裏切った勇者を捨てて細マッチョの魔王と古式ゆかしいやり方で婚礼の儀式に臨みます!

能登原あめ

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4 降臨 ※微

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「いやーー!」

 あ、サイラスがシュンとして、元の姿に戻った。

「ダンジョン内は今後あの姿にしようと思っていたのだが……」
「それはいいと思います! でも、一緒の時は今のこの姿が好きです。最高にカッコいいです! ものすごく好みです!」
「そうか」

 私の言葉にものすごくニコニコして、威厳ないけど。
 魔王様、ちょっとチョロくない?

「やはり、妻には好かれたいのだ」

 なんか、可愛いかも。
 最強の魔王様が私には甘い旦那様ってすごくない?

「私、サイラスのこと、好きです!」
「レーナ、愛している」

 ちょっと重いけど、愛されてこんなに大事にされるって幸せじゃない?
 最高なんだけどぉーー!

「未来永劫、大事にする」

 未来永劫? 
 さすが、言葉の選択が違うなぁ。
 ずっととか一生とかね?
 悪いことの後にはイイことがあるって本当なんだぁ。

「レーナ、ふやける前に出よう」

 そう言って太ももまで手を滑らせ、お尻と脚の間を私の顔を見つめながら洗われるのは、ものすごく恥ずかしかった!
 だって、変な気持ちになっちゃうんだもん!

「……サイラスは?」
「我か? 今回は先に儀式を進めたいからこれで」

 パチっと指を鳴らし、洗浄魔法をかけたようだ。
 えー?
 私だけ、恥ずかしい思いしたよ?

「じゃあ、出よう」

 次の瞬間には、私達は乾いた体で大きな寝台の上にいた。

「サイラス?」

 魔王様の家族って想像つかないけど、次は披露宴じゃないの?
 
「ドレスは……?」
「それはいいな」

 またしても一瞬でドレスに包まれる。
 でも何だかびっくりするぐらい透けているけど……魔族仕様?

「美しい、我の花嫁」

 両手を取られ、手の甲に口づけが落とされた。

「アリガトウ、ゴサイマス……?」
「脱がすのも愉しみだ」
「あの……この後、披露宴では?」

 この姿で人前に出るとかきっついんだけど。
 サイラスなんて腰に何か巻いているだけみたいに見えるけど……これが魔王様流?

「ふむ。まずはお互いの絆を深め、真の夫婦となることだ」
「なるほど……」

 つまり初夜が先?
 考えたら、ボンっと顔が熱くなった。
 そういう地域もあるって聞いたことがあるような、ないような。

「あの、ちょっと気になることがあるんですが……」
「なんだ?」
「サイラスのお見合い相手がこれからくることは」
「ないだろうな。もう、レーナがいる。……万一現れてもスライムが丁重に対応するだろう。それにだいたい百年前の話だから相手も忘れているかもしれない。我もしばらく留守にしていたからな」
 
 そっか。百年前か! 
 まるで二ヶ月前くらいの感覚で話しているけど、余程じゃない限り来ないんじゃないかな。
 こんなところに本物の見合い相手が現れたらどうしようって思ったけど修羅場にはならないってことね。よかった。
 でも、もう一つ謎が。

「あの、私がスライムの討伐にやってきたって知っていたなら、なぜ最初に見合いの相手かどうか訊いたんですか?」
「そうだったらいいと思ったのだ。すべてが我の好みであったから」

 きゅん。
 もう、細かいことなんてどうでもいい!

「もういいか? そろそろレーナを本物の妻にしたい」
「はい」

 とうとう、ヤるんですね。
 知識だけはあるけど、経験はゼロ。
 
「レーナはすべて初めてと言ったな。ゆっくり進めるから、安心して身を任せるが良い」
「はい、サイラス……痛くしないで下さいね」
「ぐはっ……」

 え? 何、今の?

「では、予定より時間をかけるとしよう。我も愉しみが延びて良い」

 んん?
 そういうもの?
 でも、蕩けるような笑顔を浮かべているからいいのかな!
 勇者みたいな乱暴なのは嫌だし。
 なぜかお尻叩いていたし。

 うん、やっぱりサイラスがイイ!
 お風呂でも、彼に触れられるのは嫌じゃなかったから。

「レーナ、大事にする」

 柔らかく唇を啄まれて、にゅるりと舌が歯列をなぞる。
 そのまま無遠慮に上顎を舐め回されて、お腹の中がキュンとして、体から力が抜けていった。

「ん、はぁ……♡サイ、ラス……っ♡」

 私の体が寝台に沈み、彼が覆い被さる。
 奥深くまで口内を探られて、体が震えそうになるのを、サイラスの背中にぎゅっと腕を巻きつけて耐えた。

「レーナ、鼻で呼吸だ」

 真っ赤な顔をして慣れない私に、優しく告げる。
 人生二度目の深いキス、そう簡単に慣れない。

「んっ……うまく、でき、なくてっ……」

 そう訴えれば、唇を啄んでみたり、からかうように舌を絡めてきたり、ペースを落としてくれた。

「愛い愛い。ほら、おしゃべりだってできるぞ」
「んうぅ、むりぃ……」
「ならば、ほら、練習だ」

 鼻息がかかるんじゃないかとか、そんなことはすぐに頭の中から消えた。
 唇を合わせるのも、舌を絡めるのも、口内を舐め合うのも、気持ちいい。

「サイ、ラスっ……熱い……♡」

 触れてもいないのに、胸の蕾が硬くなる。
 お風呂の時とは違って、サイラスの表情も、気配も、存在もすべてエロい‼︎

 初めてなのに、煮るなり焼くなり好きにして♡って思っちゃうんだからとんでもない。
 本当に好きにされちゃうんだろうけど。

「レーナ、やっぱり相性がいいな。魔力酔いもしないで、そんなに蕩けて……この出逢いは運命だな」
「そう、かもしれません……♡」

 サイラスの強い魔力に当てられないんだもんね。
 むしろ、心地よくて困っている。

「愛しいレーナ、我にすべてを捧げよ」
 
 夜の魔王様が降臨した!
 
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