしないと屋敷の者が誰も食事出来ないなんてばかげてると思うんだ。」
なんか同情的な目で見られてるけど、やっとわかってもらえる人がいた!
そう思うと、ついつい熱が入ってしまう。
「この世界の常識しか知らない人から見れば、俺が何を言っても、何をやっても”カイル様はお優しいが、貴族としてのお振舞も大切なこと、平民や使用人と同じテーブルで食事などありえない事でございます。”とかなんとか言われて、貴族らしい貴族を要求してその先陣を務めてるのが、私の義母、フォルセティアで、義弟のジェフリードも同じなんだ。」
・・・・ただ、二人共、私に良かれと思ってやっているだけに、嫌いはしないが、少々うっとおしい。
「俺は! 普通でいいんだ! 皆がぐちを言ったり、バカな話をしながら酒を飲み、俺の作った料理
をおいしいって言ってくれる、そんな場所が欲しかったんだよ!!」
本人にとってはとても大事な熱い思いをきいて、
転生者として貴族に生まれた時点で普通じゃないけど、と思ったが黙っていた。
それは、貴族としての義務を義弟に丸投げしたのでは? だが、空気の読める七海さんは黙っていた。
貴族としてのストレスもあっただろうが、貴族としての特権も享受していたはずで、
平民に生まれたら生きていくのも大変だったのでは? ・・・それ以上突っ込むのは止めた。
下手に口出しして、シュバーツェン家に戻られたら困る。
今、一人きりになるわけにはいかない。
いつだって女性のほうが現実的である。
そして、元刑事としての経験から情報や協力を求めたい相手に対しては、不快に思われそうなことは口にしない。そして、相手に対して共感を示す。
女性としての経験から、とならないところが残念な七海さん。
「そっかー。カイン君もいろいろ大変だったんだね。」
「いや、フレイア様に比べたら俺なんて・・ぜんぜん。」
カイルの七海に対する好感度があがった。↑ ちょろい奴。
「ところで、カイル君の前世の名前って聞いてもいいかな。」
「俺は、森山 大地。」
「じゃあ、ダイチって呼んでいい? 私の事はナナミって呼んで。」
「そうだね、お互い身を隠すんだから、そのほうがいいよな。
よろしく、ナナミ。」
「こちらこそ、よろしくダイチ君。」
「えっ、俺ってやっぱり君づけ?」
「だって、ナナミは27才だよ。」
それを言うなら、俺も31だけど、まあ、いいか。
0
お気に入りに追加
246
あなたにおすすめの小説
他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!
七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
【完結】【勇者】の称号が無かった美少年は王宮を追放されたのでのんびり異世界を謳歌する
雪雪ノ雪
ファンタジー
ある日、突然学校にいた人全員が【勇者】として召喚された。
その召喚に巻き込まれた少年柊茜は、1人だけ【勇者】の称号がなかった。
代わりにあったのは【ラグナロク】という【固有exスキル】。
それを見た柊茜は
「あー....このスキルのせいで【勇者】の称号がなかったのかー。まぁ、ス・ラ・イ・厶・に【勇者】って称号とか合わないからなぁ…」
【勇者】の称号が無かった柊茜は、王宮を追放されてしまう。
追放されてしまった柊茜は、特に慌てる事もなくのんびり異世界を謳歌する..........たぶん…....
主人公は男の娘です 基本主人公が自分を表す時は「私」と表現します
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?
みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。
ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる
色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる