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その後の話
3 海辺の宿② ※微
しおりを挟む* ロイク視点
まさかと思ったがジョゼがお風呂に誘ってくれた。
新婚旅行の初日で海が初めてだと言うジョゼが、なにを見ても瞳をキラキラさせてとても可愛い。
これからも彼女が初めて挑戦することを間近で支えながら一緒に気持ちを分かち合える。
なんて幸せだろう。
今日は足の裏が焼けそうなほど熱い砂浜に耐えた甲斐があった。
結婚して初めての夜で、ジョゼが怖がったり嫌がったりしないところまで進めるつもりでいたが、幸先がいい。
少し期待してしまう。
「ロイクさん」
たくさんの花びらが浮かんだ風呂に肩まで浸かったジョゼが俺をじっと見る。
まるで生まれたての妖精みたいだ。
「きれいだな」
「そうなんです! 花びらがいっぱいでぼくが独り占めするのって、もったいないって思ったん、です……」
誘っておきながら照れる様子がとても可愛くて愛しい。
下半身に熱が集まりそうで困る。
しかしまだ怖がらせたくない。
「……そうか、ならば急いで体を洗うから待っていてくれ」
「はい」
そう言ったものの、どうにもこうにも振り返れば愛しいジョゼがいるわけで、下半身が落ち着かない。
しばらく冷たい水を浴びてしのごう。
「ロイクさん……それ、寒くないんですか? 冷たくないですか?」
ちらりと振り返ると、目をぱちぱちさせるジョゼが見えた。
どうやら水が飛んでしまったらしい。
頬を赤らめて可愛かった……が、今直視するのはよろしくないのでちょろちょろと頭からかぶる。
「すまない。外は暑かったし、もともとシロクマ獣人は北の氷に閉ざされた国が出身なんだ。冷たいくらいがちょうどいい」
「そうなんですね。じゃあ、ぼくくっつきすぎないようにしなきゃですね……くっつくの好きだけど、ロイクさん熱いの我慢してくれてたんですね……ぼくも、がまん……」
ふにゃっとした声が甘えているみたいで可愛い。
「いや、ジョゼとはずっとくっついていたいから、我慢なんて……」
どんな顔をしているのかと、後ろを向くとちょうどジョゼが湯船に沈みそうになっていた!
「ジョゼ! どうした!」
駆け寄って湯船から抱え上げる。
真っ赤な顔したジョゼが重そうにまぶたを持ち上げた。
「のぼせちゃったみたいです……ロイクさん冷たくて気持ちいい……」
花びらをまとっただけのジョゼのしなやかな体を意識しないようにして、そのまま浴室を出た。
しかし……火照ったジョゼが冷たくなった俺の体にもたれかかってくるから、お互いの体温を交換するように抱きしめ直す。
それからタオルを掴み、ジョゼにふわっとかけて大股で室内を横切った。
テーブルの水差しをつかみ、冷たい場所を求めてすり寄る妻を抱えたままベッド座る。
俺の左腕が冷たいらしい。
コップを取りに行く時間も惜しくて水差しに口をつけぬように傾けてあおり、そのままジョゼに与えた。
「ん……っ⁉︎」
驚いてジョゼの口から半分くらいあふれてしまったが、急いでまた水を含みジョゼに飲ませる。
今度はこくりと喉が動いて、もう何度か同じことをくり返した。
「もっと飲むか? 体調はどうだ?」
「……はい、大丈夫、です……」
顔は真っ赤だし、目は潤んでいて口もわずかに開いている。
くたっと体から力が抜けているし、初日から失敗してしまった。
「のぼせるまで気づかなくて悪かった。もう少し飲んだほうがいい」
「あの、ぼく……んっ」
何度か同じように水を飲ませると、俺の肩に頭を乗せて抱きついてくる。
「もう大丈夫です……」
「そうか、よかった……」
なめらかな背中を撫でながら、ほっとした。
それから、お互い何も身につけていないことをあらためて意識して体がこわばる。
耐えろ、俺。
「ジョゼ、俺も……花びらの風呂に浸かってこようかな」
このままでは俺の忍耐力が途切れそうだ。
顔を上げた愛らしいジョゼが首をかしげる。まだ少し頬が赤い。
「ロイクさん、あとじゃだめですか? こうしていると気持ちよくて……」
「ジョゼ……」
まいった。
無邪気に笑うジョゼをこのまま求めてしまいそうで、何度も深呼吸する。
「あの! 夕食っていつですか?」
「ああ、腹が減ったならすぐに持ってきてもらうが、日づけが変わる前までならいつでもベルを鳴らせば持ってきてくれるそうだ」
「……じゃあ、時間はたっぷりありますね」
そう言って俺を見てにこっと笑い、そっと口づけてきた。
可愛い……!
しかしこの状況でそれは俺の忍耐力が……!
「今夜はぼくがんばります! ずっとロイクさんにお礼がしたかったんです」
今なんて言った? 何があった?
いったい何をがんばるというんだ?
俺の愛しい妻が、いきなり積極的に⁉︎
驚きすぎて、ジョゼに肩を押されるまま仰向けに倒れた。
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