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美月のあ参上!
出動!?
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「ところで、さっきから熱心に何書いてたんです?」
山根がのんのに聞いてみた。
「日誌……」
つまらなさそうにのんのが答えた。
「何の日誌ですか? 業務日誌ならこれからは自分が書きますが」
のんのは机に置いている冊子を閉じて、その表紙を山根に見せた。
——研修日誌
「やってもらえるなら、すっごくうれしいんだけど」
「さすがに手伝えそうもないですね」
「それがさ、今日やった仕事だけをただ綴っててもつまんないから、ちょっと脚色して書いたら、思いっきり赤い文字で『これは日記ではありません。日誌です。端的な事実と法令の根拠、研修中ですから質疑事項を記載してください』だって。そんなこと書いて誰が喜ぶの? それじゃあ六法全書を写してるだけだし、つまんない」
「でも警部補、日誌ってそんなものでしょう」
「それ読んで何か楽しいの? 人生の無駄な時間よ」
のんのが本気で膨れているので、山根は苦笑するしかない。
「で、誰が研修担当官なんです?」
「あのお方」
のんのが指し示す先で生活安全課の倉橋課長が立ち上がり、大きなくしゃみをした。
⌘
数日後の夕方、生活安全課と刑事課の主だった課員が会議室に集められた。生活安全課の上田係長がテキパキと資料を配布し終わると、倉橋から今回の案件について説明があった。
「先日、生活安全課に情報提供があった。細かいことは手元の資料をまず目を通してくれ」
倉橋がそう言うと、集められたそれぞれが黙々と資料に目を通す。少し時間をおいて改めて倉橋が説明を続ける。
「当署管内にあるガールズバー『プチフレンド』の接客従業員、青山かれん、まあ本名かどうかも怪しいもんではあるが、この青山からの情報提供によると、プチフレンドの接客従業員数人が短期間に突然行方不明になっているらしい」
倉橋が喋り終わるタイミングでパッと正面の小さなスクリーンにパソコンからの画像が映し出される。東江戸川署管内の駅の近く、生活安全課には見慣れた街の映像だ。
倉橋が手にしたレーザーポインターから出る赤い点が画面の一箇所で止まる。
「ここが今説明したガールズバー『プチフレンド』だ。行ったことある奴はいるか?」
捜査員の1人が手を上げる。生活安全課のベテラン安藤だ。倉橋も一目置いている。
「去年開店したはずだが、あまりいい噂を聞かない店ですね。ゴロツキやら東南アジアあたりの外国人がウロウロしてると聞いて周辺を当たってみたことがあるけど、叩けばホコリは出そうな感じだったね」
倉橋が頷き、
「ガサには?」
と安藤に聞く。
「札《ふだ》を取れるほどのものが掴めなくて、まだ」
と言いながら首を横に振った。
⌘
「ねえねえ、山根さん」
捜査会議の一番後ろの席にいるのんのが、隣に座っている山根に話しかける。
「なんですか」
会議中なので、山根が小さな声で答えると、のんのも小声になった。
「札《ふだ》ってなに?」
「ああ、令状のことです」
「ガサは?」
「家宅捜索のことですね。つまり安藤さんが家宅捜索に入りたかったけど、捜査令状が取れるほどのものがなかった、ということですわ」
「了解。ありがと。日誌のネタがひとつできた」
そう言って笑っていた。
山根がのんのに聞いてみた。
「日誌……」
つまらなさそうにのんのが答えた。
「何の日誌ですか? 業務日誌ならこれからは自分が書きますが」
のんのは机に置いている冊子を閉じて、その表紙を山根に見せた。
——研修日誌
「やってもらえるなら、すっごくうれしいんだけど」
「さすがに手伝えそうもないですね」
「それがさ、今日やった仕事だけをただ綴っててもつまんないから、ちょっと脚色して書いたら、思いっきり赤い文字で『これは日記ではありません。日誌です。端的な事実と法令の根拠、研修中ですから質疑事項を記載してください』だって。そんなこと書いて誰が喜ぶの? それじゃあ六法全書を写してるだけだし、つまんない」
「でも警部補、日誌ってそんなものでしょう」
「それ読んで何か楽しいの? 人生の無駄な時間よ」
のんのが本気で膨れているので、山根は苦笑するしかない。
「で、誰が研修担当官なんです?」
「あのお方」
のんのが指し示す先で生活安全課の倉橋課長が立ち上がり、大きなくしゃみをした。
⌘
数日後の夕方、生活安全課と刑事課の主だった課員が会議室に集められた。生活安全課の上田係長がテキパキと資料を配布し終わると、倉橋から今回の案件について説明があった。
「先日、生活安全課に情報提供があった。細かいことは手元の資料をまず目を通してくれ」
倉橋がそう言うと、集められたそれぞれが黙々と資料に目を通す。少し時間をおいて改めて倉橋が説明を続ける。
「当署管内にあるガールズバー『プチフレンド』の接客従業員、青山かれん、まあ本名かどうかも怪しいもんではあるが、この青山からの情報提供によると、プチフレンドの接客従業員数人が短期間に突然行方不明になっているらしい」
倉橋が喋り終わるタイミングでパッと正面の小さなスクリーンにパソコンからの画像が映し出される。東江戸川署管内の駅の近く、生活安全課には見慣れた街の映像だ。
倉橋が手にしたレーザーポインターから出る赤い点が画面の一箇所で止まる。
「ここが今説明したガールズバー『プチフレンド』だ。行ったことある奴はいるか?」
捜査員の1人が手を上げる。生活安全課のベテラン安藤だ。倉橋も一目置いている。
「去年開店したはずだが、あまりいい噂を聞かない店ですね。ゴロツキやら東南アジアあたりの外国人がウロウロしてると聞いて周辺を当たってみたことがあるけど、叩けばホコリは出そうな感じだったね」
倉橋が頷き、
「ガサには?」
と安藤に聞く。
「札《ふだ》を取れるほどのものが掴めなくて、まだ」
と言いながら首を横に振った。
⌘
「ねえねえ、山根さん」
捜査会議の一番後ろの席にいるのんのが、隣に座っている山根に話しかける。
「なんですか」
会議中なので、山根が小さな声で答えると、のんのも小声になった。
「札《ふだ》ってなに?」
「ああ、令状のことです」
「ガサは?」
「家宅捜索のことですね。つまり安藤さんが家宅捜索に入りたかったけど、捜査令状が取れるほどのものがなかった、ということですわ」
「了解。ありがと。日誌のネタがひとつできた」
そう言って笑っていた。
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