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2 街は刺激がいっぱい
しおりを挟む信じられない。
女の子って、とても良い匂いがして豊かな胸が見えそうな衣服を身につけている。
街の流行りは下着みたいな格好なのかな。
「お兄さん、寄っていかない? 可愛いからサービスしちゃう」
山を下りた後、人通りの多い大きな通りにびっくりして、小道に入った。
人気がなくてほっとしたけど、すぐに肉屋のヤンさん夫妻の居場所を聞く相手もいないことに気づく。
そしたら、話しかけてきたのが目の前の立つ小柄な女の子。
手をとられて、ぐいぐい引っ張られた。
「え? ちょっと、あの! ぼく、肉屋のヤンさんのところへ行きたいんだけど、知ってる?」
女の子が振り向いて笑う。
「もちろん、知っているわ。うちと遊んでくれたら案内してあげる!」
「知っているの? できれば早く顔を出したいんだ。このままだと暗くなってしまうから、遊ぶのは今度でもいい?」
山から下りるのに思ったよりも時間がかかってしまって、あと一刻もしたら日が落ちてしまいそう。
「そんなこと言わないで! こうやって出会えたのは運命だと思うの。うちの名前はルイーズ。あなたは?」
「ぼくはジョゼフ」
「……ジョゼフは成人しているのよね?」
「ああ! 今日十八歳になったばかりなんだ」
「おめでとう~。一緒にお祝いしよう!」
もしかしてもう運命の女の子に出会えたのかも⁇
そんなことを考えていたら、入り口にたくさんの女の子が立つお店の前に着いた。
なんだろう? なんだかとっても派手な造り。
「いらっしゃいませ」
「こんばんは~」
「あら、可愛い坊やね。ルイーズなんてやめて私にしなさいよ」
「ジャクリーン姐さんやめて!」
綺麗でいい匂いのする女の子達に囲まれて戸惑う。
ルイーズがぼくの左腕にわざと胸を押しつけてきた。
「ジョゼフの相手はうち! ね? ジョゼフ、うちが見つけたんだし、楽しい時間を過ごせるから」
「あの……えっと、胸が当たって……」
小声で注意したら、周りにも聞こえていたらしくどっと笑いが起こる。
「ちょっと、あなた。初めてなの? それなら、私が優しく手ほどきしてあげるわ」
今度はぼくの右腕に波打つ髪の色っぽいお姉さんが大きな胸を押しつけてきた。
「ジャクリーン姐さん、だめよ! ジョゼフは今夜うちとずーっと一緒よね?」
「あら、あなた……」
ルイーズの言葉を無視してぼくの顔をまじまじと見る。
「成人しているの?」
「はい、今日十八歳になりました! それで、先に肉屋のヤンさんのところに行きたいんです」
ジャクリーンさんの方が話が通じるかもしれない。
そう思ったのに、にっこり笑顔を浮かべる。
「私と過ごしたら、あとで送っていってあげるわ」
「え、と……その……」
今すぐ向かいたいのに、どうして二人とも後でと言うんだろう。
「ずるいっ、うちがジョゼフと先に約束したのよ!」
アンばあちゃんから、こういう時はどうしたらいいか教えてもらえばよかった。
いや、行商人のじいちゃんのほうが男だから詳しいのかな。
じいちゃんはぼくを心配して、案内すると言ってくれていたのかも……。
街ってすごい。
女の子って積極的なんだ。
「ジョゼフは、うちと過ごすのよね!」
「私のほうがとーってもいい夢を見せてあげるけど?」
お嫁さん候補ではあるけど、まずはヤンさんのところへ行かなくちゃ。
ぼくが断ろうと思って、口を開いた時。
「こいつは俺が引き取る」
襟首を掴まれて、見知らぬ男にいきなり連れ出された。
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