ヤンデレ勇者と二度目の召喚

能登原あめ

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「ジュード……?」

 私を抱きしめて首元に顔を埋める。

「この一年、本当に辛かった……あのまま残ってもらえるよう説得するつもりだったから……あの後、聖剣を片手に暴れまわって片っ端から……ふふっ、勇者じゃなくて魔王だなんて言われてさ……ははっ……」

 怖。
 ジュードってこんな感じだった?
 
「からだ、大丈夫、だったの?」
「優しいな……あの頃のことはあまり覚えていないんだ」

 何をしたかなんて知りたくないけど、神官長の態度からほんの少し想像、できなくもない。

「ラヴィのいない世界なんて意味がない」

 あれ?
 これってなんて言うんだっけ……。
 メンがヘラってるやつかな?
 いや、違うか。
 えーと、なんて言うんだっけ。

「……おれが全部教えたかったのに」

 うわー。
 やっちゃった!
 ヤっちゃったよ!!

「ラヴィ……俺のキス、覚えてる?」
「…………うん」

 多分。
 覚えてるって言うのが正解?

「俺はラヴィのこと、全部覚えているよ。……初めてキスした時に潤んだ瞳で見上げられたこと、とか。息止めてたこととか、手をどうしたらいいか分からなくて上げたり下げたり何度もしてたとか、初めて舌を絡めた時にビクって震えたこととか、気持ち良くなっちゃって背中に回した腕に締めつけられたのとか」

 いや――っ!!
 やめて!
 恥ずかしぬ!

「本当、かわいくて、食べちゃいたかったけど。……聖女だから我慢していたのに」

 後半のトーンが恐ろしく低い。

「でも、もういいよね? 愛してるよ、ラヴィ」
 
 つまり‼︎
 つまり私は魔王ジュードを大人しくさせるために呼び出されたんだね?
 神官長、先に言ってよぉ!

 もうちょっと年上らしく対応したよ、色々と煽りになっちゃったじゃない!

「ジュード……私も……」

 好き。
 それくらいなら言える。
 実際、五年前は大好きだった人だから。

「愛してる? 嬉しいな。……もっともっと愛してもらえるよう、励むから。ね……俺の初めてをあげる。いっぱいして俺を男にして」

 はい?

「驚いてるね……研究だけはたくさんしたから、慣れてない分は回数でカバーさせて?……他の男なんて思い出せなくなるまでこの部屋に篭ろう……ふふっ……二人の証がほしいな」
「明石……?」
「うん、そう……ふふっ……」

 わかってる! 証ね、証。
 こっわー!
 やっべ。
 でも戻れないんだった‼︎
 そんでもって回数でカバーって何事⁉︎

「ジュードは……私達の赤ちゃんが欲しいの?」
「もちろん」

 即答かよ。

「……ジュードに似た子ならいいな」

 それは本音で。
 どうせなら、彼に似た方がかわいいはず。
 ジュードに似た蒼い目の赤ちゃん……可愛くないわけがない!

 まぁ……ちょっと現実逃避したわけだけど。
 その言葉を聞いたジュードの表情が柔らかくなる。

「そう? 俺はラヴィに似た子がいいけどね」
「……あの。……私の立場って、どういう扱いになるの?……神殿ここで、子供を産んで育てるの?」

 本当に純粋な疑問で。
 専属の聖女だったから、今回も専属の子供産む人、みたいな?

「…………俺が」

 抑揚のない、低い声に私はミスを悟った。

「愛しいラヴィを中途半端な立場に置くとでも?」
「あのねっ……、そういうつもりじゃなくてっ……」

 じゃあ、どういうつもりだって話だけど、言葉が出てこない。
 世界が違うと常識が違うからね。

「あの……」
「さっき、本当は結婚式を先にする予定だったんだ。でも」

 本人の意思確認なく、ケッコンシキか。
 それってどうなの?

 私をきつく抱きしめて首に噛みついた。

「……っ!」
「我慢できなくて。……早くラヴィを手に入れたかった」
「……ジュード……」

 いきなりかわいらしく独占欲をみせられると、困る。
 これをかわいいと思う自分もどうかと思うけど。
 私のほうが、年上だし。
 だからと言ってまったく余裕はない。

「あのね……、実は、その……経験したのは一度だけで……だからね、初めてはあげられなかったけど、ほとんど初めてとかわらないと言うか……」
「…………」

 長考。

「…………」

 これ、言わないほうがいいやつだった?
 わっかんねーー‼︎
 空気読む力もっと磨いとけばよかったわ……。

「ラヴィ、愛してます」

 真剣な顔で見つめられて、そっと口づけられる。
 あ、うん。OK。

「私も……好き。ジュード……」

 私からしたら五年ぶりに会ったわけだけど、あの当時好きだった相手だし、やっぱり綺麗な顔だし、こうして抱きしめられて愛してます、なんて言われたらきゅん、ってする。

 もう、日本に帰れないんだったら。
 これだけ好かれてるんだし、いいんじゃね?
 腹をくくるしかない。

「こんな私でよかったら、ジュードの花嫁にして」
「もちろんだ、ラヴィ……もう二度と離さないから」
「うん。ずっとジュードのそばにいる」

 ここしか居場所ないし。
 
「俺の、全部あげる」

 女子か。乙女か。
 キラキラした目で見つめられて私は立場が逆転してると思わなくもない。
 私ががんばってリードしたほうがいいのかな?
 うーん……できる気がしない。

「ラヴィのここに、もう入らないってくらいいっぱい子種を植えつけてあげる」

 私のお腹に手を当てて言う。
 そっちを全部か――い‼︎
 全然乙女じゃなかったよ!
 やっばい。
 無理無理‼︎

「ジュード……優しく、して?」
「うん、もしかしたら痛いかもしれないしね?」

 それはなんかのフラグじゃないよね?
 
「ジュード……」

 ぎゅうっと抱きついて耳元でささやいた。

「……優しい、ジュードが好き……」

 これでどうだっ‼︎
 お願い、お願い、改心して。
 
 
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