4 / 79
第4話 自己紹介 七海
しおりを挟む
それはヒドイ、非道すぎる、聞いているだけでも怒りが込み上げてくる。
けど、目の前の圧に押されて、俺は言葉が出てこない。身動きすらままならない。
「それで、怒りが突き抜けた私にギフトとスキルが与えらえて、そのスキルのおかげでね、その場にいた人達、皆固まって動けなくなっちゃたの、
で、でも、でもね、Lv,1だったからかな、すぐに威圧が解けて反対に拘束されちゃった。」
えへっ。
ここで可愛さアピールいらないし、逆にあざといし、
なんていうか、いろいろと凄い人だった。
・・・お茶、飲んでいいかな・・・?
「で、その時に自分の前世を思い出したの。こう、バァァアーって感じで、わかる?」
わかりません。それでわかったら言葉要らないですよね?
見た目以上に知識レベルが低いことは、わかりました。
「前世の記憶が一気にあふれ出して、混乱している隙に拘束されて、転移させられた?」
「そう、その通り、やっぱり、同郷っていいよね。前世持ちなんて滅多にいないし、良かった~、わかってくれて、」
ニコニコしてお茶を飲んでる。
俺の名前と身分は確認出来たが、助けるとも力になるとも言ってないのに、いいのか?
人がいいのか、バカなのか?
聖女として育てられたから、悪意にうといとかか?
「ところで、前世ってどのくらい思い出したの?」
と何気なく訊いたら、
「あー、それね、私の前世、片瀬 七海。 27才。
新宿西署、刑事1課 巡査部長。
新宿連続通り魔の捜査中、殉職いたしました。」
衝撃の答えが返ってきました。
・・・・・はい? このセクハラな体を持ち、セクハラに遭った女の子が刑事?
しかも、巡査部長ってエリートですか?
でも、なんか気のせいかな、背筋がビシッと伸びて見える。
お胸はポヨンとしてますが・・・
あー、なんかいろいろありすぎてキャパオーバーです。自分。
「えーと、ごめんね、いろいろありすぎるのは自分でもわかってるんだ、
なんか、フレイアと七海の性格がまだ、ちぐはぐしてるというか・・
自分自身もそうだし、状況も良く分からない部分も多いし、
とりあえず、身を隠す場所を探してそれからどうするか考えようと思ってたの、
迷惑かもしれないけど、ここにしばらく置いてくれないかな?」
小首をかしげて、上目遣いに俺をみてくる。
天性なのか、あざといのか、
まあ、困ってる女の子を叩き出す趣味はないし、それにこの子を野に放したらヤバイ。
確実にシュバーツェン家が絡んでくる。
◇前世持ちの転生者、
◇フレイムニル家公爵家ご令嬢、
◇聖教会の聖女、
◇ギフト:狂戦士(ベルセルク)
そして、王宮にいるのがふさわしいような気品ある(黙っていれば)美少女で、
どれ一つとっても無事な要素が無い。無さすぎる。
ため息を飲み込みながら、
「別にかまわないよ、命まで狙われてる女の子を放っておけないしね。」
俺に選択肢はなかった。
「やったー!」
胸の前で組んだ手が、そのままバンザイの形になった。
白すぎた顔色に少し赤身が戻ってきて、
その水色の瞳がうるんで、ポタリ、と一粒の涙が落ちた。
「あっ、な、泣いているのはフレイアだから、私じゃないから、」
びっくりした。聖女の涙。 破壊力ありすぎでしょう。
一幅の絵画みたいだった。 こんなん戦争起きても不思議じゃないくらい、
思わず膝まづいて騎士の誓いをやりそうになったよ。
しないけど。
そして肝心の本人は、ふてくされたように目をそらしているし、耳が赤い。
「泣いているのはフレイアで、しゃっべているのは七海さん?」
「・・・そう。だね。 上手く言えないけど、
私、七海とフレイアは一つの体に二つの人格が入ってる感じなの、
前世の記憶を思い出してからは私が主導権、フレイアの存在は私の中に感じる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・そう、水がしみ込んでいくようにゆうるりと溶け合っていくんです。
魂の記憶は本来は引き継がれない。
輪廻転生、この世界に生まれ、死に、又、生を得る。
その中で前世の記憶を持つものもおりますが、転生者とは異なる存在となります。
それはお分かりですね? カイン様。」
「ええ、存じております、稀に現れる転生者とは、この世界にない知識・技術を持ち、
神と繋がるもの、と言われている。」
にっこりと微笑み、
「仰る通りですわ、そして、それは真実なのです。
七海様と同じ魂を分け合うこの私も、カイン様も神のご加護を得ておりますの。
ですが、英雄となるも野に埋もれようとも構わないのです。生き方を強制されてはおりません。
ただ、在るだけで良いとの仰せです。」
「そう・・・ですか。」
そこにいるだけで空気が違う、自分よりも年下の少女は、
儚げな見た目よりも凛とした美しさが彼女自身を表していた。
とまどうようなカインに向かって聖女フレイアはクスクスと笑う。
「カイン様、お気づきのように今の私はフレイアでございます。」
その言葉に自然と背筋がのびて姿勢が正され、アスガルド貴族の顔になる。
「ですが、お気遣いは不要です。
この状況でフレイムニル家の力が何の役に立つというのでしょう、
逆に家の名前は仇ともなりましょう。私自身も、その・・・私の・・・
体を差し出せという言葉には忌避感を覚えましたが、
七海様の記憶が甦らねば、魔力を尽くしても逃げられたかどうかわかりません。
今の私に必要なのは七海様の知識と経験なのです。
カイン様のお力添えを得られなければ寄る辺なき身の上。
どうか、お力をお貸し下さいませ。」
聖女フレイアは、神に祈りを捧げるようにカインの前に片膝を折り、両手を胸の前で合わせて女神フレイアの印を結び、一度視線を合わせてから、深く静かに頭を下げた。
慌ててカインは、フレイアに手を差し伸べて立ち上がらせ、代わりに自分が片膝をつく。
「フレイア様、私、カイル・デラクタ・フォン・シュバーツェンは御身が定められた場所に戻るまで、かなう限りの助力をお約束致します。」
フレイアから、淡い光がこぼれてカインに触れる。
そのまま、又、フレイアは意識の奥底へ戻っていった。
けど、目の前の圧に押されて、俺は言葉が出てこない。身動きすらままならない。
「それで、怒りが突き抜けた私にギフトとスキルが与えらえて、そのスキルのおかげでね、その場にいた人達、皆固まって動けなくなっちゃたの、
で、でも、でもね、Lv,1だったからかな、すぐに威圧が解けて反対に拘束されちゃった。」
えへっ。
ここで可愛さアピールいらないし、逆にあざといし、
なんていうか、いろいろと凄い人だった。
・・・お茶、飲んでいいかな・・・?
「で、その時に自分の前世を思い出したの。こう、バァァアーって感じで、わかる?」
わかりません。それでわかったら言葉要らないですよね?
見た目以上に知識レベルが低いことは、わかりました。
「前世の記憶が一気にあふれ出して、混乱している隙に拘束されて、転移させられた?」
「そう、その通り、やっぱり、同郷っていいよね。前世持ちなんて滅多にいないし、良かった~、わかってくれて、」
ニコニコしてお茶を飲んでる。
俺の名前と身分は確認出来たが、助けるとも力になるとも言ってないのに、いいのか?
人がいいのか、バカなのか?
聖女として育てられたから、悪意にうといとかか?
「ところで、前世ってどのくらい思い出したの?」
と何気なく訊いたら、
「あー、それね、私の前世、片瀬 七海。 27才。
新宿西署、刑事1課 巡査部長。
新宿連続通り魔の捜査中、殉職いたしました。」
衝撃の答えが返ってきました。
・・・・・はい? このセクハラな体を持ち、セクハラに遭った女の子が刑事?
しかも、巡査部長ってエリートですか?
でも、なんか気のせいかな、背筋がビシッと伸びて見える。
お胸はポヨンとしてますが・・・
あー、なんかいろいろありすぎてキャパオーバーです。自分。
「えーと、ごめんね、いろいろありすぎるのは自分でもわかってるんだ、
なんか、フレイアと七海の性格がまだ、ちぐはぐしてるというか・・
自分自身もそうだし、状況も良く分からない部分も多いし、
とりあえず、身を隠す場所を探してそれからどうするか考えようと思ってたの、
迷惑かもしれないけど、ここにしばらく置いてくれないかな?」
小首をかしげて、上目遣いに俺をみてくる。
天性なのか、あざといのか、
まあ、困ってる女の子を叩き出す趣味はないし、それにこの子を野に放したらヤバイ。
確実にシュバーツェン家が絡んでくる。
◇前世持ちの転生者、
◇フレイムニル家公爵家ご令嬢、
◇聖教会の聖女、
◇ギフト:狂戦士(ベルセルク)
そして、王宮にいるのがふさわしいような気品ある(黙っていれば)美少女で、
どれ一つとっても無事な要素が無い。無さすぎる。
ため息を飲み込みながら、
「別にかまわないよ、命まで狙われてる女の子を放っておけないしね。」
俺に選択肢はなかった。
「やったー!」
胸の前で組んだ手が、そのままバンザイの形になった。
白すぎた顔色に少し赤身が戻ってきて、
その水色の瞳がうるんで、ポタリ、と一粒の涙が落ちた。
「あっ、な、泣いているのはフレイアだから、私じゃないから、」
びっくりした。聖女の涙。 破壊力ありすぎでしょう。
一幅の絵画みたいだった。 こんなん戦争起きても不思議じゃないくらい、
思わず膝まづいて騎士の誓いをやりそうになったよ。
しないけど。
そして肝心の本人は、ふてくされたように目をそらしているし、耳が赤い。
「泣いているのはフレイアで、しゃっべているのは七海さん?」
「・・・そう。だね。 上手く言えないけど、
私、七海とフレイアは一つの体に二つの人格が入ってる感じなの、
前世の記憶を思い出してからは私が主導権、フレイアの存在は私の中に感じる。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
・・・・・・そう、水がしみ込んでいくようにゆうるりと溶け合っていくんです。
魂の記憶は本来は引き継がれない。
輪廻転生、この世界に生まれ、死に、又、生を得る。
その中で前世の記憶を持つものもおりますが、転生者とは異なる存在となります。
それはお分かりですね? カイン様。」
「ええ、存じております、稀に現れる転生者とは、この世界にない知識・技術を持ち、
神と繋がるもの、と言われている。」
にっこりと微笑み、
「仰る通りですわ、そして、それは真実なのです。
七海様と同じ魂を分け合うこの私も、カイン様も神のご加護を得ておりますの。
ですが、英雄となるも野に埋もれようとも構わないのです。生き方を強制されてはおりません。
ただ、在るだけで良いとの仰せです。」
「そう・・・ですか。」
そこにいるだけで空気が違う、自分よりも年下の少女は、
儚げな見た目よりも凛とした美しさが彼女自身を表していた。
とまどうようなカインに向かって聖女フレイアはクスクスと笑う。
「カイン様、お気づきのように今の私はフレイアでございます。」
その言葉に自然と背筋がのびて姿勢が正され、アスガルド貴族の顔になる。
「ですが、お気遣いは不要です。
この状況でフレイムニル家の力が何の役に立つというのでしょう、
逆に家の名前は仇ともなりましょう。私自身も、その・・・私の・・・
体を差し出せという言葉には忌避感を覚えましたが、
七海様の記憶が甦らねば、魔力を尽くしても逃げられたかどうかわかりません。
今の私に必要なのは七海様の知識と経験なのです。
カイン様のお力添えを得られなければ寄る辺なき身の上。
どうか、お力をお貸し下さいませ。」
聖女フレイアは、神に祈りを捧げるようにカインの前に片膝を折り、両手を胸の前で合わせて女神フレイアの印を結び、一度視線を合わせてから、深く静かに頭を下げた。
慌ててカインは、フレイアに手を差し伸べて立ち上がらせ、代わりに自分が片膝をつく。
「フレイア様、私、カイル・デラクタ・フォン・シュバーツェンは御身が定められた場所に戻るまで、かなう限りの助力をお約束致します。」
フレイアから、淡い光がこぼれてカインに触れる。
そのまま、又、フレイアは意識の奥底へ戻っていった。
0
お気に入りに追加
245
あなたにおすすめの小説

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?

無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――

神に異世界へ転生させられたので……自由に生きていく
霜月 祈叶 (霜月藍)
ファンタジー
小説漫画アニメではお馴染みの神の失敗で死んだ。
だから異世界で自由に生きていこうと決めた鈴村茉莉。
どう足掻いても異世界のせいかテンプレ発生。ゴブリン、オーク……盗賊。
でも目立ちたくない。目指せフリーダムライフ!

まさか転生?
花菱
ファンタジー
気付いたら異世界? しかも身体が?
一体どうなってるの…
あれ?でも……
滑舌かなり悪く、ご都合主義のお話。
初めてなので作者にも今後どうなっていくのか分からない……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる