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10 橋渡し
しおりを挟む「あの……」
「……」
ちらりと見ると、アーサー様の顔が真っ赤で私の顔も多分真っ赤。
熱くて、熱が出そう。
「エヴァはアーサーが好きで、わたくしもアーサーが好き。一緒ね。これから、ずーっと、仲良くしてね!」
キラキラした瞳で無邪気にそう言われて、私はもちろんです、と応えた。
「アーサーもわたくしが好きで、エヴァのことが好きなのでしょう? わたくしたち、みんな仲良くなれるわ。そうでしょう、アーサー?」
アーサー様の方を向くことができない。
なんて答えるかどきどきしてる。
「はい、そうですね」
アーサー様!
優しい!
やっぱり大好き!
胸がぎゅっとしめつけられる。
顔がみたいのに、恥ずかしくて向けない。
「エヴァ、またこうしてお茶会に参加してくれるかい?」
殿下は楽しそうに笑う。
これがきっと普段の姿なんだろうな。
「ぜひそうしたいのですが、明後日には領地へ戻ることになっています。次はきっと来シーズンになるかもしれません……」
そういうと、みるみる姫様が悲しそうな顔になる。
「せっかくお友達になれたのに……みんな、お兄様と仲良くするために、わたくしに近づいてくるから楽しくなかったの。……でもエヴァは……アーサーが好きだから……」
きゃー! 姫様何度も言わないで!
本当のことだけど‼︎
「あ、あの、お手紙のやりとりをしませんか? 絵でも、押し花でもいいので、よければわたくしと……」
殿下が頷いて口を開いた。
「それはいいね。じゃあ、アーサー、手紙を届ける役目を君にお願いするよ。ちょうどいいだろう?」
何がちょうどいいのかわからないけど、王都から領地まではそれほど遠くない。
長居しなければ日帰りできる距離だと思う。
つまり、これからたびたびアーサー様と会うことができるってこと⁉︎
「わたくし、毎日お手紙書きますわ!」
殿下がそれはちょっとってつぶやいたけど、ちらりと見たアーサー様の口角は上がってる!
すてき。
冗談だと思ったのかな!
本気だけど、アーサー様の体を考えたら……やっぱりダメだよね……。
「月に一度程度なら。学校もありますので」
「アーサー様は学校に通っているのですね!」
「彼は王都にある寄宿学校の上級クラスにいて、十八歳で卒業する予定だよ。私も一時期顔を出していたから仲良くなったのだけどね。それで、長期休みにこうして私につき合ってくれるんだ」
「では、手紙……大変じゃないですか?」
「大丈夫だよ。休みの日は鍛錬しかしているのをみたことがない。息抜きにいいだろう」
さっきから、全て殿下が答える。
アーサー様の声も聞きたいのに!
私の心の声が聞こえたのか、アーサー様が私の顔をのぞきこむ。
「たいした手間ではないので」
格好いい……。
ついつい見つめ合ってお互い赤くなって目を逸らした。
「……よし、決まり。ルーナの手紙が用意できたらアーサーを呼ぶから、休みの日に届けてくれ。エヴァはその場で返事を用意してくれるかい? そうすれば手間も少ないだろうから」
「はい、わかりました。……アーサー様、よろしくお願いします」
私の言葉にほんの少し微笑んでくれたから、勇気を出す。
「ところで、アーサー様っておいくつですか?」
「私と同い年の十三歳だ。エヴァは十二歳だよね?」
やっぱり殿下が答える。
思わず眉をひそめそうになる。
いけない、いけない。
アーサー様のことを教えてくださっているんだもの。
「……はい」
「それで、エヴァはまだ婚約してないよね? 侯爵から好きな相手を選んでいいと言われているんだよね?」
どうしてそんなことを訊くのだろう?
戸惑いながら、はいと頷く。
「そう、よかったね。アーサーも同じ。婚約してないよ」
にっこり笑って私とアーサー様を交互に見る。
えっと、殿下⁉︎
嬉しい情報だけど、私はどんな顔をしたらいいの⁇
「アーサー、顔、どうにかしろよ……エヴァもか」
ものすごく見たいのにアーサー様の顔が見れない‼︎
どんな顔してるの?
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