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横浜へ
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圭太はすぐに行動を起こし、列車で横浜に向かった。席は空いてなかったが横浜ならすぐだろう。
行く道すがら、動画の投稿者が言った聖華国際学園をネットで探す。ホームページがすぐに見つかった。正式には横浜聖華国際学園高等部。国際と名のつく通り、留学生なども積極的に受け入れる女子校らしい。煉瓦造りの校門が伝統を感じさせる。
——女子校か。ちょっと近寄り難いな。
圭太に少しだけ不安が過ぎるがこの際仕方ないと腹を括った。
横浜駅で降りて、場所がわからないのでタクシーをつかまえた。この学校は遠いかとスマホを見せて聞くと、車で30分ぐらいと運転手が言う。横浜と言っても、東京ディズニーワールドが千葉にあるように、聖華国際学園も横浜中心街からは結構離れたところにあるようだ。そこへ行ってくれと伝え、あとは運転手に任せることにした。
タクシーはしばらく走るとホームページで見たのと同じ荘厳な感じの煉瓦造りの正門前で降ろされた。
だが、賑やかな女子校をイメージしていた圭太は、正門前があまりにも人影がないことにいきなり肩透かしをくらった。
——確か今日は月曜日のはずだが。
そう思いながら正門前にしばらく立っていると、ようやく何人かの生徒が校舎から出てくるのが見える。よく見るとそのうちのひとりは背にはギターと思しきものを背負っているようだ。音楽をするものなら、少しは話しやすそうな気がして圭太の心が軽くなる。
「ごめん、ちょっと聞きたいんだけど」
圭太がギターを背にした女の子に向かって声をかけると、そのうち5人ほどのグループが足を止めた。だが、あからさまに不審者でも見るような目つきで少し後退りながら、
「なんですか」
と怯えたような声でギターの子が返事をした。圭太はできるだけ柔かな顔を必死で作りながら、
「人を探してるんだけど、この子、この学校の子じゃないかな」
とスマホを掲げてギターの子に1歩近づくと、スマホは覗き込むのだが圭太が前に出た分だけ後ろに下がった。周りの子からは「こんなとこでナンパ?」「先生呼んでくる?」などとヒソヒソ声が聞こえるのだ。圭太的には心外であるが、ここは大人の対応を心がけることにする。
「この子、音楽をやってそうだから、ギターを弾く君たちなら知らないかなあと思って」
そう言いながら、もう一度スマホを前に突き出すと、音楽という言葉につられたようにギターの子が少し前に出て、今度はちゃんとスマホの動画を覗き込んで、しばらく見ていた。
「ねえ、誰かこの子知ってる? うちの学校の子みたいだけど」
そう言って周りの子に声をかけると、一斉にスマホの前に集まってきて動画を見たが、だが誰も知らないと言う。
「歌もめっちゃ上手い子じゃん。誰、この子」
「あれ? 後ろでギター弾いてるのって、この人じゃん」
口々に感想は述べるが、女の子のことは誰も知らないのだ。
「でも、ギターかっこいいなあ。私もあんな風に弾きたい。それにしてもお兄さん、めっちゃギター上手くないですか? なんで?」
突然ギターの子が圭太に聞くので、
「まあ、一応プロなんで」
とだけ答えると、一気にやかましくなる。
「うっそー、プロだって!」
「なんのプロ?」
「それはギターのプロに決まってんじゃん。ねえ、そうでしょ?」
いったい誰と話せばいいのかわからないくらい賑やかになった。しかも最初足を止めたグループ以外の子も集まってきて収拾がつかなくなりそうだった。
「すみません、あなたどなた?」
そこへ突然圭太は後ろから声をかけられた。どうやら不審者情報として先生が呼ばれたらしい。来たのは年配の女性だった。
「あー、もしかして先生ですか?」
「ええ、そうです。あなたは?」
「この学校の生徒らしい子を探してます。この子なんですが……」
そう言って、例の動画を見せる。先生が動画を見ている最中、「先生、うちの生徒にいる?」「ねー、見たことないよね?」と口々に周りの生徒が先生に話しかけた。だが、その先生は生徒たちには何も答えずに、
「で、この子がいたら、あなたはどうするつもりです?」
と圭太に聞いた。いる、とか、いないも教えてくれない。
圭太は、免許証を取り出して先生に見せながら、自分がプロのギタリストであること、この女の子の音楽の素養に感銘を受け、もう一度ちゃんと話をしたいことを伝えた。
「ああ、そういうことですか。でも、残念ですがこの子は今日はいませんよ」
と初めて女の子のことに触れた。周りの生徒が「やっぱりうちの子?」などという中、
「あの、今日はいないとは……」
と圭太が聞くと、
「入学式は明日ですから、まだ登校は始まってませんよ」
と言いながら先生は笑っていた。生徒が少ないとは思っていたが、そう言われてまだ春休みだということに圭太はやっと気がついたのだった。
行く道すがら、動画の投稿者が言った聖華国際学園をネットで探す。ホームページがすぐに見つかった。正式には横浜聖華国際学園高等部。国際と名のつく通り、留学生なども積極的に受け入れる女子校らしい。煉瓦造りの校門が伝統を感じさせる。
——女子校か。ちょっと近寄り難いな。
圭太に少しだけ不安が過ぎるがこの際仕方ないと腹を括った。
横浜駅で降りて、場所がわからないのでタクシーをつかまえた。この学校は遠いかとスマホを見せて聞くと、車で30分ぐらいと運転手が言う。横浜と言っても、東京ディズニーワールドが千葉にあるように、聖華国際学園も横浜中心街からは結構離れたところにあるようだ。そこへ行ってくれと伝え、あとは運転手に任せることにした。
タクシーはしばらく走るとホームページで見たのと同じ荘厳な感じの煉瓦造りの正門前で降ろされた。
だが、賑やかな女子校をイメージしていた圭太は、正門前があまりにも人影がないことにいきなり肩透かしをくらった。
——確か今日は月曜日のはずだが。
そう思いながら正門前にしばらく立っていると、ようやく何人かの生徒が校舎から出てくるのが見える。よく見るとそのうちのひとりは背にはギターと思しきものを背負っているようだ。音楽をするものなら、少しは話しやすそうな気がして圭太の心が軽くなる。
「ごめん、ちょっと聞きたいんだけど」
圭太がギターを背にした女の子に向かって声をかけると、そのうち5人ほどのグループが足を止めた。だが、あからさまに不審者でも見るような目つきで少し後退りながら、
「なんですか」
と怯えたような声でギターの子が返事をした。圭太はできるだけ柔かな顔を必死で作りながら、
「人を探してるんだけど、この子、この学校の子じゃないかな」
とスマホを掲げてギターの子に1歩近づくと、スマホは覗き込むのだが圭太が前に出た分だけ後ろに下がった。周りの子からは「こんなとこでナンパ?」「先生呼んでくる?」などとヒソヒソ声が聞こえるのだ。圭太的には心外であるが、ここは大人の対応を心がけることにする。
「この子、音楽をやってそうだから、ギターを弾く君たちなら知らないかなあと思って」
そう言いながら、もう一度スマホを前に突き出すと、音楽という言葉につられたようにギターの子が少し前に出て、今度はちゃんとスマホの動画を覗き込んで、しばらく見ていた。
「ねえ、誰かこの子知ってる? うちの学校の子みたいだけど」
そう言って周りの子に声をかけると、一斉にスマホの前に集まってきて動画を見たが、だが誰も知らないと言う。
「歌もめっちゃ上手い子じゃん。誰、この子」
「あれ? 後ろでギター弾いてるのって、この人じゃん」
口々に感想は述べるが、女の子のことは誰も知らないのだ。
「でも、ギターかっこいいなあ。私もあんな風に弾きたい。それにしてもお兄さん、めっちゃギター上手くないですか? なんで?」
突然ギターの子が圭太に聞くので、
「まあ、一応プロなんで」
とだけ答えると、一気にやかましくなる。
「うっそー、プロだって!」
「なんのプロ?」
「それはギターのプロに決まってんじゃん。ねえ、そうでしょ?」
いったい誰と話せばいいのかわからないくらい賑やかになった。しかも最初足を止めたグループ以外の子も集まってきて収拾がつかなくなりそうだった。
「すみません、あなたどなた?」
そこへ突然圭太は後ろから声をかけられた。どうやら不審者情報として先生が呼ばれたらしい。来たのは年配の女性だった。
「あー、もしかして先生ですか?」
「ええ、そうです。あなたは?」
「この学校の生徒らしい子を探してます。この子なんですが……」
そう言って、例の動画を見せる。先生が動画を見ている最中、「先生、うちの生徒にいる?」「ねー、見たことないよね?」と口々に周りの生徒が先生に話しかけた。だが、その先生は生徒たちには何も答えずに、
「で、この子がいたら、あなたはどうするつもりです?」
と圭太に聞いた。いる、とか、いないも教えてくれない。
圭太は、免許証を取り出して先生に見せながら、自分がプロのギタリストであること、この女の子の音楽の素養に感銘を受け、もう一度ちゃんと話をしたいことを伝えた。
「ああ、そういうことですか。でも、残念ですがこの子は今日はいませんよ」
と初めて女の子のことに触れた。周りの生徒が「やっぱりうちの子?」などという中、
「あの、今日はいないとは……」
と圭太が聞くと、
「入学式は明日ですから、まだ登校は始まってませんよ」
と言いながら先生は笑っていた。生徒が少ないとは思っていたが、そう言われてまだ春休みだということに圭太はやっと気がついたのだった。
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