お嫁さんを探しに来たぼくは、シロクマ獣人の隊長さんと暮らすことになりました!

能登原あめ

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その後の話

2 海辺の宿①

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 砂浜沿いに歩いた先に、大きくて白くて立派な建物があった。

「今夜からこの宿に泊まる」
「すごい! ロイクさん、もしかしてここって部屋からも海が見えそうですね」
「そうだ。結婚して初めての宿だからな。……のんびり過ごせるほうがいいだろう」

 中に入ったらとても天井が高くてなぜかたくさんの大きな木が並んであって、花も咲いているから驚いた。
 それに窓からキラキラした光が差し込んで現実じゃないみたい。

「うわぁ……」
「ジョゼ、気に入ったか?」
「はいっ! 天国みたいです」

 宿屋の従業員さんがにこにこしていて、ここに悪い人なんていそうもない。

「ようこそお越しくださいました。それではこちらへどうぞ」

 案内された部屋は建物の一番上の階で、部屋も広いし窓からの景色も全面海が見えて贅沢な造り。
 朝日も夕日も見えるんだって!
 従業員さんがロイクさんに夕食や朝食の説明をしていたけど、ぼくは窓からの景色に釘付けだった。

「それでは、ごゆっくりどうぞ」

 二人きりになって、ぼくはロイクさんに抱きついた。

「天国に連れて来てくれてありがとうございます!」
「……天国にはこれから連れて行きたいんだが……」

 ロイクさんがモゴモゴつぶやく。
 たまにものすごく歯切れが悪い時があるんだけど、聞き返しても気にするなって言う。

 そのままぼくの髪を撫でたり顔中にキスしたりしてくるからくすぐったいし、ぼくもロイクさんに同じようにやり返すとぎゅうって抱きしめられる。
 その時のロイクさんの胸の音はとても早い。

 ロイクさんって顔は赤くならないけど、耳が赤くなるからモミモミすると同じようにぼくの耳をモミモミするからくすぐったい。
 いつの間にかくすぐりっこみたいになって笑い合って二人でベッドに倒れ込む。

 時々、ロイクさんがうつ伏せになってしばらく動けなくなっちゃうんだけど……。
 ぼくはロイクさんの背中に寝転がって、あったかい体温を感じるのが好き。

 今日は新婚旅行だからそんなことにはならないかな。
 でも何日も泊まるからくすぐりっこする時間もあるかもしれない!
 
「ジョゼ、先に風呂に入ったらどうだ? 俺は一度夕食を頼んでくるから」
「あ、はい! じゃあ急いで入ります」
「……いや。ゆっくり疲れをとっておいで」

 浴室の方へ背中を押されてぼくはうなずいた。

「うわぁ~‼︎」

 湯船にたくさんの花びらが浮かんでいて、いい匂いがする。
 すごい!
 ロイクさんが部屋を出ちゃった後だからこの感動を今すぐ伝えられなくて残念。

 体を洗ってゆったり湯船に浸かりながら外の景色を見た。
 ロイクさんが二回別の宿屋に連れて行ってくれたけど、今までで一番高級そう。

 ぼく、ロイクさんに何もかも面倒をみてもらっているから、今夜はお返しするんだ。
 ジャクリーンさんとルイーズさんが結婚のお祝いのプレゼントと特別な話を聞かせてくれたから、試すのがちょっと楽しみ。

 そんなことを考えていると、遠くで扉が開く音がした。
 ロイクさんが部屋に戻ってきたみたい。
 花びらがいっぱいだからぼくの体は見えない。
 よし。

「ロイクさーん! ロイクさーん! ちょっと来てくださいっ!」

 ぼくが何度か大声で呼びかけると、浴室の前までやって来たロイクに声をかけられた。

「ジョゼ? どうした? 何か困っているのか?」
「ロイクさん、こっちへどうぞ!」
「……入っていいのか?」
「はい! ぜひ一緒に」

 見てほしい。このいっぱい浮かんだ花びらを!
 ぼく一人じゃもったいないからね。
 ロイクさんが入る頃には花びらがしわしわになりそうだし、早いほうがいい。

「……本当にいいんだな?」
「はい! 大丈夫ですから早く来てください」
「……わかった」

 唸るような声が聞こえた後、ばーんと扉が開いて腰にタオルをまいただけのロイクさんが現れた!

「…………」

 あれ? 
 ぼく一緒に入ろうって誘うようなこと言ったかな?
 今さら、恥ずかしいから出てってなんて言えない!
 どうしよう!
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