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8 その後③ ※

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 林の部屋は本当に料理が好きなんだってわかるくらい調理道具が充実していた。
 冷蔵庫も家族サイズ。
 生活感のないシンプルな部屋かと思っていたから意外。

 入った時はそわそわして落ち着かなかったのに、スパイスのきいたカレーを食べた後、林が淹れてくれたチャイを飲みながらまったりしてしまった。
 なんだか落ち着く。
 料理が趣味って知ったら、さらに好きになる子増えそう。

「ご馳走様でした。美味しかった」
「また食べに来て。作るのは好きだけど食べるのが追いつかない」
「だから冷蔵庫があんなに大きいんだ」

 可愛いクッションは女の子からのプレゼントかな。元カノのものをとっておくタイプには見えないけど、わからない。
 林のことほとんど知らなかったんだって思う。

 胸の前でぎゅっとクッションを抱えた。
 今だって朝食用に卵と牛乳を出して何か準備している。
 エプロンつけて料理する姿もさまになってるのはさすが林。
 じっと見つめていたのに気づいたのか、林が口を開いた。
 
「それ、触り心地が気に入って、どんどん増えた」
「このクッション、林が買ったの?」
「そう、3つある。よく眠れるから」

 確かに抱えていると眠くなる。
 引っ越しで疲れたし、お腹いっぱい。
 チャイを飲んだら早く帰らなきゃ。
 だけど冷めにくいカップだからいつまで経っても熱い。

「ここに来たことがある女の子はなみちゃんだけだよ」
「女の子は、部屋に呼ばない主義、なんだね」

 すごく林らしいと思った。
 話しながら眠くて呂律が回っていない気がするし、頭も回らない。

 なみちゃんは特別なんだ、って林がつぶやいた気がしたけど、どうやら気絶するように眠ってしまったらしい。








 見覚えのない天井にドキッとした。
 それからすぐ引っ越ししたのを思い出してホッとしたのだけど――。

「……林だ」

 なんで目の前に眠っている林の顔があるんだろう?
 ぐるりと見渡して自分の部屋じゃないことに気づいた。

 あの後寝ちゃったらしい。
 ハッとして自分の体を見下ろすと、林の腕がなみの腰の辺りに乗せられているものの、ちゃんと服を着ていた。
 抱き枕代わりにされたのかな。
 
「林が勃つわけないか。スッピンだし、この間はひさしぶりだったみたいだし」

 そうつぶやいたところで、寝ていたはずの林に抱き寄せられて胸の中にすっぽり収まってしまった。

「おはよう、なみちゃん。元気そうでよかった」

 身体にブツが押しつけられているのは、独り言が全部聞こえていたとか?
 気まずい。

「林のソレは朝勃ちだね」
「違うって。まだ朝じゃない」
「薄明るく見えるけど」

「まだ夜と朝の間だから朝勃ちじゃない。隣になみちゃんが寝ているんだから勃たないわけがないよ」

 そもそもなんでこうなっているんだっけ?
 順番に思い出す。

「えーと、カレーご馳走様でした。寝ちゃってごめんなさい。お邪魔しました。部屋に戻ります」

「全然邪魔じゃなかった。なみちゃんが俺のベッドにいて幸せだった」

 セミダブルだから少しゆとりはあるし、林は一人寝がさみしいタイプなのかも。

「せっかくだから朝一緒にフレンチトースト食べよう。でもその前にご褒美がほしい」

 フレンチトーストは美味しそうだけど、ご褒美ってつまり。
 
「林、また今度ね!」

 逃げようとして体を起こそうとしたものの、さらに抱き込まれる。
 まずい。

「なみちゃん、可愛い。昨日から食べたくてたまらなかった」
「林っ、んむぅ……ッ」

 いきなり深いキスで本当に食べられるみたい。

「もしかしてっ、からほかの女の子としてない……?」
「してない。この先は君だけだって言ったよ? なみちゃんにしか勃たない」

「嘘でしょ」
「嘘じゃない。あんなに言ったのに伝わらなかった?」

 でもあれって、行為を盛り上げるための……。

「あっ、待って、んッ」
「待たない、なみちゃんの身体にも思い出してもらわないと」

 そう言いながらなみの身体に手を這わせる。触れながら器用に脱がせていくのだからさすがとしか言えない。

「なみちゃんの身体も素直で大好き。俺はあの夜を何一つ忘れていないから安心して」

 林の指も唇も、しっかり考えたいのに何も浮かばなくなる。
 相変わらず身体は勝手に濡れるし、林の指が水たまりでも作るつもりなんじゃないかってくらい甘い刺激を呼び起こす。

 でもこの間と違ってなみがイきそうになるとやめてしまう。
 何度も寸止めさせられて、身体だけが熱くなって、泣きたくなった。

「はやし……っ」

 流されて、受け入れることに戸惑わないわけじゃない。林は結婚相手から一番遠い相手なのに。
 甘い快楽に理性が押し流されていく。

「可愛いなぁ。もうイきたい? 俺も我慢できない」

 林はキスしながらゴムをつけた。
 脚の間に押し当てられたペニスがためらいなく入ってくる。

「……あ!」

 何度も寸止めされていたから、すべてが生々しく伝わってきて、目の前が白くスパークした。

「……ッ、やば……」

 内壁が収縮しているのに、林がなみの腰を押さえて突き進もうとするから、衝撃に身体が弓なりに反る。
 
「はぁ……なみちゃんにまた早漏認定されたくないから我慢できた」

 奥まで収めてにっこり笑顔で言うけど、すでにこっちは脚の力が抜けて震えている。
 前回の記憶がよみ返った。 
 
「早漏だなんて思ってないよ。むしろ林が元気すぎて私がつき合いきれないと思う」
「そう? すぐに復活するのも、色々してあげたくなるのも全部なみちゃん限定なんだけどな」

「そんなことってある?」
「あるよ。そろそろ俺に溺れてくれない?」

 身体を倒して誘うように柔らかくキスするのは反則な気がする。しかも顔面偏差値が高いから、そんな言葉にもドキッとしてしまった。

「なみちゃんがいたらよそ見なんてしないよ」

 身体も反応してしまったようで、内壁が動いてペニスをきゅっとつかんだ。それが嬉しいのか、林が笑顔でこっちを見てくる。
 
「なみちゃん、可愛い。考える時間あっただろ? そろそろ俺だけのものになって」

 ゆったりとしたリズムで揺さぶったかと思うと時々キスしたり胸に触れたり、ずいぶん余裕がある。

「はやし……っ、外、明るい、あッ」

 もう完全な朝なのに、終わる気配がない。お互いが良く見えるようになると恥ずかしさが増した。

「なみちゃん、赤くなって可愛い。ほら、名前呼ばないと終わらないよ?」

 ずんと強く打ちつけてくるから、口を開いても言葉はただの嬌声になる。

「可愛いなぁ、なみちゃん、俺にしよ。もう決めちゃいなよ」

 なみが名前を呼ぼうとするたびに緩急をつけて揺さぶり続ける。

「あっ、さッ、あぁっ、さ、とる……っ」
「なに? 聞こえない」

 にらんでも嬉しそうに笑うだけ。

「なみちゃん、そうしてずっと俺を見ていて。この先は君だけだ、ほかには誰もいらない。……ほら、ちゃんと、名前呼ばないと終わらないよ」
「さと……んんっ!」

 このタイミングで深いキスとか。
 何も考えられなくなってしまった。

「すんごい気持ちいい……イったら死にそう。なみちゃん、最高にいい」

 林が本当に気持ちよさそうに、色っぽい表情を浮かべてる。
 もしかして林がうまいだけじゃなくて、身体の相性がものすごくいいのかもしれない。

「さとる?」
「なみちゃん、ずっとそばにいて、ずっと俺の名前呼んでよ」

 強く大きく揺さぶられて再びなみが果てた後、追いかけるように林が射精した。




 朝食のはずのフレンチトーストはランチの時間になって、本当においしかったけれど身体はクタクタだった。
 一つわかったのははどうやら本当になみのことが好きらしい。

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